『魔術? そんなことより筋肉だ!』 連載版   作:蜜柑ブタ

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バーサーカーとの出会いを期待された方がいらっしゃいましたが……。こんな感じになりました。

戦いというか、ただの喧嘩ですね。たぶん。




2025/08/23
バーサーカーの斧剣についての設定について知らなかったばっかりにおかしい展開になったのが気になったので一部書き換えました。


SS5 イリヤちゃんとバーサーカーさん

 教会をあとにし、帰る途中だった。

 

「もう、帰っちゃうの?」

 

「ん?」

 可愛らしい少女の声が聞こえてそちらを見ると、美しい美少女がいた。

 ロシアン帽を被っており、どこか異国情緒を感じさせる格好で、小柄だ。

「君、こんな夜更けに一人じゃ危ないぞ。」

「あら? 心配してくれてるの?」

 すると、少女は、長いコートの両端を両手で摘まみあげ、どこかの令嬢のような上品にお辞儀をした。

「はじめまして。私は、イリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです。」

「な、なんですって!?」

「知ってるのか、遠坂?」

「アインツベルンって言ったら、聖杯の入手を宿願とする魔術師の家系。毎回この戦いにマスターを送り込んできている奴らよ。」

「へ~。じゃあ、この子が今回のマスターってことか。」

「そうだよ。お兄ちゃん。だけどね…、わたし、聖杯より楽しみにしていたことがあるの。それはね……。お兄ちゃんを殺すこと。」

 イリヤが無邪気に恐ろしいことを言った。

「俺を? どうしてだ? 君とは初対面のはずだ。」

「そうだね。私が一方的に知ってるだけだもんね。悪いけど、私この日を本当に待ち焦がれてたの。だから…念入りに殺してあげる! おいで、バーサーカー!」

 次の瞬間、イリヤの背後に大きな人影が現れた。

「なっ!」

 それは、巨人のごとき筋肉と巨体を持つサーヴァントだった。

「ふふ。驚いた? ボーッとしてるとすぐ…、バーサーカー?」

「ふ……ふふふふ。」

「? お兄ちゃん? 何がおかしいの?」

「こいつは……、とんでもない強敵だぜ! あんた、俺が言うのも何だが、すごい英雄だろ?」

「ええ。そうよ。」

「なんで、君が答えるんだ?」

「バーサーカーはね。狂化で、言語が喋れないのよ。」

「なるほど…。その強者の力! ぜひ! 俺にぶつけてくれないか!」

 次の瞬間、士郎は自身のリミッターを解除した。筋肉がありえないほど膨張し上半身の服が破れる。

「! すごい……。」

 一瞬驚いて目を見開いたイリヤだったが、すぐに感動したように声を漏らした。

「ちょ、ちょっと、士郎!?」

「ダメです、相手は…!」

「行け、バーサーカー! お望み通り相手をしてあげなさい!」

 イリヤの命を受け、バーサーカーが咆吼し、突撃してきた。

 セイバーが剣を抜いて構えるよりも早く、士郎が動き、振り下ろされる斧剣を回避して懐に飛び込み、バーサーカーの腹にタックルをかました。

 バーサーカーの巨体がわずかに浮き、後ろに飛んだ。

 体制を整えたバーサーカーが再度、斧剣を振り下ろした。

「はあああ!!」

 士郎が右手の拳に気合いを込めて振ると、斧剣を握る手が腕ごと砕かれるようにへしゃげ、そのままの勢いで士郎の拳がバーサーカーの顔にめり込んだ。

「ば…、バーサーカー!!」

「っっ、てぇーー、ちょっと切れた。斬れ味悪くないんだな、見た目に反して。」

「ちょっと切れただけですまないわよ、普通は!!」

 プラプラとちょっと表面が切れて、流血している右手をプラプラさせる士郎に、凛がツッコミを入れた。

 少し間を置いて、バーサーカーがムクリッと起き上がった。それと同時に破壊された腕が元通りに治る。

「あれ? なんで治るんだ?」

「スキルか…、もしくはサーヴァントが持つ固有の力かもしれません!」

「あー、なるほど、そりゃ大したもんだ。」

「いやいやいやいや! 大したもん程度で済ませるあんたがおかしいのよ!!」

「シロウ! 下がってください! ここは私が!」

「いいや! これは、俺の挑戦なんだ! おまえが下がれ、セイバー!」

「うっ…。」

 その瞬間令呪が発動してしまい、セイバーが後ろへ飛び退いた。

 士郎は、セイバーが下がるやいなや、再び突撃してきたバーサーカーと衝突した。

「おおおおおおおおおお!!」

 バーサーカーが斧剣を捨て、素手で士郎とやり合う。大きさの違う拳がぶつかり、時に殴り、殴り返し、いつ終わるか分からない喧嘩だった。

「すごい…、すごい、すごいすごーい! お兄ちゃん、すごいんだね! 私のバーサーカーと真っ正面から戦えるなんて! …気が変わったわ。バーサーカー。引きましょう。」

「えっ? あ、ちょっ、ま…。」

 バーサーカーが急に止まり、イリヤの傍に行ってイリヤを抱き上げた。

「お兄ちゃんのこと見直した! だから、殺さないでいてあげる。また、次会おうね!」

「待てよ! まだ勝負は!」

「ごめんね…。さっき連絡が入ったの。帰ってきなさいって…。だから本当にごめんね。」

「…次…、また戦ってくれるのか?」

「もちろんよ。バーサーカーもいいよね?」

 イリヤが聞くと、バーサーカーは、静かに頷いた。

「ありがとう、バーサーカー!」

「じゃあね、お兄ちゃん。」

 士郎は、バーサーカーにお礼を言い、イリヤはバーサーカーと共に去って行った。

 そして静寂がおとずれた。

「信じらんない……。」

「なにが?」

「真っ向からバーサーカーとかち合うなんて……、あんたいよいよ人間止めたわね…。」

「俺は人間だぜ?」

「あーーーー! もう! あんたに常識を求めた私が悪かったわ! この非常識筋肉!! あとついでに貴重な令呪も使っちゃって……。もう!」

「はっ?」

「右手見なさいよ! 甲の方を!」

「あ…、ちょっと消えてる。」

「いい? 令呪は、三回までサーヴァントを絶対服従させられるマスターの特権なの。それが全部無くなったら、それで終わり。サーヴァントとの繋がりが無くなって、聖杯戦争から脱落よ。」

「なんでそれを早く言わないんだよ!」

「あんたが勝手に使っちゃったんじゃない!」

「使った覚えはない!」

「いいえ…、無意識ですが使ってしまいました。自分が相手をするから、下がれと。」

「そんなことでもかよ。」

「普通はね…。サーヴァント同士の戦いは、サーヴァントに任せるの。それをマスター自身が前に出て戦うなんてあり得ないのよ。聖杯が欲しいなら気をつけなさい。」

「…でも。」

「でももだってもじゃないわ! これは、魔術師が英霊を使ってやる戦いなのよ。」

「けど、俺…、アイツ(バーサーカー)とはもっと戦いたい! 筋肉魔法を極めるためにも!」

「……もう、勝手にしなさい。」

 士郎が話を聞かないと理解した凛は、ため息と共にそう言って手を振った。

「私では、役不足なのか……。」

 セイバーがひっそりと項垂れていた。

「いやいや、別にセイバーに頼ってないわけじゃないぞ? けど、これから先、バーサーカーとは俺が戦うからさ。ところで、さっきから遠坂のとこのアーチャーって奴が、俺を狙ってるんだけど?」

「えっ? あ、ほんとだ! アーチャー!!」

 

 

「な……なぜ気づいたんだ?」

 

 離れたビルの上にいたアーチャーが驚いて手にしていた弓矢を下ろした。

 殺気は隠していた。だが気づかれた。

 その理由について士郎は……。

「目も鍛えているからな!!」

 っと、言った。(※実際、目にも筋肉はある。まぶた、外眼筋、内眼筋など)

「こ、この…非常識筋肉バカ…。」

 凛が、クッ…と余所を見て泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




イリヤが一瞬、バーサーカーの様子がおかしいことに気づいていますが、この時バーサーカーは、士郎の強さ(筋肉)に気づいて警戒してました。
殴り合ってますが、たいしてお互いに怪我してもいません。せいぜい、最初に斧剣を素手で砕いた時に拳の表面を切っただけです。

そういや、漫画版の『魔法?そんなことより筋肉だ!』の、目も鍛えているからだ!っという展開は、笑ったなぁ……。あれで、目も筋肉なのだということを知った。



2025/08/23
バーサーカーの斧剣が召喚の媒体であることを知らず…、知ってからの違和感が拭えなくなったので斧剣を振り下ろそうとしたところを士郎の拳で破壊されて顔面に一撃入れられたというシーンに書き換えました。
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