『愛』と『平和』の為に 〜Love&Peace~   作:とある世界のハンター

8 / 38
「お前の運命は永夢...お前が変えろ!」


第8話 自分のフェイトは誰が決める?

 

 

 

 

 

 

 

 開戦の火蓋が切って落とされた。

 先刻のベルが目の前の(ヴィラン)の存在を示すものだとしたら、増援が来るのだろうか、と戦兎は考える。増援が来るなら心強いが、それより前に倒さなければ、その増援が消えてしまう可能性がある。

 

 ━━━━━━━━短期決戦だ...!

 

『考え事かぁ?攻撃が単調だぞ!』

 

 ビルドのパンチを軽く去なしたスタークは、トランスチームガンの銃口をビルドの腹部へと当て連発した。

 しかし、ビルドはおばけフルボトルの能力、透過で弾をすり抜けさせた。驚いたスタークに蹴りを一発入れ距離を置いたビルドは、間髪入れずに殴り掛かる。

 

 【フルボトル!】

 

 しかし、スタークはそれを誘っいたようで、変身に使用していない新たなフルボトルをトランスチームガンへと挿し込みトリガーを押した。

 

 【スチームアタック!】

 

 目にも止まらぬ銃弾がビルドを襲った。一瞬怯んだビルドは、その弾丸の恰好の的になったようだった。

 弾丸の雨霰がビルドを襲う。なんとか攻撃を避けようと透過を使用とするが、彼女の体に異変が起こった。

 

 ━━━━━━━━まずい

 

 ハザードトリガーの副作用が、遂に脳内の奥深くへと達した。このままでは不味いとハザードトリガーを外したいが、思うように体が動かない。万丈は銃撃を止めさせようとクローズドラゴンの姿でスタークに攻撃するが、簡単にあしらわれてしまった。

 そして、遂に恐れていたことが起こる。希桜音の体から力が抜け、腕を下げたのだ。

 そして、何かに操られたかのように顔を上げる。一瞬で透過し、床をすり抜けたビルドは、スタークの背後へと移動しトランスチームガンを奪い去った。

 ドリルクラッシャーのガンモードを取り出したビルドは、2つの銃口をスタークへと向けて撃ちまくる。やたらめったらに撃ち続けているように見えて、確実にダメージを与える撃ち方をしている。

 足を削りつつ、尚且つ頭を狙う。頭部を守るため腕を上げている為、何かを投げつけるという反撃も与えさせない。

 スタークは、この状況を打破しようと指を鳴らした。するとビルドの背後に黒い渦のようなものが出現し、背後から攻撃を加えた。

 攻撃されよろめいたことにより、ビルドの攻撃は中断される。黒い渦はトランスチームガンをビルドから取り上げ、スタークの元へと駆け寄った。

 

「やられているじゃないですか、死柄木弔になんと言われるか」

 

『まぁ気にすんな。とりあえずずらかるぞ。万丈、さっさとハザードトリガー取り上げな。あと、コイツはプレゼントだ。再開のな』

 

 そう言ってスタークは、トランスチームガンに挿し込まれていたフルボトルをビルドへと投げつけた。

 

『チャオ!』

 

 元気よく別れを告げたスタークは、黒い渦の中へと入りどこかへと消え去った。すぐさま黒い渦も消え去り、万丈は追跡不能となる。

 万丈によってハザードトリガーを外され、変身を解除した希桜音は床に倒れていた。疲労で動けないのだ。

 

「戦兎...それ(ハザードトリガー)、まだ使えない...!」

 

『あぁ、悪かった...すまない』

 

 そう言って戦兎は、スタークに投げつけられたフルボトルを観察を再開した。彼の持っているフルボトルは、ロストフルボトルというには鮮やかなデザインだった。

 

 【F1!】

 

 ビルドドライバーに挿し込んでみると、そう反応した。恐らく、通常のフルボトルと同じ性能だろう。

 

 ━━━━━━━━なぜコレを作った...?

 

 戦兎が考え事をしていると、プレゼント・マイクと相澤が希桜音を見つけて駆け寄ってきた。疲労困憊で動かない希桜音だったが、肩を貸されるとフラフラの状態で立ち上がった。

 

「何があった小兎謚...!」

 

「えっと、侵入者がいて、戦って...」

 

「まぁまぁ、とりあえず休ませてやろうぜ。さっさと飯行ってきな!」

 

「おいマイク...!」

 

 スゴい気迫で迫る相澤を制して、マイクは希桜音に昼食を摂ることを勧めた。希桜音言われた通り大食堂へと向かうのだが、その前に相澤から、放課後話を聞くということと、誰にも話すなということを強く念を押された。

 希桜音を見送った2人は、静かに話し始めた。

 

「...(ヴィラン)だな。」

 

「だろうな。マスコミ達を使った陽動作戦ってとこか。」

 

「職員会議に連れてくのか?あの生徒。」

 

「当たり前だ。」

 

 

 


 

 

 

 

 昼食を終え、午後の授業も終えた後、帰りのHR(ホームルーム)の時間となった。早速学級委員長が仕切ることとなったのだが、その前に緑谷は飯田を学級委員長へと任命した。

 彼曰く、昼にマスコミが侵入した際、飯田の機転によって生徒達のパニックを鎮めたらしい。だからこそ、自分より彼が適任だと言った。その場にいた切島や上鳴達は緑谷の意見に賛成し、飯田が学級委員長となった。

 八百万のやるせない顔に希桜音はとても笑っていたのだが、これが理由で希桜音は八百万に話かけられるようになった。新たなしゃべり相手が見つかった。

 放課後、八百万と少し話した希桜音は、相澤と共に会議室へと連れて行かれた。

 会議室内には教員達が勢揃いしており、希桜音の方を一斉に向いた。たじろいでしまったが、相澤に無理矢理入れこまれる。

 

「昼に説明した通り、彼女が侵入者の(ヴィラン)と遭遇し、交戦した小兎謚希桜音です。」

 

「えと、どうも...」

 

 職員達は彼女のことを入試一位の生徒と記憶していたようで、彼女のプロフィールについては覚えているようだった。それだけを伝えた相澤は、希桜音にイスに座るよう指示して座らせた。

 

「さて、小兎謚さんの戦闘についてだが、防犯カメラで一度確認したよ...君の中にいる者と変わってくれるかい?」

 

 そう言ったのは、雄英高校校長の根津だった。彼の姿は、ネズミなのか犬なのか分からないが、人間でないことは確かだ。

 希桜音は言われた通り、戦兎に主導権を委ねた。

 

『...希桜音の中の住人、とでも言えばいいかな?桐生戦兎だ。よろしく。』

 

「こちらこそよろしく。早速だけど、君が交戦したあの...エボルトと言う男について話してもらえるかな?」

 

『...分かった。』

 

 そう言って戦兎は、過去に起こったことをある程度話した。自分が別の世界にいた事、そこでエボルトと戦い、確かに倒したこと。そしてこの世界に移動して、希桜音の中にいたこと。

 

「...なるほど、平行世界(パラレルワールド)というものか。」

 

『信じられるのか?』

 

「その"ライダーシステム"というものを見る限り、信じざるを得ないね。で、そのエボルトという男についてだが、誰かの下に付いたり、協力するような男かい?」

 

『いや、付かないだろうな。付いたとしても裏切る。協力したとしても同じだ。』

 

「なるほど...彼について、何か気付いたことはあるかい?」

 

『...奴は何かをしようとしている。でなければ"こんなの"を作る意味が無い。』

 

 そう言って戦兎が取り出したのは、エボルトに渡された"F1フルボトル"だった。

 

「それは、君が戦闘で使用する物と同じ物だね?」

 

『そうだ。でもコレは俺のいた世界には無かった物だ。恐らく、こちらの世界で何かしらの目的で作られた物のはず。』

 

「しかしその目的は分からない、と。」

 

『あぁ。あと不自然だったのが、奴は本気を出していないということだ。』

 

「...というと?」

 

『本来なら、ビルドドライバーに似たエボルドライバーを使用して変身するはずなんだ。それをしなかったって事は、あのエボルドライバーが消滅したって事なんだろうが...それだと万丈がビルドドライバーを所持していたことや、奴がスタークに変身できたことと矛盾する。』

 

「万丈というのは?」

 

『俺と同じく、希桜音の中にいるやつだ。そいつは俺とは違う方法でこっちの世界に現れていたんだが、今はここにいる。』

 

「話を戻すが、そのエボルトがエボルドライバーを使うとどうなるんだ?」

 

『...間違いなく、この世界は滅ぶだろうな。オールマイトの戦闘姿を見たが、アレじゃ勝てない。もちろん、今の希桜音の体でもな。』

 

「君が外へ出れば勝てるのか?」

 

 その問いに、戦兎は一拍おいて答えた。

 

『...分からない。アイツを倒した時は、弱体化したところを奇跡的に倒せたみたいなもんだからな。』

 

 その言葉に、会議室の雰囲気は重い物となる。

 だが、くよくよしては入れられない。校長が口を開いた。

 

「桐生君ありがとう。コチラとしては、警察と協力してそのエボルトという男、そしてその仲間と思われる人間を探すことにする。君は、小兎謚さんを...」

 

『...あぁ、なんとか戦えるようにしなきゃな。』

 

 未だ子供である生徒を危険に晒したくはない。しかし、頼れる人間が彼女しかいない。それは教員達にとって辛いものだった。

 

 ━━━━━━━━まるで兵器だね

 

 希桜音の呟きに、戦兎と万丈は肯定せざるを得なかった。

 校長は戦兎に礼を言うと、希桜音に謝罪と協力を申し出た。希桜音は断ることも無く、それに応じる。その後、希桜音は相澤によって校門まで見送られることとなった。

 

「...緑谷にも言ったが、焦れ。」

 

「...はい。」

 

「こちらとしては、お前に頼らずにアイツ(エボルト)を倒すつもりだ。心配するな。」

 

 カウンセリングのつもりか、珍しく相澤が優しい。希桜音は相澤に礼を言うと、その下り坂をトボトボと下り始めた。

 

 

 


 

 

 

「まるで兵器みたい。」

 

『...』

 

「何か言ってよ。寂しいなぁもう。」

 

 バイクに跨って、疾走している彼女は冗談めかしくそう言った。しかし、その言葉は彼等に深く突き刺さった。彼等もまた、前の世界で兵器として扱われた身なのだ。だが、その時とは違う。国の為、なんてまだ楽なのだろう。

 仮にもし、自分が急に「この世界を救えるのは君だけだ。何とかしてくれ」なんて言われたらそれに応えることが出来るだろうか。不安で押し潰されてしまいそうだ。

 彼等は重い雰囲気のままだったが、希桜音は違う。そのヘルメットから察せられるのは、現実を受け止めていないのか、明るい希桜音だ。

もしこの世に運命があるとするのならば、彼女は今後、その運命というものを恨まざるを得ない時が来るのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。