艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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 基本的にシュミ(というかフェチ)色の強いAnotherですが、その中でも特に自分の好みに走ったのがこのAnother5。これを読んで、歪んだシュミを抱くようになった方が万一いたら、ごめんなさい。


Another5-1.魅惑の黒に誘われて(起~承)

[起]

 

 月村青雲(つきむら・せいうん)少佐は有意識艦指揮官──すなわち“艦娘の提督”である。

 

 つい先日二十歳になったばかりの彼は、士官学校を卒業してすぐにこの鎮守府に着任したまだまだ新米の提督だが、周囲の評判は悪くない。

 上官である鎮守府の総司令官や先任提督からは「堅実かつクレバーな戦略を好む、地味だが有能な新人」、部下である艦娘たちからは「戦闘時は落ち着いた指揮官、ふだんは気のいい兄貴分」と目されている。

 ごく一部に、「体格がヒョロくて軍人にしては頼りない」という厳しい意見もあるが、身長そのものはこの年代の男性の平均(170センチ)を僅かに上回っているし、少なくとも士官学校では格闘や銃撃、操舵などの実技について甲乙丙の甲評価は得ていたのだから、海軍士官としての資質は十分に満たしていると言えるだろう。

 ──とは言え、いつもニコニコ笑っているような穏やかな表情から、あまり“いかつい”とか“威風堂々”というイメージがないのも、また確かではあったが。

 

 実際、客観的に見ても、普段は温厚実徳で、上には礼儀正しく、下には気さく。戦闘時の指揮は攻守にバランスがとれた器用万能型で、冷静に戦局を見極めつつ、決して艦娘を轟沈させない慎重派。休日の趣味は釣りで、鎮守府の食堂を預かる給糧艦娘・間宮に釣果を時折差し入れしている……という絵に描いたような好青年だ。

 もっとも、完璧超人だとか聖人君子だと言うワケでは決してなく、月村提督とて未だ年若い男。実はあまり他人に吹聴したくないひとつの性癖(しゅみ)をこっそり隠し持っていたりするのだ。

 

 さて、話は変わるが通常の艦船を指揮する提督と、有意識艦指揮官(かんむすのしきかん)の間には、その能力適性以外にもひとつ大きな違いがある。

 “艦娘の提督”は、部下(の艦娘)に対する──言葉は悪いが──依怙贔屓が認められているのだ。いや、むしろ“お気に入り”を作ることが密かに推奨されていると言ってもよい。

 と言うのも、十把一絡げに公平・公正に扱われていた艦娘よりも、提督と親交を深めた(意味深)艦娘の方が、その戦力を飛躍的に伸ばすことができるからだ。

 これは提督と艦娘の関係が、単なる上司と部下ではなく、RPG風に言うと召喚者(サモナー)とその使い魔の関係に近いことに由来すると言われている。

 そして月村提督にも、当然、配下の中に“お気に入り”の艦娘がいるわけだが……。

 彼の贔屓艦娘は以下の通りだ。

 

 ・航空戦艦 伊勢、日向

 ・重巡洋艦 古鷹改二

 ・駆逐艦 秋月、タシュケント

 ・海防艦 佐渡

 

 ──おわかりいただけたであろうか?

 

 そう、この男、爽やかな貌して実は「重度の黒インナーフェチ」だったりするのだ!

 

 まぁ、ロリコンだとかNTR趣味だとかに比べれば、あくまで「個人の趣味(このみ)」の範囲であり、道徳的に非難されるほどのコトでもないのだが、それでもやはり若い男、そして提督として、配下の艦娘(おんなのこ)にはあまり知られたくないのも事実だった。

 ……その割に、秘書艦には大天使フルタカエルこと重巡娘の古鷹改二を指名しているあたり、性癖というのは抑えきれないものなのかもしれない(本人に言えば「いや、性格と能力で選んだんだよ!」と反論するだろうが)。

 

 幸いにして、いちばん接する機会の多い古鷹がソチラ方面にウブな子なので、彼のシュミは未だバレていないが、駆逐艦娘としても小柄な部類に入るタシュケントや、駆逐艦以上に幼い海防艦の佐渡に妙に熱っぽい視線を向けていたことを、他の艦娘に見咎められたことはある。

 その時は「苦労の末、入手したレア艦だから、感慨深くて」と言い訳して、なんとかロリコン疑惑は免れた。

 

 しかし……嗚呼、やはり人は己れの業からは逃げられないのだろうか。

 その日、月村提督の執務室に3個の小包が誤配(?)されてしまったのだ。

 

 

[承]

 

 「提督! 提督宛にお荷物が届いてましたよ」

 優しくて気配り上手な我が鎮守府自慢の秘書艦・古鷹が、そう言って執務室に入って来たのは、20:00を少し回ったあたり。そろそろ僕も、今日の執務を終了しようかと思っていた頃合いだった。

 見ればLサイズピザの箱を4つばかり重ねたような大きさのジュラルミン製の箱を3個まとめて運んで来てくれたようだ。

 

 「ご苦労様。重くなかったかい?」

 「いえいえ、私、これでも重巡ですから。それに箱自体、それほど重いものが入ってるわけじゃ、ないみたいですよ」

 渡された箱のひとつに貼られた伝票を見たところ、大本営直属の研究所から送られてきたものらしい。何か試作品の新装備かな?

 

 「ありがとう。あとで中身は確認するから、とりあえず、そのサイドテーブルにでも積んで置いておいてくれ。それと今日はもうそろそろ上がっていいよ」

 「あれ、まだお仕事残ってるようなら、お手伝いしますけど……」

 「なに、この2枚に一通り目を通してサインするだけだからね。10分もしないうちに終わるさ」

 片目をつぶって下手なウィンクをすると、古鷹も納得したようでニッコリ笑って「では、お先に失礼させていただきます!」と敬礼して部屋を出ていった。

 

 「うーん、そろそろお腹が空いてきたし、さっさと残りを済ませよう」

 気合を入れて書類を内容を確認し、どちらも問題はなかったので、責任者としてサインをして、書類を「処理済み」のボックスへと投げ込む。

 それじゃあ、僕も食堂に行って夕食を……と思い、執務席から立ち上がったところで、ふと右脇のサイドテーブルに置かれた荷物が目に留まった。

 (さて、どうしよう。別に緊急マークは貼られていないから、明日処理しても構わないとは思うのだけど……)

 

 よく見れば、似たような箱3つで送り主も同じなんだけど、それぞれ右上に「月」「村」「雲」と異なる漢字1文字がプリントされたシールが貼られている。中身が違うのだろうか?

 

 「僕の名前? それにしては“青”がないのが変だな」

 あるいは後から「青」のシールが貼られた箱も届くのかもしれない。

 もっとも、今のところは此処にある3つの箱への対処を考えるべきだろう。

 

 とりあえず僕は──

 

1)「雲」の字の箱を開けた →転[雲]へ

2)「月」の字の箱を開けた →転[月]へ

3)「村」の字の箱を開けた →転[村]へ

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