艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world- 作:嵐山之鬼子(KCA)
食堂に着いたのはちょうど
一瞬どこに座るべき迷ったものの、多少なりとも会話してそれなりに面識のできた(ついでに言えば“仕事”上の同僚ともなる)初春たち駆逐艦娘のグループに合流することにした。
「すみません、ご一緒していいですか?」
「もっちろんオッケーだよぉー、浦風ちゃん、こっちにどうぞ♪」
一応礼儀として聞いてみたところ、睦月がブンブン手を振りながら自分の隣りの空いてる席を指し示してくれる。
(にゃしぃにゃしぃ言ってるお気楽娘かと思ってたけど、意外に面倒見いいよな、この子)
どちらかというとゲームや二次創作から受ける悪戯っ子な印象より、アニメ版の優等生に近い気がする。
「うむ。ミーティングというワケでもないが、わらわ達駆逐艦は朝餉はともに摂って、簡単な擦り合わせをするのが慣例となっておる。強制ではないが、心得ておくがよいぞ」
そして、睦月の対面に座っている初春は、それ以上に駆逐艦娘のまとめ役っぽい。元々の性格に加えて、最先任であることも影響しているのかもしれない。
「ええ、わかりました。何か急ぎの用事などがない限り、参加させてもらいます」
実際、ここで伝達事項とかがわかるのはメリット以外のなにものでもないしね。
朝は皆が同じメニューのようで、すでに各椅子の前のテーブル上にはひとり分の朝食が並べてある。
ちなみにメニューは、ご飯と味噌汁は当然として、イワシらしきメザシを焼いたもの3尾、玉子焼き二切れと大根おろし、ドレッシングのかかったトマトのスライス丸1個分が各人の皿に盛られている。
それ以外にも、キャベツらしき野菜の漬物の盛られた丼と梅干しの入った壺が4人にひとつ置かれている。
「そうそう、ご飯とお味噌汁はお代わり自由よ。浦風もお代わりしたければ私がよそってあげるわ!」
炊飯ジャーがすぐ横に置いてあるテーブルの端に座っている雷が、そう教えてくれた。
でも、外見的には年下とは言え、この鎮守府では先輩なのに、そんなことさせていいのかなぁ。
「いいのいいの、じゃんじゃん私に頼って♪」
どうやら、こちらは
「では、僭越ながら今日は私が……いただきます!」
朝潮の音頭(?)で、私も含めた駆逐艦娘7人が掌を合わせ「いただきます」の声が唱和する。
「あ、美味しい……」
一口ご飯と味噌汁を口にしただけで、下手な旅館や定食屋の朝定なんかよりはるかに美味なことを実感して、思わず素の言葉がこぼれる。
昨夜のプチ歓迎会で出されたハンバーグやフライドチキン、ビーフシチューなどの洋食系も三ツ星人気店もかくやという出来栄えだったが、アレは料理自体への嗜好も込みでの評価だ。
今朝のように何気ないシンプルな朝餉で、これだけ舌をうならせる出来映えということは、やはり「間宮は和食にて最強」といったところなんだろう。
この浦風の(外見的にはミドルティーン女子の)身体なので、それほど量は食べられないだろうと思ってたんだけど(TS物のお約束だしね)、ペロリと平らげて、挙句ご飯をお代わりしてしまった。
もっとも、私より小柄な雷や睦月も普通にお代わりしてたから、艦娘全体が普通の人間より健啖家なんだろう。戦艦の扶桑さんや空母の祥鳳さんも、あのたおやかな見かけでしっかり三杯は食べてたし。
(艦娘である間は鎮守府の食堂で三食無料になるというシステムは、このことも踏まえてるんだろうなぁ)
艦娘は(命の危険もあることから)そこそこ高給取りな仕事らしいけど、食費が通常の3倍かかるようでは“そこそこ”程度のお金では足りなくなるだろうし。
そんなとりとめもないことを考えながら、この後に待っているだろう“
* * *
奉公人必携の「早飯早糞早算用」から転じて「早飯早糞早走り」が武士ひいては軍人にとっては必須の技能(?)と言われるが、広義の軍人の範疇に入るとは言え、さすがに「花も恥じらう妙齢の女の子」である艦娘に、食事とトイレを急かす慣習はないらしく、食後にはある程度、
──考えてみれば、艦娘って「そう簡単には作れない貴重な国防兵器」だもんね。日々命の危険に直面するからこそ、某勇者部の面々なんかと同様、日常では多少なりとも心安らかに暮らしてほしい……という上の意図もあるのかもしれない。
そんなことを考えつつ、せっかくなのでその思惑に甘えるべく、私も初春たちといっしょに談話室に足を運び、しばし雑談で時間を潰すことにした。
「こら、白露! 食べてすぐ寝ると牛になるわよ!」
「あ~、だいじょぶだいじょぶ、そんなの迷信だって。ふわぁ~」
談話室の一角に設けられた3畳分ほどの畳スペースにゴロンと寝転がっている白露に、雷が苦言を呈している。
ああやっていると、外見年齢の差もあって「しっかり者の妹に叱られるダメ姉」にしか見えないなぁ。
「いや、あの……ああ見えて、白露ちゃん、戦場ては頼りになりますから」
白露に生暖かい視線を向けている私の意図を察したのか、磯波がフォローを入れて来た。
確かに白露自体は、あの火力特化の狂犬ぽいぬと生存性に富んだ忠犬時雨の姉だけあって、相応にバランスのとれた良性能艦のはず。現在練度1で、当分は艦隊のお荷物になるだろう私としては、いろいろ助けてもらうことになるはずだから、間違っても侮るべきじゃないよね。
「ふむ、そんな浦風に提督からの伝言じゃ」
初春いわく、今すぐ実戦投入しても中破・大破する未来しか見えないので、今日から3日間は演習三昧。
4日目からは鎮守府近海海域で実戦経験(といっても遠征主体らしいが)を積み、6日目に小破以下の損害で南西諸島防衛線の最深部を突破できたら、晴れて「見習い卒業」として正式に駆逐艦ローテに組み込まれるのだそうな。
「一週間、いえ実質6日で見習い卒業を目指せとは、なかなかスパルタですね」
「いえ、そうでもありません。まだ艦娘数が少ないこともあったのでしょうか、朝潮が着任した際は、初日からいきなり鎮守府近海で実戦投入され、3日目から通常任務に加わりましたから」
生真面目な朝潮にそう応えられては、外見年齢的にも“中の人”的にも数歳年上の
「そろそろ8時ね。みんな、お仕事開始よ!」
折よく雷が皆に号令をかけてくれたので、私も椅子から立ち上がる。
さて、どこに行くべきかと一瞬、戸惑っていたところ、睦月にポンと肩を叩かれた。
「今日は私たち3人が、浦風ちゃんにつきあって演習に行くにゃしぃ」
「あ……そう、なんですね。なんだかごめんなさい」
「いいのいいの、誰だって新人の時はあるからねー」
「そうそう」
白露と雷も新人のお守りを押し付けられたというのに気にしてない様子だ。
(いい子たちだなぁ~)
これが曙や霞あたりだと(本心はともかく)外面的な
「およ? そう言えば……そだ! 初出撃の前に、浦風ちゃんは工廠に行って明石さんから基本艤装を受け取っておかないとだめだよん」
基本艤装……?
何やら耳慣れぬ単語が出て来たけど、そのヘンは明石さんに聞けばわかるだろう。
「それじゃあ、私、明石さんと会ってきます。またあとで、よろしく!」