バキ名物、『公園』に纏わるお話。被害者は樹ちゃん。
―――夜八時、某公園。
犬吠崎樹が公園入口に佇んでいた。
「ええーっと・・・ここ、だよね」
辺りを見渡して、誰も居ない事を確認した樹が一歩ずつ歩を進める。夜、普通ならば滅多に人が現れる事がないが、それでいてもこの静けさは異常である。
人も動物も、虫も存在しない程に静まり返ったこの公園には、ある噂が流れていた。
樹は今日の夕方の勇者部のミーティングを思い出す。
全ては勇者部の依頼箱に舞い込んできた一件の依頼から始まったのを。
○
「公園の悪魔?」
部室にて腰を下ろす犬吠崎風が首を傾げる。
土井球子が掲げる勇者部の依頼書の内容はその場にいる部員誰もが同じくして首を傾げるものだった。
「どうにも夜、近くの公園に奇妙なうめき声が聞こえるらしいんだ・・・『肉を、肉をくれ』、と」
「――ひぅ、タマッち先輩……それってただの悪戯じゃないのかな?」
伊予島杏が震えては苦笑いで言う。勇者部には真面目な依頼と、面白半分の内容で書かれた依頼の二つが存在する。この依頼書も恐らくは後者のものだろうと誰もが思った。
誰しもが抱く疑問を、ちっちっち、と球子が指を振って否定する。
「目が光っていた・・・人間じゃない」
どこのプレデターだ、と球子の言葉に一同は笑う。
そして緊急的だが会議が開かれる。果たして、この依頼は勇者部が請け負う事ができる依頼なのかどうか。
数十分経って出た結論は様子見だった。
出回っている情報も少ない為に無理をして事件に巻き込まれる事態は避けたい。安全の事を考えた結果、保留となったのである。
「あ!あとこれなんだけどさ」
会議が終わり、部員たちが部室を後にしようとする前、球子がポケットからあるものが取り出される。
机の上に置かれたのは鉄の塊だった。
「なにコレ」
疑問に思った三好夏凛が珍しい物を見る目でその塊を眺める。
「目撃した生徒がソイツっぽい影に向かって投げたら暗闇からこんな風に帰って来たんだと・・・・元々は釘らしい」
「はっ?これクギなの?」
手に取った夏凛が目を疑う。 カチカチに固まっていた鉄の塊は良く見れば元は作業で使われるクギだと分かった。
「これ、歯型があるわ・・・」
あり得ない、と全員が息を呑む。
つまりこのクギは口内で形を変えられた後のものだということだ。
信じ難い事である。
こんなことが出来る人間がいるだろうか。どう考えても人外、星屑やバーテックスあたりしか思い浮かばない。
「……公園の悪魔、か」
一連の話を聞いた上で犬吠崎樹が得体の知れない存在に少しだけ興味を示していた。
○
「って、感じで来ちゃったわけなんだけど……」
という、ただの興味本位で来てしまった樹が小さくため息をつく。
少年、少女に限らず未知の生物との遭遇というのは誰もが恐怖し、同時に憧れるモノである。
人類より遥か昔に存在していた恐竜、
ネス湖のネッシー、
ツチノコ、
雪男、
地球上で最古で最大のサイズを誇った鮫、メガロドン、
宇宙からの飛来体、UFO。
その手の生物を何年、何十年と追いかけても解明しつくせない謎の塊。ブラックボックス。
触れるだけでも危険だというのに、人は好奇心からか、恐怖と並行してその感情が存在する。手を出さずにはいられない。
樹もその一人だったのだろう。だからこうして、姉の風にも黙って単独で公園にやって来ているのだ。
もしデマかせの情報ならばそれでいい。何もないことに越したことは無いのだ。
この公園を調べた樹が何も噂のような異状を確認できなければ大人しく家に帰るだけだし、
・・・・・一人で調査してきたって結果があれば、私も勇者として少しは強くなれるんじゃないかなって思ったり……。
各時代の勇者達は皆が勇ましい人たちだと樹は思う。
一人で土地を護っていた勇者や自分より年下の小学生までもが勇者になって勇敢に戦っている。そして樹が所属している勇者部も友奈、東郷、夏凛、姉の風などの先陣を切って戦う者達と比べると、自分は何と頼りない存在なのかと思ってしまう。
姉以外の他人と視線を合わせて話が出来ない、いつもどこか一歩引いて、オドオドしている。樹はそんな自分が嫌いだ。
樹が元いた世界での大きな戦いを経て、多少はマシになったかと思っていたがそれでも姉や他の勇者たちとの格差、自身への劣等感は付いて回り続けている。そう言った自分にとってマイナスの部分を払拭するという意味もあり、この公園に纏わる噂を調査しに来たのだった。
・・・・・よーし、しっかり調査して噂の正体を突き止めちゃんだから!
両手をぐっと握り意気込む樹が懐中電灯のスイッチを入れる。辺りを見渡すくらいの広さの公園だ。調査にさほど時間は掛からない。そう考えて軽快に歩き出す。
しかし、樹はこの時の自分の考えが、ここに来たという行動自体が間違っていたとを後に後悔することになる。
「あ……」
調査を開始して数分、脚が不意に止まった。
思えばここは公園。誰もが遊ぶ場所なのだと思った時、数々の遊具が樹の目に映っている。どれを見ても懐かしい物ばかりだと思うのは、過去の自分の事を思い出しているからだろうか。
・・・・・ブランコって、まだあるんだ。
宙吊りになっている二つだけ席があるブランコ。
これを確か、姉の風と一緒に乗ったのを思い出す。あの時は、樹が乗っているブランコに風も同乗し、凄い勢いで加速をつけて揺らしてきたのを思い出す。すごい怖かった。
・・・・・滑り台、ジャングルジムも。
滑り台は、
『姉の威厳と女子力を見せてやる』
と豪語した風がてっぺんから下に向かって超速ダッシュで降りていき、そのまま勢い余って砂場に顔から突っ込んでいた。
ジャングルジムは、
『私に登れない山は無い、女子力がそうさせる』
という迷言をかます風が上で仁王立ちしてそのまま落下したのを樹は覚えている。
傍から見れば大参事な光景なのだが、そんな事故に見舞われながらもケロッとしている風のタフネスさにはホントに樹は驚くばかりであった。父と母もそんな風を良く叱っていたのを樹は思い出す。それと同時に脳裏に蘇るのは、
―――風、危ないじゃないか。少しは落ち着きなさい。ほら、もうお昼ご飯の時間だぞ。
―――樹、お母さんと一緒にお昼ご飯の準備をしましょ? お弁当持ってきたから。
この世界にも、元の世界にもいない亡き両親の姿が。
樹にとって公園とは、風と父と母と過ごした数少ない想い出のある場所なのである。
安全を重視する時代となり、公園の遊具は市や町で定める安全の基準を満たせないものは徐々に撤去されるようになっていく。
この公園にあるいくつかの遊具も、今は手が掛かっていないだけでその内ほとんどの遊具が撤去されるだろう。時間が経てばここはベンチや噴水、水飲み場程度の小さな遊具しか見られない広場となる。樹はそう思うと、少しだけ寂しい気持ちになった。
そうして周りを探索すること更に十分が経過。特に噂の呻き声などは聞こえてこなかった。妖しい影も何も見当たらない。
「やっぱりデマだったのかな」
そうであるならば、勇者部の依頼に今後おふざけ目的の内容が来ないように工夫をするべきでないだろうか。
樹は考える。
・・・・・注意書きにそういう内容の依頼は受け付けないって東郷さんに依頼書の形式を変えてもらうか……でもそんなことしたら逆に面白がられて悪化しないかな。
んー、と唸るが答えが出てこない。そもそも、この手の依頼を完全に潰すこと自体が無理なのかもしれない。半信半疑で対応しておけば、こうして考えずに悩むことも無いのだ。
「あれ、これって・・・・・」
樹の視線がある一点の遊具に止まった。広場の隅っこ、木々と伸びた草のお蔭で上手く隠れていた白のドームがある。
ドームの表面にはいくつか穴があり、ロッククライミングを模した石と足場となるパイプが階段状に設置されているその遊具はプレイドームと呼ばれるものだ。
・・・・・これも良く遊んでたなぁ。
穴三つほどしかないプレイドームで遊んでいた時は、姉の風と『女子力モグラたたきよ』という意味不明な遊びを思いついて、樹は高速で動き続ける風をピコピコハンマーで狙い続けるという謎の遊びをやっていたのを新たに記憶を蘇らせた。
辺りもすっかり暗く、生い茂った草木によって綺麗に隠れていた為か今までその存在に気づく事が無かった。
だが、数ある遊具の中でも色々と遊んだ記憶が多かったからかその懐かしさに感慨を覚えた樹は調査そっちのけで遊具に近づいていく。
「たしか、お姉ちゃんが穴からぐいっと顔を出して―――」
そう過去の記憶と重ねて一つの穴に顔を近づけた時、
二つの光る点があった。
「―――え?」
薄暗く、様子が分からないドームの内部で等間隔に赤く、輝く点があるのを樹は見た。
ゆらゆらと動くその赤い点は同時に消えたり、現れたりしている。それが人の『目』だと樹が理解する直前、
穴から伸び、瞬時として樹の腕を掴むナニかがあった。
巻きつくでも、挟むでもなく、握られるという感覚は確かに人の手であるということは樹も分かった。
その手は異様にデカく、長い。女子中学生の二の腕を鷲掴みしている手の人差し指に親指が掛かっている。樹は確かに自分でも小柄なサイズであると認めるが、それでもこの手はデカすぎる。
「―――ひっ」
決して離さないというぐらいに、握っていた手が更に締まる。
樹が身を捩って逃げようとしても、その手は離れるどころか徐々にその手を穴へと引き込み、
次の瞬間、ぐいっと。抵抗していた樹の身体がまるで紙のように浮き、吸い込まれるように穴の中へと引き込まれた。
「きゃっ! い、いた……」
穴から引き込まれた樹が尻餅をついてその場所を摩る。その行為を行いながらも周囲を見渡すがドーム内は更に暗くて良く見えない。
『Gurrrr……』
樹の心臓をキュッと、締め付けるもの。それは呻き声。噂の呻き声だ。
その正体が動物なのか、なんなのか、見極めるために目を細めて、呼吸を整える。
しかし、夜目に慣れて視界が定まってきた樹の目の前に現れたのは―――――口。
「―――え」
男だ。
しかもかなりのサイズの。このドーム状の遊具が既に容量オーバーで埋まらんとするくらいの大男が樹の眼前で口を開いていた。
『Harrrrr……』
まるで獲物を見つけたハンターのように男の吐息が漏れる。
その吐息は熱く、口の端から垂れた涎が樹の顔を濡らしていく。
「あ、あ……えと……」
ぴちゃり、と顔にかかる男の涎はまだ樹も嗅いだことも無い臭いがした。自身の父からはこんなニオイはしなかった。これが雄のニオイだと樹は理解できていないのである。妖しく光る男の瞳は一層輝きを増した気がした。
赤い双眸が静かに樹を見据え、しかし獰猛な気を隠しきれず荒い息と共に肩を上下させながら、
『Gyaaaaah!!』
飛び掛かる。
小さく縮こまった樹の両肩を掴み、覆いかぶさるように組み伏せる。
両肩全体を掴んだ二つの手に加えられた力は地面と樹を挟むように、どんなに身体を捩ろうとも、身を起こそうとしても、じたばたと足を動かしてもマウントを取っている大男は一ミリたりとも動かすことは叶わない。
尚も垂れ続ける男の涎は顔から首筋に、胸元へと続くように、讃州中学の白の制服を透明に濡らしていく。
「い、いやっ! やめて、お姉ちゃんたすけ――」
眼前に迫る恐怖に樹が叫ぼうとした時、男の大口が樹の右肩に食らいついた。
「―――ッッ!?」
確かに感じる男の歯が自身の肩肉を捉える感覚。同時に男のは歯が動く。
右肩全体を覆う制服の生地を歯で撫でるように、擦るように、その下にある肉を強弱をつけて沈み込ませ、吟味する。
「あっ、やめ……ひぅ……ん」
鎖骨まで届く下顎の歯が軽くその部分にかりっ、と掛かると樹の身体が震える。顔をくりくりっと捻ってきても未だに服も破れず、肌を突き刺して血が出ないのは男の『噛む』という技術が洗練されているからだろうか。
しかしどんなに相手を傷つけることがない行為であっても、恐怖心というものは拭い切れない。
・・・・・こ、こわい、こわいよっ! ま、まだ私、死にたくないッ!!
暗く、狭いドームの中で巨大な男に12歳の少女が抵抗できず組み伏せられ、肩を噛みつかれているという事実。
樹の視界が涙で歪む。これまでお世話になった人々の顔が、樹がこれまで体験してきた光景が脳裏を駆け抜けていく。コレが走馬灯というやつなのか。
「―――え?」
走馬灯を眺める行為に我を忘れようとした時だ。男の口が樹の型から離れたのだ。ゆっくりと口を離し、腕も脱力するくらいに力を抜いて樹が拘束を逃れる。
ドームの壁際まで下がった樹を追おうとせず、男は静かにその場に腰をおろし、樹を見据える。その瞳は元々赤かったが、少なくとも先ほどまでの獰猛さはそこには無かった。
「すまねェ……」
訛りのある日本語を口にした男が申し訳なさそうに言う。先ほどまでに人を食おうとした勢いはそこにはない。
ある程度暗闇への耐性がついた樹は目の前にいる男の身体を凝視した。
ジャージの上からでもはち切れんばかりに隆起したその筋肉が身体を絞り、鍛え込まれていることを窺わせる。
「ウサギの肉かと思っちまっタ……」
そして身長。
座っているだけでもドームの天井に頭が届きそうなのか、若干首を垂らすように前かがみになった男はかなりの高身長だ。立ち上がれば、恐らく2メートルをゆうに超えるだろう。
しかし、それよりも。
・・・・・この人、いっぱい怪我してる……。
男が着ているジャージは所々が破けていた。小さく裂けた場所もあれば大きく裂けた所もあり、そこから見える皮膚は痣が出来ており、出血をしている箇所もある。何かしらワケありなのか。
人間離れした骨格とその風貌から、容易に日本人ではないという事が理解できたが、筋肉質な外人でありながら樹が違和感を覚えたのは顔が若干痩せこけている事が気になる。
「もしかして……お腹、空いてるんですか?」
「……」
樹の言葉に無言を貫く男。しかし程なくして、小さく唸るような音が男の腹から響く。
「あ……やっぱりお腹―――」
「訊くなッッ」
初めて怒号を飛ばし男に対して樹は頭を悩ませる。ドーム内部は閉塞的で音が響きやすい。今の腹の音を聞かなかったことにしろ、というのが無理な話である。
男は深淵から吐くような溜息の後、
「さっさと帰んなッ 失せろッ」
「ひッ! ご、ごめんなさい……!」
吐き捨てるように言い放つ男の剣幕に樹は慌ててドームから飛び出す。急いで走り出し、公園の出口で振り返るが男は追ってこなかった。
「……」
脳裏に蘇るのは痩せこけた男の顔と全身に残っている無数の傷。痛々しいその姿に胸が締め付けられ、気付けば樹は猛然と自宅のある方角へと走り出していた。
そして経過した時間、僅か30分。
「あ、あの……、これ、良かったら!」
樹は男の居るプレイドームへと戻ってきていた。さらには、男に対して『樹手製のうどん』を差し出している。
「何考えてんだテメェ……」
男の当然のような反応。それもそのはずである。数刻前、男は樹を襲い、組み伏せ、肩を噛むという端から見れば強姦に近い行為を行ってしまった。
言わば、樹は被害者。その相手から食事を与えられるとは全くもって予想外だったのだろう。
樹が男の視線に睨まれながら僅かに身じろぎをして、
「そ、その……困ってそう、だったので……私、勇者部っていうのに所属してて、困ってる人がいたら見過ごせなくて」
「……」
無言の男を前にして、樹は思う。
我ながら何を言っているのだろう、と。
「き、傷もいっぱいしてるから、て、手当もしないと……」
そう言って持ってきたのは家にあった救急箱だ。中には消毒液と絆創膏、包帯と簡単な医療品しか入っていないが。
「いらねェ」
男は頭を掻き、言う。だが、樹は下がらない。例え強く脅されたとしても。
「びょ、病気になっちゃいますよ!」
「いらんッッ!!」
「あぅ……」
男の2回目の拒否の声は最初より強く、相手を寄せ付けないものだった。遂にその声の力強さにビビった樹が涙目で子犬のように身を震わせていると。
「チッーーー」
吐き捨てるような舌打ちをした後、しょうがない、と言った表情で、
「メシと道具は置いてけ、治療くらいは自分でやる……今日だけだ、それ以降は二度と来るんじゃねェ」
そう言いつつ、タッパを受けった男は口の端から一筋の涎を垂らしている事に気付いてはいない。
男がタッパの蓋を開けて、一瞬だが動きが止まる。
「……ステロイドか?」
「す、すてろい、ど?」
男が見つめているのは赤黒いツユに浸っている紫色の麺、うどんだ。香川県民なら一目見れば分かるその料理を男は別の料理と勘違いしているらしい。
もう一度言おう。これは『樹手製のうどん』である。
「ンガァ〜〜〜〜ッッ」
姉がよく持ち歩く大容量のタッパを用意したつもりだったが男は口を大きく開けるとタッパを掲げ、
まるでポテトチップスの残りを余すことなく食すような勢いで熱々のうどんをその口へと流し込む。
・・・・・ひ、一口ッ!? あの量を一口でッッ!?
一瞬にして消えたうどんに驚愕する樹。
男は口に留めたうどんを先ほど樹したように歯で咀嚼している。
モニュ、モニュ……、そんな擬音が聴こえてきそうな男の顔は無表情だ。
一気に口に入れすぎて苦しいとか、そんな感情とは皆無のようである。
元々柔らかいうどんを胃袋へ納めて、ぷはっ、と息を吐いた男は言う。
「やっぱステロイドじゃねェかッ」
・・・・・だからステロイドってなに〜〜〜〜ッッ!!?
◯
「そ、その……」
「あァ?」
物の数秒で終わってしまった食事の後、胡坐をかいて完全にリラックスしている男に恐る恐る口を開く。
「お、お名前は……」
「ハ?」
直後、ぽかんとした表情の男。続く言葉を考えるなら”お前は何を言っているんだ”だろうか。
正直、発言をした樹ですらそれはもっともだと思うことで、本当なら今すぐにでもこの場から逃げ出してしまいたいという気持ちの方がずっと強い。
それでも逃げ出そうとしなかったのは、男の瞳が何かを訴えていたからだ。無機質に樹を捉えるその瞳は”寂しい”というものを感じさせたのである。
だから放っておけなかったのだろうか。この男と関わるのは危険だと分かっているのに、しかし幼い頃に両親を亡くして寂しいと言う感情を樹は知っている。
「わ、私! い、犬吠崎樹って言います!」
先手を打つ。戸惑っていてはこの男が強引に話を終わらせかねないと思った樹の奇策。だが樹が行った強引な自己紹介と言う行為は男の気に障ったのか眉間に皺を寄せ、
「ナニ勝手に自己紹介始めてンだ……ブチ殺すぞ?」
獣の如き眼光で樹を捉え、歯茎を剥きだす程に露わになった歯をガチガチと噛み鳴らす。
「ひぃ!!」
明確な殺意にまたしても腰を引いた樹だが、男の視線がふと別方向へと向けられていた。それは先ほど男が食べつくした樹手製のうどんが入っていたタッパ。
横に置かれた救急箱も一瞥して、
「チッ・・・・・」
イライラを噛みしめ、内に堪っている不毛の怒りをため息とともに吐き捨てる。先ほどの怒気をもった表情から打って変わって、冷静さを取り戻した顔つきである。
「ジャック・ハンマーだ」
「じゃ、じゃっく……さん」
これが勇者、犬吠崎樹と怪物、ジャック・ハンマーの奇妙な関係の始まりだった。
2メートル43センチ、201kgの外国人が中学生女子を押し倒すという事案が発生。ちなみにこのジャックさん、一周間ほど何も食べておらず、幻覚が見えているほどの絶食状態です。
樹が身長148センチ、ジャック243センチ……その差なんと95センチ。なんだコレ。樹側からしたらマジで化け物サイズだよ。
でもジェミニより小さいから……(全高3m)
~いつものキャラ紹介~(簡単にだって言ってるでしょォ)
グラップラーNo.4
ジャック・ハンマー
登場作品(グラップラー刃牙、バキ、範馬刃牙、刃牙道)
年齢:19歳(推定:地下最大トーナメント時)
身長/体重:193/116(トーナメント時) 213/160(バキ:骨延長手術後) 243/201(刃牙道:二度目の骨延長手術後)
カナダ出身のピットファイター。父に地上最強の男、範馬勇次郎を持ち、その息子・範馬刃牙の腹違いの兄である。
父である勇次郎を越える為に『一日に30時間のトレーニング』と致死量を遥かに越えるドーピングにより超人的な肉体を手に入れた男。食事、呼吸、思考などの生命活動維持の全てを『強さの獲得』に費やしており、作中では強くなるという事に対して随一のストイックさを見せる。
最大トーナメント時に弟の刃牙に敗れ、日本に滞在。名医・鎬紅葉による骨延長手術を二度も受け、運動能力をマックスで引き出すことが出来る限界値、2メートル43センチという巨体を獲得している。これほどのストイックさと超人的な肉体を手にしても何故か作中では明確な勝利数は少ない。最大トーナメント時の渋川剛気、マホメド・アライJr戦での勝利を除けばほとんどが黒星。勝利という二文字からは遠い男である。
|戦闘形態(ファイトスタイル)
オーバーワークトレーニングと致死量のドーピングにより獲得した超人的な肉体を生かしたパワーファイトが特徴。極限まで鍛え上げた彼の腹筋は先端が尖った杖を刺しこまれても全く通らず、パワーに関しては尋常じゃない大きさのホッキョクグマを素手で殺害するほどの腕力を持つ。
ルールやモラルを無視した噛みつき(バイティング)を得意とし、作中でも彼の歯によってアキレス腱や上腕二頭筋、耳を齧りとられたグラップラーは多い。その咬筋力はヤシの実を食いちぎり、口の中で釘を結ぶことが出来る。
〜ゆゆゆい世界にて〜
多分、この世界でもそんなに勝てない。
転移後、バーテックスを食べても美味しくなかったので飽きてからは何も食べなかった。一週間空腹で彷徨い続け、幻覚が見える極限状態になる。公園で身を隠していたら旨そうなウサギの肉が来たと思って食べようとしたら中学生女子だった。
樹の出してくる料理をステロイドかそれに類似した増強剤だと勘違いしている。