『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~ 作:とある世界のハンター
追い掛け始めて2分程度。追いかけっこをしている2人は森の中の開けた場所へと辿り着いた。
「待って...トガちゃん!」
「...久しぶりです。きーちゃん」
木へ凭れ掛かる希桜音は、
「イカレ女、知り合いか?」
「フフ、友達です。手は出さないでくださいね」
分かった、それだけ答えた彼女の仲間はその行く末を見詰める。見守る、というよりは暇潰しがてらの観劇といったところだろうか。
「...強くなったね」
「うん。約束通り、会いに来たよ」
その言葉には、嬉しさではなく、哀しさが混じっていた。希桜音はフルボトルバスターを手にして、それを構える。
「おいおいおい!この数相手に正気かよ!?負ける気しかしねぇ!」
「黙ってろ。油断すんな」
「立場上、仕方ないもんね。そう...だよね」
「トガヒミコ、残念ですがそれはまたの機会に」
そう言って黒い靄、
「...っ、仮面ライダー...グリス!」
黒霧の中からは、金と黒を基調とした仮面ライダー、グリスがその拳を突き出していた。希桜音はフルボトルバスターを構え直すと、フルボトルを挿してトリガーを引く。
【フェニックス!ドラゴン!ジャストマッチでーす!】
青と赤が混じった火炎弾がグリスを襲う。だがそれはある人物によって防がれた。紫の仮面ライダーに。
「氷室玄徳、仮面ライダーローグ...!」
かつて戦兎達の前に立ち塞がり、そして父の死を乗り越えて国をまとめるための礎として、彼等と共にエボルトと戦った氷室玄徳。彼が変身するライダー、仮面ライダーローグがそこには立っていた。
グリスと同じように現れた彼は、希桜音に襲い掛かる。希桜音はそれを返り討ちにしようとフルボトルバスターを横に振り払うのだが、片手でいとも容易く受け止められてしまった。
「硬っ...!」
希桜音は急いでその場から離れようとするのだが、フルボトルバスターが掴まれて離れられなかった。この隙にグリスが希桜音に急接近、ガラ空きの腹部にツインブレイカーを突き立てる。
悶絶。脳無戦の傷の痛みが、その攻撃によって再燃したのだ。痛みをなんとか噛み殺そうと踏ん張るのだが、もう体力も限界のようで片膝ついてしまう。
「ぐっ...」
敵前で隙を見せれば、攻撃の的になるのは必然的な結末だ。
顔中継ぎ接ぎだらけの
さらに、それだけに攻撃は留まらなかった。蒼炎をものともしないローグとグリスの打打擲が彼女を襲う。もはやそこには戦闘という文字は無く、一方的な蹂躙しかない。
『希桜音!!』
『カズミンだけじゃなく玄さんもいんのかよ!?』
まさに
━━━━━━━━遅い...
『お前が速いんだよ。行くぞ』
【Ready Go!ボルテックフィニッシュ!】
ベルトのレバーを回して必殺技を発動させる。赤い機体は熱を放出し始め、蒸気機のように蒸気を発生させる。希桜音の右肩の意匠と同じ牙のオーラが彼女を包み込み、圧倒的なスピード、圧倒的なパワーを実現させた。希桜音はそのオーラを纏ったまま、ローグとグリスにラリアットを仕掛ける。
だがやはり満身創痍の体、簡単に避けられてしまった。追い討ちをかけるように、必殺技の構えをとった。
【クラックアップフィニッシュ!】
【スクラップフィニッシュ!】
ワニの口に似た紫のオーラを纏ったローグと、ゼリーの噴出によって勢いを付けたグリスのライダーキックが希桜音に狙いを定めて放たれた。
『来い!!』
だがそれは狙い通り。希桜音は押し入れの入口を開いてそれに迎え撃つ。そして彼等は、戦兎の予想通り押し入れの中へと入った。
『うし!取った!』
『玄さん!カズミン!しっかりしろ!!』
押し入れへと入れられた二人は、変身アイテムを抜き取られ強制的に変身を解除させられた。中は空洞、なんてことは無く猿渡一海と氷室玄徳がいた。
『...ん...?みーたんはどこだ...?』
『『いや自分の場所を聞けよ』』
『戦兎...万丈、ここは...?』
『玄さんも起きたか、話は後だ。希桜音、離れるぞ』
━━━━━━━━待って、まだトガちゃんと
まだ話を終えていない。そんな台詞を遮るように、空から人間が降って来た。希桜音は咄嗟に構えるが、どうやら増援のようだった。
「みんな!」
「ミスター、避けろ」
「!了解」
降って来たのは緑谷、轟、障子、そして仮面を付けた
「っつぅ!!」
希桜音は咄嗟に飛び出して、身を呈して炎から級友の身を守った。だが体力は既に限界を突き抜けている。蒼炎を受け止めた希桜音は力無く吹っ飛ばされてしまった。
「小兎謚!」
降って来た3人は希桜音の安否を心配する。だがそんな余裕は与えてくれないようで、
荼毘はその蒼炎を轟へと放ち、全身タイツの
「きーちゃん!遊ぼ?」
「待っ...て」
待て、なんて言葉に耳を傾けないトガは、ベルトに挿されたフルボトルを抜き取り、地面へと放った。希桜音は強制的に変身を解除させられ、血だらけの生身を曝け出すことになる。
「きーちゃんはこっちの方が可愛いよねぇ」
「知っ...てる」
希桜音を押し倒す形で乗りあがったトガは、手に持ったナイフを希桜音の首元へと当てた。その表情は、猟奇的で狂喜を感じさせる。
だがそのナイフは血に染まることは無かった。止められたのだ。ある人物に。
「トガヒミコ、
「...!?」
トガを止めた人物、そのシルエットは彼女はよく知っていた。姿は違えど、彼女達のよく知っている物なのだ。
『もう1人の...ビルド...!?』
金と紅を基調とした姿は、見たことは無いが紛れもなくビルドだった。女性の声を発するそれは、希桜音の元へと近づくと彼女の首根っこを掴んだ。途端に呼吸が困難になった希桜音は足をばたつかせて抵抗するが、手は離してくれない。緑谷達は自分のことで精一杯で、希桜音を助けには行けないようだ。
【Ready Go!ボルテックフィニッシュ!】
金のビルドは片手でレバーを回して、必殺技を発動させる。右腕に備え付けられた巨大な針は途端に輝き初め、さらに鋭利になったようだ。そんな針を彼女は希桜音の脳へと刺す。
だが、それで希桜音の命を絶つということは無かった。その攻撃によって起こったことは、
『...は?え、何がどーなってんだ!?』
『とりあえず行くぞみんな!』
戦兎を筆頭に、彼等は変身アイテムを取り出そうとするのだが、ある人物に奪われてしまった。
『よぉ、感動的な再会だな』
『エボルト!?なんでテメェが...!』
スタークは奪い取ったアイテムを投げ捨てると、トランスチームガンの銃口を向けて彼等との戦闘を始めた。圧倒的に不利な状況、彼等は回避に専念するしかできなかった。
「黒霧、私は先に帰るわよ」
金のビルドは希桜音を抱えると、黒霧の元へと歩み寄る。だが簡単にはいかないようで、希桜音は最後の力を振り絞って拘束から脱出、傍のスクラッシュドライバーとドラゴンゼリーを掴んで変身の構えを取る。
【ドラゴンゼリー!】
「変身!」
【潰れる!流れる!溢れ出る!】
【ドラゴンインクローズチャージ!ブルァ!】
希桜音は思考を働かせるよりも先に、目の前の
【Ready GO!レッツフィニッシュ!】
青い光線が金のビルド目掛けて放たれる。だが
「残念、
気付いた時には腹部を貫かれ、変身は既に解けていた。希桜音はそのまま意識を失い、金のビルドに担がれる。
「エボルト、フルボトルとハザードトリガーを」
『もう入手済みだ。それじゃあライダー諸君、チャオ!』
スタークは手を振りながら黒霧の中へと後退していく。手にしているのはパンドラパネルとフルボトル60種類、そしてハザードトリガーだ。そして希桜音は、金のビルドと共に闇に飲まれて行った。その先は、手を伸ばしても最早届かない。
『希桜音えぇぇ!!!』
悲痛な叫びが森の中に木霊した。だがそれは、何かを起こす力にはなり得なかった。
そしてその数分後、交戦していた
そうして彼等の林間合宿は幕を閉じる。そしてここから、世界の終焉が始まる。