艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world- 作:嵐山之鬼子(KCA)
午前中いっぱい航行訓練に費やしたおかげで、4人──いや、4“艦”並んでの単縦陣での前進原速までは何とか一応こなせるようにはなった。
「うーん、艦娘初心者としてのSTEP2は一応合格かな」
リーダー・白露からのお墨付きが出たところで、いったん訓練はお開きとなり、4人で昼食を摂ることになった。
空腹と精神的疲労でかなりキビしい状態だったので、ここで休憩できるのは、正直助かるな。
艦娘食堂に入ると、朝とは違ってテーブルの上には何もなく、代りに入り口付近に金属製の大きなトレイが多数積み上げられていた。
十数人の艦娘たちが、そのトレイを持って、食堂奥のカウンターの前に並んでいる。
見れば「あたし、ラーメン!」「僕は今日は焼き魚定食をもらうよ」などとカウンターの向こうの間宮さんと調理師さん(?)に順番に注文してるみたいだ。
「あ、昼はメニューが選べるんですね」
「うん。朝は原則7時から8時って食事時間が決まってるけど、作戦行動次第で、お昼を食べられる時間はバラバラだからねー」
睦月の言葉に、なるほどと納得して、列の最後尾に加わる。
軍隊(の人間)にとって食べることは数少ない楽しみのひとつだ、とかそっち系の小説か漫画で読んだ記憶があるし、艦娘も(外見が年端もいかない若い女の子だとは言え)軍人には違いない。
ハードな任務や訓練の合間に、せめて好きなモンくらい食べられないとストレスがマッハ……ってことも考慮されてるんだろう。
(アニメやら二次創作系作品やらで、一部の艦娘が度を越した大飯喰らいなのも、ストレス発散のためである可能性が微レ存?)
などとくだらないコトを考えているうちに、
カウンターに貼られた手描きのメニューに書かれていた品名は──
・味噌ラーメン(※ライス不要なら言ってください)
・チキンカツカレー
・ハンバーグ定食
・しょうが焼き定食
・焼き魚定食(※今日は鯖です)
──の5品で、雷によれば複数同時注文もアリらしい(ただし、万一残すと「お残しは許しまへんでー」と怒られるので要注意だとか)。
訓練で腹ペコとは言え、そこまで空腹を持て余しているわけでもないので、とりあえず今日は一番無難そうなしょうが焼き定食を、ごはん大盛でもらうことにした。
注文して10秒とたたずに目の前のトレイに、ご飯、味噌汁、煮物の小鉢、そして肉と付け合わせの野菜類が盛られた大皿が並べられる。
学食とかなら引き換えに代金を払うんだろうけど、有り難いことに艦娘の食事代は(少なくともここ呉鎮では)無料だ。
トレイを持ちあげ、4人並んで座れる席を探そう……としたところで、長テーブルの一角に白露が座ってこちらに手を振っている。
「こっちこっち! 席は確保しといたよー」
どうやら睦月がトレイに載せたラーメンとカレーのどちらかは白露の分らしい。
改めて2・2に分かれてテーブルの対面に座り、「いただきます」と手を合わせてから、目の前に定食に箸をつけた。
(うん、普通に美味しい)
生姜焼きは、出て来た時間からしてたぶん作り置きのものなんだろうけど、ほどよく温かく、また味の方も少なくとも町の定食屋だったら常連になることを決意するレベルの出来栄えだ。
「流石間宮さん、さすまみ!」と言いたいところだが、よそってくれたのは調理師のオバさんなので、作ったのは別の人かもしれない。
「ランチのメニューはあの5品だけなんですか?」
「ううん、日替わりで5品か6品よ。麺類とカレーは必ず入ってて、焼き魚定食も魚の種類を変えてレギュラー。残る2、3品は日によってまちまちね」
雷がしたり顔で教えてくれた。
ワイワイ雑談をしながら全員のお皿とお椀が空になったところで、カウンタ横に置かれたサーバーから4人分のお茶を入れ、食休みがてら午前中の
「まだまだ未熟なのは自分でもわかってますけど、私の今の状況って、どんなレベルなんでしょうかね?」
思い切って聞いてみた。
「うーん、そうだなぁ……いいたとえが思い浮かばないけど、強いて言うなら「スキーでプルークファーレンが普通にできるようになった」くらい?」
むむむと腕組みしながら、白露がそんな評価を漏らす。
「あ、まだボーゲンですらないんですね」
「そっちはまだまだ要練習かな。全然できてないわけじゃないけど」
「旋回半径が大きすぎるにゃしぃ」
「上半身が安定しないのも砲撃時には致命的よ」
睦月と雷にも問題点を指摘され、軽く凹む。
「それ、ぜんぜんダメってことじゃないですか!」
「アハハ……ま、まぁ、焦らずにいこうよ。浦風の物覚え自体は悪くないい、早いほうだと思うし」
駄目な
それに比べたらむしろ順調な方だと3人が口を揃えて言ってくれた──お世辞かもしれないけど。
(まぁ、
慣れない他人の身体で、かつ「水に浮いて行動する」なんて前代未聞の状況で最低限動けてるだけ、なんぼかマシなんだと思おう。
* * *
続いて午後からは砲撃の訓練となった。
元々(男の頃は)サバゲーが趣味だったから、銃を撃つなら任せろー(バリバリ)……そう思っていた時期が私にもありました、ええ。
『艦これ』プレイヤーの方々は、ゲームを立ち上げて、浦風の立ち絵をよく見ていただきたい。
はーい、青髪ボインのセーラー服美少女が、両手に銃(?)らしきものを持って、にっこり笑って立ってますねー。
美少女の胸……ではなく両手に注目してみましょう。
右手に持ってるのは12.7cm連装砲(を基にした艦娘用武装)なんでしょうけど、銃身はともかく、その根元の弾丸・薬莢その他諸々が収められていると思しき部位、重心バランス悪過ぎでしょ! しかも照星とか命中を補助する構造も、何もついてないし。
左手に持ってるのは九四式爆雷投射機……ではどう見てもありませんね。副砲かなー? 子供のおもちゃか三流SFアニメに出てきそうな形状の銃。
──こんなモンをブッパして、何百メートルも離れた敵に当てろと言うのか?
「無理ぽ」と言いたいのは山々なんだけど、実際、艦娘はソレで深海棲艦と戦って成果を上げてるんだから、この場合、
「浦風、当たらなくて落ち込むのはわかるけど、こういうのは練習あるのみよ! 大丈夫、雷が見守っててあげるから」
うん、ありがとうロリおかん。その心遣いはうれしいけど、落ち込んでるのは微妙に違う理由だから。
まぁ、そうは言っても、実戦に出て「(自分の砲撃が敵に)当たらなければ
(これ、手持ち型とか腕装着型の砲はまだいいけど、戦艦とか重巡洋艦の背中の主機関に備え付けられてる砲って、どうやって狙ってるんだろうなぁ)
頭の片隅で艦娘の神秘(?)に想いを馳せつつ、その後、何度か休憩をはさみつつ、日が暮れる直前まで私は静止標的相手の砲撃訓練に精を出すことなったのでした、まる。