『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

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第26話 二人の仮面ライダー

 

 

 

 

 

 

「オラァ!!!」

 

 空中での殴打。慣れない空中戦でも、空で地上と同じように立っていれば関係なかった。

 翼の脳無をビルの屋上へと叩きつけた希桜音は、同じビルへと降り立つ。

 脳無は疲弊しており、フラフラと立ち上がるのが見えた。

 

「フルボトルバスター!」

 

 フルボトルバスターを取り出した希桜音は、大剣状態のバスターブレードモードで斬り掛かる。すんでのところで避けた脳無は、その巨大な翼を奮って強風を発生させた。

 

「待て...!」

 

 【タカ!潰れな〜い!】

 

 スクラッシュドライバーにタカフルボトルを挿した希桜音は飛び上がり、脳無を追撃する。タカフルボトルの効果で、希桜音の背にはホークガトリングフォームと同じくソレスタルウィングが生えており、これで自由自在に空を飛ぶ事が可能だった。空高く飛ぶ希桜音は、フルボトルバスターをバスターキャノンモードへと変形させ、砲撃を撃ち込む。

 砲撃が効いたか、脳無はフラフラと安定しない飛行へと変わって行く。チャンスだと希桜音はフルフルラビットタンクフルボトルをフルボトルバスターに挿す。

 

 【フルフルマッチでーす!】

 

 青く煌めくエネルギー砲が発射され、脳無の翼を貫いた。翼の脳無は力無く地面へと落ちて行く。下にはヒーローと思われる人物が数人おり、彼らは空中から落ちてくる脳無を視認するとすぐさま捕縛した。

 

「これで一安心、他の脳無を」

 

『その必要はないぞ』

 

 もう聞き慣れた声、咄嗟に希桜音はそちらを砲撃するが既にそこにはいなかった。

 

『戦兎達はいないのか...まぁいい。ここでお前には死んでもらうぞ』

 

「エボルト...」

 

 希桜音の目線の先に立っているのはスターク。彼の立っているビルに降り立つと、彼はトランスチームガンを構えながら走り出した。

 銃撃をフルボトルバスターで斬り落としながら、希桜音も同じく走る。斬撃の間合へと入ると、バスターブレードモードで大きく振り下ろした。

 

『隙だらけ、な訳ないか』

 

 ツインブレイカーによる砲撃を避けたスタークは一旦距離をとった。

 

 ━━━━━━━━フルボトルバスターによる大きな攻撃と、それを囮にしたツインブレイカーによる小さな攻撃か

 

『ふっ、ならこいつはどうだ?』

 

 【フルボトル!】

 

 新たなフルボトルをトランスチームガンへと挿したスタークは、その銃口を()へと向けた。下にはたくさんの人集りがある、このままトリガーを引かれれば誰か死ぬかもしれない。

 希桜音は咄嗟に銃口の向いている先へと飛び込んだ。だがそれは狙い通り、銃撃を喰らってしまった。

 

「ぐっ...視界が...」

 

『サソリの毒だ、いずれ呼吸困難に陥る』

 

 銃撃を喰らってから、急に視界が覚束無くなってきた。フラフラとビルの屋上へと戻った希桜音は、スタークに一方的に攻撃される。

 

 ━━━━━━━━毒の、浄化...ジーニアス...

 

 ジーニアスフルボトルを自身に挿せば、毒は消えるはず。だがそんな事を許す相手ではない。

 

 【キョウリュウ!潰れな〜い!】

 

 ダメ元で希桜音は恐竜フルボトルをスクラッシュドライバーへと挿した。このフルボトルならなんとかなる、そんな根拠も無い気持ちが彼女の腕を動かしたのだ。

 

『チィ...』

 

 恐竜フルボトルの効果なのか、クローズチャージのゼリーが勝手に牙の形を形成してスタークを襲う。スタークは一旦距離を置いて銃弾を撃ち込んだ。だがそれも喰らわれる。

 

「...っ、と。体が、動く...?」

 

 ━━━━━━━━毒が消えた...?

 

 毒が消えた。これは紛れもない事実、だがその原因を考えている暇はない。スタークは何やら注射器のようなものを取り出し、投げた。

 だが標的は希桜音では無い。かといって市民でも無い。狙いは、翼の脳無だった。

 

『体内のアドレナリンが活性化する薬だ。これでまた、被害は拡大するだろうな』

 

 ヒーローの拘束を破った翼の脳無は思い切り飛び上がり、また何処かへと飛び去ってしまった。

 

「待て!」

 

『行かせると思うか?』

 

 脳無を追おうと足を動かす希桜音を止めるように、スタークは彼女の目の前へと移動した。

 

「どけ!!」

 

 力任せに振るったフルボトルバスターは、いとも去なされてしまった。退く気は無く、先刻の言葉通り希桜音を殺す気なのだろうか、先程のフルボトルを挿したままのトランスチームガンを構える。

 

 【ダイヤモンド!潰れな〜い!】

 

 銃口を向けられた希桜音は、後退しながら防御の姿勢を取った。毒の銃撃はダイヤモンドのシールドによって防がれ、完全に対策された。

 

 【ツイン!ツインブレイク!】

 

 フェニックスとドラゴンのフルボトルをツインブレイカーに挿した希桜音は、銃口をスタークへと向けて蒼炎の火球を放った。

 火球は全て躱されてしまったが、距離を詰める隙を作るには充分だった。フルボトルバスターを振り上げてスタークに斬り掛かる。

 

『それはさっき』

 

 見た、とは言わせない。スタークの背後にはツインブレイカーが突き付けられていた。気づいた時にはもう遅い。蒼い火球がスタークの背を襲った。

 更には前方からの斬撃。スタークは一瞬にして大ダメージを負ってしまった。

 

『チィ...()()か』

 

 個性。小兎謚 希桜音の個性、押し入れ。自分の想像上の空間に物を入れる個性。

 だがこれを知る者は少ない。彼女と交流のない者や、テレビで体育祭を見ただけの者は借り物の力(ライダーシステム)に目が行きやすいが勘違いしてはいけない。彼女の個性は押し入れだ。

 

 ━━━━━━━━ツインブレイカーが見えなくなった位置で、その部分だけ押し入れに入れた。上手くいって良かったけど、次は上手くいくかどうか...

 

 深追いは禁物だと、希桜音はまた距離を取ってスタークの出方を伺う。

 

『どうした?これで終わりか?』

 

 銃を下げて、挑発するかのように腕を下ろすスターク。明らかに誘っているが、ここで行かねば拮抗状態を保つだけだと希桜音は考える。

 

 ━━━━━━━━増援を...いや、足でまといに...って、下のヒーロー何やって

 

 何やっているんだ、言葉が頭に過ぎるよりも先に答えが分かった。

 ドサッと何かが落ちる音。そちらを振り向くと、血を流している、だけでは収まらないヒーロー達がいた。

 

『増援を期待してたか?残念、()()増援だ』

 

 このままいけばイーブンに持ち込めるか、希桜音はそんな感覚に陥っていた。だがそれは間違いだ。

 ヒーロー達を殺った人物が、彼女の目に映るまでは。

 

「えっ...と」

 

 確かコイツは、と。希桜音は記憶を巡らせる。戦兎の記憶、万丈の記憶。彼らの記憶によれば、彼は死んだはずの人間。戦兎と万丈の味方だった人間。

 

「猿渡...一海、仮面ライダー...グリス」

 

 彼女の目の前に映るのは、仮面ライダーグリス。かつては北都の仮面ライダーとして戦兎達の前に立ち塞がり、気付けば地球を救うヒーローとして戦兎達に最後まで力を貸した人物だ。

 

 ━━━━━━━━最期は消滅して消えた筈...なんで生きて

 

『コイツが生きてる絡繰りは俺と同じだ。ま、それをお前が知ることはないだろうがな...殺れ』

 

 殺れ、その言葉と共にグリスは希桜音に襲い掛かった。ツインブレイカーによる斬撃を希桜音はフルボトルバスターで受け流した。だがそれだけで攻撃は止まない。体を回転させて、グリスは踵落としを喰らわせてきた。

 

 ━━━━━━━━っ!!

 

 ガードする暇もなく踵落としを喰らった希桜音は、頭に強い痛みを覚えた。だがそれで攻撃は止まない。

 冷たい一撃が、一つ、また一つと希桜音に撃ち込まれていく。

 

 ━━━━━━━━速い...!

 

 クローズチャージとグリスでは、スペックは大して変わらない。だがそれでも希桜音が押されるのは、経験の差か、或いはハザードレベルの差か。

 

 ━━━━━━━━ハザードレベル...

 

 戦兎の記憶によれば、猿渡一海は二度目の人体実験によって強制的に変身解除されれば体が消滅するはず。そんな事が頭に過ぎり、彼と戦闘する事を躊躇う事となってしまった。

 

「っ〜、らぁ!!」

 

 ━━━━━━━━とりあえずこのままじゃマズい!倒さずに退ける!

 

 【スパイダー!ロック!ローズ!ミラクルマッチでーす!】

 

 グリスの攻撃を弾いた希桜音は一旦距離を取り、拘束出来そうなフルボトルをフルボトルバスターへと挿し込んで砲撃を撃ち込んだ。

 

『おいおい、敵は2人だぞ?』

 

 だがその砲撃はスタークによって掻き消されてしまった。彼の言う通り、敵は2人。そう簡単にはいかないようだ。

 

 ━━━━━━━━一対一ですら危ういのに複数人相手はマズい...でも逃げれる自信もない...応援も

 

 期待できない。

 なんてことは無い。

 瞬間、(ヴィラン)2人は業火に包まれた。何が起こったのかと希桜音は思考が止まるが、背後から背中を叩かれ意識を戻した。横にはエモーが立っており、希桜音の頭を撫でていた。

 

「よく頑張りまシタ、後はエンデヴァーに任せてくだサイ」

 

 彼女の指差す先、そこにはスタークとグリスと交戦するNO.2ヒーロー エンデヴァーの姿があった。

 

『チィ...されどNo.2か、ん、なんだ...ふ、ハハハ。そうか...小兎謚 希桜音ぇ!お前は殺さずにおいてやる...次あった時が楽しみだ...チャオ!』

 

「む、待て!!!」

 

 待て、とエンデヴァーは手を伸ばすがもう遅い。そこにはスタークもグリスも既にいなかった。

 

「...エモー」

 

「フフフ、言わなくても分かりますヨ。おめでとう希桜音、でも力の制御はアナタのちかr「学生に何させてんだあんた」What!?」

 

 てっきり礼を言われるものかと思っていたエモーはビックリ仰天。目を丸くしている。

 

「一応まだ学生だし、いくら緊急事態とはいえ免許の無い人間に化け物一匹押し付けるってそりゃ無いでしょ!?しかも自分は避難誘導に当たってるって何!?」

 

「適材適所という言葉がアリマシテネ...Oh...」

 

 ガミガミと恨み辛みを言われるエモーは耐えきれなくなったのか、屋上から飛び降りてその場から逃げた。希桜音もそれを追おうと動こうとするのだが肩を掴まれた。

 

「小兎謚 希桜音...悪いが一度警察の元へと行ってもらう。軽い事情聴取というやつだ」

 

 ━━━━━━━━怖ぇ...!!

 

「は、はい」

 

 その後希桜音は警察署へと赴き、ある程度の事は話した。後日、彼女は根津校長と共に警察庁へと赴き事の真相を話す事になる。

 そうして仮面ライダーロードの職場体験は幕を閉じた。

 保須の事件以降、別れの挨拶も告げる事もなく希桜音はエモーと会う機会はなかった。

彼女達は普通の生活に戻った時、彼女達は寂しさという物を覚えた。

 

「「あれが家族の優しさ、か」」

 

家族の優しさ、これは彼女達の心を癒したのだろうか。或いは━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

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