ゆゆ刃牙~漢達のきらめきッッ~   作:バロックス(駄犬

2 / 29
――――『さくらんぼキック』。
 恐らく私がこの作品を書くまでに至ったニコニMAD。
 この動画のせいでほとんどの美少女アニメにグラップラー達を混ぜ合わせようという危ない思考が誕生した。

 この作品の若葉様は弄られることが多いです。

???「イジラれすぎて涙目になる、”涙目若葉ちゃん”ですねッッ」(恍惚)


幕間檄
~誤解を解く~


 

―――――空手家、愚地独歩、55歳。

 

 ”武神”、”虎殺し”という異名を持つ、百戦錬磨の武人。 

 

 勇者部部室で彼は、困惑していた。

 空手部の顧問であり、勇者部の指導役も承った独歩は今――――、

 

 

 

 

「――――愚地・・・・独歩ォォォォオオオッッッ!!!」

 

 

 

 

 変身して怒号をかます東郷美森に銃口を突きつけられていた。 

 全ての始まりは2時間ほど前。

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

 勇者部部室で漏れるため息は東郷美森のものだ。 

 自身の得意分野であるパソコンでの資料作りを行っている最中だが、いつもならあらゆる計算式とタイピングを駆使して自分の仕事の半分を終わらせている時間が既に経っている筈なのに、殆ど進んでいなかったのだ。

 

「どうしたの~、わっしー」

 

「あら、そのっち」

 

 美森を気遣うように、同じ部員であり、小学時代からの友人でもある乃木園子が美森の顔を覗いていた。

 

「いつの間にいたの・・・・?」

 

「え~、ずっといたよ~? 気付かないなんてどうしたのわっしー」

 

 間の抜けた声でそう答える園子に美森は申し訳なく思う。 今の今まで、部室内に居るのは自分だけだと思っていたからだ。

 

「何か考えごと~?」

 

「うん・・・・」

 

「ドッポちゃんだね~?」

 

 彼の呼び名が既に浸透しつつあることに驚きつつ、的を的確に射た園子の言葉に、美森は頷く。 やはり彼女はどこか抜けているようではいるが、察しが鋭い。 

 

 

 美森が旧友だということもあるのだが。

 

 

「さすがね、そのっち」

 

「ううん・・・わっしーが疑問に思うのも当然だよ。 多分、勇者部のみんながそう思ってる」

 

 讃州中学勇者部に現れた武人、愚地独歩。 その正体をいまだに美森たちは図れずにいた。

 

 勇者以外で、しかも男性で、単騎で星屑を素手で撃破するという知らせは彼女たちをサポートしている大赦にも届いたらしい。

 

 独歩に関する全ての出来事が大赦の想定外であり、前例もない独歩の出現に勇者達に伝えられたメッセージは、

 

 

『現在調査中、十分に注意されたし』

 

というものだった。

 

 

「あの時は友奈ちゃんの前もあって、深く問い詰められなかったけど・・・・、

やっぱり私、まだ造反神側の刺客の考え、捨てきれないのよ」

 

 独歩は勇者ではない。 まず、この場所が壁に覆われた四国であるということも知らなかった。 来た場所は東京だ、と言っていたのだが、この世界の事をどれくらい知っているのかという若葉の質問に

 

 

『バーテックス? ゾウハンシン? ユウシャ?――――なんでェそりゃァ、

オジサンにそんな良くわからねェ横文字つかうんじゃねェや若坊(わかぼう)

 

 と、完全に美森たちがいる世界とは違う世界から来たということになっている。 ちなみに若葉はその呼び方をされ続けて一回キレた。

 

 

「バーテックスも勇者も存在しない、そんな世界が・・・・」

 

「あるんだねぇ~」

 

 そんな戦いとは無縁で空手家の独歩がどうしてこの世界に来たのかが一番の謎だった。

 

「でも、悪い人じゃないと思うんだ~。 ちゃんと、ゆーゆ達が特訓させてもらっているわけだし」

 

「それが問題なのよッッ」

 

 声色を変えた美森が園子の肩を鷲掴んだ。

 華奢な細腕とは思えない握力に園子は身を震わせる。

 

 

「友奈ちゃんが最近勇者部の活動に顔を出さなくなっちゃって・・・、

あの男、純粋な友奈ちゃんの気持ちを利用して、

その・・・・い、いいい厭らしい事をしているに違いないわッッ」

 

 

「ドッポちゃん、奥さんいるって言ってたからそれはないんじゃないかな~、考え過ぎだよ、わっしー」

 

 美森の行き過ぎた愛情故にその目が光を失っていることに園子は苦笑い。 空手部の稽古に行き始めては勇者部の活動が始まるまでに美森と友奈は離れっぱなしなのだ。

 

 時間にしてだいたい2時間。 

 たかが1時間、されど2時間。 美森にとって体感時間は1日と同義だ。

 

「あぁ・・・友奈ちゃん、どうか無事に帰ってきて・・・! もし何かあったら、私が何もかも撃ち抜いてみせるから!」

 

「独歩ちゃんを撃っちゃ駄目だよ~、わっしー」

 

「ただいまー!」

 

 そんな美森の心配をよそに、勢いよく開かれる扉。 快活な笑顔を浮かべた結城友奈であった。

 

「友奈ちゃん! 戻ってきたのね!? 大丈夫!?」

 

「え? なにが?」

 

 きょとんとする友奈に美森が慌てて駆け寄ると、友奈の身体を触り始めた。

 

「あの卑劣漢に何か触られなかった? 腕とか、脚とか、顔とか、頭とかッッ」

 

 美森の手が友奈の顔、肩、腕、と順序にして下がるように、ソフトタッチで確認していく。

 友人であっても、触ってくる手の感触にもどかしさを感じた友奈は身をよじりながら、

 

「ちょ、ちょっと東郷さん・・・く、くすぐったいよ~」

 

「ダメよ、私がすみずみまで確認して、傷物にされてないか確信を得るまでは安心できないッ 

友奈ちゃん、脱いでッッ」

 

「うわー、わっしーが壊れたー」

 

 多分、樹か夏凛がこの場にいたら口を揃えて言うだろう”それはもとからだ”、と。

 

 

「――――ッッッ!! 友奈ちゃん、その手・・・」

 

 美森が目を見開く、友奈の両手に白い包帯が巻かれていたのに気付いたのだ。

 友奈は慌ててその手を後ろに隠し、

 

「あ、あわわあわ! ち、違うよコレ! ぎゅ、牛鬼が噛んできて!」

 

「あの歯が見当たらない牛鬼に噛まれて、こんな傷だらけの手にはならないわ!

―――――やっぱりあの卑劣漢、よくも友奈ちゃんを傷物にッッ」

 

 園子が見た時、美森の目が完全に獲物を狩るソレだったのは言うまでもない。

 

「ゆーゆ。 言いにくい事なのかもしれないけれど、ちゃんと話して? 勇者部5か条一つ、”悩んだら相談”でしょ?」

 

 園子も美森ほど過剰ではないにしろ、友奈の事を仲間として案じていた。 勇者部で決めた約束事を彼女に思い出させるように聞かせる事で園子は話しやすいように誘導したのだが。

 

 

「あ、あのね・・・! 東郷さんも、そのちゃんも、ちゃんと聞いてほし――――」

 

 友奈がその言葉を言い切る前に、

 

「おーい、邪魔するぜェ・・・風ちゃんいるかいー」

 

 全ての元凶とされる男、愚地独歩が部室へと入ってきたのだ。

 

 

 凍りつく空間。 その場にいた独歩以外の者が思ったことだろう。

 

 

――――ヤバい。

 

 

「・・・・・・」

 

 冷気を纏った少女が、友奈の背後から顔を恨めしく出現させる。 それは勿論、美森のもので、

 

 

「愚地・・・独歩ォォォォオオオッッッ!!!」

 

 

 即座に勇者のアプリを起動させ、コンマの速度で変身をした美森が独歩の眼前に銃を構え、言い放つ。

 

 

 

「―――――わ た し が 相 手 だッッ」

 

 

 

「エッ、エエ~~~~~~~ッッッ!?」

 

 

 鬼の形相で睨まれた独歩、困惑しながらも、しっかりと前羽の構えを取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あァ!? 束ねた竹に貫手噛ましてたら怪我したァ!?」

 

 勇者部部室内で独歩の怒りにも似た声が木霊する。

 理由を説明した友奈は独歩のあまりの声の張に身を震わせ、

 

「ご、ごめんなさい・・・でも、この練習すれば、独歩さんみたいにバーテックスをチョップで斬れるかなぁって・・・・」

 

 しどろもどろな返しに、美森が割って入る。 もちろん、愛銃である(しろがね)を独歩に向けたままで。

 

「先生、やめてください。 友奈ちゃんが脅えてしまっていますッッ」

 

「わっしーも銃おろそうよ~」

 

 園子が諭すも美森はスタンバイガンを崩すことなく、その銃の照準はまっすぐに独歩の額を捉えている。

 

 このまま引き金を引けば、独歩の顔面が跡形もなく吹き跳ぶだろう。

 

「お前ェらには絶対使わせねェように倉庫に隠しておいたハズだぁ、ってことは友奈ちゃん・・・まさか」

 

「は、はい・・・・勝手に探して外で練習を・・・・」

 

「オイオイオイ、勘弁してくれ・・・、100パーセント怪我するからやらせないようにしてたのによォ」

 

 髪のない頭を掻きながら独歩が嘆く。 その様子を見た園子が頭にクエスチョンマークを浮かばせては、独歩に対して質問をぶつける。

 

「独歩ちゃん、束ねた竹に貫手って?」

 

 悲壮感溢れる独歩は腕を組み、園子の問いに答える。

 

「文字通り、紐で束ねた竹に思いっきり”貫手”を繰り出す稽古があンだけどよォ・・・

 

 俺が昔やってたヤツでな、コイツがほんとしんどくてしんどくて、

最初は手の皮が剥けるわ、血が出るわ、突き指、脱臼、骨折って当たり前のヒデー練習なワケ」

 

 

 想像をしただけでも痛そうだ、と誰もが思う。 ちなみに、マジで痛いらしい。

 

 

「ソイツを何年も続けてるとよォ―――」

 

 3人の前に、独歩の拳が差し出される。

 

「こうなっちまうんだワ」

 

 

 友奈たちの白くて薄い手とまるで違う、足の裏の如き厚い皮で出来た拳。

 それは長年の痛みを淘汰し、辿り着いた境地である武人の拳という証。

 手にできた無数の傷が物語る、その修行の壮絶さ。

 

 

 故に会得したのは、星屑をも両断する程の威力を持った手刀だ。

 

 

「―――俺も今は指導者だ。 生徒に無茶な練習はさせられねェ、ましてや今の時代、お前らみたいな可愛い女の子にそんな練習させてみろ。 

 あとから親とかPTAからウッセー文句がくんだよッ それをお前、人の気も知らねェで!!」

 

「ご、ごめんなさい・・・そ、その・・・・ごめんなさい・・・」

 

「ほら~、わっしーも。 独歩ちゃん、ちゃんとゆーゆのこと考えてたんだからさ~、銃降ろして~」

 

 園子の言葉に、先ほどの人を殺める勢いを持った美森はどこへやら。 それまでの自分の行いを恥じるように彼女は頭を下げ、

 

「とんでもない誤解をしてしまいした先生・・・申し訳ありません・・・・」

 

「俺も配慮が足りなかったからな・・・次からは簡単に持ち出せないようにしておく。 あと友奈ちゃん――――」

 

「は、はいぃ!」

 

「手が治るまで練習禁止!」

 

「で、ですよね・・・・」

 

 あたりまえだ、と独歩は続ける。

 

「そんな手で練習したら怪我悪くなっちまうだろぉ? ―――その代わり」

 

 突然、独歩が構えた。 

 独歩の構え、両の手を広げ、自身の眼前に拳一つ分の空きをつくった構えを、”前羽の構え”という。

 

「―――別の技、教えてやるからよォ。 この構えから派生する”廻し受け”ってヤツよォ」

 

「マ・ワ・シ・ウ・ケ・・・・?」

 

 

 ああ、と独歩の構えていた腕がゆっくりと円を描くように動き出す。

 

「オイラが得意とする技の一つよォ・・・コイツをマスター出来りゃァ―――――、矢でも鉄砲でも火炎放射器、なんでも防げるぜ」

 

「ま、マジですか先生!」

 

「マジよ」

 

 人の手の身で、そんな芸当ができるのかと信じられない友奈だが、実際に独歩は元の世界でこの廻し受けで火炎放射器による攻撃を防いでいる。

 

「型の練習くらいなら怪我することはねェからよ・・・・。 空手の基本の型全てを1日1000本、それを数十年続けることができるバカなら誰でもできる」

 

 これは独歩個人としての弁ではあるが。

 

「や、やります! 結城友奈! 廻し受け、絶対会得して見せます! 押忍ッッ!!」 

 

「・・・・」

 

 伝授された技を懸命に会得すると意気込む友奈を見て、その一方で一人浮かない顔をしていた美森。

 

「わっし~、もう独歩ちゃんの事で心配な事はないでしょ~」

 

「そのっち・・・・」

 

 園子が優しく言うが、美森は思わず独歩から視線を外して、

 

「やっぱり、それでも不安よ・・・愚地先生の事は信用しているのだけれども――――」

 

 仕方ないなぁ、と肩を竦め、園子はため息をついている美森に気付かないように友奈を呼び寄せる。

 

「ゆーゆ、ゆーゆ」

 

「なぁに、そのちゃん」

 

「あのね、あのね・・・・わっしーに――――」

 

 ごそごそ、と友奈に耳打ちをする園子。 内容を友奈は理解していなかったが、彼女は頷いて、

 

「東郷さんッ!」

 

「は、はい!? ど、どうしたの友奈ちゃん」

 

 いつも浮かべている朗らかな笑みとは打って変わって凛々しい表情の友奈に見つめられるという突然の事に、面を食らう美森。 

 

「私、ぜったい強くなるよ! 強くなって、東郷さんを守護ってみせるからね!」

 

 友奈の手が美森の手を握る。 優しい彼女の温もりは例え包帯越しであっても充分な程、美森に伝わる物で、 

 

「~~~~~~ッッッ!!???」

 

 瞬時に頬を染めては、友奈の顔を凝視できなくなった美森が視線を外して、

 

「もうっ、ずるいわ友奈ちゃん・・・そんなこと言われたら、なんでも許したくなっちゃう」

 

 お返しとばかりに、友奈が痛くならない程度に優しく握り返す。 

 友奈も美森に笑顔が戻って、それを見ていた園子が、

 

「うんうん、イイネェ。 御馳走様でしたァ」

 

「・・・・」

 

 メモ帳をぱたん、としまった園子が感謝するように両手を合わせたのを見て、独歩は言う。

 

「なかなかあの子の扱いが上手いもんじゃねェかァ」

 

「えへへへ・・・親友ですので~」

 

 

 どんな親友だ、と内心で突っ込んだ独歩だが、深くは考えないようにする。 しかし、この微笑ましい光景をみていると、胸ヤケしそうになってくるのは何故だろうか。

 そう思っていた矢先、友奈が思い出したかのようにこちらを見た。

 

「そう言えば独歩ちゃん、独歩ちゃんの仲間の達人で・・・・武器を使ってる人はいるの?」

 

「なんでェ突然」

 

「あのね! 勇者部には色んな武器を使ってる人が居て・・・独歩ちゃんの知ってる人で武器を自在に操るような人っていないのかって思って」

 

 たしかに、と相槌を打ったのは美森だ。

 

「友奈ちゃんたちのように素手で戦う人ばかりが勇者部じゃありませんし・・・」

 

 美森の言う意見はもっともで、素手戦闘をする友奈たちを除いた勇者はそれぞれ専用の武器を持っている。

 刀、槍、弓、大鎌、二刀、斧、ヌンチャク、銃、大剣、盾、ボウガン、何でもぶった切るエグイワイヤーなど。

 

 

 それぞれが独歩の教えを100パーセント生かせるとは限らない。 その武器を多用できる達人がいないか、その人物から教えて貰えば、勇者部は確実に強くなるだろう、と考えたのだ。

 

 

(武器使いねェ・・・)

 

 

 ほとんどが素手で戦うような連中しかいない気がして独歩は再び頭を掻く。 どちらかといえば、戦ってきた敵側の方が武器を使うことに長けた者は多かった。

 

 と、ここで独歩は思い出す。 そう言えば、身近に武器を使ったりしてた格闘家がいた、と。

 

 

「―――あぁ、いるなァ、そういやァ・・・ウン、二人ほど」

 

 

 

 

 

――――中国拳法の使い手と、柔術の使い手の姿を独歩は脳裏に浮かべた。

 

 

 

 

 

 

第三話~誤解を解くッッ~




 例によって本篇のタイトルから。(花結いの章のだったかは覚えていない)
ちなみに独歩の廻し受けは東郷さんのキルショットすらも弾きます(弾丸じゃなくて光弾だからイケるはず)。

節分の時期までには勇次郎出したいなァ。そんな事を想いながら、私は恵方巻きを食べる(気づいたら節分が明日だった件)。

 やっぱ東郷さんはこうでなくちゃ。
 勇者部のみんなを一気に出すと物語が混乱するので4~5人に絞ってやってます。
『俺の推し勇者がいねぇじゃねェかオォン!?』← 許してください、何でもしますからッ!!


 次回、中国拳法のヤベー奴。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。