『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

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「心も体も滾らせる!」


第34話 心も体もバーニング

 

 

 

 

 

 

 

 フルボトルバスターを握り締め、希桜音は思い切りそれを振り下ろした。脳無は避けることなく、そのまま攻撃を許す。だが

 

「なっ」

 

 攻撃は効いていない。当たっていない。攻撃が当たる瞬間、攻撃箇所がゼリー状に変化したのだ。

 

「っ!」

 

 脳無は希桜音の攻撃に何の反応も示さず、口を開いて蒼い炎を放った。蒼い炎はたちまち希桜音の体を包み込み、心まで燃やし尽くす。

 

「熱、熱い、いや...」

 

 熱い。外から燃やし尽くす炎。

 

『希桜音!!』

 

「っ、らぁ!!」

 

 意識が遠のきそうになったが、戦兎の一声で目を覚ます。その瞬発力を活かした高速移動で、身体を包む炎を消し去った希桜音はフルボトルバスターを構え直した。

 

『蒼い炎に青いゼリーになれる個性、あと...貯水タンク?』

 

 ━━━━━━━━ゼリーが厄介...加熱すれば固まる?万丈、ナックル

 

『やってみる価値はあるな』

『おう』

 

 希桜音は押し入れからマグマナックルを受け取ると、フルボトルバスターを納めてそれを構えた。

 

『フルフルの両拳と両足には装甲無視のダメージが与えられる機能がある。ナックルにも効果は上乗せされるから、固まらなくてもダメージは与えられるはずだ』

 

「りょーかいっ!」

 

 放たれた火炎放射を右に避けた希桜音は、足を踏ん張ってバネの力を利用して跳んだ。圧倒的なスピードに脳無はついて来れず、ガラ空きになっている腹部へとボディーブローを浴びせた。殴られた箇所はゼリー状となって、拳を去なしたつもりなのだろうが、希桜音の予想通り、マグマの熱によってゼリー状になった箇所は固まっていく。

 

『右後ろ』

 

 右後ろ、即ち死角から伸びる脳無の左腕を、希桜音は屈んで躱した。そして希桜音は再度腹部へと拳を入れる。熱が脳無の腹部を固めていき、確実にダメージを与えられる環境が整いつつあった。

 

『真上から両腕!』

 

 脳無は希桜音の拘束をしようと考えたのか、両腕を伸ばす。だがそれは彼女達には効かない。希桜音は咄嗟に踏ん張り、力を開放。ナックルを脳無の顎へと突き刺すように突き上げた。

 

「『オラ、オラ、オラオラオラオラァ!!!』」

 

 アッパーカットを決められた脳無には、大きな隙が出来た。その隙を逃すわけがない。

 希桜音はその姿の瞬発力を活かし、身体を振り子のように揺らし、その体重移動の反動を活かしてフックの連打を浴びせる。所謂"デンプシーロール"というやつだ。

 

「っ、とと」

 

 だがいつまでも打たせてくれる訳もなく、脳無は腕を振るって希桜音を払い除けた。希桜音は後ろへと跳び退き、相手の出方を窺う。

 脳無はよろよろと体勢を立て直すと、メラメラと口の中に蒼い炎を滾らせているように見えた。ポツポツと溢れ落ちる蒼い炎は脳無の左腕へと纏わりつき、そしてそれは脳無の皮膚から突如として飛び出たゼリーへと包まれて形を形成し始める。

 

「あれ、ツインブレイカー!?」

 

 脳無の左腕にはツインブレイカーが形成されていた。希桜音は咄嗟に距離を離すのだが、それを狙い撃ちするようにビームモードで射撃されてしまった。幸いそこまでのダメージはないが、よろけてしまい着地に手間取ってしまう。お返しだと言うのだろうか、脳無は走り出して左腕を突き刺してきた。

 

「チィッ!」

 

 希桜音はそれを跳んで避けるのだが、それを襲うように脳無の腕からゼリーが触手のようにして伸びてきた。

 希桜音は腕部に備え付けられた"ディメンションスプリンガー"の効果を用いて同じように腕を伸ばし、ナックルで触手を弾こうとした。だがそれは脳無の思う壷らしく、触手は不規則な動きでナックルを奪い去り、さらに希桜音の右腕をガッチリ掴んだ。

 

「ちょ、離して」

 

 離すわけがない。抵抗する彼女の残りの四肢を同じように触手状のゼリーで動きを封じた脳無は、ツインブレイカーを彼女の腹部へと突き刺した。パイルは彼女の装甲を突き破り、彼女本体の腹部を突き刺したのだ。

 だがそれだけでは攻撃は止まない。抵抗が無くなった彼女の体はまさに的。脳無はナックルとツインブレイカーを構え、交互に連打を喰らわせていく。

 

『希桜音!動けるか!?』

『しっかりしろ!クソ!』

 

 2人の声も届かない。それほどまでに、彼女は衰弱しきっていた。

 そんな時、彼女の鼻にスっと何かが入ってきた。どこか甘い、それでいて先刻も嗅いだ匂い。

 

「っ〜!!」

 

 匂いで目が覚めたのか、意識が覚醒した希桜音は両腕両脚をゴムのように伸ばし、自身をスリングショットのようにして脳無に突撃した。その反動でゼリーによる拘束は解け、さらに怯んだ脳無からナックルを取り上げる事に成功した。

 

「ハァ...ハァ...」

 

 だがしかし、脳無から受けたダメージは決して小さいものでは無い。希桜音は片膝ついて息を整える。

 

『希桜音、さっさと片付けるぞ』

 

 ━━━━━━━━分かってる...万丈、借りるよ

 

 よろよろと立ち上がった希桜音は、装着しているハザードトリガーとフルフルラビットタンクフルボトルを押し入れへと置いやり、ドラゴンマグマフルボトルを取り出した。

 

『行くぞ希桜音!』

 

 ━━━━━━━━うん...

 

 【ボトルバーン!クローズマグマ!】

 

 マグマフルボトルをナックルへと挿した希桜音は、ナックルをベルトへと挿し込んだ。それと同時に彼女の背後に坩堝型の容器が生成される。

 

 【 Are  You  Ready ?】

 

「ビルドアップ」

 

 レバーを回し終えると、背後の容器は中で滾らせているマグマに似たエネルギーを彼女の頭上から流し込もうと傾いた。マグマは重力に従い、そのまま彼女を包み込む。マグマが冷え固まり、完全に彼女へと固着すると、余分なマグマは砕け散った。

 

 【極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!】

 

 クローズマグマへと変身した希桜音は、両拳と両脚に紅炎を纏って戦闘態勢をとる。脳無は既に攻撃体勢に入っており、蒼い炎を放った。だが希桜音はそれよりも早く、脳無へと近づき拳を打ち込む。

 クローズマグマの機能、ボルケニックモード。紅炎を宿した部位の性能が著しく上昇するという機能だ。希桜音が今紅炎を宿しているのは、移動速度とキック力が上昇している両脚と、破壊力の上昇した両腕。

 希桜音の打ち込んだ左腕は脳無の体を突き破り、脳無に致命傷を与えていた。だが未だ動けるようで、両腕で希桜音の顔面を掴み、握り潰そうとする。だがそれは悪手だ。

 

 【Ready GO!】

 

 【ボルケニックアタック!!】

 

 希桜音は空いた右手を使い、必殺技を発動させる。右腕は紅蓮の炎を纏い、脳無の胸部、即ち心臓を貫いた。

 

「っ、はぁ...はぁ...」

 

 昼間の特訓も相俟って、さすがに疲労と倦怠感に襲われた。体力も限界のようで、自動で変身が解除される。

 

『...生きてんのか?こいつ』

 

 ━━━━━━━━そんな事、知らない...

 

 希桜音はビルドフォンをマシンビルダーへと変形させると、最後に匂いがした方向へとアクセルを吹かせるのだった。

 

 

 


 

 

 

『開けた場所、道か?』

 

 ━━━━━━━━アレは...

 

 それから数分。満身創痍の体で森を突っ切る希桜音。彼女の視界には複数の人影が映った。

 

「小兎謚!?」

 

「轟、君...みんなも」

 

 複数の人影の正体は、爆豪、轟、轟に背負われている気絶した回原。そして障子と背負われたボロボロの緑谷、常闇だった。

 希桜音はフラフラとマシンビルダーから降りると、轟の元へと歩み寄った。

 

「ちょうど良かった...傷口焼いて...」

「何言って...っ、分かった」

 

 希桜音の腹部の傷を見た轟は、すぐさま左手を翳した。メラメラと滾る火は、希桜音の腹部を焦がし尽くさんとする火力で燃えていく。

 

「何があった?」

 

『脳無と交戦した。なんとか勝てたが...勝利の代償ってやつだ』

 

 腹部を燃やされ悶絶する希桜音の代わりに、戦兎が話をする。万丈と共にクローズドラゴンへと入った彼等は、フワフワと浮かびながら話を続けた。

 

(ヴィラン)の狙いは爆豪だろ?テレパスで聞いた。これからどうするつもりだ?』

 

「先生、プロ2名がいる施設へ...真っ直ぐ最短距離を行きます」

 

「爆豪を護ること、それが我々の使命」

 

『索敵は障子、轟と常闇で(ヴィラン)と対面しても大丈夫...か。爆豪、ちゃんと着いてこれるのか?』

 

「うるせぇ俺を守んじゃねぇ!!」

 

「っ...塞ぎきった」

 

 希桜音の治療も終えたようで、彼らは移動を開始する。火傷の痛みからか、希桜音は気を失ったため障子に背負われて移動することとなる。

 それから数分後、森の中を歩いて肝試しの前半のルートへと出た彼等は、麗日と蛙吹の姿を視認した。

 

「麗日!?」

 

「っ、ん...ここどこ...?っ、待って!」

 

 麗日と蛙吹は(ヴィラン)と交戦しているところのようだったが、(ヴィラン)は障子達の存在を確認すると森の中へと走り去って行った。だが希桜音はそれを追いかけようと障子の体から飛び出した。

 

『希桜音!っ、アイツは俺達が何とかするから、お前らは爆豪を!』

 

 いきなり飛び出した希桜音を追い掛けるべく、クローズドラゴンに入った戦兎と万丈は全速力で森の中へと入っていった。この時、彼等は気づいていなかった。後ろにいた爆豪と常闇の姿が消えていることに。

 

「待って、トガちゃ...」

 

 だが彼女(トガヒミコ)はあまりにも速すぎた。満身創痍の姿では、到底追いつきそうにもない。

 

 【キョウリュウ!F1!BEST MATCH!】

 

 【 Are  You  Ready ?】

 

「変...身!」

 

 【音速の帝王!F1ザウルス!yeah】

 

 F1ザウルスへと変身した希桜音は、そのスピードを活かして加速する。

 視界が揺らぐ、体が熱い。鎧の中から燃えるような熱さを感じる。それでも彼女は止まらない、止まれない。

 

 ━━━━━━━━約束を...守る

 

 蒼く燃えるその右肩は、さらに彼女を加速させていく。

 

 

 

 

 

 

 

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