『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

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初めましての方は初めまして。
前々から書きたかったビルド×ヒロアカの小説をついに書いてみました。

1/31 タイトル変更
2/24 誤字報告ありがとうございます(_ _)


入学編
第1話 動き出したギア


 

 

 

 

 

 

 

『...ここは...?』

 

 寝起きの少女の頭の中に、誰かの声が響いた。幻聴か聞き間違いか、よく分からないが少女は起き上がる。

 

「うるさぃ...」

 

『うをっ!?誰だ!?』

 

 少女の呟いた独り言に、幻聴が反応した。少女はそれに対して特に臆せず、せっせと寝巻きを脱ぎ始める。

 あられもない姿になると、その幻聴は間の抜けた声を出して服を着ろだのなんだの言い始めた。

 

 ━━━━━━━━誰...

 

『えっ?名前?あ、ん”ん”。俺の名前は"桐生戦兎"。26歳。天っ才物理学者だ。お前は?』

 

 今度は少女の思考に幻聴が答えた。厄介な奴だな、と彼女が呟くと、質問に答えろとまた幻聴が騒ぐ。

 

子兎謚(ことよび) 希桜音(きざね)、中3...どこにいんのお前」

 

『希桜音、か。実は俺にも分かんないんだよな。どこにいるのか。新世界がこんな文房具とか服とかしかない世界な訳ないし...』

 

『新世界』という聞き慣れないワードが聞こえたが、希桜音はそれを無視して答えた。自分の予想が正しければそこしかないと思ったのだ。

 

「多分、私の中。私の個性、押し入れの、中。」

 

『個性』という聞き慣れているようで、恐らく違う意味合いで使われていそうな言葉。戦兎はその言葉について質問しようとしたが、彼の脳内にはすっと情報が入ってきた。入ってきたというよりは、情報の共有と言った方が正しいだろう。戦兎が希桜音の情報、記憶が脳内に取り込まれたように、希桜音にも戦兎の記憶が取り込まれてきた。

 情報の共有と言っても、脳内に入ってきた記憶の量には差があるようで、戦兎の記憶は全て入っていったが、希桜音の記憶は断片的な物だった。

 

「...なにこれ」

 

『多分、俺の記憶だろうな。お前の記憶も俺の中に入ってきたみたいだ』

 

 自分の記憶が読み取られた、その事実を知った希桜音は怒りと恥の感情に襲われた。しかし、彼女はそれをぶつけられないことを自覚し、その感情を壁へとぶつけた。

 

『...今日は学校だろ?行かないのか?』

 

「うっさい!」

 

 彼女は自身の押し入れから制服を取り出し、せっせと着替え、朝の街へと駆け出した。

 朝食は買い溜めしてあるカロリーメイトだけ、それを片手に彼女は走る。戦兎は彼女の行動に難癖付けるが、希桜音は無視の一点張りだった。

 

 

 

 


 

 

 

 希桜音は学校のほとんどを寝て過ごした。 戦兎が話し掛けても無視を貫く。教室で生徒達が騒ごうが、イジメの現場に遭遇しようが、昼食の時間になろうが、お構い無しに寝た。

 まるで友達がいない、というより実際友達はいない。戦兎に共有されている記憶ではその理由は分からなかったが、本人は気にしているようだった。

 

『ホントに友達いねぇんだな』

 

「うっさい!」

 

 放課後、学校帰りに人通りの少ない道を歩く彼女を弄る戦兎だったが、ふと目の前に見えた汚物に、希桜音の足を止めさせた。

 目の前に見えた汚物、ヘドロだろうか。希桜音の通う中学と同じ制服を来た男子生徒を襲っていた。

 

『あれは...』

 

 ━━━━━━━━(ヴィラン)だろうね、逃げる

 

『待て!誰か捕まってる!アイツ...お前のクラスメイトじゃないのか?』

 

 ━━━━━━━━知らない、まさか戦わないよね?

 

 さあな、と青年は呟き、希桜音の体のまま走り出した。まさか動かされるとは思ってなかった希桜音は、体の主導権を完全に奪われてしまった。

 

「誰だぁ!?」

 

 (ヴィラン)が希桜音の存在に気づいたようだ。見たな、という台詞がありそうなホラー映画顔負けのオーラを出して希桜音に襲いかかる。

 しかし、希桜音、いや戦兎はそれを素早い瞬発力で回避した。

 

 そして持っていた赤のボトル、取り出した青のボトルを振り、押し入れから腰に巻き付けるように出したベルトに挿し込む。

 

 【 RABBIT! TANK! BEST MATCH!】

 

 手馴れた動作で挿し込んだ後、戦兎はベルトのレバーを回し始めた。レバーの回転と共に、プラモデルのプラスチック枠に似たものとそれに付けられたパーツが彼女の前後に展開された。

 

 【 Are You Ready ?】

 

 覚悟は出来てるのか?とベルトが聞く。戦兎はもちろんだ、と気持ちを込めていつもの台詞を発した。

 

『変身!』

 

 その声と共に前後に展開したパーツが一つに組み合わさった。そして誕生する赤と青の英雄...とはいかなかった。

 

「ぐぅ...」

 

 変身に失敗したのか、希桜音の体は蒸気の中から転がるようにして這い出た。なんとか立ち上がろうとするが、慣れない体に戦兎は上手く扱えない。

 

「あぁ?なんだなんだ、何かあると思ったら期待外れだなぁ!ピアス付けて不良気取りのガキがァ!」

 

「もう大丈夫だ少年少女!私が来た!」

 

 マズイ、と目をつむった瞬間、誰かの声が聞こえてきた。この声は希桜音の記憶に残っている。この声の主を知っている。

 

「”TEXAS SMASH”!」

 

 その勇ましい声と共に、ヘドロ状の(ヴィラン)は吹き飛び、拘束されていた希桜音のクラスメイトは解放された。

 その筋肉質な巨体は少年を受け止め、倒れていた少女に優しく声を掛ける。

 

「ふぅ...大丈夫かい少...って、あれ?どこへ行ったんだ...?」

 

 

 

  


 

 

 

「はぁ...はぁ...」

 

『なんで逃げるんだよ。トップヒーロー...なんだろ?』

 

「うるさい!知らないし...」

 

 希桜音は逃げるようにしてあの場から去った。息を整え、近くの公園のベンチに腰を掛けると、水筒を取り出して水をがぶがぶと飲んだ。

 戦兎がいくら聞いても、希桜音は答えなかった。

 

『なぁ、どうするんだ。進路』

 

 それから数分後、希桜音が落ち着いたところで戦兎が疑問を抱いていた事を口にした。今日の授業、希桜音のクラスでは進路の話が出たのだが、希桜音を除いた全ての生徒が『 ヒーロー科 』というところへ行くらしい。ソレについては、戦兎は希桜音の記憶の断片から読み取ったのでどんなものかは分かる。

 なんでも、この『個性』と呼ばれる超常的なものを悪用する人間、即ち敵を倒すみんなのヒーローを志す人間を養成する学校らしい。

 

 問題は、彼女の進路だ。戦兎が閲覧できる希桜音の記憶はほんの一部だけのようで、閲覧できる範囲内に彼女の志望先に関わる物は何も無かった。だから、彼女が今後将来どうするのかが分からないのだ。

 

「...金、ないのは分かるでしょ?」

 

『ん?あぁ、それは見た。』

 

「カツアゲとかスリで金稼いでさ、それでも足んないから援交してさ、それでギリギリの生活してんの。だから高校なんて行けないの」

 

 自虐気味に自分の生活を明かす希桜音だったが、感傷的になる自分を嫌がったのか立ち上がって公園を後にした。

 帰りはゲーセンに屯ってる小学生を相手に金を奪い、会社帰りの社会人の財布を盗み、そして彼女は家へと帰った。

 

 夜ご飯は万引きしたパンだ。白米の方が好きだが、生憎食べる機会がない。戦兎は玉子焼きが食べたいだのアジの開きが食べたいだの言っていたが、そんなこと無視して希桜音は食す。

 

 ━━━━━━━━冷たい

 

 風呂へ入り、パパっと上がって髪の毛は自然乾燥。乾燥する前に寝床へ入る。

 

 これが彼女の日常。

 

 

 

 


 

 

 

『年頃の女の子が何やってんだかねぇ...』

 

 戦兎は希桜音の体を借りて深夜徘徊をしていた。フードを被っているが、体型からして警官に見つかったら終わりだろう。それだけは避けなければならない。

 

 ━━━━━━━━ハザードレベル...上げねぇとな

 

 この体、子兎謚 希桜音のハザードレベルは変身できるレベルに達していなかった。昼間はそれで死にかけたが、偶然助かっただけなのだ。次があるかどうかは分からない。

 

『と、ここか...ゴミの溜まり場』

 

 戦兎の目的地、それはこの街の海岸のゴミの溜まり場だった。ここは冷蔵庫やテレビ等の使われなくなった電子機器や自転車等のゴミが集められているのだ。

 

 ━━━━━━━━さ、探索探索♪

 

 

 

 


 

 

 

 それから1ヶ月後、希桜音は自身の通帳を見て驚いた。カツカツであるはずの自身の貯金は、数十万円と、大金になっていた。

 今月の稼ぎは家賃等でほとんど飛ぶはず。こんなにある訳が無い。

 

「戦兎...何したの?」

 

 希桜音は、この犯人と思われる人間に聞いてみた。この犯人はやはり戦兎だったようで、ポンと軽く言葉を返された。

 

『お金が無いなら稼げばいい。正規の方法でな。』

 

「だから何したのって!」

 

『天っ才物理学者の桐生戦兎だぞ?便利な発明品を作って売れば簡単に金なんて稼げんだよ。』

 

 自慢気に語る戦兎に、何を言えばいいのか分からない希桜音はとりあえずベッドへと潜り込んだ。

 

 ━━━━━━━━これで高校に...

 

 希桜音はハッと気づいた。戦兎の狙いに気付いた気がしたのだ。

 

「もしかして私の高校の費用のために...?」

 

『さぁな。ほら、行くなら勉強しろよ。』

 

「...うん!」

 

 ここから、彼女の新たな一歩が始まる。

  否、創られる。

 

 

 

 

 

 

 




プロフィール(1話時点)
小兎謚 希桜音
年齢:14歳
所属:折寺中学
家族構成:父のみ(家出中)
個性:押し入れ
自分の想像上の空間に物を入れることが可能。本来なら生物は入れない。
戦兎曰く、中にいれば物の劣化はしないそうだ。
作りは3LDK
出し入れは本人の意思でのみ可能。物を出す場所は本人の半径1m以内ならどこにでも出せる。
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