『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~ 作:とある世界のハンター
補足
万丈、及び戦兎はクローズドラゴンに憑依して外へと出ることが可能
スパイダークーラーフォームへと変身した希桜音は、下で聞こえた爆音で本格的な戦闘開始の合図を受けた。
『どうするんだ?』
「迎え撃つ。今からその、準備もする」
そう言って希桜音は、支給品として配られた物の1つ、確保テープを手にした。
両サイドに配られているのは、捕縛用の確保テープ、ビルの見取り図、小型無線の3つだ。
希桜音は確保テープを右手に持ち、しゃがみながら部屋を歩き始めた。
━━━━━━━━発見...!
下の階層で緑谷と分かれ別行動をしていた麗日は、遂に核兵器を見つけた。柱の影に隠れて見てみると、希桜音は床にしゃがんで何かをしているようだった。
凍っている床を音を立てずに歩いてきた彼女は、ほっと息をつき状況を整理した。
━━━━━━━━後は連絡してデク君が来るまで見つかんないように...
「えっ...」
緑谷と合流することを想定し、麗日はこの状況を無線で伝えようとした。しかし、気づけば彼女は宙吊りにされていたのだった。
希桜音は、宙吊りにされた麗日の元へと歩み寄っていく。
「スパイダーの糸、予め張り巡らせといて正解だったね。お茶子ちゃんゴメンね、捕らえるよ」
『これは参考になる。変身で使用すると糸の量が増えるのか』
『参考って、お前戦わねぇだろ』
希桜音達が会話をしている中、麗日は必死に足に巻き付いている糸を解こうと踠いているのだが、両腕にも巻き付いた為上手く動けない。
希桜音の迎え撃つ準備とは、部屋の床面にクモの巣を張り巡らせることだった。床面はグレーのため、巣を張り巡らせた後にクーラーの能力で一面を凍らせたのだ。そうすることによって、ヒーロー側はクモの巣に気付かずに核兵器の元へとやってくる。
クモの巣は、外装に取り付けられている蜘蛛を彷彿とさせる意匠の針先から出しているため、踏まれれば釣りのように糸が引くのだ。出している糸の本数は、意匠の針の本数と同じく4本、しかしそれは直列回路の様にして繋がっており、無数の蟻地獄と化していた。
糸が引けば、後はクモの巣を氷から出すように動かして足に巻き付けるだけ。そうして麗日は捕えられた。
希桜音は左手に持った確保テープを、麗日の体へと巻き付けようとする。しかしその時、彼女等のビルが大きな揺れに包まれ態勢を崩してしまった。
━━━━━━━━爆豪勝己...!
この揺れは爆豪の起こした物だった。
人を殺傷しかねない程の爆発、さすがに見過ごせなかったようで、オールマイトに次やれば強制敗北と宣告された。
「こんなのどっちにもデメリットしかないからな...!」
怒りを抑えつつ、希桜音はよろよろと立ち上がった。よろよろと立ち上がる隙をついて、麗日が核兵器目掛けて走り出した。
それはさせまいと希桜音はドリルクラッシャーを取り出し、ガンモードへと変形。麗日の足元目掛けて撃った。
しかし、麗日は両手の肉球を合わせ、風船のように宙へと浮かんだ。思い切り踏み切って希桜音を飛び越し、核兵器の回収へと急いだ。
「っ、行かせない!」
そうは問屋が卸さないと、希桜音は扇風機フルボトルをドリルクラッシャーへと挿しこんで弾を放った。撃たれた弾は竜巻状の風を起こして麗日を巻き込んだ。
竜巻に巻き込まれた彼女は、鈍い音と共に壁へ激突して床にヘタレこんだ。希桜音はその隙を逃さず、再び蜘蛛の糸で拘束しようと伸ばすが、間一髪で避けられてしまった。
「っつぅ、解除!」
麗日お茶子
個性:
触れた物の引力をゼロにする。対象物の重さや数に上限あり。自身を浮かせることも可能である。
『こっからどうするんだ?』
━━━━━━━━スパイダーで捕縛する!
戦兎の問いに希桜音は瞬間的に答え、スパイダーの糸を一気に伸ばした。麗日はどれも間一髪で避けるが、4本の糸に圧倒され窓際へと追いやられてしまった。
ここまで来ればもう安心だと、希桜音は糸を一気に伸ばした。
モニタールームでは、緑谷と爆豪の戦闘の危険を切島に諭されたオールマイトが中止の放送を入れようとしていた。しかし、それは緑谷が口を開いたことにより中断される。
「いくぞ!麗日さん!」
無線で麗日へと伝達されたその言葉を合図に、麗日は走り出した。麗日は傍の柱へと抱き着くようにして肉球をつけ、何かの衝撃に耐えるようにした。
瞬間、希桜音の立っていた床は下からの風圧によって吹き飛ばされた。咄嗟に糸を柱へと巻き付け、空いた天井から屋外へと飛ばされないよう掴まった希桜音だが、追い討ちをかけるように麗日が仕掛ける。
麗日は折れた柱を掴んで、巨大なバットのように使い瓦礫達を希桜音目掛けて打ち放った。
「希桜音ちゃんゴメン!即興必殺、”彗星ホームラーン”!!!」
「それはホームランじゃないでしょ!?」
飛んできた瓦礫達を処理すべく、扇風機フルボトルの挿し込まれた状態のドリルクラッシャーで弾を何発か放って全て相殺しきった。
しかし、麗日の狙いは意識を瓦礫へ集中させること。瓦礫を処理している横から大穴を飛び越し、核兵器へ抱き着いたのだ。
「回収!!」
「あぁぁあ!!!」
希桜音の叫び声と共に、制限時間も終わりを告げた。最後のスピーディーな展開に、生徒の大半は圧倒され口を開くばかりだ。
「ヒーローチーム...WIIIIIN!!!」
変身を解いた希桜音は、救急ロボによって担架に乗せられ運ばれて行く緑谷を見送った後、モニタールームへと足を運んだ。今から講評の時間なのだ。
「...まぁつっても、今戦のMVPは小兎謚少女だけどな。」
「やったぜ」
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
オールマイトにMVP認定され喜ぶ希桜音だったが、横から突っ込むように蛙吹が疑問をぶつける。オールマイトは教師らしく、その理由を生徒達に逆に質問した。
それに対して真っ先に答えた生徒が一人、推薦入試合格者の四人のうちの一人、八百万百だった。
「それは、小兎謚さんが状況設定に一番順応していたからです。爆豪さんの行動は私怨丸出し、屋内での大規模攻撃は愚策です。緑谷さんも同様、あの作戦は無謀です。麗日さんは最後の攻撃が乱暴だったこと。ハリボテを核として扱っていれば、あんな危険な行動は出来ませんわ。」
その鋭い言葉に、麗日は目を伏せてしまう。
「相手への対策を熟し、核の設定に従事したからこそ、小兎謚さんは瓦礫の処理にまわざるを得なかった。」
そこから八百万は、ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘い考えから生じた反則勝ちだと言えると続けた。
しかし、小兎謚は自分がMVPであることが嬉しく、少し天狗になって話を聞いていない。それを突っ撥ねるように、戦兎が中から口出しをした。
『麗日を追い詰めた時、もっと早く拘束出来ていれば良かったな。ガンモードで牽制しながら動きを狭めていけばもっと早く行けた筈だ。』
━━━━━━━━ぬ...はい...
『入試の時に個性はなんとなく把握してたから、ニンニンコミックの分身で数を増やして対処したりとか、チョイスの問題もあったかもな。』
━━━━━━━━最初から言ってくれればいいのに
ぷすっと口を尖らせて拗ねるが、自分で考えなければ意味無いと戦兎に突っぱねられる。仕方ない、と希桜音は2回戦を観戦することにした。
2回戦はヒーロー側がB、
「さっむ...!」
隣で震えている蛙吹にコートを着せているため、薄着で震えている希桜音。轟の放った外での冷気がここまで届いてきているのだ。
ヒーローチーム勝利後、轟がビルの氷を溶かしたことにより平温へと戻った。カエルという個性により、人一倍寒さを感じてしまう蛙吹は未だコートを羽織っている。
「ゴメンなさい希桜音ちゃん...」
「気にしなくていいよ。大丈夫だから。」
暑がりなのか、希桜音はそこまで気にしていない。
ここで軽く希桜音の
2回戦の講評を終えたA組は、続けて3回戦、4回戦とやって終わらせる。全ての戦闘訓練を終わらせた彼等は、オールマイトによって教室へ戻るよう指示される。その後オールマイトは、逃げるようにしてその場を去って行った。
放課の時間になると、怪我で保健室へと行っていた緑谷が教室へと入ってきた。一部の生徒達は緑谷の登場により、そちらの方へと行ってしまった。
「まだ反省会の途中なんだけどなぁ...」
そう言って希桜音はタブレットで再生している動画を止めた。今再生していたのは、今回の戦闘訓練の映像である。実はあの時、希桜音はクローズドラゴンにカメラフルボトルを挿し込んで撮影していたのだ。1回戦の時は蛙吹に預かってもらっていた。
『カメラフルボトルで撮った写真や映像はビルドフォンへ共有され、さらにそこからタブレットへの共有も可能!これぞ学生向けの発明!スゴいでしょ!最っ高でしょ!?天っ才でしょ!?』
戦兎の言葉に万丈は面倒くさそうに頷き、希桜音は無視を通す。
今希桜音の周りにいるのは、常闇、尾白、耳郎の3人だ。机に腰掛けている常闇を注意しようと飯田も割って入ってきて、さらに騒々しくなる。
常闇がそれを代弁するかのように騒々しいと連呼するのが可笑しいのか、希桜音はクスッと笑ってしまった。ふと教室の端を見ると、緑谷が外へと駆けて行くのが見えた。心配なのか、麗日と蛙吹と芦戸も教室を出たのが見え、希桜音も同じく教室を飛び出した。
しかし、廊下の少し先に3人が外を覗き込んでいるのが見え、希桜音もその輪に入って外を覗き見た。
窓から見えたのは緑谷が爆豪に向けて何やら話しかけている所だったが、爆豪は涙目で何かを訴えた後緑谷に背を向けた。さらにオールマイトもやって来たのだが、一言二言話して爆豪は校門を後にしたようだった。
「...なにあれ」
「男の因縁ってやつです」
「緑谷ちゃんが一方的に言い訳してたように見えたけど」
「男の因縁です!」
男の因縁という言葉を頻りに推す麗日に、彼女等は仕方なくそれを認めた。しかし、希桜音が心の中で感じていたのは、爆豪の雰囲気が変わったということだった。