『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~ 作:とある世界のハンター
開戦の火蓋が切って落とされた。
先刻のベルが目の前の
━━━━━━━━短期決戦だ...!
『考え事かぁ?攻撃が単調だぞ!』
ビルドのパンチを軽く去なしたスタークは、トランスチームガンの銃口をビルドの腹部へと当て連発した。
しかし、ビルドはおばけフルボトルの能力、透過で弾をすり抜けさせた。驚いたスタークに蹴りを一発入れ距離を置いたビルドは、間髪入れずに殴り掛かる。
【フルボトル!】
しかし、スタークはそれを誘っいたようで、変身に使用していない新たなフルボトルをトランスチームガンへと挿し込みトリガーを押した。
【スチームアタック!】
目にも止まらぬ銃弾がビルドを襲った。一瞬怯んだビルドは、その弾丸の恰好の的になったようだった。
弾丸の雨霰がビルドを襲う。なんとか攻撃を避けようと透過を使用とするが、彼女の体に異変が起こった。
━━━━━━━━まずい
ハザードトリガーの副作用が、遂に脳内の奥深くへと達した。このままでは不味いとハザードトリガーを外したいが、思うように体が動かない。万丈は銃撃を止めさせようとクローズドラゴンの姿でスタークに攻撃するが、簡単にあしらわれてしまった。
そして、遂に恐れていたことが起こる。希桜音の体から力が抜け、腕を下げたのだ。
そして、何かに操られたかのように顔を上げる。一瞬で透過し、床をすり抜けたビルドは、スタークの背後へと移動しトランスチームガンを奪い去った。
ドリルクラッシャーのガンモードを取り出したビルドは、2つの銃口をスタークへと向けて撃ちまくる。やたらめったらに撃ち続けているように見えて、確実にダメージを与える撃ち方をしている。
足を削りつつ、尚且つ頭を狙う。頭部を守るため腕を上げている為、何かを投げつけるという反撃も与えさせない。
スタークは、この状況を打破しようと指を鳴らした。するとビルドの背後に黒い渦のようなものが出現し、背後から攻撃を加えた。
攻撃されよろめいたことにより、ビルドの攻撃は中断される。黒い渦はトランスチームガンをビルドから取り上げ、スタークの元へと駆け寄った。
「やられているじゃないですか、死柄木弔になんと言われるか」
『まぁ気にすんな。とりあえずずらかるぞ。万丈、さっさとハザードトリガー取り上げな。あと、コイツはプレゼントだ。再開のな』
そう言ってスタークは、トランスチームガンに挿し込まれていたフルボトルをビルドへと投げつけた。
『チャオ!』
元気よく別れを告げたスタークは、黒い渦の中へと入りどこかへと消え去った。すぐさま黒い渦も消え去り、万丈は追跡不能となる。
万丈によってハザードトリガーを外され、変身を解除した希桜音は床に倒れていた。疲労で動けないのだ。
「戦兎...
『あぁ、悪かった...すまない』
そう言って戦兎は、スタークに投げつけられたフルボトルを観察を再開した。彼の持っているフルボトルは、ロストフルボトルというには鮮やかなデザインだった。
【F1!】
ビルドドライバーに挿し込んでみると、そう反応した。恐らく、通常のフルボトルと同じ性能だろう。
━━━━━━━━なぜコレを作った...?
戦兎が考え事をしていると、プレゼント・マイクと相澤が希桜音を見つけて駆け寄ってきた。疲労困憊で動かない希桜音だったが、肩を貸されるとフラフラの状態で立ち上がった。
「何があった小兎謚...!」
「えっと、侵入者がいて、戦って...」
「まぁまぁ、とりあえず休ませてやろうぜ。さっさと飯行ってきな!」
「おいマイク...!」
スゴい気迫で迫る相澤を制して、マイクは希桜音に昼食を摂ることを勧めた。希桜音言われた通り大食堂へと向かうのだが、その前に相澤から、放課後話を聞くということと、誰にも話すなということを強く念を押された。
希桜音を見送った2人は、静かに話し始めた。
「...
「だろうな。マスコミ達を使った陽動作戦ってとこか。」
「職員会議に連れてくのか?あの生徒。」
「当たり前だ。」
昼食を終え、午後の授業も終えた後、帰りの
彼曰く、昼にマスコミが侵入した際、飯田の機転によって生徒達のパニックを鎮めたらしい。だからこそ、自分より彼が適任だと言った。その場にいた切島や上鳴達は緑谷の意見に賛成し、飯田が学級委員長となった。
八百万のやるせない顔に希桜音はとても笑っていたのだが、これが理由で希桜音は八百万に話かけられるようになった。新たなしゃべり相手が見つかった。
放課後、八百万と少し話した希桜音は、相澤と共に会議室へと連れて行かれた。
会議室内には教員達が勢揃いしており、希桜音の方を一斉に向いた。たじろいでしまったが、相澤に無理矢理入れこまれる。
「昼に説明した通り、彼女が侵入者の
「えと、どうも...」
職員達は彼女のことを入試一位の生徒と記憶していたようで、彼女のプロフィールについては覚えているようだった。それだけを伝えた相澤は、希桜音にイスに座るよう指示して座らせた。
「さて、小兎謚さんの戦闘についてだが、防犯カメラで一度確認したよ...君の中にいる者と変わってくれるかい?」
そう言ったのは、雄英高校校長の根津だった。彼の姿は、ネズミなのか犬なのか分からないが、人間でないことは確かだ。
希桜音は言われた通り、戦兎に主導権を委ねた。
『...希桜音の中の住人、とでも言えばいいかな?桐生戦兎だ。よろしく。』
「こちらこそよろしく。早速だけど、君が交戦したあの...エボルトと言う男について話してもらえるかな?」
『...分かった。』
そう言って戦兎は、過去に起こったことをある程度話した。自分が別の世界にいた事、そこでエボルトと戦い、確かに倒したこと。そしてこの世界に移動して、希桜音の中にいたこと。
「...なるほど、
『信じられるのか?』
「その"ライダーシステム"というものを見る限り、信じざるを得ないね。で、そのエボルトという男についてだが、誰かの下に付いたり、協力するような男かい?」
『いや、付かないだろうな。付いたとしても裏切る。協力したとしても同じだ。』
「なるほど...彼について、何か気付いたことはあるかい?」
『...奴は何かをしようとしている。でなければ"こんなの"を作る意味が無い。』
そう言って戦兎が取り出したのは、エボルトに渡された"F1フルボトル"だった。
「それは、君が戦闘で使用する物と同じ物だね?」
『そうだ。でもコレは俺のいた世界には無かった物だ。恐らく、こちらの世界で何かしらの目的で作られた物のはず。』
「しかしその目的は分からない、と。」
『あぁ。あと不自然だったのが、奴は本気を出していないということだ。』
「...というと?」
『本来なら、ビルドドライバーに似たエボルドライバーを使用して変身するはずなんだ。それをしなかったって事は、あのエボルドライバーが消滅したって事なんだろうが...それだと万丈がビルドドライバーを所持していたことや、奴がスタークに変身できたことと矛盾する。』
「万丈というのは?」
『俺と同じく、希桜音の中にいるやつだ。そいつは俺とは違う方法でこっちの世界に現れていたんだが、今はここにいる。』
「話を戻すが、そのエボルトがエボルドライバーを使うとどうなるんだ?」
『...間違いなく、この世界は滅ぶだろうな。オールマイトの戦闘姿を見たが、アレじゃ勝てない。もちろん、今の希桜音の体でもな。』
「君が外へ出れば勝てるのか?」
その問いに、戦兎は一拍おいて答えた。
『...分からない。アイツを倒した時は、弱体化したところを奇跡的に倒せたみたいなもんだからな。』
その言葉に、会議室の雰囲気は重い物となる。
だが、くよくよしては入れられない。校長が口を開いた。
「桐生君ありがとう。コチラとしては、警察と協力してそのエボルトという男、そしてその仲間と思われる人間を探すことにする。君は、小兎謚さんを...」
『...あぁ、なんとか戦えるようにしなきゃな。』
未だ子供である生徒を危険に晒したくはない。しかし、頼れる人間が彼女しかいない。それは教員達にとって辛いものだった。
━━━━━━━━まるで兵器だね
希桜音の呟きに、戦兎と万丈は肯定せざるを得なかった。
校長は戦兎に礼を言うと、希桜音に謝罪と協力を申し出た。希桜音は断ることも無く、それに応じる。その後、希桜音は相澤によって校門まで見送られることとなった。
「...緑谷にも言ったが、焦れ。」
「...はい。」
「こちらとしては、お前に頼らずに
カウンセリングのつもりか、珍しく相澤が優しい。希桜音は相澤に礼を言うと、その下り坂をトボトボと下り始めた。
「まるで兵器みたい。」
『...』
「何か言ってよ。寂しいなぁもう。」
バイクに跨って、疾走している彼女は冗談めかしくそう言った。しかし、その言葉は彼等に深く突き刺さった。彼等もまた、前の世界で兵器として扱われた身なのだ。だが、その時とは違う。国の為、なんてまだ楽なのだろう。
仮にもし、自分が急に「この世界を救えるのは君だけだ。何とかしてくれ」なんて言われたらそれに応えることが出来るだろうか。不安で押し潰されてしまいそうだ。
彼等は重い雰囲気のままだったが、希桜音は違う。そのヘルメットから察せられるのは、現実を受け止めていないのか、明るい希桜音だ。
もしこの世に運命があるとするのならば、彼女は今後、その運命というものを恨まざるを得ない時が来るのかもしれない。