艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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艦これSSはいくつか書いたのですが、現実からの転生(?)モノは初めてです。1話あたりが少々短めですが、よろしければご覧ください。


-01-

 『艦隊これくしょん』と呼ばれるPC用ゲームがある。オンライン専用のいわゆるブラウザゲームで、ジャンルとしては戦略シミュレーションの一種……になるのだろうか。

 プレイヤーは「提督」となって、擬人化された第二次大戦時の軍艦「艦娘」を配下のユニットとして集め、育成・指揮して、「深海棲艦」と呼ばれる謎の敵と戦うことになる。

 ブラウザゲームとしては相当な好評を博し、ノベライズ・コミカライズなどを経てテレビアニメ化や映画化も果たした、かなりの人気コンテンツだと言ってよいだろう。

 “ディープなヲタク”とまではいかないが、ゲームもアニメもそこそこ嗜むグータラ大学生(20歳)の俺も、提督の末席に名を連ね、一時はそれなりに熱中していたこともある──最近は、週に1、2度起動するくらいだけど。

 

 で、だ。

 そろそろ日付が変わろうかという深夜、その週に1、2度の提督稼業(おつとめ)のために『艦これ』を立ち上げた瞬間、スタングレネードもかくやという閃光がモニターから溢れ出すなんて事態は、さすがに想像の範囲外だ。

 あまりのまばゆさに思わず目を閉じ……ただけでは収まらず、頭がくらくらするような感覚とともに、思わず地面にうずくまってしまった。

 ──ちょっと待て。「地面にうずくまる」?

 俺はいつものように自室で机の前の椅子に座ってプレイしようとしていたはずじゃなかったか?

 すごく嫌な予感がする。

 (ラノベとかアニメでのお約束だと、コレって「ゲームの世界に引きずり込まれた」ってパターンだよな?)

 そういえば、さっきから潮騒の音と海の匂いが耳と鼻に届いているような……。

 思い切って目を開けてみる。

 (ぅわぁ~、やっぱり)

 視界に飛び込んできたのは、港というか波止場?

 海に面していくつかコンクリートの桟橋が設けられ、それ以外の敷地内もきちんとアスファルトで整地され、近くには工廠らしき建物が見える。

 何より、その工廠の隣にある赤レンガの建物は“鎮守府”──『艦これ』世界でプレイヤーたる提督が常駐する執務室を中心に、艦隊運営に必要な各種設備が揃っているはずの建物だろう。

 「マジで『艦これ』の世界に来ちまったのかよ」

 しゃがみこんだまま、思わずそう呟いた、その自分の声にギョッとする。

 (なんだ、この可愛らしくも落ち着いた艶のあるソプラノボイスは!?)

 一応断っておくと、俺本来の声はダミ声と言わないまでも普通の成人男子の低めの声だ。

 世の中には、両声類と称する男なのに女にしか聞こえない高く澄んだ声が出せる人もいるらしいが、生憎そんな特技は持ち合わせていない。

 とっさに視線を下の方に向けて、自分の身体を見てみる。

 俺の目に映ったのは、黒に近い紺色の襟に黄色のスカーフを結んだ白いセーラー服を着た自分の体、しかも、その“自分の体”にしても、胸のふくらみその他からして、どう見たって女の子のものとしか思えない代物だった。

 「うそだろ承●郎……」

 

  * * *  

 

 小杉十郎太か小野大輔ばりのシブい声で「ああ嘘だぜ」と否定してくれる頼もしいスタ●ド使いは存在せず、仕方なく俺は鎮守府の建物の方へと歩き出した。

 歩きながらも、自分が“何”になったのか考えてみる。

 (このタイプのセーラー服を着てる艦娘は、陽炎型の浦風・磯風・浜風・谷風の4人。その中でも、袖をこんな風にノースリーブにして、長手袋はめてるのは浦風ひとりだけだよな)

 鏡は見てないが、頭に白い帽子をかぶっているし、髪の色も日本人の地毛にはありえない水色なので、たぶん間違いないだろう。

 (普通、こういうゲームにインする話の場合、プレイヤーの分身たる提督か、百歩譲って一番お気に入りの“嫁艦”に憑依するモンじゃないのか!?)

 俺が一番最初にケッコンカッコカリした“嫁”は空母娘の翔鶴で、その次にお気に入りなのは同じく空母の飛鷹と戦艦娘の榛名あたりだ。いや、ロングストレートヘアの落ち着いて大人びた感じのコが好きなんだよ!

 「姉妹艦どころか、艦種さえ違うじゃん」

 浦風は、一般に幼いと言われる駆逐艦娘。まぁ、陽炎型は駆逐艦としては発育のいい方だし、浦風・磯風・浜風の3人はその中でも(大きめの“胸部装甲”含め)特に大人っぽい容姿ではあるんだけど、それでも外見年齢はせいぜい15、6歳くらいだろう。

 「そもそも俺、浦風は持ってなかったしなぁ」

 なので、本物の浦風(艦娘)については、その容姿と大雑把な性格(明朗快活で面倒見がよく、「ダメ提督製造機」勢のひとりらしい)と、あとはせいぜい広島弁をしゃべるってことくらいしか知らないんだよ。アニメにも出てなかったし。

 いろんな意味でこれまで「縁のなかった」艦娘に、まさか自分がなってしまうとは……。

 まぁ、このテの転生系のお話だと、最初はどこかの孤島とか密林とかに放り出されて、まずサバイバルから始めないといけないケースもあるから、それに比べれば最初から鎮守府(かんけいしゃ)付近に現れたぶん、多少はマシなんだと思おう。

 溜息をつきながらも鎮守府の入口に近づくと、なぜか深刻そうな表情の明石さんと大淀さん(だと思う、たぶん)が玄関前に待機していて、俺、いや「浦風」の姿を見た途端、こっちに向かって来た。

 「いた! いましたよ、大淀!!」

 「よかった。早速提督にお知らせしないと」

 ふたりに敵意は見えず、むしろホッとしたような顔をしているトコロからして、この場合、自分……というか「浦風」の存在自体はココの人間も多分把握してたってことだよな。

 ありがちなパターンだと、“建造”時の事故(建造したはずの艦娘が工廠に現れなかった)とか、あるいは着任予定の浦風が予定時刻を大幅に過ぎても到着しなかったとか、かな。

 (さて、この場合、どう対応するべきなのかね)

 おおまかに言って二択、今の自分の現状を素直に説明するか、否か。さらに説明しない場合は、このまま「浦風」になりすますか、記憶喪失とかで誤魔化すか、だよな。

 とは言え、浦風のことをよく知らない俺が彼女のフリをするってのは、ほぼ無理ゲーだ。記憶喪失のフリの方は、それに比べればまだマシだけど、腹芸とか演技とかがあまり得意じゃない俺の場合、ボロが出る可能性が高い。

 となると、少なくとも提督+このふたりくらいには、正直に事情を打ち明けておくべきなんだろうな。

 大淀さんが鎮守府内にとって返し、残った明石さんがこちらに歩み寄ってくるまでの間に、とりあえずそこまでは考えをまとめる。

 「あの~、すみません、ここの鎮守府の方ですか?」

 そのうえで、先制攻撃ってワケじゃないけど、此方から話しかけてみた。

 「は、はい、そうですよ。貴方が、今日着任予定の陽炎型の人ですか?」

 おっ、この聞き方だと建造じゃなくて着任パターンの方か。

 「はい。陽炎型駆逐艦娘の“浦風”……だと思うんですけど」

 顔は見てないので、実は断言できない。

 「? なんで、そんなに自信なさげなんです?」

 まぁ、当然、そうなるよね。

 「えーと、それには色々複雑な事情がありまして……詳しくは提督のところでご説明します」

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