艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world- 作:嵐山之鬼子(KCA)
■エピローグ【叢雲】
「──そんなワケで、ボクは今、提督兼艦娘として日々の軍務に精を出しているわけなんだよね」
「? どうしたの、叢雲? いきなりひとり言を呟いて……」
第二艦隊の僚艦である伊勢が、不思議そうに聞いてくる。
「あ、いや、別に何でもないから、気にしないで!」
いくら道中の安全は“ほぼ”保証されている遠征任務とは言え、まだまだ「艦娘としては」新米の身で、「艦隊演習」前に物思いにふけっていたなんて言えるはずもない。
そう、最近のボクは、可能な限り艦娘として遠征任務に参加するようにしている。
これは、せっかく艦娘になったんだから、最前線でも指揮が取れれば作戦の幅が広がるのではと考えたからと、そのためには自分自身をいざという時の予備戦力として計上できるくらいには鍛えておきたいと思ったから……だと、
(もっとも、ソレだけじゃないんだけど)
あの時、平賀准将が言っていたとおり、ごくごくゆっくりではあるけど
また、配下の艦娘達には、(細かい事情はスすっ飛ばして)
吹雪や朝潮といった真面目な
(実はソレも違うのよね~)
さっきも言ったとおり、叢雲としての
だからこそ、こうやって艦娘として海に出ている時くらいは、
まぁ、そのぶん秘書艦である古鷹には、書類仕事とかを任せることになって、迷惑かけちゃってるんだけど。
(今度、間宮さんトコ連れて行って、何かおごってあげようかしら)
そう言えば、睦月型の子たちが夏向けの新作メニューが並んでたとか言ってたから、私も食べてみたいし……って、いかんいかん。
(艤装着けた状態で気を抜くと、つい叢雲としての思考&言動に引っ張られちゃうんだよね)
気を付けていれば防げるし、実際、鎮守府で提督してる時は意識して
「注目! 10時の方向に
旗艦である日向からの報告で、それまでどこかのんびりした空気の漂っていた第二艦隊全員が臨戦態勢に入った。
もちろん私も例外じゃなくて、背部ユニットから延びる左右のマジックアームの先端に備えつけられた12.7cm連装高角砲のロックを外し、いつでも撃てる状態に切り替え、敵が射程内に入るのを油断なく待ち構える。
「ふふっ。いよいよ
■エピローグ【初月】
「──そんな経緯で、僕は今、日々の軍務に精を出している」
「? 何か言った、初月?」
第三艦隊の僚艦にしてルームメイトでもある秋月が、不思議そうに聞いてくる。
「あ、いや、別に何でもないから、気にしないでくれ、姉さん」
そう、ルームメイト。
今の僕は、表向き「秋月型の艦娘・初月」としてこの鎮守府で暮らしているんだ。
ついでに言うと、僕が本来は「月村青雲提督」であることは、古鷹を除く艦娘たちには公表していない。
いや、時期を見て、まずは各艦隊の旗艦にはそれとなく教えて、そこから個々の艦娘たちにも伝えてもらうつもりだったんだけど……。
あまりに無邪気に“妹”の着任を喜び、なにくれと世話を焼いてくれる(第三艦隊の旗艦でもある)秋月の様子に気押されて、実は2ヵ月経った今も、真実を口にできてないんだ。
幸いにして、秘書艦の古鷹が「病気療養中の提督の代理」として各業務を処理してくれてるのと、基地総司令からのフォローもあるおかげで、現在のところ鎮守府運営には大きな支障はきたしていないのが救いだ。
──実をいうと、最近は、特に問題がないなら、このまま艦娘・初月として暮らしていくのも悪くないんじゃないかと思ってたりもする。
例の平賀准将が言っていた通り、徐々に初月としての
それに──正直、指揮官として後方で指揮するより、最前線に出て戦う方が
(とは言え、いつまでも古鷹に提督業務を任せっぱなしにするわけにもいかないだろうな)
色々理由をつけて部屋を抜け出しては、執務室に足を運び、提督としての任務を処理してるけど、さすがにそろそろ限界だろう。
(とりあえず、姉さん以外の第二と第四の旗艦に僕のことを明かして、あとは古鷹も交えたその4人で相談してみるしかないか)
二段ベッドの下段で横になり、上段で「おやすみなさーい」と挨拶する“姉”にこちらもお休みと返しながら、これからの
■エピローグ【村雨】
「村雨姉さん、三時の方向から敵爆撃機、襲来です」
「はいはーい、春雨、報告ありがとね!
敵の先制を防げたこともあって、特に苦労することもなく、わたしたちは無事に敵を撃破して、鎮守府に帰投することができた。
「それじゃあ、今回の任務はこれにて終了。みんな、お疲れさま!
「はい、村雨姉さん」
あの日──研究所から戻って、総司令と面談した日の翌日から、ウチの鎮守府のシステムは大きく変わった……っていうか、変えざるを得なかったのよね。
というのも、
この状態でこれまで通り「月村提督」として振る舞うのは難しいと考えた
あ、村雨が
もちろん、ソレでちょっとした混乱はいろいろ発生しちゃったけど……結果的には、丸く収まったし、みんなに隠し事はしなくてよかったなって思うの。
まぁ、春雨みたく、あの事件の後にうちの鎮守府に来た子は、そもそも村雨の素性を知らないんだけどね。
古鷹さんに貧乏クジを引かせるみたいな形になっちゃったのは、ちょっぴり申し訳なかったけど、「いいんですよ。提督……もとい村雨さんも色々大変でしょうから、私に任せてください」って言ってくれたの。つくづくイイ人よね~。
コンコンと執務室のドアをノックすると、「はい、どうぞー」と声が聞こえる。
──ガチャッ
「はいはーい、艦隊帰投でーす。いい感じに勝てましたよー!」
本作における月村提督の艦娘化は、前例(『時ナラヌ雨ニフラレテ』『任務娘・大淀の奇妙な愛情』)がある通り、「天然艦娘理論」によるものです。
この世界の艦娘は、現在は特殊な手術(艤装適合処置)を受けた素質のある若い女性が“なる”ものなのですが、ごくごく稀に特にそんな処置をしなくても艤装を装備できる人がいて、そういう人材を(某漫画の天然道士ならぬ)天然艦娘と呼んでいます。天然艦娘と言えど、艤装等に触れる機会がなければ、普通の一般人(ちょっと身体能力が高いくらい)として一生を終えるのですが、逆にそういう機会があると問答無用で艦娘として“覚醒”してしまいます。今回の月村提督も、「艦娘の衣装ひと揃えを着用」したことをキッカケとして、艦娘になってしまったワケです。
──え? 「彼宛に、艦娘衣装(そんなもの)が“誤配”されたのは本当に“偶然の事故”だったのか」?
……勘のいいガキはキライだよ。