艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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-エピローグ-

 「──ま、(うち)此之世界(こっち)で浦風になって以降の経緯は、そんな感じじゃ」

 「ひぇ~、そりゃまた、浦風センパイもタイヘンなメにあったんスねぇ」

 艦娘出撃待機所に隣接する波止場で、手すりにもたれかかった青髪の少女が語った、希少な艦娘としてもさらに数奇な運命に、金髪の少女が同情とも感嘆ともとれる言葉(あいのて)を漏らす。

 

 「大変っちゃ大変じゃが……ま、私としては後悔はしとらんよ。むしろ、幸運やったと思うけん」

 

 ・数歳若返った

 ・(性別が変わったとはいえ)美形になれた

 ・(命の危険があるとは言え)遣り甲斐のあるホワイトな職場

 ・人間関係も良好円滑

 

 ……と、そう考えれば、確かに(決して箇条書きマジック的強弁ではなく)この浦風は恵まれていると言えるのかもしれない。

 何より、「そうなった」ことは予想外の事態でも、「そうある、あり続ける」ことを選んだのは浦風自身なのだから、「後悔なんて、あるわけない」のだろう。

 

 「──あんたはどうなんよ? 私と似たよぉな事件()におぅて「自分は不幸だー!」とか思ぅとる?」

 「うーん、そー言われると……別に悲観してないっスね!」

 金髪碧眼の少女が、その人形めいて整った美貌に似つかわしくない、やんちゃな悪戯小僧のような笑みを浮かべる。

 無意識なのか、自らの(おそらく推定Fカップはありそうな)乳房を、ムニムニと持ちあげるように揉んでいる。

 

 「こぉら、やめとき、はしたない。さすがに人前でそれは、淑女(レディ)云々以前に、常識人(ひと)として見て痴女(アウト)じゃけん」

 苦笑とも呆れともつかない口調で“後輩”に注意する浦風。

 Dカップ(かつ元男)の彼女だからこれくらいで済んでいるが、龍驤や雷などの“ない”艦娘()だったら、嫉妬も混じって大変な権幕だったかもしれない。

 

 「ぅおっと、すんません。気を付けてはいるんスが、時々、ついヤっちゃうんスよねー」

 能天気なこの子も痴女扱いはさすがに嫌だったのか、素直に手を離す。

 

 「あ、せっかくなんで聞いときたいんスけど、浦風センパイ、恋愛とかエッチ方面は、どっち寄りなんスか?」

 「また、言いづらいことを聞くんじゃねぇ」

 不躾なその質問を苦笑を深めるだけで流せるあたり、この浦風は大した人格者(もの)だろう。

 

 「それで、わざわざ「どっち寄り」って言い方するくらいじゃから、あんたも自分の嗜好が変化しとる自覚はあるんじゃろ?」

 「あ~~、そっスね。たしかに、以前(むかし)のオレっちだったら、女子中高生だらけの環境(りょう)に放り込まれたら、興奮し過ぎてヤベェ状態だったと思うんスが、思い返すとそーゆーことは無かったっスね」

 もともとヘタレっスから、チカンやノゾキをする根性はなかったと思うっスけど──と、コメントに困る自己評価を漏らす少女。

 

 「私も似たようなモンじゃ。女になった戸惑いとか照れは、最初は多少はあったけど、1年経った今は“女の身体(これ)”が当たり前になっとるし、同じ理由で、周囲の艦娘()をそういう(性的な)目では見れんよ」

 かと言って男が恋愛対象かと問われると「うーん」と悩む──というのが、浦風の正直な気持ちではあった。

 

 「ま、将来的には、どぉなるかわからんよ。私ら同様、元男性の艦娘っちゅーのは実は何人かおるみたいじゃけど、その大半が男性提督とケッコンしとるらしいし」

 ケッコンカッコカリから本物の“結婚”にまで進んだ艦娘()も、少なからずいるようなので、彼女たちも“そう”ならないと断言はできまい。

 それを想像しても「キモい」とか「まっぴら御免」とか思わず、「ま、退役後なら、そういう人生もありじゃろ」と思えてしまうあたり、“元・三浦湊”たるこの浦風も、随分と女としての価値観と感性に染まったと言えるのかもしれない。

 

 それには、この世界で艦娘・浦風として生きていくことを誓い、改造処置を受けたあの日以降、ある“変化”が起きたことも関係しているのだろう。

 それまでは、浦風が艦娘になる以前の“戸浦美波”の記憶については、ごくまれに夢で映画を観るがごとく断片的に垣間見る程度だったのに、あれ以来、日常生活の中でも、“美波”としての記憶が意識すればある程度思い出せるようになったのだ。

 

 浦風は、これをあのお節介な神様からの最後の贈り物だと解している。

 この世界に於いて、艦娘は長くても10年前後で艤装を纏う力を失い、退役して一般人に戻る日が来る。

 そうなった時──つまり艦娘・浦風から戸籍名・戸浦美波に“戻った”時、美波としての過去の記憶が無いと多大な苦労をすることが目に見えている。

 早くに父を亡くしたとは言え、美波の母は健在だし、(美波の記憶によれば)祖父母や親戚、あるいは学校時代の知人もいるのだ。

 また、「三浦湊になった元・美波」の方は、すでに“湊としての過去の記憶”が与えられていたようだったし、それを一方的だと不公平に感じないよう配慮されたという可能性もあった。

 

 とは言え、周囲に恒常的に接する男性が提督か鎮守府勤務の軍人くらいしかおらず、提督以外の大半がずっと年長(若くても30歳以上だ)という環境で、「男と恋愛関係になる」というのは難しいかもしれない。

 

 ちなみに井上提督には、ひと月ほど前に恋人(ステディ)となる女性ができている。

 相手は、例によって艦娘だが、外見的最年長の扶桑や良妻度の高そうな祥鳳ではなく、重巡洋艦娘の足柄だったというのが、ほかの艦娘たちからすると、ちょっと意外な感はあった。

 もっとも、二次創作やら某アニメでは婚活棲鬼扱いされがちな足柄だが、井上提督配下の足柄は、女子力が(衣食住の“住”を除いて)高く、決め手が「休日に提督の部屋にお邪魔して作った肉じゃが」であった辺り、お約束と言えばお約束なのかもしれない。

 

 「そこはカツカレーじゃないんスか!?」

 「「カレーは男性も割と普通に作るからポイント低めね。(胃袋を)狙うなら外食であまり食べる機会のない家庭料理が◎よ♪」なんじゃと」

 ──などと、「如何にして足柄が提督のハートをげっちゅしたか」について、興味津々で話し合っている時点で、このふたりも十分、ガールズサイドにメンタルが片足突っ込んでいると言えるだろう。

 

 と、その時、「う~~~」というサイレンの音が辺りに鳴り渡り、次いで大淀によるアナウンス放送が聞こえてきた。

 

 「お、4回目の演習が終わったようじゃの」

 「また、舞鎮(ウチ)の負けっスか。ちょっと凹むっスね」

 今さらだが、呉鎮(ここ)に、他の鎮守府所属の金髪少女が来ているのは、合同演習のためで、浦風は1回目、金髪の軽空母娘は2回目の演習で出撃して、相応に力を示している。

 

 お互いの提督経由で自分たちのレアな事情(現実世界(?)から来た元男性)を知り、色々話してみたかったため、わざわざの待機室から抜け出して、あまり人の来ない場所で雑談していたのだ。

 

 「演習はあと1回あるはずじゃが、そろそろ戻った方がえぇな。浜風あたりがうるさそうじゃけん」

 「そっスね。オレっちもあんまりサボってると、ぼのセンパイに怒られそうっス」

 苦笑いのようなものを浮かべつつ、波止場から他の艦娘だちが観戦しているであろう待機所の方に向かうふたり。

 

 「ま、お互い、ほかの艦娘()には言えそうない変わった事情持ちじゃけぇ、何かあったら相談くらいはのるよ?」

 「マジっスか、感謝感激あめあららっス」

 「それを言うなら雨霰じゃ!」

 

 

~To be continued “SANSHITA-Centaur”Story~




旧主人公から新主人公への橋渡しはマジンガー以来の伝統! いや、マジンガー以前からもあるのかもしれませんが……。ともかく、これで物語はいったん終了。されど彼女達の人生(にちじょう)は続きます。
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