艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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黒髪ロングストレートのお姉さん、いいよね……


-05-

 一通り部屋の整理にケリをつけ、少々手持無沙汰になったので、お茶でも飲もうかと、寮の談話室(備え付けのポットと急須があるんだ)に行くことにした。

 

 「あら?」

 「あ!」

 中に入ると、そこには扶桑さんと祥鳳さんがいて、ゆったりお茶を飲んでいるところだった。

 此方から話しかけてよいものか戸惑っていたところ、気が付いた扶桑さんが声をかけてくれた。

 「貴女は……今日着任した浦風さんね」

 「は、はい。陽炎型駆逐艦11番艦の浦風です。未熟者ですが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します!」

 敬礼こそしなかったものの、反射的にビシッと気を付けして、そう答えてしまう。

 なにせおふたりとも、見かけは黒髪麗しい和装の大和撫子系美人だ。

 駆逐艦娘や軽巡娘くらいの(感覚的に)年下の子ならともかく、男時代は大人の女性とあまり(というか全然)縁のなかった自分としては、緊張せざるを得ない。

 「えっと、そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ? 一応、私達は旗艦を任されてはいますが、任務中以外は上司ぶるつもりはありませんから」

 私が緊張しているのを見て取ったのか、祥鳳さんが、ちょっと困ったような顔で、そう言ってくれる。

 「そうね。私たちのことは、貴女より少しだけ年長のお姉さんとして頼りにしてちょうだい。よかったら、こちらに来て、一緒にお茶を飲まない?」

 扶桑さんも優しい笑顔を浮かべて誘ってくれた。

 (ぅわ~、ふたりとも滅茶苦茶いい人だぁ)

 お言葉に甘えてご一緒させてもらう。

 『艦これ』的には、扶桑さんは「ネガティブ思考な不幸艦」、祥鳳さんは「影の薄い不遇艦」というイメージだったんだけど、目の前で優しい笑みを浮かべて新米駆逐艦娘である此方を気遣ってくれるその様子は「素敵な大人の女性」という感じで、初っ端から個人的好感度MAXかも。

 

 「まぁ……それじゃあ、記憶を?」

 「ええ、全部ってわけではないんですけど……」

 雑談に交えて、大淀さんたちとの事前の打ち合わせで決めておいた“身上話(カバーストーリー)”を、さりげなく披露しておく。

 ちなみに、その大まかな内容としては「適合率が低いせいか、艦娘になった際アクシデントが発生し、肉体的には問題なく艦娘・浦風なのだが、元の人間だった頃の記憶も、軍艦としての記憶も、どちらも曖昧になってしまい、困惑している」というもの。

 実際、その両方の記憶を完全に失うとまではいかないものの、似たようなケースは過去に数例あったらしいから、説得力はそれなりにあるんだろう。

 「なので、艦娘としてはトンチンカンな事をやらかしてしまうかもしれませんけど、しばらくは大目に見てくださると助かります」

 「もちろんよ。何か困ったことがあったら言ってちょうだいね」

 「ええ、私も、できる限り協力しますから」

 予防線を張った私に対して、おふたりは本気で同情してくれてるみたいで、少なからず罪悪感が……。

 (すみません、扶桑さん、祥鳳さん。この借り(?)は随伴艦(ぶか)として精一杯働くことで返します)

 心の中でそう謝罪しておく。

 

  * * *  

 

 そんなこんなでしばらく旗艦のふたりとお茶した後、今度は寮を出て、先ほどは外から見ただけだった鎮守府内のコンビニへ足を運んでみた。

 「営業時間から予想はしてたけど、セブ●レなんだ」

 散々コラボしたロ〇ソンじゃないのかーと、一瞬思ったものの、よく考えればコラボしてたのは俺がいた(現実?)世界の話で、この“艦これ世界”においては、海軍はセブン●レブンの方と仲が良いのかもしれない。

 正直、店の規模としては非常に狭い。外から見ると3メートル立方くらいの殆ど「ガラスの箱」と言ってもよい小さな建物で、入口付近にレジカウンター&バックヤード(?)があるため、実質店舗面積はさらにその7割くらいしかないんじゃないだろうか。

 店内には、食料品と生活雑貨を中心にした商品が所狭しと並べてある。品揃え自体は意外に多いが、スペースの関係かどれも1個か2個しかないので、運が悪いと売り切れが続出しそうだ。

 「いらっしゃいませー、何をお探しですか?」

 コンビニにしては珍しく店員さんが話しかけてきたが、確かに目当てのものを探すのは苦労しそうだ。

 「いえ、今日から此処に着任したので、どんなものが置いているか見に来ただけなん……」

 返事しながら振り返って、(うち)は目を見張った。

 「──え、まさか、陽炎姉さん!?」

 カウンターの内側にいたのは、焦げ茶色の長めの髪を黄色いリボンでツインテールにまとめた16、7歳くらいの勝気そうな少女。セ●イレ店員の緑の制服を着て、胸には「穂村」と書かれた名札が付いている。

 それだけならどこにでもいそうなものだが、顔立ち・雰囲気・声の3つの要素が見事に浦風の姉妹艦・陽炎型の長女にあたる駆逐艦娘を連想させるのだ。

 「あははっ、よく言われますけど、そんなに似てますか? 写真とかで見た限りでは、本人としてはそれほど似てるとは思わないんですけど」

 苦笑しているその様子からして、たぶん以前も同様の指摘を受けたことがあるんだろう。

 「す、すみません。失礼なことを……あ、私は本日より呉鎮守府に着任した陽炎型駆逐艦・浦風です」

 艦娘らしさを演出するためにも、スチャッと右手で敬礼をする。

 「あぁ、これはどうも。わたしは、この呉鎮守府支店の店員の穂村陽子です。支店長と交代でこの店に詰めてますから、ご要望などがあれば気軽にお申しつけくださいね」

 穂村さんは気さくな人柄のようで、他に客がいないこともあってか、しばらく私の雑談(というか質問)に付き合ってくれた。

 その話の中でわかったんだけど、この店は、コンビニとしては少々異色なことに客からの注文に応じて希望する商品を仕入れてくれたりもするらしい。おそらく、気軽に基地を出られない艦娘のニーズに応えるためなんだろうなぁ。

 「支店長も女性ですから、下着のサイズなんかもバッチリですよ♪」

 いくら商取引(しょうばい)とは言え、男性に細かいサイズを知られるのはやはり気まずい。その点では、ひと安心と言えるかもしれない。

 「甘味なんかは間宮さんがあるからそれほど必要ないかもしれませんけど、スナック菓子とかは欲しい商品があれば言ってください」

 「よかったら、お近づきの徴に」と某有名製菓会社の新商品らしきモノをいくつか渡してくれる。

 「店頭配布用の試供品(サンプル)です。よかったら感想をアンケートに書いてください」

 「なるほど、そういうことでしたら遠慮なく」

 2、3日分のお茶請けが浮いたと内心喜びつつ、私はとりあえずお菓子の入った袋を置きに自室へ戻ることにした。

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