板垣惠介氏による『グラップラーバキ』のリメイク回、チャンピオンでやっていたので見てきました。昔のシーンを今の作画で描くと、キャラみんな変わったなぁって思いました。
特に末堂さん、あんた変わりすぎです。
気づいたらこの作品もいつの間にか評価がそれなりに付いていて赤バーになってたので驚き。ありがとうございます。
"勇者対グラップラー全面戦争”
~ルールその1~戦う日時は指定しない。
~ルールその2~出会ったら樹海だろうが、街のど真ん中だろうが、女を抱いている時だろうが問答無用で対決しなければならない。
「神心会……」
「オウよ」
路地裏にて対峙した男と女。
加藤清澄の言葉に思い当たる事があったのか、高嶋友奈が呟く。
「もしかして独歩ちゃんの居た道場の……じゃあお兄さんは独歩ちゃんの門下生なんだ?」
「その通り……ずーっと館長の背中を追いかけてた一途な男の子ってヤツなのよ、オレ」
加藤は冗談めいた、それでいて本気の想いを語る。
喧嘩空手を信条とした彼のファイティングスタイルは並の武道家では歯が立たない。
しかし神心会のデンジャラスライオンと呼ばれ、腕に磨きを掛けたとしても神心会館長、愚知独歩の足元にも及ばない。
強き者を敬い、慕い、追いかける。
男として惹かれる魅力をもつ独歩を目標にするのは加藤にとって当然なのだろう。
「そうなんだ……ふーん」
高嶋がそう頷いたのを見て、加藤がニヤリと笑う。
右手にポケットを突っ込んだまま、彼は立ち尽くしたまま少女との距離を測る。
「まぁ、つまり何が言いてェかってな?」
5メートルか6メートルか、少女との間合いを推測した彼は―――、
ポケットの中に隠し持っていたモノを高嶋へと投げつけた。
「ッッッ!? 砂ッ!?」
掌に乗せられ投げたのは一握りの砂だった。
乾燥し、細かく砕かれていた砂は高嶋の前方を覆ってはその視界を塞がせる。
「――――俺がイチバン、師匠想いッッッ」
一瞬だが目暗ましの役割を果たした砂煙の中から加藤清澄が飛び出した。
まるでロケットかのような助走で速度を上げた加藤が、
飛び上がり、前方への運動エネルギーを消費しないまま、
高嶋と空いていた距離を一瞬にして縮めている。
「キャオラァァァッッ!!!」
全体重を乗せた加藤の飛び蹴り。
狙いは少女の顔面。
槍の如き鋭利さを持つ、右足側頭部による蹴りが高嶋の顔面に放たれる。
次の瞬間どっ、と。
まるでサンドバッグを金属バットで殴ったかのような鈍い音。
高嶋の一瞬だが身体が浮き、その後は地面を引きずるように加藤との距離を強引に開かせた。
高嶋が蹴られ、その体が移動した距離約5メートル。
単純な男と女の
武闘家として洗練された加藤の蹴りの威力を語るには十分な距離だ。
だが不思議と、加藤の表情は晴れなかった。
不意打ちに加え、全力の飛び蹴りを見まわせたのにも関わらず確かな”手ごたえ”を感じることが出来なかったからである。
「……いったいなぁ、もう~」
少女、高嶋のケロッとした声。
まるで加藤の蹴りをモノともしないような声は快活そのものである。
彼女の顔面、通学用のカバンが盾の如く展開されていた。
「うわ、ちょっとまだ腕がびりびりする……湿布張れば治るかな」
加藤の蹴りは片手とカバンによる防御によって完全に防がれていた。
「……やるねェ、お嬢ちゃん」
声色を崩さずに呟いた加藤。
しかしその実、彼の表情には小さく驚きがあった。
常人であれば片腕を使用不可能にするレベルのダメージを負っていてもおかしく無い加藤の蹴り。
それをカバン越しとはいえ、”片手で”防いだ高嶋に驚愕を隠せない。
「一番弟子かァ……それは聞き捨てならないよ、お兄さん」
加藤の蹴りを防いだカバンを下し、高嶋が呟く。
「この世界での独歩ちゃんの一番弟子は……私だよ」
高嶋がスカートのポケットからスマホを取り出す。
それを見て加藤は思うのだ。
あれが勇者達が持っているスマホ。
勇者はアレを用いて誰もが変身する。
あの少女もこれから変身するのだろう。
だがアレが無ければ変身できない。
結論を脳内で直感的に導き出した加藤の動きは速かった。
変身などさせるものか。
その意志の表れのように顔には余裕はなく、コンクリートの地面を蹴り一気に距離を詰める。
自分よりも年下の、ひ弱そうな少女を痛めつけることに躊躇いを持たない。
すべて加藤は聞いていた。
この世界に連れてこられた際に目の前で佇んでいた男から。
バーテックスという異形の存在と戦う少女、勇者。
その拳は地を容易く叩き割り、
その脚は空を駆けるということも、
どうやって勇者が力を得るのかも。
勇次郎はいつものように嗤っていた。
まるで自慢の娘を紹介するように嬉々とした表情で。
加藤の師である独歩を、
中国の頂点の郭海王を、
彼の息子である刃牙を、
武の道を行くものならば耳にする強者たちを上回るほどの実力を持つ鬼、範馬勇次郎が興味津々。
一体、何が起きているのかと加藤自身疑ったほどだ。
・・・・・アイツ、時々キャラおかしくなってワケわかんねぇ時があるけどよ。
それを確かめるための不意を突いての初撃。
勇者としての力量を図るための堂々とした奇襲を用いた。
加藤は期待する。
あの勇次郎が一目置く奴なら、これくらいの攻撃を躱してくれるのだろう。
そして高嶋の反応は加藤の期待に応えるものだった。
同時に、加藤の表情から笑みが消えた。
確かだ。
目の前の高嶋友奈という少女は、自身が全力を出すに足りる
「チィィィイッッ!!」
自身の太い筋肉の幹をナイフと見立て、加藤の手刀が振り下ろされる。
右手にスマホ、左手で操作しようとする友奈へと。
友奈の姿はまだ制服姿のままだ。
変身は完了していない。
友奈が勇者へと変身する前に、加藤の手刀の方が僅かに早い。
勝った。そう思った加藤は脳裏に勝利の二文字を浮かべる。
勝った、勝利。
それは全て、加藤だけが
加藤の目前、高嶋の手の中にあるのは、
既に受け止められた加藤の手刀だった。
・・・・・オイオイ、女が出していい腕力じゃねぇって、コレ。
握られる加藤の右腕。
それが高嶋が腕を引き絞るように力籠めると骨が軋む音が聞こえる。
そして加藤は気づく。
自身の腕を握る高嶋の手に、先ほどまでなかった『手甲』が装着されていた事に。
・・・・・まだだッ まだッ!!
繰り出す手は連撃。
右膝による蹴りを高嶋の腹部目掛けて。
しかし、その膝は狙い通りに届くことなく高嶋の左手によって止められてた。
「~~~ッッッ!!?」
「……」
呆気に取られる加藤とは対照的に高嶋は無言であった。
高嶋の手は加藤の膝蹴りを予測していたかのように膝の出鼻、初動を抑えている。
動き出しを止められていては威力も半減する。
・・・・・し、しかもコレって館長の……
手刀を右手で、下方から迫る膝蹴りを左手で抑えた友奈の姿にある男の姿を幻視した。
天地上下の構え。
相手の攻撃を誘い受け、攻めにも転じられる攻守を備えた型。
武神・愚知独歩の構えであった。
まるで本人がその場にいるかのような完璧な現身。
だからだろうか、加藤は高嶋の次の行動への対処が遅れてしまった。
瞬間、ごりッと。
加藤の顔面を高嶋の拳が抉った。
右ストレートが加藤の右頬を駆け抜け、80キロ強あるであろう男の身体が後方へと吹っ飛ばされる。
まるでダンプカーに撥ねられたかのような衝撃が駆け抜ける。
地面を二転三転し、打たれた顔面を擦りながら加藤は激痛に耐えて身を起こす。
「でたらめ、すぎ、ネェか……ッ?」
湧き上がる闘志とは別に肉体にはダメージが残っていた。
高嶋の打拳が引き起こす脳震盪。
まるで脳味噌を直接鷲掴みされてシェイクされたかのように脳へ与えたダメージは加藤の現在の視界が証明する。
地面が起き、
空間が歪み、
高嶋の等身が変化する。
「……ひゅう!!」
絶望的な状況であっても加藤は思わず笑みを零す。
目の前で佇む高嶋の視線が満身創痍の加藤を逃さないかのように見つめている。
「お兄さん、私ね……大切な人を守りたいんだ」
眩い光と共に勇者服への変身を完了させ、
天地上下の構えのまま、高嶋は呟く。
「この世界で出会った大切な、大切な友達を…私の手で。
独歩ちゃん達の世界の人がそれを邪魔するっていうなら――――絶対に私は容赦はしない」
熱血の塊のような熱い高嶋の視線。
加藤の胸を叩く何かがあった。
尊敬なのか、畏怖なのか…どちらか分からない。
だが加藤は不思議と圧倒的不利な状況であるにも関わらず不敵な笑みを浮かべていた。
それどころか、ますます闘志が蘇ってきたではないか。
・・・・・報いたい。この女の強さに。
ドリアン海王と戦った時とは違う『強さ』。
真っ向から挑んでも打ち返される圧倒的な『力』。
その強さに、全身全霊を持て応えたいと思う。
構え、肩で息をしながらも加藤は山桜の勇者を見据える。
見据えた先に加藤清澄は少女にある男の姿を浮かばせた。
愚知独歩ではなく、浮かび上がってきたその姿は――――、
「
幼き少女の醸し出す闘気はまさしく地上最強の生物が纏うソレ。
暴力の化身、範馬勇次郎のものであった。
「オオ…オオォォオッッ!!」
生気を取り戻した獣の如き雄たけびが路地裏内に木霊する。
まるで死刑囚シコルスキーが地下闘技場でやったような、
自らを奮い立たせるような叫び。
加藤は真っすぐ高嶋へと駆けだした。
身体は歓喜しているのだ。
偽物かもしれない、けどオーガのような、若しくは同等の存在と相対出来ることが。
圧倒的『武』に対して己の『武』をぶつけられることが。
「オーガッッッ 貴様をッッ 出し抜くッッ」
「私は高嶋だよ……?」
極度な緊張感とアドレナリンが引き起こした幻覚。
もう高嶋の姿は範馬勇次郎にしか見えていなかった。
「ラァッッ」
地面を飛び、気迫の籠った二本の指を高嶋へ繰り出す。
相手の目玉を抉り出すことを前提とした『目つぶし』だ。
「勇者ァ…ヘーッドッッ!!」
しかし、ぱきっと。
何かがへし折れる音がする。
加藤の指の骨が折れた音だ。
加藤の目潰しは、高嶋が突き出した頭突きの額によって防がれていた。
頭蓋と指二本ならば、衝突した際どちらが先に砕けるなど知れている。
骨折の痛みなど気に留めることなく加藤の空中回し蹴りが炸裂する。
「勇者ァ……キーックッッ!!」
大鎌の如き加藤の蹴りが右側面から迫ると同時、高嶋の右足が飛んできた。
加藤の攻撃を予測したかのような反応速度。
左足を軸に地面に立ち、宙を飛ぶ加藤の顔面目掛けて繰り出される高嶋の
刹那、加藤は思うのである。
・・・・・なんて綺麗な回し蹴りだよ。
打点は高く、
地面の力を100%自身の力へと変換する、
美しい弧を描く、理想的な蹴り。
何百万回と繰り返されたかのような、
美と強さが集約されたかのような回し蹴りに思わず見惚れていた。
だからだろうか。
高嶋の蹴りが加藤の顔面を抉った時、感じた痛みなどは一瞬の事で、
白濁とした無の世界に意識が落ちるのを感じながら、こんな事を思うのである。
・・・・・あれぇ、なんでかなぁ……最ッ高にぃ、気持ちがイイや……。
小細工、力押し、
あらゆる技を用いて挑んだ自身の力を跳ね除ける高嶋友奈の真っすぐさ。
その真っすぐな心に全力を以って応えれた満足感が、加藤に敗北という言葉を受け入れさせていた。
・・・・・次は、負けねぇ。絶対に。
ホワイトアウトする意識とともに、二度と巡ってこないであろう再戦への熱意を胸に抱きながら。
加藤の身体は神樹が作り出したこの世界から消えていったのだった。
ちなみに高嶋はその後、何事もなかったかのように仲間たちが待つ寮へと帰宅した。
私の描く高嶋ちゃんはグラップラー化します。
やっぱ山本戦とは違って拳同士のバトルだから書きやすい。
この世界に残していてもアレなので、加藤くんには退場してもらいました。
次回は赤嶺さんと雪花さんの絡みを少々。
例の如く、私の描く赤嶺さんはドSでレズなので何も起きないはずがなく……。
何をやるか、っていえば、ゆゆゆい本篇でもしかしたらやってくれるのかなーって自分が妄想してたネタです。
バキ世界の住民解説
身長/体重/年齢/不明
加藤清澄(かとうきよすみ)
・空手道神心会に所属する超実践空手家で神心会のデンジャラスライオンの異名を持つ。
超実践空手とはその名の通り、目突きや急所突きといった危険な技を使用する喧嘩空手である。基本、戦いに利用できるものはなんでも使う派。
師である独歩を尊敬しており、一番の師匠想いを自称している。
サンドバッグを切り裂いたら中から瀕死の加藤が出てくる。
久しぶりの投稿なので感想や意見を頂けると次回の投稿の感覚が短くなるかもです。