『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

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短いです…オリ展開書けない…



第37話 語られたレガシー

 

 

 

 

 

 時は遡り、4年も前の話になる。小兎謚 希桜音が未だ小学六年生で、そして未だ家族が3人だった頃の話だ。

 彼女の父、小兎謚 修はその妻、即ち希桜音の母である小兎謚 命に対して嫉妬の念を覚えていた。理由は単純な物だった。稼ぎの量だ。

 命の職業は科学者だった。まだまだ若手だが、同年代の人間と比べればかなり稼いでいる部類の人間だった。対して修は一般的な社会人。仕事は出来る部類だが、それでも命と比べれば明らかに見劣りするレベルだった。

 別に稼ぎの量が原因で、家庭が回らないなんて事は無かった。娘である希桜音は、留守番程度のことなら任せられるし、そして修自身は定時で帰宅出来る実力を持っていた。命は仕事が長引けど、休みの日は家族団欒な日々を過ごすという幸せな日常を送っていた。はずだった。

 

 ある日を境に、そんな日常は崩れ去った。命が仕事場から家に帰らなくなったのだ。一日、二日、そして一週間二週間として、この家族の元に1本の電話が掛かってきた。

 

「小兎謚命が事故で亡くなった」

 

 ただそれだけだった。実験の失敗で爆発が起こったらしく、彼女はそれに巻き込まれたらしかった。余程酷い爆発らしく、ニュースにも取り上げられた。遺体は、もう誰なのか判別がつかない程に焦げていた。

 早速葬儀が行われた。形式的に進んだそれは流れ作業の如く進み、残された家族二人は逃げる如くその場から遠く離れた地へと引っ越した。周りの目が恐かったのだ。

 

 そして時は過ぎ去り春になった。希桜音は中学生へと上がり、修も新たな職場に慣れてきた頃だった。

 そんな時、彼の耳にある情報が入って来た。

 

「小兎謚命の姿を見た」

 

 情報の提供元は不明。というのも、どうやってこんな情報が彼の耳に入って来たか、彼は覚えていないのだ。だが、その情報は確実なものだという自信はあった。

 そして彼は命を探す為、家を出る事を決意した。悲しさは無かった。希桜音とは葬儀以降話す機会は減っていたし、何より自身に嫌悪感を抱かれていることは明白だったからだ。

 そしてある日、彼は自分の居場所から去る事にした。最低限の荷物だけを持ち、頭の中に浮かんでいる場所へと向かった。バスに揺られ、電車に揺られ、そしてとあるビルへと辿り着いた。

 

「お待ちしておりました」

 

 ビルへ入ると、受付の人間にそう告げられた。何が何だか分からないまま、彼は奥のエレベーターから地上十数階の部屋へと通された。

 そしてそこには、体中傷だらけのスーツの男と、そしてその隣には死んだはずだった小兎謚命が立っていた。

 修は叫んだ。だが、彼女が彼の元へ歩みを進めることは無かった。

 

 【ピーチエナジー】

 

 無機質な音声が部屋中に響き渡った。音の発生源は、命の手の中からだった。

 彼女は手にした南京錠型のアイテムを、既に巻かれているベルト(ゲネシスドライバー)にそれを装着した。

 

 【ロックオン!ソーダ!】

 

 装着したアイテム上部のロックを閉じ、右端のグリップを中央へと寄せる。グリップがアイテムに触れると、それは縦に割れるように展開し、彼女の身体を包むスーツを装着させた。

 

「変身」

 

 【ピーチエナジーアームズ!】

 

 突如空間にジッパーが出現し、それは開いて桃を模した鎧が頭に被さり展開。乳白色の鎧が展開されると変身は完了される。

 命はその姿になると手にした弓型武器(ソニックアロー)を構え、それを修へと向けた。

 

 逃げろ

 

 その時の修が感じたのは、その3文字の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

「...ま、だいたい予想は付くでしょうけど、逃げられる訳無かったんだよねぇ」

 

 思い出話に浸っていた彼女は、ふと我に返って自身の娘の顔を覗き込んでみる。追懐して肝心の彼女を忘れていたことに反省したのか、命は希桜音の頭を温容に撫でながら語り掛けた。

 

「もっとお話してあげよっか。お父さんについて。まずは実験の時の話でも...希桜音?」

 

 だが、彼女の言葉はもう届いていなかった。自責の念が、陰鬱な雨が、希桜音の身体を支配していたのだ。

 

「...そろそろ頃合いのようね、エボルト」

 

『分かった。今からそっちへ持って行く』

 

 命は部屋に備え付けられた監視カメラへ指示を仰いだ。ソレを観ていたエボルトは、予め指示されていた通りにある物を彼女の元へ持って行く為腰を上げて移動を開始する。

 

「さて、と。お話の続きをしましょうか」

 

 エボルトが移動を始めた事を察知すると、命は再び希桜音と向き合う形でしゃがんだ。だが、彼女は虚空を見詰めるばかりでそれに気付かない。見詰める、という表現よりは、其方に顔を向けるという方が正しいかもしれないのだが。

 

「...生気が感じられない。ホント兵器(アイツの娘)ね。ドラゴンゼリーを吸収して擬似的なクローズチャージと化したアイツと、同じ」

 

 ポツリと吐いた嘆きは、牢屋の中でひたすらに木霊した。

 そしてそれを突き破るが如く、軽い音が牢屋へと迫って来た。それはどこか遠足前日の無邪気な小学生のような、何かを前にして楽しみにしている子供のような気持ちを連想させるものだった。

 

『先生、どうぞ』

 

 牢屋の中へと入ったスタークは、片手に持っている白いパンドラパネルとそれに装着されたロストフルボトルを命へと渡した。命は軽く礼を言った後、再び希桜音と向き合った。今度は屈んではおらず、見下す形でだ。

 

「...希桜音、また後で」

 

 あたかも彼女を見送るかのような台詞を言った彼女は、手にしたパネルを勢いよく彼女へと突き刺した。

 

「い゛っ、あ、あああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 痛み。

 身体が焼ける。

 身体が溶ける。

 痛い。痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたぃ

 

 

 

 

 

 

 

『...チャオ』

 

 

 

 

 

 

 

 彼女、小兎謚 希桜音の▒▒はここで絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

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