やせ型で黒髪を前分けにして、蒼白の肌。何より特徴的なのは瞳。ドブ川が腐った色に酷似しているその人は朝食のコーヒーを啜り……。
「ごふっ!」
今日も見事に吐血したっす。いやー! 毎朝毎朝大変すね、この人も。まあ、血の量からして今日は割と体調がいい方すしね。ルーク様の眷属である他にメイドである私は慣れた手つきで血の処理を済ませる。尚、本人の希望で血塗れの朝食はそのままで。滴る血の味が何とも、だそうっす。
正直どん引きっすね。生肉とか平気な半人狼の私も自分の血は流石に勘弁なのに。この人、パピヨンは元々蝶々の妖精っすよ? いや、ガチで妖精っす。正装である蝶々の仮面に加えてセクシーでアヴァンギャルドな(何故か冥界以外の出身の人は認めない)舞踏会向けの服を着てるお洒落さん。……でも、ルーク様の頼みを平気で断るんっすよね。
「……パピヨンさん、もう少し真面目に仕事したらどうっすか? この前だって追加の研究費を出すって言われたのに、”だがノン!”、とか言って拒否するとか有り得ねぇっすよ」
私も仕事に自分の趣味を加える事があるけど任務はこなすっす。いい加減我慢できなくなったので文句を言うけどパピヨンさんは無視している。師匠の合法ロリさんもそうっすけど、眷属としての自覚が足りないっすよ。
「俺もあの婆も下に着けども従わず、そんなスタンスで構わないと言われている。まあ、契約上の主だし、気が向いた時は力を貸してやるさ。無論、奴がちゃんと上を目指し続けている間に限るが」
この人は向上心の塊だ。ルーク様の頼みは滅多に聞かないけど、それはサボっている訳じゃないっす。一応魔術の基礎や薬草学は合法ロリさんの下で勉強中だけど、錬金術に関しては間違いなく上。そして、絶対に現状に満足する事なく上を目指し続ける。
「俺から言わせて貰えば怠惰な奴はさっさと死ぬべきだ。その点、彼奴の事は評価している。お前もちゃんと働け。少しでも遠く高く飛ぶ為にな」
「……言われるまでもありません」
私は戦闘メイド部隊プレアデスの一人。幼い頃から訓練を受けてきたし、ヴォラク家と私の一族は初代の時からの主従関係。だから、後から入ってきて忠義も誓わない奴らには絶対に負けない。ルーク様の一番の部下はこのルプスレギナ・ベータっす。
「……ルプー、居た」
「うん? シズちゃん、何用っすか?」
取り敢えず朝ご飯を食べようと思っていたら新人のシズちゃんことシズ・デルタ(正式にはもっと長いけど忘れたっす)が弁当箱片手に近寄ってきた。いや~、この低身長の小さめの胸で無口とかがエクネスさんの趣味なんっすかね? この子、ゴーレムの一種のオートマトンとか言ってたっすけど。……あの人の家はゴーレムとホムンクルス制作を得意とする家で、ウチと同じ旧臣だけど馬鹿なことを教えたがるからルーク様の教育に悪いんっすよね。
男は馬鹿って言うけど、あの人は天元突破してるっす。
「お弁当、探してた……はっ! 謎はすべて解けたっす!」
バラバラになっていたパズルのピース二つが合わさって超優秀な私の頭脳が答えを導き出す。
「手製のお弁当を頼りがいのあるお姉様にプレゼントっすね! 私、そっちの気はないけど貰える物は貰って……」
「違う。これ、忘れ物」
あっ、よく見ればマシュちゃんのお弁当箱っす。あの子はいい子っすよね。先輩の顔は立てるし忠誠心も申し分ないっすし。……何か最近では私より頼られている気がするけど思い過ごしっすね、絶対。
「思い過ごしじゃないと思う」
「今、心読んだ!?」
むむむ、どうもシズちゃん相手は調子狂うっす。やっぱりルプー様は反応してくれる相手を弄くる側じゃないと……。
「俺さ、会長と出来ちゃった結婚するのが夢なんだ。……婚約者が居ようが関係ねぇ。相手はまだ子供だしチャンスはある。だって成長するに伴って心変わりがどっちにも起きる可能性はあるもんな」
「そうだぜ。身分とか関係無い。好き合った相手と結ばれるべきだと俺も思うぞ! 時間はあるし、その間にお前と結婚したいって思うようになれば婚約破棄もあり得るって」
マシュちゃんに弁当を渡した帰り、ちょっと暇潰しに姿を消した状態で学園内を見て回ってたら馬鹿共を発見したっす。いやはや、貴族の結婚は互いの家族以外にも関わりのある家や領民、商人に影響があるって分からないみたいっすね。そんな人達の顔を潰して信用を失った領地経営の舵取りは大変だけど支える自信は有るんっすか? 跡継ぎが他にいるグレモリーとは話が違うんすけどね。……そして、この前の忠告も分かってなかったみたいで。
顔合わせの時に少しは仲良くなったのか人気のない所で話をしている二人だけど当然自分に気付く様子もなく、無防備な背中を晒している。……うーん。ルーク様の許可があれば今すぐ行動するっすけど、勝手に動いて悲しませる可能性があるのは勘弁っす。
「あっ、
思い立ったが吉日と、私は携帯に登録している番号に電話をする。運良く目当ての相手は直ぐに出てくれた。
「サジが気になるのですか? 急な話ですね……」
「いや~、(玩具として)結構好みっすし、恥ずかしいから彼について教えて欲しいっすよ。所でそれは先日の球技大会の書類っすね?」
ちょっと相談があるって言ったらソーナ様は生徒会室に通してくれたっす。書類の量が少ないからか彼女一人で実に都合が良い。だって大勢の前でする相談じゃないっすからね。
「ええ、掛かった費用等の見直しをしようと思いまして」
「ルーク様もソーナ様の応援に行きたいけど部外者は入れないし、勝手な真似をして嫌われたら嫌だって我慢してたっすよ。んで、彼について何か情報はないすか? ……まあ、どうもソーナ様の事が好きみたいっすけど」
今は話しても面白くないからと出来ちゃった結婚については触れず、まだルーク様が子供だから双方の心変わりに期待している様子とだけ伝える。この人は甘いから抱えている欲望程度で夢を追う仲間を捨てられないっすからね。
「……困りましたね。他の誰かを見つけて欲しいのですが。それにしても可愛いですね、彼は。その時の姿を見てみたかったです。今度のデートはスポーツでもしましょうか? 手取り足取り……ふふふ」
困った様子のソーナ様。所でこの人ってショタコンだからルーク様を気に入っているのか、逆光源氏的なのか。まあ、悪魔はある程度の年齢になれば見た目の年齢を変えられるから追求は止めておくっす。
「取り敢えず合コンの予定があるけど男が一人足りないすから彼に参加を要請するっす。私からだと彼からルーク様に変な誤解を向けられるかも知れないからお願いするっすよ」
ぷぷぷ。意中の相手から他の相手が出席する合コンに行くように言われるとか爆笑物っすからね。あっ、童貞を殺す服とか通販で買ってみようっすかね? 取り敢えず他の女は男の娘で揃えるとして……ルーク様の為だし、メイド長に経費の申告してみようっと。
『却下です……わん』
今、幻聴がっ!?
「相変わらずルークの事が大切なのですね。彼も一番信頼する眷属は遊び相手だった貴女だと言っていましたよ」
……うひゃあ。超照れるっすよ。
「済まない。道を尋ねたいのだが……」
恥ずかしくて直帰が無理だった私は夕暮れ時の町の中を歩いてたんっすけど、二人組に急に話し掛けられる。フード付きのローブの下はハイレグ水着同然の格好の二人組だった。
「……派遣型風俗の人っすか? 自分、この町の住民じゃないからホテルとかの名前出されても分からないっすよ」
いやはや、痴女丸出しの格好とか大変っすね。あんな格好で町中歩かせるとか服装を決めた奴は絶対変態っす。
あんな手足丸出しでうっすい衣装 セクハラだよね
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