艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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だいぶ短いですが、ある意味今回は、主人公の覚醒(じかく)回、と言えるのかも。


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 昼食後、午後からは再び演習場に出て、砲撃のおさらい、そして新たに雷撃──魚雷による戦闘のイロハについて、初春たちに教わることになった。

 

 「いまだッ──そこ!」

 水中に僅かに白い航跡を描きつつ、3発連続して放たれた魚雷が、動標的(といっても海中に敷設されたワイヤーに連動した単純な動きしかできない代物だけど)に見事に命中する。

 

 「ふむ、これまで放った18発中、15発が命中、1発が至近で外れは2発だけか。

 浦風よ。まだまだ素人の域は出ぬレベルではあるが、雷撃についてなかなかセンスがあるようじゃの」

 ここまで練習を続けていたところで、意外と高評価を初春からもらうことができた。

 

 「ホントですね。恥ずかしながら、朝潮は雷撃戦の練習を始めたばかりの頃は、動標的にほとんど当たった記憶がありませんでした」

 朝潮が同調し、磯波もコクコクと頷いている。

 

 「あはは、ありがとぅの。まぁ、多少なりとも見どころがあるんなら幸いじゃけぇ」

 ニッと笑ってお礼を言っておく。

 とは言え、私が天性の魚雷ハンター……この言い方だと魚雷“を”狩るみたいだしやめよう。某雷巡姉妹みたく雷撃ファイターとしての高い素質を持っているというわけじゃないと思う。

 いや、平均的な駆逐艦娘の素養(たしなみ)として、最低限の雷撃数値は備わってはいるんだろうけどさ。

 この浦風(とうらみなみ)の身体に秘められた資質という線も否定はできないけど、たぶんもっと単純に“慣れ”の問題なんだろう。

 

 元の三浦湊(おれ)は、けっこうな艦これファンで、PCブラウザ版はもちろん、Vita版に加えてアーケード版にも一時手を出したりしていた。

 特にアーケード版は、他の2機種と違って戦闘にアクション要素があり(というかアクションゲームそのもので)、敵味方がリアルタイムで動くなかで自分で狙いをつけて攻撃しないといけなかった。

 そして、『艦これアーケード』は他のゲーム以上に、いわゆる偏差射撃や予測射撃と言われるテクニックを駆使しないと、まともに戦うことができないんだよ、これが。

 

 これは、てっとり早く言えば、「軍艦同士の戦闘では、互いの距離が遠いので、砲撃ボタンを押してから実際に砲弾が敵に届くまでに相応のタイムラグがあり、敵の現在位置に狙いをつけても当たらない(故に敵の動く先を予測して狙う)」という現実的な理論を、ゲーム内にも適用したものだ。

 

 宙を飛び音速を越える砲弾ですら“そう”なのだから、いわんや水中を進む魚雷をや(反語)。

 プレイを始めた頃は苦労したもんだけど、おもに駆逐艦・島風や軽巡・神通を愛用していた身としては、嫌でも雷撃のコツを覚えざるを得なかった。

 もっとも、その時の考え方(さすがにタイミングその他はゲームとは違うけど)なんかが、今こうして駆逐艦娘になった自分の役に立っているんだから、世の中何が幸いするかわからんものだよなぁ。

 

  * * *  

 

 辺りの風景が茜色に染まり始める頃合い──17時ごろに、ひとまず今日の訓練は終了となった。

 昨日と同じく、入渠施設(おふろ)に入ったのち、談話室で簡単なブリーフィングと雑談。その後、そのまま遠征から返って来た白露たちと合流して、今日もまた駆逐艦娘7人で晩ごはんを摂ることになった。

 なお、ここの艦娘食堂における夕食メニューは、主菜(メインディッシュ)については全員同じ(ちなみに今夜は白菜入りクリームシチュー)だけど、それ以外のサラダだとか小鉢だとかの副食(サイドメニュー)は、複数用意された中から好きなものを取っていい仕組みになっている。

 

 「それにしても、浦風ちゃん、ずいぶんとここの雰囲気(くうき)になじんだにゃしぃ」

 デザートの間宮さん謹製のプリン(さすがにコレはひとり1個と決まっている)を、美味しそうに味わいながら、睦月がそんなことを言ってきた。

 

 「そうかのぅ? 自分ではまだまだ不慣れで、周囲に面倒かけとると思うんじゃが」

 訓練もそうだし、日常に関する細々したことでも、まだ勝手がわからないことも多い。

 まぁ、この鎮守府……というか、この“世界”に来てから足掛け3日で、まだ100時間も経過してないんだから当然っちゃぁ、当然なんだが。

 とは言え、確かに自分でも、その短時間にしてはみんなと(少なくとも駆逐艦娘とは)打ち解けて上手くやれてるとは思う。

 

 朝早くに起きて、日中は身体を動かし、たまに座学。そして、食事時には仲間とワイワイ雑談しながらご飯を食べる。

 “向こう”にいた頃の不健康でボッチ気味な味気ない生活とは雲泥の差だ。

 今の環境を楽しく思っていないと言ったら、嘘になるだろう。

 

 「あ、あの…少なくとも練度に関しては、気にされる必要はないと思います。新人としては随分と覚えがよい方だと思いますし」

 磯波はやさしいなぁ。

 「訓練の成果もそうだけど、私は浦風が丁寧語じゃなくて普通にしゃべってくれるようになったのがうれしいわね!」

 

 …………はっ!

 雷に言われて気が付いたが、確かにいつの間にか「です・ます」口調じゃなくなってるな。

 いや、別に礼節とかにこだわっていたわけじゃなくて、会ったばかりの相手に馴れ馴れしく話すのはどうかと思っただけだから、自然にタメ口になれたのなら、むしろ歓迎すべきコトなんだろうけど……。

 なんだろう。何か引っかかる気がする。

 

 「それにしても、浦風って素の口調だと“方言(なまり)”が混じるんだね。それ、どこの言葉? 関西、じゃないないよね」

 「あぁ、こりゃ、呉周辺(このあたり)のモンじゃ。関西弁とは、ちぃと違うんじゃよ」

 白露の疑問に半ば無意識にそう答えながら、自分の中の違和感の正体にようやく気付いた。

 (そうだ……いつから、(うち)は、意識せんと広島弁をしゃべっとった?)

 心の中の独白でさえ、一人称が「おれ」でも「わたし」でもなく「うち」になっていることを自覚し愕然とする。

 

 ──今の俺は、本当に“(じぶん)”のままなのか?

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