艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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 私が、この『艦これ』の世界(と言ってよいかは微妙に疑問だけど)に出現して3日目、艦娘としての訓練を開始して2日目の午前は、昨日に引き続いて海上での基礎訓練……ではなく、初の座学の時間になった。

 

 「浦風よ、こちらじゃ」

 朝ごはんのあと、初春に手を引かれて座学の“教室”とやらに向かう。ちなみに、今日は初春たちのグループが(訓練に)つきあってくれるらしい。

 入口の上に「講義室」の名札が掲げられたその部屋は、5メートル四方くらいの広さで、小中学校でおなじみの生徒用机&椅子?(正式名称は知らない)が20個ばかり並べられて、一方の壁には黒板が設置されていた。

 

 「ぅわぁ~、懐かしいなぁ」

 成人男子(もと)の視点で見れば、いかにも子供用で窮屈そうな机と椅子だが、駆逐艦娘としてミドルティーンの女の子程度の体格になっている現状だと、それほど違和感はない。

 

 「その言い方からすると、浦風さんは本来はだいぶ年長の方なんですね」

 「ちょ、ちょっと、朝潮ちゃん、艦娘になる前のことを詮索するのは、その、マナー違反だと思うんですけど」

 私の言葉尻を捉えた朝潮に磯波が苦言をていしてくれた。

 「あ……そうですね。失言でした。すみません」

 素直に朝潮が頭を下げてきたので、慌てて止める。

 「気にせんでえぇ。(うち)は……うん、確かに中学はだいぶ前に卒業しとるよ」

 三浦湊(おれ)は大学生だが、“夢の記憶”で見た限りでは戸浦美波(ほんもの)は高校生みたいだったので、あえて曖昧な言い回しで逃げる。

 

 ちなみに、この世界でも中学では義務教育の範疇だ。ただし、13歳以上の女性の場合、病院その他で“検査”を受けた際、艦娘になれる資質があると判明することがある。

 その場合、本人にもその事実が告知され、そのうえで本人が希望する場合、在学中であっても、15歳になった時点で艦娘となり、軍務に就くことは可能だったりする。

 それを実行する者はさほど多くはないが、それでも経済的あるいは家庭環境的な理由から早期に艦娘になることを選ぶ者も、決してゼロではないのだ。

 「ふむ、ま、わらわのように成人式を迎えておるのに、艦娘化すると駆逐艦になるケースもあるゆえ、気にする必要はないじゃろうて」

 広げた扇で口元を隠しながら、初春がそんな風に嘯いたので、この話はお開きとなった。

 

 雑談が一段落したところで辺りを見回すと、席に着いているのはウチの提督配下の駆逐艦娘()ばかりでなく、他の提督配下だと思われる見慣れない艦娘(ひと)も混じっていた。

 どうやら座学に関しては、この基地内の艦娘が合同で受講するらしい。

 

 と、ちょうど授業開始の時間になったらしく、本日の“教官”である重巡娘の妙高さんが講義室に入って来た。

 「おはようございます、皆さん」

 井上提督(うちのじょうかん)のもとに妙高型はいなかったはずだから、この人も他の提督の部下なんだろう。

 (まぁ、適役っちゃ、適役か)

 黒髪をショートカットにした美人さんで、既に改二に改装済みらしく、濃紫のスーツ風上着とタイトスカートの組み合わせが、これでもかというくらい“有能な女教師感”を醸し出している。

 これが羽黒さんだと「ちょっと頼りない新米教師」、足柄さんだと「婚活に精を出すOL」っぽく見えるのが不思議だよなー。

 (その伝で言えば那智さんは……うん、正しく、女性士官(ウェーブ)っぽいかも!)

 そんなとりとめもない連想をしつつも、真面目な顔つきで“先生”の話に耳を傾けている(ふりをする)私。

 

 ちなみに本日のテーマは「陣形とその効果」とやらで、艦これプレイヤーにはおなじみの陣形──単縦陣、複縦陣、輪形陣、単横陣について説明してくれている。

 ……ん?

 「はい、先生!」

 疑問を感じた瞬間、反射的に手を挙げてしまっていた。

 

 「あら、確か貴方は、井上提督の配下に新たに加わった浦風さん、でしたね。何でしょうか?」

 幸いにして妙高さんは、唐突な私の挙手にも怒ることもなく、話を聞いてくれた。

 「えっと、陣形には、もうひとつ梯形陣とかいうのもあったと思うんですけれど」

 「よく勉強していますね。確かに梯形陣(それ)もあります。見栄えがよいので、かつては観艦式などで用いられた陣形ですね。ですが……」

 ちょっと歯切れが悪い妙高先生。

 「実戦における陣形としては少々使いづらいため、あまり使用されることはありません。一応、“様々な局面にそれなりに対応できるオールラウンダー”と言えなくもないのですが」

 ああ、うん。その面では複縦陣の方が上手(うわて)だし、完全にアレの劣化版だもんね。

 「了解しました。ありがとうございます」

 「いえいえ。疑問を感じたらすぐに質問するという熱心な姿勢は好ましいですよ。他の皆さんも、同様にわからないことがあったら聞いてくださいね」

 にこやかに私の受講態度を褒めると、妙高さんは再び講義を再開する。

 (そーかー、この世界線でも梯形陣は“いらん子”なんだなー)

 昔から艦これプレイヤーにとっての大きな疑問(なぞ)のひとつが、この世界でなら解けるかと思ったんだけど、そうは問屋が卸さなかったらしい。

 

 その後、1時間ごとに15分の休憩をはさみつつ、お昼時までの3時間の講義を受けて、すっかり学生気分に戻った私は、お昼ご飯を食べるべく初春たち3人と食堂に向かったのだった。




話し言葉にちょくちょく“浦風”の面影が……
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