艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world- 作:嵐山之鬼子(KCA)
この世界では、艦娘関連でゲームには登場しなかった(より正確には言及されなかった)重要アイテムとして“基本艤装”と呼ばれる代物がある。
これは(ややおおげさな表現になるけど)艦娘を艦娘たらしめているものと言っても過言じゃないだろう。
どういうものかわかりやすく説明すると……そうだなぁ、お手元にPC等があるなら『艦隊これくしょん』を立ち上げて、“図鑑表示”のボタンから艦娘図鑑を参照してほしい。
艦これプレイヤーの誰もが持っているはず(轟沈させたり解体してたりしたら別だけど)の初期艦の駆逐艦娘の誰かを選んで、画像をクリックすれば全身イラストが表示されるはずだ。
駆逐艦であればほぼ例外なく(大きさに差はあれど)背中にデッカイ金属の塊りを背負っているだろ? それが主機関──いわゆるメインエンジンで、基本艤装の中でも最重要な
それに次いで重要なのが「駆動機」と呼ばれる部品で、こちらは通常、艦娘の履いている“靴”を指す。駆逐艦娘だと一部を除いて形状的に普通の靴とあんまり大差ないけど、これが戦艦や空母になるとゴツい金属製で物々しい形状をしてたりする。
簡単に言えば、艦娘は主機関から発生する謎のエネルギーを駆動機から放出することで、アメンボのごとく水上に立ち、なおかつ航行することができる……ってワケ。根本的にこのふたつが無ければ、艦娘が艦娘として戦場に立つことすらできない──ということは理解できるだろう。
無論、それ以外にも主砲や魚雷発射管などの武装や、ソナーや電探などの補助機器、あるいは空母の飛行甲板なども、深海棲艦と戦うためには必要なことは言うまでもない。
それらを装備・搭載するためのスペースやスロットの部分も、基本艤装に含まれている。
つまり、「艦娘になる」というのは、この基本艤装と“共鳴・同調”し、「主機関を自分の霊力で動かせるようになること」とほぼ同義なんだ。
……と、まぁ、そんな話を、昨日大淀さんたちから聞かされてはいたんだけど(今思い出したともいう)。
実際に艦娘が基本艤装&各種兵装を装備する際はどうするのか……と、内心ちょっと期待してたんだ。
(やっぱり、アニメみたく出撃ドックの所定の位置に立ったら射出されて、飛んでくる艤装と「ガキーン!」と合体するのかな?
それとも某魔法少女の
いやいや、もしかして「ダ〇ターン、カムヒア!」的なノリで召喚するのかも)
いい歳(中の人的には二十歳だ)して厨二病か──と笑われそうだけど、やっぱりそういう“武装”とか“変身”って響きは男の子の
──もっとも、現実は非情だった。
「はい、確認完了。これが浦風さんの基本艤装ですよ」
「あっ、はい」
工廠で普通に明石さんから手渡されて、そのまま背負う&靴を履き替えるだけでした!
(い、いや、まだだ。これはまだ“初回”。私が艤装を持ってなかったからで、次回からはアニメor魔法少女的な変身シーンがくる可能性もワンチャン……)
「艤装の扱いは鎮守府によって違うんだけど、
……ワンチャン、ありません。知ってたけどさ!
「──はい」
気を取り直して、基本艤装に続いて、今日の演習(というか教習?)で使用するための兵装として、浦風の初期装備の“12.7cm連装砲”を両手に持つ。
初期装備としてはもうひとつ“九四式爆雷投射機”もあるんだけど、「新人がいきなり爆雷投射機持っても、宝の持ち腐れにゃしぃ」という睦月のアドバイスに従って、代りに“61cm三連装魚雷”(正式にはその発射管)を太腿にくくりつけた。
駆逐艦、とくに日本のそれの場合、主砲や対空砲より魚雷がメインだからね。
主機関を始め、こんな鉄の塊りばっかり全身に装備して、この華奢な女の子の身体でまともに動けるものか少なからず不安だったんだけど、さすがは艦娘と言うべきか。
それなりの重さは確かに感じるけど、肩の重みは体感的には小学生時代のランドセル程度で、さほど動きに支障はなさそうだ。主砲や魚雷も同様で、“
「それ、主機関が動いて、浦風の身体に霊力が供給されてるからよ」
私が不思議そうな顔をしている理由を察したのか、雷が苦笑しながら、そう教えてくれる。
「主機関が駆動中の艦娘の腕力は馬力換算されるべき存在ですからね。さすがに
明石さんが補足してくれる。
(そうか、「十万馬力」の某ロボほどじゃないのか~)
ちょっと残念なような気もするけど、本当にそんな馬鹿力が出たら、うっかり物を壊さないか大変そうなので、むしろ良かったんだろう。
そして、いよいよ演習用のドックで初出撃ならぬ初“進水”することになった。
「! へぇ、こんな感じなんですね」
紛れもない水の上に自分が立ってるというのは、ひどく奇妙な気分だったけど、同時にそれを「当たり前だ」と認識している自分も心の中にいる。たぶん、これが艦娘としての感覚というヤツなんだろう。
足から伝わる感触としては水上スキーに近い……のかなぁ。やったことがないんで想像だけど。
アニメでは「水上スケート」なんて揶揄されてて、主人公の吹雪も最初移動するだけで四苦八苦してたけど、そこまで難しいという気はしないかな。
「浦風、ちょっとすごいね! あたしなんか、初めて進水した時は恐々でまともに動けなかったよ?」
白露が感心したような目でこちらを見てるし、睦月も「うんうん」と頷いている。
「そうなの? 私はそんなに苦労した記憶がないんだけど」
雷は首を傾げているので、こういうのは個人差があるものなのかもしれない。
「ま、最初のステップ1が省略できたのは結果オーライだよね。それじゃあ、ステップ2、主砲を胸元に構えた姿勢での高速蛇行の訓練に入るよ!」
今回の訓練のリーダー格の白露の指示に従って、私は艦娘として戦うための第一歩を踏み出したのだった……。
「あ~、ダメダメ! ターンの時も極力スピードは落とさないようにしなくちゃね」
「浦風ちゃん、手が下がってるよ、ちゃんと胸元で構えないと」
「軌跡のブレが大きいわ。もっとコンパクトに動かなきゃ」
──教導役の駆逐艦娘3人は結構スパルタで、お昼時まで目いっぱいしごかれました!