ゆゆ刃牙~漢達のきらめきッッ~   作:バロックス(駄犬

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色々と各話並び替えやってみました。 見やすくなってくれるなら幸いです。やはり刃牙、表現力が難しいこと。自分は知らないうちにとんでもなく難しい二次創作に手を出しているのでは?




第十一話〜農業王への試練〜②

「うたのんの様子がおかしい?」

 

「ああ」

 

 時間帯は昼休み。

部室にて弁当箱を広げ、今まさに卵焼きを食しようとした藤森水都が静かにその箸を置いた。歌野の様子がおかしい、そう言ってきたのは同じ西暦勇者の乃木若葉である。

 

「最近は鍛錬に対してかなり入れ込んでいるようだ。 今朝も遅刻ギリギリまで空き缶相手に藤蔓を振るって、リフティングしていた」

 

「り、リフティング?」

 

 サッカーで言う、ボールをキープする技術。ボールを宙に浮かせ、如何に地面に落とさないようにするサッカー選手ならば必須のスキルだ。

だが、人並みにスポーツをする歌野だが鞭を使ってリフティングをする歌野のイメージが水都には容易に想像できなかったのである。

 

 

「結局は鞭を自由自在に制御する訓練だと、私は思う。 空き缶を蔓で当ててからは宙に浮かせ、何度も当てながら地面に一度たりとも落とさなかった」

 

「はぁ・・・ま、まぁ、うたのんがトレーニングするのって別にいつもと変わらないんじゃ?」

 

「そう、だろうか・・・だが私には最近の歌野からは鬼気迫るものを感じる」

 

 汗水を流し、鞭を振るう歌野を見た時、若葉は即座に声を掛ける事が出来なかった。空き缶を落とさず、一心不乱に鞭を繰り出す歌野の技術力に見惚れていたからではない。

その表情からは極度の集中力と、普段見せない怒りの感情が見え隠れしていたのだ。

 

「もしかして・・・この前の赤嶺友奈の部室襲撃と関係があるんじゃないか?」

 

 若葉の言葉に思うところがある水都だった。

 先日、勇者部の部室にいる巫女を狙って讃州中学に侵入してきた赤嶺友奈の非道には若葉たちを含めた勇者達を戦慄させた。戦闘能力を持たない巫女に星屑とバーテックスをけしかけるなど許されることではない。

 

 

 学校に待機していた愚地独歩のお蔭で襲撃計画は御破算となり、撃退することはできたのだが以降は巫女は外で活動する際は単独で行動しないというのが部内での決まりとなった。

 

「そういえばそうかも・・・たしかにあれから、うたのんからのボディータッチがかなり増えたような」

 

「お、おお・・・そうか、仲が良いことはイイことだな。 うん」

 

 ごほん、と若葉が咳き込んでいる。 少し恥ずかしそうにしているが、若葉とひなただって似たような事をしている気がするのだが。

 

「心配しているのだ」

 

 若葉が不意に言葉を漏らす。

 

「同じ西暦の勇者、というのもあるが正直、歌野の事はこれまで通信という間接的な手段でしかやり取りがなかった。

だけどこの世界に来て、歌野に会うことができて私は嬉しかったんだ」

 

 香川と諏訪。 遠く離れたお互いの状況を古びた通信機一つで行うというのが二人の日常だった。通信機越しに『うどん』、『蕎麦』のどちらが優れているのかを競い合ったし、若葉がリーダーとして悩んでいた時はアドバイスだって貰っていたのだ。

 

 だから諏訪と連絡が途絶えた時、心の底から辛かった。 絶望的なほどに。しかしこの神樹が作り出した世界では元気な姿で会う事で来た。若葉にとってそれは奇跡だったのだ。

 

「あの時、通信機越しだけで直接歌野に助力をすることが出来なかった。 私は、歌野の力になってやりたいんだ。水都」

 

「若葉さん・・・・」

 

 ありがたい話だ、と水都は思う。

 諏訪のこれまでの状況では、歌野一人で戦ってきたが日を追う毎に戦況は悪化していく一方。御役目を体に傷を残しながら果たしていく決して心折れず、絶望せずに立ち向かう歌野の姿を見て、水都は何度思ったことだろうか。

 

 

 

――――神様でも悪魔でもなんでもいい、だれか・・・・うたのんを助けてよ、と。

 

 

 

 だがこの世界は、たくさんの勇者がいる。同じ西暦の勇者、未来の勇者が共に戦っているのだ。歌野はもう一人ではない。信頼できる友が、仲間がちゃんといるのだ。

 

「ありがとうね若葉さん。 お昼休み中だけど、食べ終わったら一緒にうたのんの所へ行こう。 たぶん昼休みも畑にいると思うから」

 

 頼れる仲間がいるという事は素敵なことだ。水都は心に暖かいものを感じながら笑顔でそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・水やりよし、と雑草抜き、よし、と」

 

 昼休み、制服姿で農作業をする女子中学生が居るらしい。

 

 それは誰だ?と問えば、誰もが口を揃えて言うだろう。それは白鳥歌野だと。

 

「グレイト! グレイトよ! 今日も絶好の農作業日和!」

 

 慣れた手つきで畑をいじくる歌野の動きにキレがあるのは程よい風に程よい気温故、野菜が育ちやすいベストコンディションという事実。

 諏訪では農作物を作ってはバーテックスに襲われて畑を破壊されるという事が多かったのだが、この世界では勇者が一人ではないという事もあって、歌野が育ててきた畑は失われず守られ続けている。

 

 

 大赦の伝手を頼って歌野に畑が与えられるまでは、全くと言っていいほどこの世界で生きた心地がしなかった。 それが先月、ついに念願叶ったので四国に存在する野菜を季節に合わせて育てているのが歌野の日課だ。

 

 ちなみに、育った野菜は収穫して業者の方に卸している。それで歌野に農業関連の仕事が勇者部に舞い込むこともしばしば。

 嬉しいことである。 こうして実力を認められている事こそが、歌野にとって農業王へと一歩ずつ近づいてきている事の証なのだから。

 

 

 

 

「ほっほ~、こらまた立派なトマトじゃ」

 

 一息休憩を入れようとした歌野がトマトを植えている場所に一人の老人の姿を見た。

 

 

 身長は160も無いだろう、着物姿が絵になる老人が歌野の作った野菜を感心した様子で眺めていた。用務員にしては装いが作業服でないのが気になる。もしかすると、この讃州中学に間違って入ってきた一般の人なのかもしれない。

 

 

「あら、おじいさん。 お目が高いですね、未来の農業王歌野が作った自慢の野菜たちですよ」

 

 部外者が入ってきている事は事実。しかし、そこは心の広い歌野だ。たとえ間違いで入って来ていたとしても相手は老人。人生の年長者ということを配慮においた歌野は優しい口調でその老人に語りかけた。

 

 

「ホゥ・・・この野菜、というか畑、全部お嬢ちゃんが作ったのかい?」

 

 口を開いた老人はこの敷地にある全ての野菜を歌野が作ったことに驚きを隠せないでいた。

 老人にとって畑とは、農業とは中年や高齢の人間がやるイメージしかなかった。ましてや、制服姿の女子中学生などもってのほかだろう。

 

「野菜好き・・・よりは、農業が好きって感じかな?」

 

「そうですとも! 農業無くして、私の人生はあり得ないですから!イッツ・ライフワーク!」

 

 好奇心が何よりも自分を動かすのだと、老人の問いに歌野は明白に答えて見せた。すると老人は程なくして、

 

「かッかッかァ~ッ、スゲェぜ! お嬢ちゃん!」

 

 高らかに笑ったのだ。

 

「最近の若いやつらと来たら、農業に関心持たない連中ばっかりじゃろ?年々、農業の肩身って狭くなってるらしいしなァ」

 

 

 若者の農業離れ。一言に済ましてしまえば簡単だが、現実その問題は深刻である。

 

「時代の流れ、社会風潮、進学して都心中心の生活を送る若者増加、食生活の変化、就職難、不況・・・ましてや、農業は天候に左右されやすいし、天災、水害なんてあった日にゃあ農家にとっては堪ったもんじゃない」

 

 時代は変わり自然と触れ合う人間が減った。

 台風や干ばつ、梅雨の時期ほど農家を恐れさせるものはないし、それで打撃を受ける農家の収入と言うのは不安定なものである。 一概に今挙げた事が農業離れの原因とは言い難いものの、老人の言うことがある程度的を得ているというのは確かだった。

 

 

「そんな中でお嬢ちゃんみたいな農業を志してくれる若いものが居るってこと自体、嬉しいもんじゃねぇか。 この野菜の手入れ具合からするに、適当にやっている訳でもないし、確かに情熱ってヤツを感じる」

 

 瑞々しい輝きを放つトマトは今でも収穫して齧りつきたいくらいだ。歌野の野菜は他人から見たら、それくらいに美味さそうなのだ。 

 

「あはは、嬉しいけど・・・照れちゃいますね、そこまで言われちゃうと」

 

 自身の育てた野菜を褒め称えられるという最大級の賛辞を受け取る歌野は目立ちやがりであるにも関わらず、過剰に褒められると一周回って照れてしまう。だが気分は良い物だ。農業に対して理解ある者が増えてくれたことを歌野は嬉しく思う。

 

「諏訪にいた時は無我夢中で鍬振るってましたからね」

 

「諏訪・・・? お嬢ちゃん、長野県の出身か」

 

「・・・? ええ」

 

 そうか、と老人は小さく頷いて、

 

「懐かしいねェ、昔は遠征でよく長野に出向いたことがあったからそん時食べた蕎麦が忘れられなくてなァ」

 

「へぇ・・・・」

 

 歌野に一抹の違和感。 何故だろうか、目の前の老人を蕎麦党にしてしまおうと意気揚々としていた気持ちが一瞬にして失せたのは。

 

 歌野は思う。今の老人の会話、何か違和感はなかったか。

 

「最近はずーっと、東京(・・)の警視庁で若者と柔道ばっかなもんでなぁ~」

 

 何故だろうか、頭の隅ある違和感がこびりついて消えない。 このまま老人が言った事を解さないまま、会話を流してしまうのは酷く、良くないような気がした。

 

 

「うたのーん」

 

 直後、思考をする歌野を中断させるように聞き覚えのある声が聞こえた。方角を見れば、水都と若葉の姿がある。 水都はいつものことだが、若葉が来るのは珍しく感じた。

 

「おろ? お友達かい?」

 

 老人は何故か眼鏡をくいっと上げてゆっくりと歩き出す。 掛けていたべっ甲の眼鏡に隠れ、瞳は見えなかったが、歌野は老人の視線が水都へと向けられている気がした。

 

「ちょっと、おじちゃん待って・・・・どうして、東京に行ったことがあるの?」

 

 歌野の問いにぴたりと、その小柄な老人の動きが止まった。

 

 

 違和感はつい先ほどの会話にあった。

 

 

 なぜこの老人は長野の諏訪に行ったことがあるのか、すでに300年前の自分たちが居た西暦の時代の場所なのに。四国が壁で覆われているこの世界で四国以外の場所から来たというジョークは今の歌野に通用しない。何故なら、東京も長野も若葉や歌野などのバーテックスが出現した西暦に生きていた人間しか詳細に知らないはずなのだから。

 

 

 唐突にこの老人が得体の知れない何かだと理解した歌野の警戒度が引き上げられる。それを余所に老人が歩を進めようとしたので、

 

「ストップッッ」

「ドント・ムーブよ、おじいちゃん・・・・アナタ、何者?」

 

 声を張り上げたのを聞いた水都と若葉ですら動きを止める声量に、老人は見えない角度から口角を引き上げるほどの笑みを浮かべてた。

 

 

「渋川剛気と申す――――、合気を嗜んでるモンなんじゃが今はゾウハンシン側の協力者」

 

 渋川と名乗るは徐に眼鏡を外して、その双眸で歌野を見据えて確かに言った。

 

 

 

「簡単に言うならアンタらにとっての敵、じゃよ」

 

「ッッッ! 若葉ッ みーちゃんを安全なところに――――」

 

咄嗟に若葉へ声を投げた歌野が言い切る前に、

 

「――遅ェ」

 

 地を這うように身を低くした渋川が膝元まで迫る。

咄嗟に手を翳し、スマホへと伸ばそうとした歌野の手首が渋川に掴まれる―――次の瞬間。

 

 

 

――――廻ッッ!!

 

 

 

 歌野の目に見える世界が回った。

 大地が、空が、若葉と水都が高速でその場所を入れ替え、捉えられる景色全てが流転する。その流転の果て、歌野の全身に衝撃が駆け抜ける。

 

 

「が・・・はっ」

 

 何が起きたのか、何をされたのか歌野には分からない。

 

 背中から地面に落とされた(・・・・・)事だけを理解した時、一瞬だけ呼吸が止まる。地面の柔らかさを感じながら起き上がろうとした歌野の見上げる先には、先ほどの現象を自身に起こさせた張本人、渋川が歌野を見下ろしていた。 不気味な笑みを浮かべ愉しむかの如く。

 

 

 

「勝負はもう始まってんだゼェ・・・・・ 勇者(・・)サマよ♡」

 

それはもう唐突に。

前触れ、予兆一切ナシ。

何気ない昼休み、達人と勇者の闘いが人知れず始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 




刃牙キャラは試合開始直後に目潰しとか金的とか普通にやってくる不意打ち上等なヤツらばっかりなので当然ながら渋川先生も例に漏れず。

なんか渋川先生の会話に違和感あるなぁ、と思ったら感想にいつでも寄せてください。
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