『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

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第16話 逃げろよテンミリオン

 

 

 

 

 

 希桜音に肩を掴まれた緑谷は、慌てて希桜音の方を向いた。

 

「ぼ、僕でいいんですか!?確かに小兎謚さんなら臨機応変に対応できる引き出しはあると思うけど、僕めちゃくちゃ狙われると思うから...」

 

「大丈夫、逃げれば勝ちだし、なにより目立つ!」

 

 右手でサムズアップをする希桜音は、隣にいた麗日とハイタッチをする。麗日も仲のいい人と組んだ方が楽しいらしく、表情が明るい。

 希桜音の加入により、残りのメンバーを考える緑谷だったが後ろから声を掛けられた。

 

「私と組みましょう!一位の人!」

 

「近!?誰!?」

 

「私はサポート科の発目明!」

 

「サポート科の人...か、この場合、サポート科のアイテムって私達使用できるの?」

 

 麗日の後ろから顔を出した希桜音は、突如現れた発目に質問した。

 発目はその質問に胸を張って答えた。

 

「大丈夫です!私のベイビー(発明品)は使えます!2位の人もいてよかった!あなた達の立場利用させてもらいます!!」

 

「利用...というと?」

 

 彼女曰く、この体育祭はサポート科にとっては自身の発明品を多くの企業にアピールする場であるため、目立つ方が都合がいいらしい。

 メンバーが4人揃った緑谷は、発目のアイテム(ベイビー)、そして希桜音のフルボトルと麗日の個性(無重力)を交えて作戦を考え始めるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 チーム決め兼作戦決めの時間の終わりを告げるブザーが鳴った。

 生徒達は騎馬を組み、始まりの合図を待つ。

 

 【スパイダー!潜水艦!】

 

 【Are You Ready?】

 

「変身」

 

 トライアルフォームのスパイダーマリンへと変身した希桜音は馬の頭である部分へと移動し、左斜め後ろに麗日、右斜め後ろは発目。そして騎手は緑谷という布陣で並び立った。

 

「麗日さん」

 

「はい!」

 

「発目さん」

 

「ふふふ」

 

「小兎謚さん!」

 

「うん!」

 

「よろしく!」

 

 桁外れの数字が書かれた鉢巻を付けた緑谷は、チームメイトの士気を確認しつつ、自分のやる気にブーストをかけた。

 

「さぁ!いくぜぇ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!」

 

 カウントダウンの言葉と共に、他のチームの意識が緑谷に集まるのが希桜音には分かった。

 

 ━━━━━━━━でも、それは読んでる

 

「3!2!1!」

 

「スタート!」

 

 始まりの合図。それと共に他チームは走り出した。緑谷の巻いている桁外れの鉢巻目掛けて。

 希桜音は緑谷に指示を促すと、緑谷は一呼吸置いてこう叫んだ。

 

「逃げるよ!!」

 

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 B組の鉄哲チームの骨抜の個性により、緑谷チームの足は泥に浸かっているかのように引き摺り込まれていく。足が動かず、彼女達はどうすることも出来ない。

 

「あかん抜けへん!」

 

「麗日さん、発目さん顔伏せて!飛ぶよ!」

 

 緑谷の合図と共に、希桜音達は身構える。緑谷は手にしたスイッチを押して、装着している小型ジェットの様なアイテムを発動。空へと飛び上がった。

 飛び上がると同時に希桜音はスパイダーの糸を使って鉄哲の鉢巻を狙う。しかし、鉄哲の右斜め後ろ、塩崎の個性:ツルによって防がれてしまった。

 

「チッ」

 

 空へ逃げると、遠距離攻撃可能な個性が緑谷を狙う。

 緑谷達の背後から耳郎の耳のプラグが伸ばされるが、フワフワと浮いていたスパイダーの糸で感知されたのか弾き返された。

 

「凄いよ小兎謚さん!索敵して死角からの攻撃を防げる!」

 

「作戦に応じてボトルは変える。何か要望があればよろしくね!」

 

「着地するよ!」

 

 麗日の声と共に希桜音達は着地する。

 本来ならサポート科のアイテムを使用しても持ち上がらないかもしれないこの重量。しかし、麗日の無重力(ゼロ・グラビティ)によって麗日以外の重力を無くすことができる。麗日には足に付けるタイプの浮遊用のアイテムを装着することで、簡単に飛ぶことが出来るのだ。

 

「どーですか私のベイビー!可愛いでしょ?可愛いは作れるんです!」

 

「機動性バッチリ!凄いよベイビー!発目さん!」

 

 ━━━━━━━━浮かしとるからやん...

 

 麗日の嫉妬チックな感情が希桜音に伝わったのか、希桜音は微妙な雰囲気を感じてしまう。しかし、この温度差は周りの熱によってスグに掻き消されてしまった。

 

『開始2分で希桜音追うの諦めたぞ!!希桜音強えからな!!』

 

『まあ、2位から4位に入れば勝ちだからな。勝てそうなとこから奪うのも作戦だろう』

 

 控え室から見ている戦兎は、今行われている騎馬戦に違和感を感じていた。(ヴィラン)とは関係無く、ある生徒の様子に、だ。

 

 ━━━━━━━━青山優雅...なぜあんなに大人しい?

 

 場所は戻ってスタジアム。

 障子の触手に隠れた峰田のモギモギによって、麗日の装着していたアイテムが地面からくっついてしまった。

 

「逃げよう緑谷君!止まっちゃマズイ!」

 

「分かった、飛ぶよ!」

 

 再度スイッチを押して、空へと飛ぶ緑谷チーム。その際麗日の装着していたアイテムは壊れてしまったのだが致し方ない。希桜音は咄嗟に押し入れへと破損部分を入れたのだが、これは恐らくいらない物だ。

 

 ━━━━━━━━終わったら捨てよう...!

 

 そして不幸は続け様に起こった。爆豪が爆破によって空を飛んで来たのだ。狙いはもちろん緑谷。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ!」

 

 爆豪の威圧に麗日はたじろいだ。

 だが、希桜音は臆せずスパイダーの糸で爆豪の腕を掴み、さらに鉢巻を狙う。しかし、爆豪は瀬呂のテープで元いた場所へと戻された。

 

「騎馬から離れてたけどいいのアレ!?」

 

 出した糸を戻しつつ希桜音は主審であるミッドナイトへと叫んだのだが、彼女曰く、テクニカルなのでいいらしい。

 もたつきながらも着地した緑谷チームは、周りに警戒しながらも敵に会わないよう移動する。

 

「着地のもたつき...ここからは麗日さんの無重力(ゼロ・グラビティ)で高めた機動性と、小兎謚さんの防御で凌ぐよ...!」

 

「さぁ!各チームのポイントはどうなっているのか!?7分経過の結果をスクリーンに映すぜ!」

 

 実況の合図と共にスクリーンには現時点での順位が表示されるが、その結果に観客を初めとして、実況さえも戸惑ってしまった。

 その結果は、緑谷チーム以外はパッとしないもので、轟チームとB組の鱗チームはポイントの変動無し。だが、ポイントが上がっているチームもいる。

 そのチームは全て、B組のチームだった。

 B組の物間が話している言葉を要約すると、第一種目はA組の個性や性格の観察の為後方を走り、この第二種目で蹴散らす長期スパンの作戦らしい。

 

 ━━━━━━━━それによってより強い印象が与えられる...てことは必ずしも僕を狙うことに固執はしない

 

「みんな、逃げ切りやすく」

「来たよ、緑谷君。」

 

 残り時間が半分を切ったタイミングで、希桜音達は足を止めて目の前の敵と対峙する。

 そう易々と逃げ切らせてはくれないようで、目の前のチームは煮えたぎった闘志をチラつかせてくる。

 

「そろそろ()るぞ...!」

 

「轟君...!」

 

「右、峰田チーム」

 

 轟と緑谷が睨み合っているところへ割り込むようにして、峰田チームが横槍を入れてきた。希桜音はスパイダーの糸を出して警戒する。

 正面の轟チームは、飯田を除いた上鳴、八百万はスケーターを履いており、機動性では緑谷チームの方がやや不利だと言ったところ。

 

「飯田、前進!」

 

「みんな足止めないで、仕掛けてくるのは一組だけじゃない!」

 

 緑谷の言う通り、彼女らを狙って複数のチームが緑谷の鉢巻を狙って来た。

 

「放電、来る!!」

 

 【スパイダー!スマホ!】

 

 【Are You Ready?】

 

「ビルドアップ!」

 

「"無差別放電!130万ボルトォ"!!」

 

 上鳴が電気を纏っていることに気付いた希桜音は、咄嗟に片側をスマホへとフォームチェンジ。その巨大なスクリーンを使って放電をガードした。

 上鳴以外の轟チームは八百万の作った電導シートで放電を防いだ。轟チームと同じく緑谷チームを狙っていた他チームは放電に巻き込まれて動きを止められてしまった。その隙に轟は彼らの足元を凍らせ、動きを完全に止める。誰にも横取りさせないために。

 

「悪いが我慢しろ」

 

「今のうちにぃ!」

 

 捨て台詞を吐いて前進する轟目掛けて、希桜音は糸を一本伸ばすが簡単に凍らされた。余りの糸は動けないチームの鉢巻を狙って放ったが、そこにはもう無く轟が全て所持していた。

 宙へと浮いて後退する緑谷チームはだったが、バックパックが壊れたらしく、失速。麗日の片足のアイテムだけでは追いつかれてしまう。

 

 【フェニックス!スマホ!】

 

 【Are You Ready?】

 

「ビルドアップ!はぁっ!」

 

 スパイダーでは轟相手に不利だと感じた希桜音はフェニックスへとチェンジさせ、牽制目的の火炎弾を放った。

 

「八百万!」

 

 しかし、その攻撃は八百万に創られた盾で防がれてしまう。さらに轟によって小さな円を描くかのような氷で行動範囲を狭められた。

 後退し続けていた緑谷達はもう後がなく、攻めるしかない。しかし、攻める手立てがなく、緑谷達は後がない。

 

「緑谷君、ボトル穴に差し込んでトリガー引いて!」

 

 希桜音はそう言ってドリルクラッシャーのガンモードとライトフルボトルを緑谷へと押し入れから直接渡した。緑谷は希桜音の言った通りにしてトリガーを引く。

 

 【Ready Go!】

 

「目ェ瞑って!」

 

 希桜音の言葉と同時に、照明弾が炸裂。

 緑谷チームは目を瞑った為、なんとか攻撃を免れたが、轟チームは遅れてしまい、視界が安定していない。

 

「次、コレ!」

 

 

 

 


 

 

 

 それから5分が経過した。制限時間は残り1分を切っている。

 様々な弾を使って逃げ延びた緑谷チームだったが、八百万の創造によって光やクモの糸、鎖や蔓、蛸足等の妨害できそうな弾は一通り対策されてしまった。

 

「チィ...!」

 

 割れてしまったスマホから、盾になりそうなタイヤの付いているバイクへとフォームチェンジした希桜音だったが、そのバイクも簡単に壊れてしまった。 

 

 ━━━━━━━━UFOフルボトルは電撃の衝撃で落ちたしな...

 

 【フェニックス!ロボット!BEST MATCH!】

 

 【Are You Ready?】

 

「ビルドアップ...!」

 

 【不死身の兵器!フェニックスロボット!yeah】

 

 上鳴の電撃を防げそうなボトルで思いついたUFOは、今手元にはない。とりあえずベストマッチにしておくべく、希桜音はフェニックスロボへとフォームチェンジした。

 

「キープ!」

 

 緑谷の声と共に足である3人は動く。

 キープするのは轟との位置と方向だった。

 

 ━━━━━━━━常に距離を置いて俺の左側に...最短で凍らせようにも飯田が引っ掛かる。上鳴の放電も小兎謚の銃で何かしら対処されかねねぇ...この野郎...!

 

 轟は冷たく燃えがる闘志を緑谷へと向けつつ、この状況を打破する策を考えていた。

 その轟の考えをぶち抜くように、飯田はチームメイトに何やら話をしていたのが、希桜音の目には映った。

 

「何か...来る!」

 

「"トルクオーバー"!」

 

 その声と共に飯田の脚に付いているエンジンから物凄い勢いの熱が放射される。

 緑谷は指示を出してどちらへ避けるか指示するのだが、目にも止まらぬスピードで鉢巻を奪われてしまった。

 

「"レシプロバースト"!!」

 

 通り抜けた後にその必殺技の名が聞こえてきた。それほど高速移動。希桜音の目にも一瞬しか映らなかった。

 

「なんだ...今の」

 

「トルクと回転数を無理矢理上げ、爆発力を生んだのだ。反動で暫くするとエンストするのだが、クラスメイトには未だ教えていない裏技さ」

 

「緑谷君、指示」

 

「言っただろう緑谷君。君に挑戦すると」

 

 希桜音は緑谷に指示を仰ぐが、彼の耳には届いていない。観客の歓声も聞こえていないようで、2度3度大声で呼び掛けて気付いたようだった。

 

「つっ込んで!!」

 

「上鳴君がいる、電撃は無理!他の行く方が未だ行ける!」

 

「ダメだ!ポイントの散り方を把握出来てない!」

 

 お互いに間違ってはないことを言い合い、動きが止まってしまう。そんな状況を麗日が打破した。

 

「よっしゃぁ!!取り返そうデク君!絶対!!」

 

 麗日に後押しされ、希桜音と緑谷は目の前の轟に、否1000万Pの鉢巻に狙いを定めた。今更フォームチェンジしている暇はない。希桜音はフェニックスロボの姿のまま突っ込んでいく。

 緑谷は腕に個性を発動させ、右手を伸ばす。轟も同じく個性を発動させ、左腕に炎を纏って防御の体制に入る。

 

 ━━━━━━━━鎧を纏う感じ!大丈夫、当てはしない!防御を崩す!

 

 緑谷は右腕を奮って轟のガードを外した。右腕を戻して、裏返しにはなっているが一番最後に奪って巻いた一番上の1000万Pを奪ってそのまま走り去った。

 

()ったあぁぁぁ!!!」

 

「待って、それポイント違いません!?」

 

 発目に指摘された通り、緑谷の奪った鉢巻のポイントは1000万ではない。70Pだ。

 

「万が一に備えて位置は変えてありましたの、甘いですわ緑谷さん!」

 

 実況が驚きの声を上げているが、それがさらに緑谷を焦りを不安を遺憾を駆り立てる。

 

 ━━━━━━━━70じゃ圏外!

 

「走って!小兎謚さん!!」

 

「分かってる!!」 

 

 スクリーンを見て今の順位が通過圏外であることを確認した緑谷は、チームに再度奪りに行くよう指示。希桜音は火炎弾をぶつけて牽制するが、八百万によって防がれてしまった。

 

「糞デクウウゥ!!」

 

 さらに爆豪の参戦で、この小さなフィールドは大混乱へと見舞われる。

 既にカウンドダウンは始まっており、その事実だけが選手達の焦りを加速させていく。

 

 手を伸ばす、手を伸ばす、しかし

 

「タイムアァァップ!!第二種目騎馬戦終了!!」

 

 タイムアップの宣告と共に、動きを止める生徒達。マイクの実況によって上位4チームが発表される。

 

「一位!轟チーム!」

 

 八百万は騎馬戦をやり終えての安堵に包まれているが、飯田は少し負い目を感じていたようで、八百万にフォローを入れられている。上鳴は許容オーバーしたのか、ウェーイとしか言えない状態になった。

 

「二位!爆豪チーム!」

 

 爆豪チームは、足として動いていた3人はこの結果に満足していたが、完膚なきまでの一位を目指していた爆豪は地面に怒りをぶつけていた。

 

「三位!鉄哲...っておい!?心操チーム!?」

 

 心操チームは騎手である心操は誇らしげな表情をしていたが、馬であった3人は不思議そうな顔をして辺りを見渡していた。

 

「...デクくん?」

 

 バックパックを外されていた緑谷の浮かない表情を見て、麗日が声を掛ける。緑谷は麗日と発目に謝罪をするのだが、彼女らは無言で希桜音を指差しして見せた。

 

「フェニックスロボの左肩に付いているこの製造ユニット。能力はロボット等の残骸を材料として取り込み、新たな武装へと変えること。」

 

 希桜音は緑谷へと歩み寄りながら、玩具としてよく売られているマジックハンドに似た機械を緑谷へと向けた。

 

「緑谷君の初撃で轟君は明らかに動揺していた。1000万を取りたかっただろうけど、そう上手くはいかないよね」

 

 希桜音は胸を張ってこう続けた。

 

「警戒が薄くなっていた頭の方を奪えたよ。緑谷君の作った、隙のお陰でね」

 

「四位!緑谷チーム!!」

 

 その実況と共に、緑谷は涙を大噴出して号泣する。

 マジックハンドの先にしっかりと掴まれている、600Pの鉢巻をクルクルと回しながら、希桜音は麗日にハイタッチをして回った。発目にはマジックハンドを返そうと思ったのだが、壊れたバックパックの修理に忙しいらしく手を離せない様子だ。仕方なくマジックハンドは希桜音の押し入れへと押し込まれる。

 

「以上の四組が最終種目へと進出だぁ!!」

 

 ここから一時間昼休憩が行われ、そして午後の部となる。

 希桜音は轟に無理矢理連れて行かれる形で細い通路へとやってきた緑谷の後を追っており、さらにその隣には同じく爆豪が立っていた。

 

「なんでいるの」

 

「うっさい黙ってろバレるだろうが!」

 

 盗聴と洒落こもうと、2人はひっそりと闇に潜むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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