ゆゆ刃牙~漢達のきらめきッッ~   作:バロックス(駄犬

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 気づけば5000UA突破。 長かったぜ、色んな人に見て貰えているみたいでありがとうございまス。

 ゆゆゆいのファンブックが欲しんじゃァ!


第十話~農業王への試練~①

 諏訪の大地を駆ける一人の少女が居る。 

 金糸梅を連想させる黄色と白の勇者装束を身にまとったその少女は小柄なその身に似合わぬ大跳躍から目標を見据え、武器を構える。

 

「せぇやぁッ!」

 

 勇者・白鳥歌野が悪しき魂を滅する神威(カムイ)の力を宿した武器、藤蔓を振るう。

 宙を漂っている星屑と呼ばれる神の尖兵を一振りの元に弾き、瞬時に滅した。

 

「はぁ・・っ! はぁ・・・っ!」

 

 いとも簡単に敵を屠った訳でもない。 肩で息をする歌野は全身が傷だらけだ。

 

 もう自分でも、星屑を倒した数は数えていない。

 

 

「タイム・・・挟みたいところ・・・だけどっ」

 

 眼前に広がる諏訪の大地を埋め尽くさんとする白の軍勢、点々と存在ではなく、白く塗り潰されたその大地の正体は星屑が重なったもの。

 

 

 敵はこちらの事情とはお構いなく、波状攻撃を仕掛けてくる。

 

 

 

――――諏訪、最後の日。

 

 諏訪を完全に滅ぼすための、敵の大規模な侵攻作戦。

 既に戦いが始まった朝方から数えて、だいたい六時間ほどだろうか。 歌野は戦闘をぶっ続けていた。 

 

 土地神からの神託が下ったとき、聞いた内容に絶望したりなどしていなかった。

 

 

 たとえそれが、これまで耐えた3年間が四国勇者の迎撃準備を整えるための囮役だったと聞かされたとしても。

 

 

 白鳥歌野にとって諏訪の人々を、大切な友を守るための戦いは常にあった。四国にいる乃木若葉という勇者に負けないくらい、歌野は一人で戦い続けていたのだ。

 

 

 いままでだって、そしてこれからだって。

 

 

「―――進化体ッッ!?」

 

 数十メートル先、星屑と呼ばれる者達が合体を繰り返して今までよりも大きく、禍々しい姿をした敵がその頭角を現した。

 

 進化体の放つ棘がまるでマシンガンの如く連射される。 だが歌野は怯まない。

 

 手に持つ藤蔓を振るい、自分の身体に直撃するだけの棘を叩き落としては、回避行動に徹する。

 

 しかし、安心している場合ではなかった。

 敵の進化体は一体ではないのだ。 諏訪を完全に潰す気マックスなのか、進化体は三方向からその針を飛ばし、雨のように降らせてくる。

 

 敵の星屑を巻き込む程の大地を覆いつくす針の雨が止むと、星屑を盾にしていた歌野が死骸の中からボロボロの身体で這い出てきた。

 

 

「ぜぇ・・・っ! ・・ぐぅぁっ!」

 

 頭を揺らされ、身体を叩きつけられ、衝撃を受けて地面を二転三転し、命を繋いだ。 いつだってそうだ。

 

やる気と勇気があれば、歌野はどんな時でも戦えた。 身体が何度傷つけられても、どんなに血を流しても。

 

 

 それでも、限界は訪れる。 

 

 

「まだ―――――」

 

 

 歌野が自分の身体の異変に気付いた。

 確かにさっきまであった右腕の感触がないことに違和感を覚え、視線をその腕へと送り、思考が止まった。

 

 

 藤蔓を握っていた右腕が袖口から先、存在していなかった。 先からは血が蛇口をひねった如く垂れ、地面を赤い液面が形成されていく。

 

 

(あー・・・・)

 

 他ならぬ歌野自身が悟る。

 限界だ。リミットだ。

 

 緊張の糸が切れるように、電池の切れたラジコンのように歌野の膝が砕けるようにして、地面に崩れ落ちる。

 

 まるでその瞬間を待っていたように星屑が距離を詰め、歌野に襲い掛かる。 戦う力も、生きる気力を無くした歌野はもはや避けることをしなかった。

 

 

「うたのん!」

 

 全てを諦め、死を受け入れようとした歌野の肩を小さく衝撃が駆けた。 何かが肩にぶつかった。 星屑ではない。 一メートルと満たない距離を歌野が移動する程度の衝撃。

 

「みー、ちゃ、ん・・・?」

 

 視線の先、歌野の作った血の池の上にぽつぽつ落ちる赤い滴が水面に波紋を作る。

 

「も、う・・・、うたの、んってば、油断、しすぎだよ・・・っ」

 

 次第にその赤い液は太くなり、地面の池は更に広がり、歌野の姿を映す程までになった。

 

「お願い・・・生きる、のをっ ―――諦め、ないで」

 

 自身に掛かるはずだった星屑の巨大な牙を代わりにその身に受けた藤森水都が呆然としている歌野に微笑みかけた。

 

 口からも血を吐いた水都は全て悟ったように、歌野へ向けて最期の言葉(・・・・・)を送る。

 

 

「うた、の・・・ん。 だい、すき」

 

 次の瞬間、肉を裂き、骨を噛み砕く音と共に鮮血の華が咲く。 

 それは歌野の頬を、金糸梅の装束を最愛の友の血で染め上げた絶望の開花だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・シット」

 

 

 視界が暗転した歌野が目を覚ますと一番に目に入ったのは自身の部屋のLEDタイプの蛍光灯だった。

 身体に感じる異様な熱はいつのまにか滝のような汗を形成し、自身の寝巻をびしょびしょにしてしまっている。

 

 

 夢だった。 あの残酷な光景は全て幻。 

 

 

 

「すー・・・すー・・・」

 

 隣で静かに寝息を立てている藤森水都の存在を感じ、その事実だけを受け止め、胸を撫で下ろして歌野は大きく息を吐く。

 夜、歌野の部屋に遊びに来た水都がそのまま眠ってしまったので自分もその隣で寝ることにしたのだと思いだす。

 

 

 

「絶対に、あんな結末にはさせないわよ・・・させるもんですか」

 

 自分の見たのは夢であり、確定した事項ではない。 たとえ、それを匂わせるような要素がこの世界に来る前にあったとしてもだ。

 

「・・・みーちゃん」

 

 水都の髪を梳くように小さな動きで触れるとくすぐったそうにした水都の身体が震えた。

 

「んー・・う、うたにょん・・くしゅぐったぃ・・・・」

 

 寝言レベルの言語で顔を蕩けさせながらそう返した水都を見て自然と歌野に笑みが戻る。

 

「ふふふ・・・もう、みーちゃんたら」

 

 愛おしい人の寝顔を確認して、歌野は再度布団に入り直す。 

 

 

「諏訪の人も、みーちゃんも・・・・・私が守るから」

 

 

――――絶対に、強くなるんだ。 そんな未来にしないために。

 

 

 その寝顔を瞳に焼き付けながら、心の中で密かに歌野は誓うのだった。

 

 

 

 

○ 

 

 

 

――――――未解放地域。

 

 静まり返る樹木のみが羅列を形成する空間に、赤嶺友奈はいた。

 

「それで・・・・、約束は守ってくれるんだよね?」

 

 座布団を敷いて、その上に正座をした険しい表情で赤嶺は承諾を要求する。

 

 

 

 

「―――渋川剛気(しぶかわごうき)さん?」

 

 目の前で、同じく正座をして静かに茶を啜る一人の老人に対して。

 

 

 155センチという小柄な身長を持つその渋川という老人に、赤嶺が畏怖する。とても老人に覇気は感じさせないが、

 

 

 しかしながら、その凛とした佇まい、一介の老人に非ず。

 

 正体は武闘家の道に身を置く、その界隈の達人。

 

 

 渋川流柔術の開祖、渋川剛気。

 合気道を実戦で活用し、その実力を買われ警視庁にて逮捕術・柔道の客員指導を行っている男である。

 

「一宿一飯の恩義・・・・」

「果たさねェとあっちゃァお天道様に顔向けできないわな」

 

 物腰柔らかそうな柔和な表情で渋川は答える。

 

「それにこんな可愛いお嬢ちゃんの頼みとあっちゃねェ・・・・」

 

 ぱしん、と老人は自身の膝を両の手で叩いて見せた。

 

「受けるぜ」

 

「・・・・シャァ!」

 

 その言葉を聞き、赤嶺はガッツポーズ。 味方として招き入れる為に、あの手この手で最善を尽くした甲斐があったというものだ。

 

 勇者部には最近、バーテックスを手刀で両断する謎の空手家、愚地独歩が現れた。 

 この男も、恐らくは彼の仲間だろうと赤嶺が直感で理解する。

 

「いやー、あの時はどうなるかと思ったネ。 おじちゃん、いきなり知らない土地に飛ばされちゃったから怖かったのよー」

 

 かっかっかっ、と軽快に笑って見せる渋川に赤嶺は視線を少し逸らして、

 

(嘘ばっかり・・・・)

 

 昨夜の事だ。 勇者部の襲撃作戦が失敗に終わり、拠点へ帰還してきた赤嶺が見たのは未解放地域に横たわった数多くのバーテックスの姿だった。

 

 

 星屑が、タウラスが、スコーピオンが紙のように空を舞う光景を誰が予測できただろうか。

 それが小柄な老人によって投げられているという事など、誰が予測できただろうか。

 

 

 その老人は嬉々として、投げていることに快感を見出したかのような笑みでバーテックスを千切っては投げていた。

 だがその老人、渋川が敵がいなくなったのを見て急に、

 

『ハラが減ったァ・・・・この白いのは味気が無くてマズイし、やっとられんわ』

 

 と嘆くのを見て、赤嶺は画策する。 一宿一飯の恩義で、この男を仲間に引き込めないだろうか、と。

 

「タコさんウィンナー・・・もうちょい塩控えめで良かったのぉ・・・儂、一応老人なもので」

 

「あはは・・・ごめんね渋川さん、もし次もご飯に困ってたら、ウチで御馳走用意するけど?」

 

「ほぅ、そりゃあ有難い・・・でも、それは――――」

 

 老人らしいゆっくりとした動作で渋川が立ち上がり、赤嶺を見おろす。

 

「勇者部・・・とやらを、ブッ倒してからにしてもらうかね」

 

 

 先ほどの柔和な笑みとは違う、口角をあげたニヒルな笑みを浮かべる渋川を見て、赤嶺は背筋に凍る物を感じる。

 似たような感覚がある。 愚地独歩と対峙していた時と同じものだ。

 

 

 これこそがこの男、渋川剛気の本質。

 傍から見れば一見、争いごとが嫌いで、どこにでもいそうな平和を好む老人。

 

 だが、誰よりも戦うことが大好きで、護身を目的とした合気道を極める者として相反したその攻撃的な性格こそが彼の正体だと誰が気付けようか。

 

 

 

「・・・・ッッ」

 

 赤嶺の身体の節々が痛む。 それは、渋川を最初仲間に引き入れる為に最初行っていた交渉手段、赤嶺自らの立ち合った当時の状況を思い出す。

 

 殺意を乗せた拳を何度も何度も放てども、その都度自分が同等の威力で遠くへ投げ飛ばされ、または地面に叩きつけらる。

 昨日の出来事を赤嶺は思い出してはそのダメージが蘇るかのようだ。。

 まるで魔法にかかった感覚。 自分が自分を真正面から殴ったような。

 

 

 最終的に決着させたのは食事を振る舞うということだったのだが、それが一番赤嶺にとって悔いることだった。

 

 

 神世紀、大赦の暗部として自分の磨いていた対人を想定した体術が、自分よりも華奢な老人に全く通用しないという事実に。

 現状で非の打ちどころがなく、手も足もでないということを赤嶺は認めなければいけなかった。

 

「神様の作ったこの世界、勇者とやらに試練を与えるその御役目―――-、この渋川剛気が承った」

 

 まるで刃を研ぎ澄ましたかのような、まさに真剣な顔つきの渋川の足元に着地する。

 

「・・・この子が送ってくよ。 愛媛から香川まで結構距離があるからね」

 

「おお、助かる・・・っと」

 

 星屑の背に跨った渋川の身体が宙に浮きだす。星屑にとって老人程の物量を運ぶことになんら苦労はない。

 それでいて速度は並みの自動車と変わらないので移動手段としては赤嶺も良く利用しているほどだ。

 

「んじゃぁ楽しみにぃ――――」

 

「フンッ」

 

 直後、星屑の尻を赤嶺が蹴り上げる。 星屑が驚き、馬が鞭で叩かれた如く跳ね上がっては猛スピードで空を駆け出した。

 

「ひえええええええええ!!?」

 

「いってらー」

 

 昨日散々投げられた仕返しのつもりでつい手が出てしまった、と赤嶺は後悔する。これであの老人が普通に帰ってきたら自分はどうなるのだろうか。

 

 渋川を乗せた星屑が見えなくなるのを黙って見送った赤嶺はふと、その場で呟く。

 

「造反神様・・・私って、このままでいいのかな」

 

 勇者の力を持ちながら、世界を守ってきた時代の勇者の敵として立ちはだかる。

 与えられた神聖な御役目の為に、ありとあらゆるものを利用し、神樹側の勇者に試練を与える・・・ハズだった。

 

 

 だが現状はどうだ。 どっから湧いて出た武の道を極めた武人たちに翻弄され、あまつさえ、勇者でもない別の世界の人間に代わりに打倒、あわよくば同士討ちを願う始末。

 

 

 明らかに逃げの思考を顔を振って否定する。

 

 

 

 

――――それが本当に赤嶺友奈の御役目?

 

 

 当然ながら、主である造反神が答えるはずも無く、赤嶺の問いはただ虚空へと消えていくばかりである。

 

 

 

 

 

 

 




 ちょいと短めだけど、こっちの方が見やすかったり? それとも文字数が多くてもきっちり短い話数で終わらせるべき? 
 どっちなんだ・・・ゼロは俺に何も教えてくれない。
 試行錯誤しながらやっていきます。

 しょっぱなからシリアス全開なワケだけど、多分諏訪組のラストって凄い想像しやすくて困るんだよなぁ。 うたのん曇らせるのは抵抗あるけど、そこは太陽のミトっつあんがなんとかしてくれるからいいですよね。

 渋川先生、ええ、悪キャラになりました。 でも本人は素直に恩義を返しに行っているだけです。 でも本心は早く勇者部とバトりたくてバトりたくてうずうずしてます。

 この作品、ちゃんと赤嶺ちゃんも主人公する場面あり。 多分アプリでいつかやるかもしれないけど。
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