艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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ちょっぴり(筆者じゃなく主人公が)お悩み回。まぁ、気になる人は気になりますよね。


-07-

 間宮さんのところから自室に戻った私は、他にやれることもないので、仕方なく本棚代りにカラーボックスに並べた本を手に取り、ラインナップを改めて確認してみた。

 「ライトノベルは、氷室冴子、今野緒雪、前田珠子、響野夏菜に樹川さとみ、若木未生、流星香……コバルト系がほとんどか」

 ブックカバーの概要を見る限り、一部を除いて、厨二ちっくというか異世界/現代ファンタジーっぽい設定の作品が多い気がする。

 もしかしたら、艦娘になったのも「自らが戦闘能力(ひにちじょうのちから)を手に入れられるから」というのが理由だったりするのだろうか。

 (とは言っても、実際の戦場は小説(おはなし)みたくカッコイイものじゃない気がするんだけどなぁ)

 などと考えてしまう私は、まがりなりにも二十歳を越えて厨二病(そのてのあこがれ)を卒業してるからかもしれない。浦風の元となった戸浦美波嬢が今の外見通り14~16歳ぐらいだったのなら、まさに該当年齢だし、仕方ないのかも。

 

 続いてコミックの方にも目を向けてみる。

 「『ここはグリーンウッド』『小山荘の嫌われ者』『エイリアン通り』『前略・ミルクハウス』『めぞん一刻』『ラブひな』『藍より青し』……こっちは半分くらいが白泉社みたい」

 しかも、ラノベの時も思ったけど、(おれ)でもタイトルくらいは知ってる有名作が多いけど、その代わりラインナップが結構古い。

 「あ! でも、この世界は1999年に深海事変が起きたから……」

 1999年末以降は戦時体制になったんだろうし、漫画やラノベ、あるいはアニメといったサブカル系娯楽は真っ先に煽りくらうだろうからなぁ。

 もっとも、今から10年ほど前の“大反攻”と呼ばれる国際的な大作戦の結果、深海棲艦の勢力圏は大きく縮小して、各国ともようやく戦時体制からは脱却できたらしい。

 たぶん、その後しばらくして日本においてもサブカルコンテンツが再び作られるようにはなったんだろうけど、“三浦湊(おれ)”が居た世界とはそれでも5年以上の断絶があるわけだ。未だに20世紀の作品の復刻版が中心なのかもしれない。 

 コミックスの中をパラパラ斜め読みしてみると、こちらは寮生活や下宿生活するものが殆どだった。

 ──たぶん、ミドルティーンの女の子にとっては、艦娘になって寮に入るという状況は、おそらく憧れと恐れが半々に同居する未知なる世界だったに違いない。

 

 不意に、その少女の想いや願いの一切合切を自分が“奪い取って”しまったことを自覚して、たとえようのない不安と悲嘆と嫌悪の念が胸の中に湧き上がってきた。

 「ぅぁ゛……がはっ……ぐぅぅぅっっっ!」

 床の上に崩れ落ち、畳に爪をたてながら、吐き気にも似た熱い塊りのような情念を必死に堪える。

 「………はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁ…………」

 何度も深呼吸を繰り返して、何とか落ち着くことができた。

 「落ち着け、私。なにも美波が消滅したと決まったわけじゃない」

 なんとか身体を起こし、部屋の3分の1程度の面積を占める2段ベッドの下の方に背中を預けて寄り掛かった。

 

 「物語とかだと、こういう他人に憑依するケースだと、いくつか想定されるパターンがあったよな」

 おおまかに分けると「元の意識(魂?)が身体に残っている場合」と「元の意識がはじき出されてしまっている場合」だ。

 前者はさらに「元の意識は身体の奥底で眠っているよ」と「目覚めているけど身体の主導権がないだけだよ」に大別される。前者だと俺個人のプライバシー的には助かる反面、もし元の意識が目覚めると、俺が代理していた期間の記憶がない、プチ浦島状態になってしまうというデメリットがあるんだよな。

 逆に「美波の意識も起きてる」ケースだと引き継ぎする際の説明とかは楽だ。それと、コッチのケースなら何とか互いの意思疎通ができるようになると俺的にもさらに気が楽になる。

 

 後者の、すでに元の(美波の)魂がこの身体に無い場合──これは様々なケースが考えられる。

 最悪は、もうすでに(美波の)魂がこの世にない、冥界なり霊界なりに逝ってしまってる場合。このパターンだと、さすがにネクロマンサーよろしく死者の霊魂の召喚とかはできないだろう。死神とか見つけて交渉したら、ワンチャン?

 はじき出されたまま、その辺ないしこの身体の周囲をぷかぷか漂っている場合。これは……どうだろう。

 「──いや、ないな」

 大淀さんによると艦娘は「ある種の霊的兵器」らしい。妖精さんが見えるのや、深海棲艦に攻撃が通じるのも、言うならば霊能者の霊視やお祓いと同様の原理なのだとか。

 それなら肉体から抜け出して周囲を漂っている本人の霊なんて、簡単に見つけられるだろう。たとえ(おれ)じゃなくても、艦娘の誰かが発見してるに違いない。

 「そして残る可能性はひとつ」

 単に三浦湊(おれ)戸浦美波(うらかぜ)に憑依しただけじゃなくて、某アニメの如く「時空を超えてふたりの魂が入れ替わった」ってケースも考えられるわけだ。

 「もしそうなら、多少なりとも気は楽なんだけどね」

 三浦湊という男は、リッチでもイケメンでもないけど、一応二十歳になったばかりの大学生で三回生になるまで単位は落としてないし、身体も健康そのものだった。両親健在で家庭的な厄ネタも特にない。

 性別とルックスが損なわれたのは申し訳ないとは思うが、そもそも俺の責任じゃないし、「とりあえず戦争とか大きな危険のない平和な暮らし」とトレードだと思ってもらうしかないな。

 

 いや、別に元に戻るのをあきらめたワケじゃないよ? ただ、身体の奥押し込めでも、浮遊霊状態でも、本物の美波(うらかぜ)さんに不自由な思いをさせるわけじゃない? だったら、いっそ元の俺の身体で“活き活きキャンパスライフ(死語)”を自由に満喫してもらってる方が、まだマシだろうって話。

 「──とは言え、あまりムチャしてその後始末を押し付けられても困るけど」

 たとえば、ふたまたみつまたかけて全員はらませたとか、手を出した女がヤクザの愛人だとか、あるいは中身が女性だからBLに走って、帰ったら男の恋人ができてるとか。

 湊のルックス的にはないと思うけど……美波嬢の良識に期待しよう、うん。

 

──コン、コン、コン!

 

 意図的におバカなことを考えて滅入った気持ちを回復させてみたところで、部屋のドアがノックされた。

 「うっらかぜっ! いる? いるよね?」

 

 この元気な声は、白露かな。

 「いますよ。何か御用ですか?」

 ドアを開けて外に出ると、そこには白露の他にも初春や睦月、磯波、朝潮、雷といった同じ提督配下の駆逐艦娘が全員勢ぞろいしていた。

 

 「なに、そろそろ夕飯じゃからお主もどうかと誘いに来たのじゃ」

 「今日は浦風ちゃんが着任した記念でちょっとしたご馳走がでるにゃしぃ!」

 なるほどプチ歓迎会ってワケね。

 「それでしたら、特に急ぎの用もありませんし、ご一緒させてもらいます」

 あれ以上ひとりで考えてても息苦しくなるだけだろうし、ね。

 

  * * *  

 

 艦娘用食堂は、ごくありふれた長机と椅子が設置された、おおよそ100人くらいが同時に座れる程度の広さと席数で、その一角がすでに井上提督配下の艦娘総勢13名(浦風含む)の席として確保されてるみたいだった。

 

 「えー、それでは、本日新たな加わった新たな仲間・浦風の今後の健闘を願って……乾杯!」

 呑んべっぽい足柄さんの音頭で乾杯(と言っても駆逐勢はジュースだけど)して、私の|歓迎会(というかお食事会?)が開始される。

 一応“主賓”という理由からか、私の周りには色んな艦娘だちが入れ替わり立ち代りやって来て話しかけてくるんだけど──同格の駆逐艦娘はともかく、巡洋艦とかに席まで来られても、コレかえってパワハラで迷惑じゃね?

 「だいじょうぶ、多摩は気にしないにゃ」

 私が気にするんですけどォ!?

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