『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~ 作:とある世界のハンター
連日投稿は難しいです( ˇωˇ )
今回から体育祭編です。どうぞ
第14話 鳴らせ、始まりのシグナル
「おっはよ〜!」
「「「「復活はや!!??」」」」
USJ襲撃事件から2日後、遅刻ギリギリで希桜音はクラスへと到達した。
クラスの面々は暗い表情無く、笑顔で希桜音を迎える。臨時休校の間できちんと疲れは取ってあるようだった。
「遅いぞ小兎謚君!HRが始まるから席に着きたまえ!!」
角々とした腕で飯田は希桜音を席へと促す。希桜音は言われる前に既に行動しており、右手で机を触りながら自分の席へと向かい着いた。
「希桜音大丈夫!?包帯ぐるぐる巻きじゃん...!」
芦戸が後ろを向いて希桜音に話しかけて来た。蛙吹もコチラを向いており、心配そうな眼差しをコチラへと向けている。斜め後ろからも同じような視線を感じる。麗日の視線だろうか。他方面からも視線を感じる。
そんな目線を感じるのも無理はない。なぜなら、今の希桜音は右目を包帯で覆っており、さらに右腕は包帯でグルグルと巻かれているのだ。
「大丈夫大丈夫。ほら、右腕はちゃんと動かせるよ。」
そう言って希桜音は右腕をのばして見せた。指もしっかりと動いており、本人の言う通り右腕は大丈夫なのだろう。
「そっかー、相澤先生と一緒で入院したのかと思ったよ。LINEも既読付かなかったし。よかった〜!」
「先生入院してるの!?」
「おはよう。」
「「「「相澤先生復帰早ぇ!!??」」」」
入院しているという情報を得た直後、その本人は教室へと入ってきた。
「ミイラ...?」
その姿はまるでミイラのようで、顔も腕も全て包帯で覆われていた。なぜその状態で歩けるのだろうか。
「先生!無事だったのですね!」
「俺の安否はどーでもいい。なにより、戦いは終わってねぇ。」
飯田の言葉を一蹴りした相澤は、戦いという言葉を持ち出して生徒達に緊張感を持たせる。先日の件を思い出した生徒達は、恐怖に怯える者、身構える者様々だ。
「雄英体育祭が迫ってる。」
「「「「クソ学校っぽいのキター!!!」」」」
雄英体育祭、それは現代日本に置いて過去のオリンピックと同様に国民を熱狂させるイベントの一つとなっているものである。テレビでも放送され、高視聴率をキープしているイベントだ。
しかし、それに対して希桜音は疑問を浮かべる。
「襲撃されたばかりなのに、体育祭なんて大丈夫なんですか?」
「また襲撃されたりしたら...」
希桜音の言葉に付け加えるようにして耳郎も発言する。
確かに、と他の生徒達も同意する。
「逆に開催することで、雄英の危機管理体制が万全だと示すという考えらしい。」
警備も例年の5倍強化するという話から、雄英体育祭の決行は余程大切なものらしい。相澤曰く、
雄英体育祭は日本のビッグイベントの一つであるのだが、それと同時に雄英生にとっても重要なイベントである。というのも、トップヒーロー達がスカウト目的で観戦に来るらしいのだ。
卒業後はヒーロー事務所にサイドキックとして任用されるのがセオリーらしい。
「名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに見込まれれば、その場で将来が開けるわけだ。」
━━━━━━━━年に一回...計三回の見せ場か。
「その気があるなら準備は怠るな!」
「「「「はい!!」」」」
午前の授業を終えて昼休みとなった。
生徒達は体育祭の話で持ち切り、クラスは騒々しくなっている。希桜音もその内の一人だった。
「希桜音の
「先生に聞いたら使えるって。許可出しに行かなきゃ。」
蛙吹、芦戸と共に大食堂へと向かう希桜音だったが、いつもとは違う麗日に気づいて足を止めた。
「どうした?全然麗らかじゃないよ麗日。」
同じく足を止めた芦戸がツッコミを入れる。やる気が入りすぎているのか、彼女は怒りの炎にでも包まれてるかのようなオーラを出していた。
「み゛ん゛な゛!私頑張る!!」
拳を高く突き上げて叫んだ麗日は、その後クラス中を駆け回って同じ台詞を吐き続ける。
クラス中を駆け回って疲れた麗日は、緑谷や飯田と共に大食堂へと向かって行った。希桜音達も少し遅れて同じく大食堂へと向う。
昼食を終え、午後の授業も終わらせた希桜音はグラウンドへと行こうとしていた。体育祭に向けて、そして
━━━━━━━━戦兎ぉ...!!
ちなみに希桜音は今、一人である。
戦兎、及び万丈は彼女の傍にはいないのだ。
その原因は、少し時を遡り、
「なにこれ...」
希桜音はグラウンドへと向かおうと意気揚々と教室から出ようとしたのだが、大量の生徒達によって出入口を塞がれていたのだ。
汚物でも見たかのような希桜音の言葉に、ある人物が珍しく温厚に返した。
「敵情視察だろ、雑魚。
投げ捨てるように呟いた爆豪は、希桜音の横を通り過ぎて教室の出入口へと向かう。
「体育祭の前に見ときたいんだろ。ンなことしても意味ねぇから、退けモブ共」
「知らない人のことモブって言うのやめなよ!?」
希桜音のツッコミを無視して、爆豪はズカズカと廊下へと踏み込んで行く。しかし、それはある人物によって止められてしまった。
「噂のA組...どんなもんかと見に来たけど、随分と偉そうだな。ヒーロー科は皆こんななのか?」
真面目な様子でそう言った彼に、爆豪を除いたA組生徒は全力で拒否をする。しかし、それに気付いていないのか、それとも気づいていてそうなのか、彼は言葉を続けた。
「こういうの見ちゃうと...幻滅するなぁ」
「幻滅?なにが」
希桜音は疑問に思ったことをすぐさま投げ返した。
「普通科とかサポート科とか、ヒーロー科落ちたから入ったってやつ、結構いるんだよ。知ってた?」
『サポート科!?何それちょっと聞いてないんだけど。万丈連れて見て来る!!』
「あ、ちょ!」
険悪な雰囲気になりつつあるというのに、戦兎は気にせず万丈を連れてサポート科へと飛び立って行った。
━━━━━━━━場所わかんない癖に...
ムスッとした表情で目線を紫髪の彼へと戻すと、爆豪と睨み合う形で話していた。
彼曰く、体育祭の結果次第では他の科のヒーロー科編入も検討されるらしい。そして、その逆もまた然り。
「敵情視察...?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とはいえ調子乗ってると足元掬っちゃうぞって、宣戦布告しにきたつもり」
━━━━━━━━大胆不敵だなぁ
その後彼は爆豪と睨み合っていたが、B組と名乗る生徒の乱入によってそれは崩れた。仕方なしに爆豪はその場を離れようとするも、切島によって止められてしまう。
「待て待て爆豪。お前のせいでヘイト集まりまくってんぞ!?」
「関係ねぇよ」
一呼吸置いて、爆豪はこう言い放った。
「上に上がりゃ、関係ねぇ」
そう言って爆豪は教室を後にした。そして希桜音も、同じく教室を後にする。
そして時は現在、彼女は今こうしてグラウンドにいる。
そんなことはどうでもいいと、希桜音は押し入れを漁る。万丈を無理矢理連れていく際に暴れたのだろうか、押し入れの中は散らかっていた。
ガサゴソと漁っているとベルトが手に当たった。ゴミ箱から物を抜き取るようにしてソレを取ると、いつも使っているビルドドライバーとは形状が違った。
「これは...スクラッシュドライバー...?」
戦兎と万丈の記憶を遡り、コレの名前を思い出す。ハザードレベル4.0で変身可能になるこのベルトは、ボトルの成分をフルに使える代償として、ネビュラガスの影響を強く受けてしまう。変身すると好戦的な気質が剥き出しになってしまい、変身を続けていくと精神が汚染され変身者諸共戦闘兵器になる代物...らしい。
「...どうせ私も兵器だしな。」
ハザードレベルを手っ取り早く上げるなら、ビルドドライバーよりはコチラを使用した方が効率的だ。
しかし、今の希桜音のハザードレベルでは使用できない。スタークの言った言葉が正しければ、彼女のハザードレベルは3.7。未だ足りない。
仕方なく希桜音はビルドドライバーを取り出して装着した。手に持っていたスクラッシュドライバーは押し入れの奥へと追いやって、フルボトルを挿し込む。
「さぁ、実験を...始めようか。」
そうして二週間が過ぎた。今日はいよいよ雄英体育祭当日である。
控え室へと集められたA組の面々は、準備体操をする者、落ち着かない者様々だった。
「みんな!もうじき入場だ!」
飯田の言葉によって、希桜音を始めとした生徒達は緊張に引き締められた。
希桜音の斜め後方では、轟と緑谷が何やら険悪な雰囲気を醸し出していたのだが、今の彼女にそれを気に止める精神的余裕はなかった。
A組の生徒達は一塊となって、プレゼント・マイクの紹介を受けながらグラウンドへと歩いていく。長いトンネルの先、陽の光と共に見えるのは大量の観客。
「あぁ...人多ぃ...」
「希桜音しっかりー?」
芦戸は希桜音を宥めるように軽く背中を摩るが全くの無意味。寧ろ彼女は更なるストレスで押し潰されそうになっていく。
グラウンド中央へと集められた生徒達は、今年の一年の主催、18禁ヒーローミッドナイトによって選手宣誓を行うよう指示された。
観客を始めとして、多くの男共は彼女に心を奪われる。18禁が高校にいていいのかという疑問が出たが、峰田曰くいいらしい。
「静かにしなさい!選手代表1-A小兎謚 希桜音!」
驚いたような視線が、事情を知らなかった生徒達から飛んでくる。やめてくれというオーラを出しながら、希桜音は芦戸に押し出される形で前へと歩み出た。
「小兎謚さん大丈夫なの...?ガチガチに緊張してるけど...」
「あいつ入試一位通過だったからなぁ」
「俺のが
「「「いや聞いてねぇよ」」」
背後でコントが行われている中、希桜音は一歩一歩確実に前へと進んでいく。ぎこちない、まるで飯田の腕の動きのようだ。
朝礼台へと上がった希桜音は、マイクを前にした瞬間頭の中が真っ白になった。
━━━━━━━━ええええと、まずは「宣誓」、「先制」?えええで、それからそれから、なんか頑張る系の、その目標的な、頑張るぞおぉっての!!
「せ、宣誓!!!」
生徒達が嫌に静かなのが、余計に彼女を焦らせる。ついに思考が回らなくなった希桜音は、頭に浮かんだ言葉を考えもせずに口に出した。
「わ、私が一位になりましゅ!!!」
「噛んだ」
「噛んだわね」
「噛んじゃったなぁ」
『あぁもう恥ずかしい...』
『お前は親か!』
「一位は俺だクソがァ...!!」
身内からは噛んだことにツッコミが入ったが、すぐに彼らは現実に引き戻される。
彼女は今、他の生徒達に宣戦布告をしたのだ。
「「「「「それ爆豪の仕事でしょぉ!?」」」」」
A組は思わず口を揃えてツッコミを入れたが、他のクラスのブーイングで掻き消されてしまう。
自分へのヘイトに耐えられないのか、希桜音はしゃがみ込んで口をパクパクさせている。
飯田に諭されて朝礼台から降りると、会場内に設置されているパネルに第一種目と表示された。
「さ〜て、それじゃ早速始めましょう。さて運命の第一種目!」
パネルにはルーレット形式で様々な競技が次から次へと表示される。ピタッと止まると、競技名が明記された。
「今年はコレッ!」
「障害物競走...」
立ち直れず、芦戸に抱き着く形で立っている希桜音はそう呟いた。
ミッドナイトの説明曰く、計11クラス全員参加のレースで、このスタジアムの外周約4キロをぐるりと走るコースらしい。コースを守れば何をしてもいいらしい。
「さぁさぁ、位置に着きなさい!」
その言葉と共に、生徒達はスタート位置のトンネル前へと集まる。
希桜音はその集団の最後尾で、ガタガタと震えながら立っていた。芦戸は他のA組と同じく前方へと固まっている。
━━━━━━━━3...
希桜音の脳裏に過ぎった、彼女のヒーローになる理由、オリジン。
━━━━━━━━2...
2人で桜を見たあの日が懐かしく感じられた。
━━━━━━━━1...
いなくなってしまった。そこから、希桜音の生活は堕ちてしまった。
━━━━━━━━0!
「スタート!」
スタートの言葉と共に、生徒達は一斉に走り出した。希桜音を除いて。
「...さぁ、実験を始めようか」
その言葉と共に、希桜音は通常のフルボトルよりも大きい缶を取り出してシャカシャカと振った。
【ラビットタンクスパークリング!】
【Are You Ready?】
「変身!」
【シュワっと弾ける!ラビットタンクスパークリング!yeah yeaaaaaah!!】
ラビットタンクスパークリングへと変身した希桜音は、クラウチングスタートの構えを取って、トンネル目掛けて走り出した。