「おい、其処! 何騒いでんだ!」
今日は公開授業の日、だから生徒会として騒ぎはさっさと諫めなくちゃいけねぇし、此処で手腕を発揮すれば会長だって俺を見直すかも知れない。転生悪魔だから会長の両親に反対されるかもだけど、子供さえ居れば結婚だって夢じゃないし頑張ってそんな関係にならないとな。誠意を持って接すれば絶対に想いは通じるはずだ。
先生になる為に力を付ける修行だって頑張ってるし、政治だってきっと何とかなるだろ。今は会長と少しでも仲良くなって、彼奴を出し抜くのが先決だ。きっと最初の男になれば俺を選んで……。
「……カテレアちゃんだって未婚じゃん。って言うか血筋的に厄介事にしかならないから一生独身?」
「ひ、人が気にしている事をっ!! 貴女なんて未婚でいる理由なんて無い癖に浮いた話の一つも無いじゃないですか!」
問題は迅速に解決しろって言われてるけど見知らぬ二人が口論しているのをどう止めれば良いか迷うぜ、内容的に。って、近くに居やがるのはルーク! 彼奴の関係者かよ、あの二人!
「おい、あの人達はお前の知り合いか? だったら止めてくれないと迷惑なんだよ」
我ながら子供相手に嫉妬とか情けないとは思うけど、恋敵だ仕方ない。俺と会長の未来の邪魔になるんだ容赦はしねぇぜ。大体、今の時代に政略結婚とか、ドラマとかなら破談になってハッピーエンドってのが王道だし、此奴だって綺麗なお姉さんだから好きって言ってるだけで、将来的に他に好きな相手ができるだろうし。ちなみに会長と万が一結婚しても妾とか絶対に許す気はない。
「うーん。僕じゃ止められなくって」
「ったく、仕方ねぇ。其処! こんな所で喧嘩をするのは止めて下さいよ」
やっぱり子供じゃ喧嘩の仲裁は無理だ。ここは俺が高校生らしく毅然と対応して格の違いを見せてやらなくちゃな。大体、眷属だって年上ばっかで甘やかされてんじゃないのか? 妙に綺麗な子ばっかだし、エロ餓鬼め。
「何の騒ぎですか、サジ」
丁度良い所に会長がやってくる。うっし! 此処はアピールするチャンスだ。見ているだけしか出来ない子供と俺じゃ違うって見ていて下さい、会長。
「会長! いや、此奴の連れが口喧嘩してて。俺が今すぐ解決しますから……」
「……サジ、下がりなさい。そのお二人は現魔王である私の姉と前魔王の御親族であるカテレア様です」
「へ? はぁあああああああああああああっ!?」
思わず叫んでしまう。いや、会長のお姉さまなら兎も角、前魔王の親族とかが何で公開授業に来るんだよっ!?
「久し振りですね、ソーナ。歳を考えない姉に苦労していませんか? ……眷属にも苦労させられていそうですが」
どうも転生悪魔には、特に身分社会でない国出身者に身分の上下が理解出来ていない者が多い傾向にあると思える。無理に転生させられた者を除き、貴族社会に入ることを納得したのならば守るべきルールは存在するのですよ、少年。なぁなぁにして良い問題とならぬ問題があるのですから。
……まあ、今の政権もトップの筈の魔王が御飾りになってしまっているのですが。
「お久しぶりですね、サーゼクス。おっと、様を付けるべきでしょうか?」
「あはははは。大王家に知られたら嫌みを言われそうなので勘弁して欲しいな」
先程の少年については横に置き、やって来たサーゼクス達と言葉を交わす。今の私の地位は税務特別相談局局長やら人材育成部部長やらと内戦早期に降伏した結果与えられた、新政権である以上は旧政権に中央に居られるのはちょっと、という政治的理由による役職。……まあ、天下りみたいな物だ。でも、今住んでいるヴォラク領で学校の理事長もちゃんとこなしてるのよ?
今思えば無理にでも止める必要があったと盲目が覚めたけど、約束されていた地位を奪われたのは不服だから嫌みの一つでも言ってやる。なお、セラフォルーに容赦する気はない。……もし友人だったリッカに説得されていなければ被我の実力差を膨れ上がった自尊心で読み違えて戦いを挑んでいたでしょうね。
「言っておくけど今更シャルバ達と和解なんて目指さない事です。貴方の下につくなど有り得ませんし、未だ私に話を持ちかけてくる者が居るように後ろ盾となって権力を増そうとする者も出てくるでしょうね。貴方、今の政治のために見捨てている者が居るでしょう? 今後を支える者達と害になるだけの遺物、どっちが大切か考えておきなさい」
「……肝に銘じておきます」
「……まあ、期待はしないでおくわ。じゃあ、私は仕事が残っているから学園に戻るけど……ソーナ、その坊やの教育をちゃんとしなさいね。馬鹿やって未来が閉ざされたら貴女の責任よ」
「は、はい!」
ああ、全く。魔王の血統である私が下級悪魔を心配するとか丸くなったわね。何か腹が立つから適当な理由でリッカの頬でも引っ張っておきましょうか?
「理事長先生、こんにちは!」
「ご機嫌よう、理事長先生」
「ええ、ご機嫌よう。ああ、其処。紳士淑女たる者、廊下は走らないように」
夏期休暇間近とあって生徒達が浮かれている様子。貴族たる者、如何なる時も優雅たれ。最低限のルールも厳守出来ないのは問題外ね。私は廊下を歩きながら生徒達に注意を続け、理事長室へと戻った。この仕事も板に付いてきたと我ながら思う。まあ、若者の成長を見守るのも悪くないわ。そもそも、どうして今の職になったのだっけ?
『カテレアって理事長っぽいよね。政務とかも出来るし、引き受けてくれる?』
……さて、どうでも良い記憶は捨て去って書類を片付けなければ。報告書には女生徒を賭けての決闘をした馬鹿な男子生徒二人の反省文が届いている。何時の時代も男って馬鹿ね。因みに女子生徒が言うには二人共友人程度で困るらしい。
あの坊やも主に恋慕するのは仕方ないとして、できちゃった婚が夢って、あの軍鶏に負け越している駄犬から聞いたけど、どうせなら、君に娘を任せたい、そう言って是非にと婿に選ばれる程の戦闘力と政務力を身に付けようとは思わないとは情けない話よねぇ……。
ああ、冥界の意識改革するなら早くしなさいよ、サーゼクス達。じゃないと私が何時まで経っても結婚できないじゃないのよ!
「……さて、今は仕事仕事。将来の眷属候補を育成する特別クラスに希望者が殺到しているし、試験内容を考えなくちゃね」
五月蝿い奴らは私の血統で黙らせれば良い。現状に満足して将来の事が考えられないのは長命種の弊害よねぇ……。
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