ゆゆ刃牙~漢達のきらめきッッ~   作:バロックス(駄犬

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 遊んで書いてたら出来ちゃったじゃねぇかッッ 

4/6現在。
登場してくる刃牙キャラ、用語の紹介を後書きに追加していこうと思います。これを見て、色々イメージが膨らんでくれれば幸いです。


武人と勇者の章
第一話~花結いのきらめき~


――――もし、この世界に・・・・神樹様も造反神もビックリするような勇者が現れたら・・・・アナタはどうしますかッッ

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あちぃ・・・・・」

 

 肌を刺すような日差しが部室に刺しこんでいる。 外では校舎のグランドをそれぞれの部活動の部員たちが掛け声とともに走り回っていた。 

 部屋のパイプ椅子に座り、目の前の机にもたれかかった黄色のロングヘアーの少女はため息をつきながら、部屋に蔓延する熱気と、日差しを避ける為に光が当たらない影の部分へと椅子を引きづりながら移動した。

 

 

 讃州中学勇者部、その部長である犬吠咲風はこの勇者部の部長である。

 勇者部とは、世のため、人の為になる事を勇んで行う部活の事だ。具体的に何をしているのかと言えば、学校の行事、部活動の助っ人、奉仕活動、外でのごみ拾い・・・・etc。

 

 

 一様にボランティア部と言っても差し支えはない。

 

 

 飼い猫を探すとか、ごみ拾いとか、ほんとに勇者がやることか、と言われ、実際部員の何人かには、そういう事を言っていた輩もいたのだが。 今ではその活動に疑問なく受け入れてくれている。

 

 

 

「あ、風先輩。 お疲れさまです・・・」

 

 扉が開かれ、入ってきたのは黒髪の少女。大和撫子ここにありと言った容姿をしたその少女は机に突っ伏している風を見て、声を掛ける。彼女も勇者部の部員の一人だ。

 

「お、東郷。 今日は早いのね。 友奈は? 一緒じゃないなんて珍しいわね」

 

 風は普段なら必ずセットと言われるくらいに仲良しの勇者部員である、結城友奈の姿がなかったことに驚きだ。

 

 彼女、東郷美森は、ええ、と呟いて。

 

「今日は高嶋さんと空手部に行ってるんですよ」

 

「空手部?」

 

「はい」

 

 風の疑問に、美森は答える。

 

「この前の戦い・・・もう一人の友奈が現れてから、”もっと強くなるんだって”張り切ってて・・・・」

 

 少し残念そうに、美森は肩を落とす。 いつもなら、快活な声と共に入ってきているのだから、このテンションの低さは本物だ。

 

 きっと二人の時間が出来ていなくて、美森は寂しいのだろう、と風は思う。

 

「そう言えば・・・・あれから結構経つけど、あまり敵の動きが無いのよね」

 

 彼女たちの使命、勇者の御役目であるバーテックスとの闘いで現れた友奈に似た少女、赤嶺友奈。

 造反神側のバーテックスを操り、まるで嵐のように立ち去った彼女は得体の知れない雰囲気を醸し出していた。

 

「アイサツ程度・・・まるでどこかの忍者の如き立ち回りだったわ・・・・・警戒はしているけど」

 

 赤嶺友奈は今度もバーテックスを引き連れてこちらに襲来するだろう。

 それまでに、自分たちも準備をするわけなのだが。

 

「――――にしても、暑いわねェ・・・東郷、何か冷たいのってある?」

 

「風先輩、ぼた餅ならありますよ」

 

 

 ずい、といつのまにか手品の如く差し出されたぼた餅を風は一つ口に放り込む。 

 現在の切迫した状況とは裏腹に、美森の作るぼた餅はやたらと甘かったのだ。

 

 

 

 

 

 勇者たちが通う讃州中学は、この神樹が作り出した結界の中であっても現実世界の彼女たちの世界を模倣して作られたものである。

 そのため、校舎の外観は勿論、そこに在学している生徒たちも存在している。

 

 

 なお、この世界に居る一般人の人々は知らぬ間に魂だけを召喚されているという、はた迷惑な話である。

 

 

 

 そして校舎のはずれ、体育館程度の大きさの施設がある。讃州中学空手部だ。

 

 

 

『押ッッッ忍ッッッ!!!』

 

 

 空手部の道場は扉を全部解放している。 解放している為、中の生徒たちの覇気ある声が聞こえるのは当然だが、この空手部は少しばかり異常なほど覇気が有り余っていた。

 

 

 

『押ッッッ忍ッッッ!!!』

 

 とても中学生とは思えない厳ついガタイをした男たちが怒気を孕んだ正拳突きを虚空へと突き出している光景がそこにあった。

 

 

『押ッッッ忍ッッッ!!!』

 

 平均身長180センチ、体重は一番下の部員でも80キログラム。 マックスなら120キログラムとヘビー級のメンツまでいる総勢50名の讃州中学空手部だ。

 

 

 その空手部へと足を運んでいる二人の少女の姿がある。

 

 

 

「す、すごい気迫だね・・・・高嶋ちゃん!」

 

「そうだね結城ちゃん、流石はこの学校で一番活発な部活動と言われているだけはあるよね!」

 

 まるで写し鏡の如き同じ容姿をした赤いショートヘアの少女達は、二人揃って道着に身を包み、並ぶようにして正拳突きをかます男たちを一望できるスペースで正座をしていた。

 

 

 

 神世紀時代の勇者、結城友奈と300年前の時代から召喚された勇者、高嶋友奈である。

 

「たしか、新しく顧問になった部外の人の指導のお蔭で毎年初戦敗退の空手部が優勝したんだよね」

 

ごく普通の中学校である讃州中学だが、極めて異名で活動的な勇者部を差し置いて、

この空手部はこの学校で1番と言って良いほど人気があった。

 

 

記憶にもまだ新しい、この空手部が優勝したという事実。

 その頃はまだ中学生らしい体格をした少年たちが”空手っぽい”事をしている普通の部活動であった。

 

 故に戦績は下の下の。たまに勝てればよい方だろう、というくらいの評価が二か月前の空手部だ。

 

 

 

 ここで先ほど評価した”空手っぽい”という表現は今行われている練習風景とはかなりかけ離れている。

 たとえば、

 

「高嶋ちゃん、あの人・・・・」

 

「うん、あれは目つぶしの練習だね」

 

 正拳突きを繰り返す集団とは別のスペースでは、サンドバッグに二つの射的の如きわっかを描いた部分、その中心部に向けて気合を入れて人差し指を突き刺している男が居た。

 

 サンドバッグを指が貫通することは無い。 だが、その指の突き出した位置は、正確にその中心点を射抜いていた。

 

 

「あ、あれは・・・ッッ」

 

「結城ちゃん、あれは人体の急所、正中線を狙った足蹴りだね」

 

 

 次に見据えたのは木偶人形の三か所にカバーを巻いた場所目がけて、部員の一人が宙を浮いたかと思えば、その三か所に途轍もないスピードで蹴りを繰り出していた。

 

 

「―――-正中線・・・急所である喉、鳩尾、金的を同時に三か所なんて・・・」

 

 高嶋は息を呑む。 目つぶしも、今行われている木偶人形への蹴り技も、どれも人体を確実に破壊する手段である。

 

 

 

 競技とはかけ離れた、実戦を前提に置いた練習風景に、高嶋は驚きを隠せない。

 

 恐らく、この短期間で弱小空手部が恐ろしいまでに成長を遂げたのは、この実戦を想定した練習があってこそだと、確信した。

 

 

 普通の中学生がこんなガチで当てに来る空手など相手取ったら、誰だってビビる。というか、普通に怪我する。

 

 

「うーん、それにしても今日は凄い気迫が・・・・」

 

「たしかに・・・・いつもより三割増して気合入っているような」

 

 ふと抱いた疑念に、同じ姿をした二人は同時に考え込んだ。

 

 

 同時に、周囲から声が漏れる。それは友奈たちには聞こえないくらいの小さい物で。

 

 

―――――オイ、友奈ちゃんたちが来るからってお前ら気合入れすぎじゃねェかッッ!?

 

 

―――――待てよ、お前だって二人が見学に来るって分かった時、メチャクチャガッツポーズしてたろうッッ!!

 

 

 

―――――いつも元気いっぱいのツイン友奈ちゃんが、俺の正拳突きを凝視してくるッッ!!

 

 

 

―――――というか、マジでそっくりジャン・・・・あと可愛いッッ!!

 

 

 

―――――俺、今から飲み物あげてこよーかな。 ついでにこれを機に御近づきになっちゃって。

このために空手部入ったんだ。

 

 

―――――オイオイオイ、死んだわアイツ。

 

 

―――――消されるぞ、東郷と郡に。

 

 

 

 

 結城友奈と高嶋友奈は校内でもかなり人気がある。主に男子からだ。

 いつも誰とでも気さくに話が出来て、それでいて裏表がないあの笑顔だ。数々の部活動の試合にて助っ人の際に来た友奈たちの笑顔を見た男たちは誰だって魅了されてしまうだろう。

 

 

 だが、生憎彼女達には誰一人として声を掛ける事は許されなかった。 

 二人には鉄壁の羅生門のごとき親友がいた。 その鉄壁さはまったく隙がなく。

 

 

 気安く近づこうとする者は翌朝には指をぼた餅にされ、ある者は机の上に”ときめも”と書かれたゲームソフトを置かれるという怪現象に遭遇する。 

 

 いつしか、友奈に近づくには死を覚悟せよ、と言われるほどになった。

 

 

 その守護者の存在を二人の友奈たちは知る由もないが。

 

 

 

「でも、ここでなら・・・」

 

高嶋の呟きに友奈も頷く。 いつもの抜けた雰囲気を出している2人からは想像もつかない程の緊張した面持ち。

それには理由がある。

 

 もう1人の友奈、赤嶺友奈の出現が原因だ。

 

 

 西暦の時代に自分と同じ顔の人間がいたというのは驚いたが、それが三人。 勇者部各メンバーから三つ子説まで疑われてしまうほどこの話題はまだ新しい。

 

 

 敵側の造反神が用意した勇者とあって、その能力は計り知れない。

バーテックスを使役し、木枯らしの如く姿を現しては消えてゆく。その勢いたるや、まさに竜巻。

 

 

 その中で、友奈が憤りのような感情を浮かべたのは、その戦闘の最中で友人である東郷美森が狙われたからだった。

 

 

 バーテックスと星屑が数を良いことに美森へと照準を合わせ、一斉に襲い来る。

 

あの時は仲間がすぐそばに居たから美森が怪我をする事はなかったものの、友人のもしもの事を考えると友奈は身が震える。

 

 

(私は・・・東郷さんを、みんなを守護るッッ)

 

 大切な人が苦しみ、傷付く事は友奈は絶対に良しとしない。

これまで多くの困難も乗り越えてきた勇者部。 だが、無傷だったわけではない。

 

 

 

 美森は記憶を失い、なおも勇者として戦った。

 

 風は片目を失い、その妹の樹は声を失い、

 

 夏凜は心にダメージを受けて動けない友奈の為に四つの身体の機能を失った。

 

 乃木園子は全身の殆どの機能を失って、小さな神様として祀られ、友達に会わされることなく、大赦の操り人形にされそうになった。

 

 

 バーテックスとの戦いで、失って、そして取り戻した日常がある。

 もうそんな苦しい事は、辛い事はさせたくない。 もし、そんなことに合うような役回りならば、

 

(私だけで十分なんだ・・・)

 

 胸に強い意志を秘め、友奈が立ち上がった。 隣の高嶋も同じような、お互いに分かっているように立ち上がる。

 

 準備運動後、ストレッチと適度な運動を済ませた二人は互いに見つめ合い、構え、組手を始める。

 

 強くなる為の一歩を踏み出すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん? なんでぇ、道場がヤケにうるせぇじゃねぇか」

 

 筋骨隆々とした一人の男が道場の前で立ち止まり、普段は耳にしないような道場内での盛り上がりを神妙な顔で見つめる。

 

「ガキどもが練習しているにしちゃあ、盛り上がりすぎじゃね?」

 

 遠目で見た眼帯の男が道場内を見るに、生徒たちは何かを見ているように、動きを止めていた。 中には、その見ているものに対して、声援や驚きの声を上げている者もいる。

 

 普段の練習で声を張り上げるように教えていたのは彼なのだが、と男が中へ足を踏み入れると生徒の一人が慌てふためいた様子で、

 

「―――か、”館長”ッッ」

 

「おう、オメーら。 練習そっちのけで何やってんだ。 あと館長ァやめろ、先生と呼びなさい」

 

 生徒が苦笑いで謝ると、男は道場内の生徒の視線が隅っこで行われている組手をしている者たちへと向けられているのが分かった。

 

 

 その者たちは男がどう見ても女子のそれであった。 赤い髪の少女二人が組手をしているという事実。

 

 だが、その光景を見ては男が目を疑う。なぜなら、

 

「へぇ・・・・面白れぇじゃねぇの」

 

-----なかなかレベルが高ェ。

 

 口元を歪ませ、眼帯をしていない片目が怪しく光る。

 

 

 それは格闘家である己自身が抱く、興味というものだ。それは男の足を少女二人の方へと進ませるには十分すぎる理由だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空手の組手というものは、数種類ある。

 

 

 一つは、決まった手順に従って技を繰り出す”約束組手”。

 

 一つは、自由に技を掛け合う”自由組手”。

 

 一つは、勝敗を目的とした”試合組手”だ。

 

 

 友奈と高嶋が行っている組手は試合組手。 普通にガチの試合である。 なお、ルールは簡単に説明すると、

 

 制限時間は男子は三分、女子は二分。 ポイント制。

 お互いに技を繰り出し、相手に決まる技や部位でポイントが変わる。

 

 技を繰り出すのは良いが、相手の部位に対してそれが寸止めであること。 もし、体に直接当ててしまったら、ペナルティとなる。

 

 最終的には8ポイント差をつけるか、試合終了時のポイント差で勝敗が決まる。

 いかに相手の攻撃を躱し、こちらの有効な攻撃を相手に与えるかが重要となってくる競技だ。

 

 

「----ふッッ」

 

 友奈の小さいステップから繰り出される中段突きが空を切る。 高嶋が友奈の初動を見抜き、先読みした結果だ。

 最低限のバックステップでいったん距離を置いた高嶋が慎重に技を繰り出す。

 

「セイッッ」

 

 顔面への上段突き。 寸止めを前提にしているとはいえ、同じ仲間に繰り出すには勇気がいる行為だが、相手の友奈もヤル気だ。さっきの中段突きも予測が出来ていたが、一歩タイミングを間違えれば確実に決まっていた。

 

 

 高嶋の上段突きに反応した友奈の顔が数センチ移動するのを見て、高嶋は伸び切りそうになった右腕を瞬時に止める。

 

(----上段はフェイントッッ!?)

 

 完全に釣られた、と友奈が気づく時には懐深くまで潜り込んでは、次の攻撃の準備を整えていた。 

 

 高嶋のねらいが腹部への中段突きであることは明白。 

 

 

 本気で立会い、技を繰り出す二人に迷いというものはなく、むしろ、気遣いをかけることは相手に対して失礼なのだとさえ思っている。

 

 互いに強さを求め、こうして立会い、二人はお互いの強い部分を認識し、そして尊敬している。

 

 技を繰り出し、躱していく中で友奈たちが感じるのは充足感。 できればこの最高の時間が、長く続けば・・・・と考えるほど。

 

 

(----なら、これでッッ) 

 

 友奈の意識とは別に、右足が動き出す。 狙うは高嶋の顔面を目がけた上段蹴り。 

 

 出だしのスピードはほぼ同時、となれば技のスピード次第で点が入る。

 

 

 だが、二人の技が決まる瞬間、

 

 

 

「-----それまでッッ」

 

 

 

 試合を止める男の声が、道場内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 友奈たちがお互いに繰り出した技はそれぞれが身体の部位の寸前で止められていた。

 

 息を切らしていた二人の硬直が解けて、二人はようやく、自分たちへ視線が注がれていることに気づく。

 

 

「あ、あれ? あれれ・・・?」

 

「なんか、私たち・・・すっごい注目集めてる?」

 

「しょうがねぇさ、お互い、自分だけの世界に入り込んじまってたからなァ・・・いい試合だったぜ、二人とも」

 

 

 友奈たちは二人の試合を止めた、男の姿を見て思わず息をのんだ。

 

 

 男の身長は180前後、といったところだろうか。 頭部の髪がまったく存在しないスキンヘッド、試合の影響で変形した耳、顔面の疵、そして右目を覆う眼帯。 物を殴り続けたゆえに分厚くなったであろう拳。

 

 

(-----え、なにこの人・・・どこの世界の人?)

 

 その男から漂う並みならぬ雰囲気に友奈は困惑する。

 だが、男はそんなことを思われているとはつゆ知らず、ため息をつきながら、

 

「駄目だぜ、組手やるんだったらちゃんと審判つけなきゃ・・・・ 

 オイラが止めなきゃ、いったいいつまで続ける気でいたんだか・・・」

 

「ハハ・・・・すいません」

 

「私たち、ちょっと熱が入りすぎちゃったみたいで・・・・ご迷惑でしたか?」

 

 自身のしでかしたことに対して、友奈たちは苦笑い。 

 だがそれを見た男の反応は肩をすくめる程度のもので、

 

「なぁに、構いやしねぇさ。 道場で練習したい奴がいるってのは聞いてたからなァ・・・にしても」

 

 

「?」

 

「?」

 

 二人の友奈を凝視した男が腕を組んだ。

 

「お二人は姉妹か何かかーーーー、 こんなにソックリな二人が空手やってるもんだから驚いちまったぜ」

 

 なかなか返答に困る質問をしてくれた、と二人は思う。

 友奈と高嶋は容姿がほぼ同じだという事もあり、校内でも興味を持った生徒たちから質問されることもある。

 

 当然、お互いが別の時代の人間だという事は隠しつつ、周りには納得できる形で誤魔化してきて来たのだが。

 

「----その昔」

 

 

 返答の内容を考えていた時、男が口を開く。

 

「総合格闘技で元ヘビー級王者にブラジル出身の双子の格闘家がいたな・・・名前は----」

 

「ノゲイラ!」

 

 男が言い終わる前にその名前を出したの高嶋の方だった。

 

「そうそう、それそれ。 おっちゃん、二人がその生まれ変わりかって思っちまったわけだ。

しかし、お嬢ちゃん、良く知ってるね。 空手以外もイケる口かい?」

 

「私、いろんな格闘技の試合見るのが好きなんで!」

 

 

 なるほど、と男は満面の笑みを浮かべる高嶋を見て小さく笑うと、両の手を高らかに叩いた。

 

「ホレ、さっさと練習に戻んなッ 正拳突き1000本まだ終わってねぇだろッ」

 

 生徒一同に絶望の色が顔に宿る。 しかし男の言葉に逆らえないのか気勢を高めては再び、横一列に並んで正拳突きを虚空へ交互に打ち始めた。

 

 

「さて-----」

 

 蜘蛛の子を散らすようにその場から離れたのを確認した男は、再び友奈たちに向き合う。

 

「お二人さん、つかぬ事をお聞きするけどよぉ・・・・誰かを殴ったことはねェかい?」

 

「え?」

 

 唐突な、それはもう、先ほどの穏やかな雰囲気を一変させるくらいの様変わりをした男の質問に、友奈たちは動きを止める。

 

「----ないですよ?」

 

 高嶋が先に答えた。 何気ない、いつもの笑顔で。

 だが、男は小さく笑い、

 

「嘘言っちゃイケねぇや・・・・」

 

 男の片目が大きく見開いた。

 

「さっきの組手-----、 一見ルールをしっかり守った”試合組手”だったが・・・

 お二人さんの技の繰り出しは・・・・ただの人間相手に”ブッ放す”にしては動きが大振りすぎる

----そう、相手は人じゃなくて」

 

 ふむ、と少し考え込んで男は言った。

 

「別の生きモン相手、みたいな・・・・?」

 

「-----ッッッ!?」

 

 笑みを守り通していた高嶋も思わず警戒して、その表情を崩してしまった。

 

(い、いったい何者なの・・・・この人)

 

 友奈は友奈で、この得体の知れない男に背筋に凍るものを感じられずにはいられなかった。

 

 二人がこの世界でお役目として、人外であるバーテックス、造反神と戦っているという事を知る者は、友奈たち勇者とその関係者である巫女と大赦の人々だけだ。

 

 一般の、しかも空手の顧問である男が知りうるはずもないのである。

 

「あ」

 

 

(・・・・もしかして、大赦の人?)

 

 二人の中で同時に納得いく答えがそれだ。

 だが、まるで探りを入れるかのような男の問に、彼は本当に大赦の人間なのか、と二人は戸惑うばかりである。

 

 

「フフ・・・ 答えにくい質問しちまったみたいだな・・・・」

 

 

 男は不敵にも笑うと友奈たちに踵を返し、

 

「まぁ、時間がある時はいつでもいいからここで鍛錬するなり、試合するなり、

好きにしてくんな----。 ただ、ケガだけはしないように・・・、 これでも一応、指導者なんでな」

 

 そう言って、男はどこかへ消えていく。 男の不気味さに、友奈たちはしばらくの間、立ち尽くしていたのだが、やがて。

 

 

「えーッッ!?」

 

「あっ! 警報! 樹海化警報がなってるよ!?」

 

 聞き覚えのあるアラーム音。 それは二人の持つ端末から発せられる警報音、『樹海化警報』。造反神の率いるバーテックスが侵攻作戦を開始したことを知らせる音だ。

 

 

 戦いの鐘が鳴ったことに、二人はお互いに見合うと小さく頷いた。 時間が経過するとともに、彼女たちのいる世界は神樹によって防御結界の中に取り込まれ、巨大な樹木へと変貌させていく。 樹海化現象と呼ばれるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 勇者装束へと姿を変え、現場へと急行した友奈たちは、勇者の力によって得られる身体能力で、自身よりも何十倍もの大きさを持つ樹木を軽々と飛び越えていく。

 

「風先輩! 結城友奈、ただいま到着しました!」

 

「同じく高嶋友奈、到着しました!」

 

 友奈たちの声を聴き、最初に現場に到着していた風と美森がこちらへと振り返る。

 

 一番最初に駆け寄ってきたのは美森だ。

 

「友奈ちゃん、おかえり」

 

「うん、東郷さん! ただいま!」

 

 満面の笑みの友奈を見て、まるで永遠の安寧を得たかのような表情の美森だ。それを見た風はやれやれ、といった顔で、

 

「来て早々見せつけてくれちゃって・・・そういうのは家でやりなさい」

 

 家だったらいいのか、と隣にいた高嶋は突っ込みたかった。 多分、樹が隣にいたら確実に寸分も狂うことなく突っ込んでいたに違いない。

 

「それで――――、敵は?」

 

「私たちも、今着いたところなの。 他の勇者たちは距離が離れているから遅れているみたいで・・・・」

 

 友奈の問いに答えた風が自身の武器である大剣を担ぐ。 現存する戦力である勇者はこの場にいるだけで5人だ。

 

 

「でもヒナちゃんの話だと、バーテックスはいないらしいから、

星屑相手なら皆が来るまで持ちこたえるのは多分大丈夫だよ!」

 

「駄目よ友奈ちゃん。 古今東西、簡単な戦も思わぬ伏兵で一気に戦況をひっくり返されることだってあるのだから、

油断は禁物」

 

 大型のバーテックス相手ならまだしも、今の彼女たちにとってそれよりも下の個体である”星屑”の相手はさほど困難なものではない。

だが、バーテックスは現れないとしても、予想外の事は起きるものである。 それを気にしていたのは美森だった。

 

「え、ちょっと・・・・」

 

 驚きの声を突然上げたのは高嶋だった。 

 

「だ、だれか戦ってるよ!?」

 

 指さす方向を見ると、すでに星屑を相手に戦っている者がいた。

 

「ほんとだ、でもあれ・・・素手で戦ってない? 友奈ズ以外に素手で戦う人って、いたかしら・・・・?」

 

 風の疑問に答えるものはいなかった。 それは、素手を用いての戦闘をしている勇者は友奈たちを除いて勇者部にはいないという事を知っているからである。

 

 

 

----異様な光景だった。

 

 その者が繰り出した素手による手刀は星屑の体をまるでバターのごとく両断していく。

 

 拳を突けば星屑はその身に巨大な穴を開けさせ、蹴りによる一撃は一度に複数の星屑も撃破した。

 

 

「―――うそ、あの人、男の人よッッ!!」

 

 風が信じられないといった顔で叫んだ。

 男は素足に、柔道着をその身に纏っていた。 敵を倒しきった後でも星屑が完全に息絶え、消えるまでは目を離さない残心をとりつつ、息を大きく吐いた。

 

「あッ た、高嶋ちゃんッ」

 

「あ、あの人・・・なんでッッ」

 

 二人の友奈がその男の顔を見て、驚愕する。 忘れもしないだろう、つい先ほどまでお互いに会話していた人物を。

 

 

「---っとぉ、もう来ちまったのかい・・・早いもんだぜ」

 

 

 構えを解いたその眼帯の男が樹木の上でこちらを見つめている友奈たちに視線を送る。

 

 

「自己紹介がそう言えばまだだったな・・・・・オイラの名前は-----」

 

 怪しく笑みを浮かべた眼帯の男が、水の如き動きで構え、その名を勇者達に告げる。

 

 

 

 

 

「----愚地独歩です・・・・・」

 

 

 

 

 

 

-----勇者達と神樹様と造反神をこれからビックリするくらい、そしてフザケンナと言わせるくらい困らせる者達。

 

 

 

-----それは勇者ではなく、格闘家(グラップラー)たちだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話~花結いのきらめきッッッ~




 どうも、本当に本篇ができるとは思わなかったんだ。バロックスです。困ったことに、内容を思いついてから2週間でできちゃったよ。 他に作品あるのにこんな書いて大丈夫なの? と思ったり、思わなかったり。
原作がギャグなのかシリアスなのかよくわからない刃牙のテイストがいったいどこまでゆゆゆ世界に通用するのか。 
ただ一つ言える事、オーガさんが絡んでくると赤嶺さんのストレスがマッハ。 これだけはたしか。 一応、後の話で描きますが、自分が出した前作の~花山薫は極道である~と関連したお話となっております。
さぁ、美少女と筋肉の世界で鬱展開をぶっ飛ばそう(真顔)
どこまで続くかわかりませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです。

グラップラーNo.1
愚地独歩
登場作品(グラップラー刃牙、バキ、範馬刃牙、刃牙道、拳刃)
年齢:55歳(地下最大トーナメント時)
身長/体重:170/110
世界最大の勢力、会員数100万人を有する空手道団体神心会の総帥。
かつて地下闘技場の闘士であり、一対一で虎を屠ったことがある。その荒業を讃え、空手家だけでなく様々な格闘家からは生きながらにして伝説的な存在、「虎殺し」、「武神」と呼ばれている。50歳の頃に地上最強の男、範馬勇次郎との立会い最中、片目を失う。
刃牙シリーズを通して皆勤賞の男。作中の格闘家としての振る舞いや生み出した数々の名言、迷言や日常において茶目っ気があり、江戸っ子気質の性格から人気の高いキャラ。拳刃は彼の若い頃をメインにしたスピンオフ作品。
 
戦闘形態(ファイトスタイル)
50年という修練を重ねた空手が持ち味。基本技に忠実だが、彼の場合は全ての技の威力が破格。鍛え抜かれた手刀は木材、瓶、アラミド繊維を断ち、蹴り技に於いては足先が刃物と同等の威力を持ち、相手が打たれた箇所全てが急所と化すほど。
拳の握りが菩薩のような握りで打ち出される「菩薩の拳」は一般の空手家が用いる正拳突きと違い、気配や殺気を出さないため、合気道の達人である渋川剛気も防ぐことが出来なかった。
〜ゆゆゆい世界にて〜
転移後、かめやのうどんを食べてたら讃州中学で顧問を募集してる部員がいたので指導した結果空手部が優勝してしまった事をキッカケに正式に顧問に招かれた。友奈ズの組手から只者ではないと感じとり、自身のグラップラーとしての血が騒いでいた。烈海王と一緒に勇者部の鍛錬担当をする。
若葉を若坊と呼んではよく弄り、珠子を防御訓練と称して菩薩の拳でブン殴り、吹っ飛ばされる光景が勇者部の中では日常風景となっている
グラップラー達に精霊バリアはない、必要ない。
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