ゆゆ刃牙~漢達のきらめきッッ~   作:バロックス(駄犬

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沢山のグラップラー諸君(読者)のお陰で無事にお気に入り100突破、日刊ランキングにも載ることが出来ました。感謝感激です。
まぁ、一瞬だったんですけどね!しかも下から数えた方が速い!


漸く、この人出せるんなだなって思ったらすぐ出来上がりました。


第二十三話〜花山薫(被害者)〜

――――とあるコンビニにて。

 

 

「い、いらっしゃいませ……」

 

 レジにて業務を行っていた一人の主婦・37歳の女性は目の前の光景に一瞬だけ言い淀み、思わず息を呑んだ。

 女性の視線は上へと向けられている。自身の身長が158センチと小柄な方なのは理解していた。

 だからこのパートで少しでも170センチ後半の者がやってきたら視線が上へと移るのは仕方がないことだと思っていた。

 

 その前提条件を無視するほどの出来事が店員の目の前で起きていた。

 目の前に現れたのは男だ。それも大柄の。

 2メートルまで届くまではないかという白スーツの巨躯は店内で一際存在感を漂させていた。

 

 

 ただ長身という訳ではない。 

 その男はデカく、太い。

 顔も。

 肩も。

 手も。

 腕も。

 銅も。

 脚も。

 

 とにかく全てが。

 恐らく脂肪ではない、デブではないことは明白である。

 明らかに発達した筋肉の塊。

 

 

 

 幸か不幸か、店内には店員を除いて他の客というのは存在しない。

 故に異質な雰囲気を纏う男の動きを店員は目で追わざるを得なかった。

 

 

 男は向かった酒のコーナーで動きを止め、

 扉を開けると、もともとこれを買いに来ていたように淀みの無い動きで腕を伸ばして目当ての物を手に取る。

 

 

「……」

 

 

 時間にして十数秒程のペースで歩いた男は無言でレジに差し出されたソレを店員はマジマジと見つめる。

 『WILDTERKY』と銘が打たれた酒瓶は500mlほどの容量だが、

 

 

(この人の手…デカッ つーか、なにこのキズッッ!!?)

 

 

 酒瓶と男の手を比較すると大の大人が握ってもその掌で覆い貸せない瓶をいとも簡単に隠すことができるその手は余りにもデカい。

 そして自然と、男の手全体に広がっている(キズ)にも目が行く。

 

 

 ナイフとかで誤って切ったにしては余りにも多すぎる。

 果物ナイフなんて目じゃない太さと、それでいて長い切創が目立つ。

 明らかに長物で斬られた、ような。

 それこそ、日本刀のような鋭利なもので。

 

 

 極めつけは顔だろう。

 額から顎に掛けて一際目立つ切創、そして静かにこちらを見つめる細く開かれている瞳は見るモノ全てを射竦める。

 それは女性とて例外ではなかった。

 

 

(や、ヤクザ……ッ この人ゼッタイにヤクザだッッッ)

 

 

 生命の危機を感じた女性は歯を数度打ち鳴らした。

 明らかな人外観を有したその人物にこれからナニをされるかなど、そんな被害妄想をしながら女性は恐怖に怯える。

 しかし、

 

 

(……えッ!? 金!?しかも万札!?)

 

 

 直後、店員の目の前に置かれた一枚の万札に思わず呆然とする。

 万札を手に取っては、それが偽札ではないかと確認までして。

 

 

「……ほ、ホンモノだ、よね?」

「……」

 

 

 本人を前にしてなるべく小声で呟く女性を他所に、男は店員が金を受け取ったのを確認して酒瓶を手に取ると静かに歩き出した。

 

 

「あ…っ!お、お客さん、おつり! おつり忘れてますよ!」

 

 

 身をレジ席から晒して、男に呼び掛ける頃には男は既に店の外だった。

 偶然、男とすれ違っていく者たちはその際に、

 

 

「うっわスゲェ顔!! 地図みてェッッ!!」

「バカッッ!!タカヒロやめなさいッッ」

「でもだってホラ―――」

 

 

 親子だろうか。

 大男の顔を堂々と指さして見せた息子の口を母親が焦燥に駆られた顔で慌てて塞いでいた。

 

 

 いずれは店の自動ドアで否応なしに見れなくなる白スーツの、その大きな背中を見て店員は思うのである。

 

 

 

 

 

――――この香川県讃州市のコンビニで、スゴイモノを見た、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男の名を、花山薫(はなやまかおる)という。

 東京の夜の街にて知らぬ者のいない、漢の中の漢の名だ。

 

 

 五代目藤木組系暴力団花山組二代目組長。

 一つの組を預かるヤクザの長である。

 

 

 

 畏れ多くも戦いを挑もうという物は少なく、彼の縄張りで御法渡な売りは許されないと言われるほどだ。

 藤木組の中で確実にその勢力を伸ばし、頭角を現した花山組の名は全国に知れ渡っている。

 

 

 

――――だが、それも少し前までの話。

 

 

 

 彼、花山薫を含めた『花山組』が事務所ごと、この良くわからない世界に連れてこられたのはつい先日の事だ。

 

 

 欠伸が出るほどのどかで、夜のネオン街とは無縁のような街の雰囲気を花山は知らない。

 構成員の一人、田中KENが偵察に出ていったところ、

 

 

『た、大将ッッッ この近辺に他の組の名前なんて一つもありませんぜッッッ』

『しかもここ東京じゃねぇッス! 四国の香川県ですッッ!』

『うどん、うどん食いましょうぜッッ』

 

 

 などという驚愕の事実が。

 過去に売上を競っていた他勢力がこぞって存在しない。

 それだけではない、この世界はあまりにも安定している。

 街でクスリを売りさばく者や、

 売春をしようとする業者や、

 明らかに違法なキャッチをする者が見当たらない。

 

 

 夜の歌舞伎町のような、危険を孕んだ夜の街独特の雰囲気という物が感じられない世界だった。

 それが花山がこの世界は自分たちの知る世界ではないと気づくことが出来た理由だろう。

 

 

 当然、自分たちが知らない土地へ突然と飛ばされたという事実に花山組構成員達も動揺を隠せなかった。

 家族を置いてきた者もいる。

 今日、家のカギを開けたままの馬鹿もいる。

 パチンコ屋の景品交換時間に間に合わないと騒ぐ阿呆もいる。

 

 

 誰もが焦燥に駆られる中、花山はこれに動じず木崎に指示を飛ばしすぐさま組員を再統制。

 一時間程で花山組は冷静さを取り戻したのである。

 

 異世界に飛ばされても、この図太さ。

 花山はどこに行っても花山だ。

 いち組を任されるものとして、これほど適任なものはいないだろう。

 

 

 花山組の現状はさておき、一本の酒瓶を買った花山は部下を近くに置かず一人の探索を継続するのである。

 その最中、

 

 

「……またか」

 

 

 辺りを見渡して、そう呟く花山の周囲は止まっていた。(・・・・・・)

 先ほど感じていた風、

 通り過ぎていく人と車、

 空を移動する雲が。

 

 

 ありとあらゆる事象が停止していたのだ。

 そして、聞きなれた地鳴りとともに景色が光に飲み込まれ、世界がその姿を変えていく。

 

 

 一瞬にして街の風景は大小の樹木が生え広がる異界へと姿を変えていた。

 広大な景色と、昼夜を逆転させたような星の無い空。

 静かで、風も感じられない、明らかに隔離世の世界。

 

 

「……」

 

 

 その世界を花山は慣れたように歩き出す。

 もうすでに、この樹木が生え広がる世界を歩くのも3回目なのだ。

 

 

 

 1回目は東京のネオン街で歩いていた見知らぬ女子中学生を追いかけて。

 2回目はこの世界に飛ばされてから3日目の昼頃。

 

 驚きはしたものの、そこが見覚えのあった世界だからすぐに花山は順応することが出来た。 

 今でこそ散歩するように悠々と歩いているものの、

 最初は花山の周囲は慌ただしい限りだった。

 

 

 白いマシュマロみたいな奴が噛みつこうとしてきたり、

見たことのある(・・・・・・・)巨大な化け物が襲ってきたりと。

 

 

 その全てを、花山は自力(・・)で粉砕した。

 身に降りかかる火の粉は払わねばならぬ故に。

 

 

 

 そして三回目。

 この回数となると、白の生物と巨大な生物も、誰も花山を襲ってくる事は無くなった。

 異界の地にて唯一静かであることが気に入っていた花山はその平穏を自らの手で取り戻したのであった。

 

 

 

「……」

 

 

 散歩をしながら、ふと思い出す記憶がある。この樹木に覆われた世界の記憶についてだ。

 

  

 

 

――――アタシ、アタシは――――強くなりたいッッ

 

 

 ここのようで違う、別の世界で出会った一人の少女の事を。

 

 

――――友達をッ みんなを守れるくらいにッ ・・・・オジサンみたいに強くなりたいッ

 

 

  

 まるで烈火の如き赤い装束に身を包み、丈に合わない巨大な斧を振り回す少女と出会ったことを思い出していた。

 

 

 血を流すほど傷ついても友の為に、

 絶対的に覆せそうにない敗北濃厚な敵を前に、一瞬も怯むことなく前へ進む少女はとても勇敢で。

 

 

 自分の傷よりも他人が怪我したことに心を痛めるほどに優しくて。

 

 

 別れの際に自身を慕い、目指したいと言ってくれた少女は元気にしているだろうか。

 

 

「……三ノ輪 銀だったか」

 

 柄ではない、と花山は思った。

 その少女の事を脳内で浮かべて笑みを浮かべるなど。

 

 

 この場所を歩いていたらあの熱い魂を持った少女に出会えるような気がしてならなくて―――、

 

 

 

 

 

 

「止まりなさい!!」

 

 

 

 花山の足を止めさせる声が、異界の地に響いた。

 それは確かに少女の声。

 偶然か、運命なのか、数奇的な何かを感じた花山はその声の主の方へと身体を向ける。

 

 

 数十メートルほどの距離の先に一人の少女が居た。

 しかしそれは赤の服でも、大斧を携えた花山の知る少女ではない。

 

 

 白菊をイメージさせる白と青の服を身に纏い、こちらに弓を向けている少女だ。

 弦を引き絞り、視線をこちらから離さないまま花山を狙い続けている。

 

 

「あなた……”ぐらっぷらー”、ですね?」

「……あ?」

 

 

 微妙に言いにくそうに問う少女に花山は眉を潜めた。

 ばりばりの敵意を向けられている花山だが、不思議と全力で殺意を向けようとは思わなかった。

 弓矢を構える少女の姿に、思わず大斧の少女と同じ雰囲気を感じたからである。 

 

 

「勇者部所属、鷲尾須美……押して参ります!」

 

 

 黒髪の少女は有無を言わさず続ける鷲尾須美と名乗る少女は引き絞っていた弦を引き離す。

 びんっ、という弦の弾けた音と同時に空気を切り裂き進むような音速にも達する光の矢が今、花山に向けて放たれたのだった。

 

 




この作品の花山は私の過去作「花山薫は極道である」の続きとなっています。
誰でも読み進めれるように作っていくつもりですが、詳しく知りたい方は過去作の方も見られるとスッキリするかもしれない。


感想は握撃を自身の腕に与えて皮膚が弾け飛んだ痛みに耐えることが出来た人から書くようにお願いします。

〜花山薫〜
主人公その2兼、被害者。
言わずと知れた漢の中の漢。刃牙で握力と言ったらこの人。
以前、どっかの神様と同化した少女に導かれて異世界へ行き、わすゆのトラウマシーンに登場。銀ちゃんを助けてハッピーエンドにした。
数ヶ月後、今度は花山組ごと異世界に飛ばされる。
樹海で呼び止められた時、一瞬銀かと思ったけどわっしーで、少しだけ残念だった。

〜鷲尾須美〜
樹海で単身仲間の元へ向かう途中、花山を発見。銀と園子はたまたま離れてた。
その異様な佇まいから即座に敵だと理解する。仲間がでもやっぱり横文字は喋りにくかった。
次回の可哀想な被害者その2。戦う相手が悪かったのよ。
この作品のわっしーは割とヒロイン属性高めで調節してます。
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