不思議なチカラがわきました   作:キュア・ライター

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八話 飛行船と塔

 三次試験までの移動は崖まで飛んで行った飛行船を用いて移動することになった。翌日の朝八時に到着の予定である。

 

 それまで各々自由に過ごしていいと言われたのでそれぞれ休息をとるため解散となった。俺も殺人ピエロとの戦いで疲れたので休みたい。

 

「ゴン! 飛行船の中探検しようぜ!!」

「うん!」

「ゴンといいキルアといい、元気な奴らだ……」

「そうだな……私はゆっくり休みたいものだ。おそろしく長い1日だった……」

「ラジカは来ないの?」

「寝る」

 

 ばっさりと言い切って俺は場所を探す。ついでに毛布や枕を受け取り、寝床をあらかじめ用意する。それなりに親しくなったクラピカやレオリオと近い位置を陣取った。ちらりと時間を確認すると、余裕があったので暇つぶしがてら二人に話しかける。

 

「なぁ、お前らどうしてハンターライセンスを取ろうと思ったんだ?」

 

 キルアは試験前に聞いた、ゴンの話は一次試験の際に飛びながら小耳に挟んだ。俺は予言に従うだけなのでキルア並みに薄い理由だし、一般的な受験生の受験動機が気になった。

 

「金だよ、金。ハンターになれば見たこともないような大金が手に入るって聞いてな」

「わざわざ悪ぶって言う必要もあるまい。素直に医者になるための金が欲しいと言えばよいのだ」

 

 おう、レオリオ、予想から外れない回答ありがとう。と思いきやどうやら高尚な意思があるようだ。見た目とのギャップ酷いな。

 

「そういうラジカはどんな理由なんだ?」

「ラジカは予言に従ってコル!!」

「うお!?」

「喋る小動物?」

 

 カバンの中から勢いよく飛び出すリリコル。本当に余計なことしか言わないな、こいつ。

 

「そういえば試験中ずっといるけど、そいつ何なんだ?」

「喋る魔物、だろうか。どの文献にもそのような姿をした小動物は載っていなかった気がするが」

「あー、こいつは、何というか、その」

「リリコルは愛と希望と夢の妖精コル! ラジカのパートナーコルよ!!」

「…………」

「…………」

 

 なぜだろう、二人の視線が痛い。完全にイタイ設定を楽しむ十代女子を見る目で見られている。そんな目で見るな! なまじほぼ真実をリリコルが語っている分一層辛かった。

 

「それにしても予言というのは一体なんだ?」

「知り合いの占い師がいてその占いに従ったんだよ」

「占いで受験って……キャラ作りだとしてもスゲーな」

「余計なお世話だ。その占いは100%当たるって有名なんでな。それにライセンスもっていると何かと便利だし」

 

 予言にしたがっての行動であるが、そもそもハンターライセンスというのはありえないくらい便利なものである。ライセンスを持っているとハンター専用の情報サイトを利用できるようになるほか、各種交通機関・公共機関のほとんどを無料で利用できたり、一般人立ち入り禁止区域の8割以上に立ち入りを許されるようになる。その他の面でも所有しているだけで一生不自由しないだけの信用を得ることができ大変利便性の高いものだ。持っておいて損することはないだろう。

 

「そんじゃクラピカは?」

「私は……クルタ族の生き残りだ。4年前、私の同胞を皆殺しにした盗賊グループ、幻影旅団を捕まえるためハンターを志望している」

「……復讐か……」

 

 幻影旅団、名前は聞いたことがある。あれ? そういえば最近沈没船でやりあった奴らの名前がそうだった気がしないでもない。と思っているとケータイがブルブルと振動して時間を告げた。

 

「おっとすまん。ちょっと失礼するわ」

 

 ケータイ片手にどこかで電話ができないかとうろついているとトランプタワーを一人で積み上げてニヤニヤしてるピエロがいた。死んでなくてありがたいけども無事だったのか。残念。

 

 ***

 

 

「エリザ!! 久しぶり!! 元気だったか!! 病気とか、怪我とかしてないか!!?」

『もうラジカ。私だって子供じゃないのよ? そんなに大げさにしないでちょうだい」

 

 電話越しに聞こえる声に思わず頬が緩むラジカ。どうしようもなくだらしのない顔になっていることは間違いない。

 

「子供じゃなくなったとしても俺はお前の兄だからな! 心配しない理由はねぇ!!」

 

 そういって少女は電話の向こうの妹に笑いかける。今まで何度も言われてきたそのセリフにエリザは苦笑した。

 

『それで、ラジカ。ハンター試験は順調なの?』

「お、おう。順調順調。何の障害もなく進んでるよ!!!」

『調子は良くないみたいね』

 

 再度苦笑するエリザ。がその笑い声は慈愛に満ちていた。

 

「まぁここまで残れてるから順調なのは間違いねぇよ」

『たしかにそうね。それはそうときっちりネオン様の予言は守ってるの?』

 

 エリザに問われて露骨に体を硬直させるラジカ。守れていたのは第二節までで試験が始まってからは普通に破っている。というか途中まで完全に忘れていた。そもそもここに来たのは予言のためだというのに。

 電話越しだというのに硬直が伝わったのかエリザは少し怒ったような口調にかわる。

 

『もう! 駄目じゃない。『待ち人がいる』ってことは除念師がいるってことでしょ! しっかりしてちょうだい』

「……はい」

 

 待ち人。つまり俺が出会いたい人イコール除念師であるはずだ。そのためにここに来たのだ。

 

『もし結婚式やるならちゃんと兄として出席してほしいのに』

「……はい。……はい?」

『て、やだ。まだそんな話出てきてないのに。冗談よ冗談』

「いやいやいやいや。冗談だとしても笑えんぞ!! その男俺に紹介しろ!!」

『その前にちゃんと『兄』になってちょうだい。スクワラが混乱しちゃうわ』

「スクワラ……。は!? 何、スクワラと付き合ってるのか!?」

『……あら、ネオン様がお呼びだわ。もう行かなきゃ』

「見え透いた嘘を言うな!! あ、ちょ! まっ」

 

 ツーツーツー……と通話が切れた音が廊下に虚しく響く。そこには金魚のように口をパクパクさせ、顔を赤くする一人の少女がいるだけであった。

 

「野郎!! ぶっ殺してやる!!」

 

 ***

 

 スクワラ。

 俺はその男を知っている。俺が魔法少女になる前の同僚であり、ボディガードの一人である。浅黒の肌にウェーブのかかった長い黒髪。腹立たしいことに顔立ちはそれなりに整っている。

 操作系能力者であり、犬を操作する能力を持つ。遠吠えで連絡を取ったり、薬物や爆発物の探知など直接的な戦闘よりも危険の探知や索敵などに役立つ能力を持った男だ。

 

 が、しかし。

 

「一体いつから付き合ってんだぁ!!!!」

 

 あの犬信者め! 俺の目を盗んでエリザと付き合うとはいい度胸だ。次会ったら地獄を見せてやろう。

 

 というかそもそもエリザとの接点がわからない。せいぜいネオン様と顔を合わせるときぐらいしかなかったのではないか。いつだ、いつから付き合い始めたんだ。俺がいなくなってからか、それともそれより前からか。

 

 エリザの方もなぜスクワラを選んだんだ。いや、まだスクワラはマシかもしれない。これでダルツォルネと付き合っていると聞いたら俺は元上司とはいえ八つ裂きにしに行っていた。

 

 容姿はそれなりに良いというのは認めよう。念能力も戦闘向きではないが利便性が高い。動物好きだしファミリー内ではまだ思いやりのある方であったとと思われる。どちらかというとカタギよりの性格で、それで悩んでいることもあったしな。ウチに所属している限り給与には困らないだろう。お互いの仕事もわかっているので裏社会にも理解がある。

 

 あれ? 思ったよりも良い物件なのでは? 

 

 いやいやいや、騙されるなラジカよ。あの男は妹を毒牙にかけたクソ野郎だ。地獄を見せてやらなねばならない。いや、しかし、エリザは幸せそうであったし、ここは兄として妹の幸せを優先してやるほうがいいのだろうか。

 

 でも、うーん、どうしよう、いや、実際……。悩むこと数十分。俺は彩色の鎧(中でも近接特化の赤)を着て全力で殴ることで妥協することに決めた。うん、一発殴るだけで許してやるとは心の広い兄である。

 

 

 ***

 

 

 受験者を乗せた飛行船は巨大な円柱状の塔に到着した。三次試験の内容はこの塔、トリックタワーを72時間以内に下まで生きて降りること。それぞれの受験者は隠し扉を見つけて塔の内部へと入る。そうして内部に入ることに成功した受験者、ポックルは一人でモニターの前に立ち尽くしていた。

 

『一蓮托生の道』

 君たち二人はここからゴールまでの道のりを共に過ごさなければならない。

 

 モニターにはそう記載されていた。ポックルがここについてから二十分以上経過した。この道は必ず二人で通過しなければならず、どうやっても扉が開くことはない。

 その上手錠が用意されており、自分以外の受験者と腕を拘束しながら進む必要があるようだ。

 

 正直に言ってポックルは焦っていた。彼自身正面からの戦闘が得意なタイプではない。しかも扱う武器は弓がメイン。腕が塞がっていては戦力にならない。

 つまり、片腕だとしても戦えないポックルを補って有り余る戦力を持った受験者が必要である。

 

 現れないパートナーに期待と不安が高まる。するとガコンと音を立てて天井、塔の上からすると床が回転して人影が落ちてくる。その人物はすとんと華麗に着地をして悠然と立ち上がった。

 

 その身のこなしからは十分な戦力となることが予想できたが、姿を確認した瞬間ポックルは絶望的な気分になった。

 

 桜色の髪に、ボーイッシュな服装。伸びる手足はすらっとしており、美しくも華奢で儚い印象を受けた。帽子とメガネで顔は隠れているが可愛らしい。

 

 場所がハンター試験場でなければ一目見たことに感謝するような容姿であるが、しかし、ここは武力が問われる場。どうみても戦える人間には見えない。

 

仮に戦えたとしても力よりも技で勝負するタイプの人間のはずだ。そういう人間はポックル同様片腕がふさがれると実力が出せないだろう。

 

「はぁ!? どこだよ、ここ。てかゴールじゃねぇのか、てか、お前誰だよ」

「俺はポックル。あれが今回の試験みたいだ」

 

 容姿に反した口の悪さに面食らいながらもポックルは話しかける。少女、ラジカは指をさされた方を振り向きながらモニターを見る。

 

「は? こいつと腕を拘束して進めと!?」

「こいつ……。というか、お前名前は」

「ラジカ。ッチ、腕寄越せ。てかこれも予言守れてねぇじゃんか」

 

 乱雑に手錠を取り、強引に腕をポックルの腕を取ってガチャリと手錠を嵌める。するとドアが開いた。美少女と腕をつなぐ青年。何も知らない人間が見ると犯罪臭のする光景である。

 

華奢な少女と弓の使えない自分。望みは薄いがこれは試験。立ち止まってもどうしようもないのだ。選択肢は前に進むか諦めるか。

 

「じゃあ行くか。…………? どうしたんだ?」

 

 決意を決めたポックルが歩き出し、腕をひっぱってもラジカは動かない。おそらく恐怖から動けないのだろうと判断するポックル。

 

「なぁ、この試験って『生きて下まで降りること』だよな」

「あぁ。だから二人で進まないといけな……うおぉ!?」

 

 ポックルが喋ってる途中でおもむろにラジカがしゃがむ。ポックルは予想だにしない力で体を下にひっぱられ、少女の膂力に驚愕する。明らかにラジカの見た目から想像できる力を上回っていた。驚くポックルをよそにコンコンとノックでもするかのように叩くラジカ。一体何をやっているんだ疑問に思っていると再度引っ張られ強制的に立ち上がらせられる。

 

「よし、いけそうだな」

「いけそうって何が? そもそも今何をやっていたんだ?」

「硬度の確認。んでもって何やるかは今からわかるさ。キャストオン【彩色の鎧(ドリームドレス)・赤】」

「は?」

 

 ラジカが叫ぶと次の瞬間、ポックルの視界を光が覆った。あまりの眩しさに目を閉じる。痛みを感じるような強い光に思わず呻いた。

 

「見た目は美少女!! 中身はチンピラ!! 魔法少女ラジカル☆ラジカ!!」

 

 目を開けると隣でそう叫びながらポーズを決める美少女がいた。しかも髪も衣装も先ほどまでとは変わっている。髪は桜色から赤に、服装もボーイッシュなものから快活そうな丈の短いスカートにと変化していた。発言といい、突如変わった服装や髪色といいあまりにも現実離れした光景にぽかんと口を開けて立ち竦むポックル。そんな彼を突然ラジカは横抱き、つまりお姫様抱っこをして抱え上げた。

 

「よし、やるか」

「ハッ! いや、なにおぉぉ!!?」

 

 ラジカはポックルを抱え込んだまま天井近くまで跳躍し、思い切り回転。いきなり視界が回転しポックルは悲鳴をあげる。ぐるぐると回りながら遠心力を加えた踵落としが床に繰り出される。

 瞬間、タワー全体に衝撃が走った。

 

 

 ***

 

『53番ポックル! 100番ラジカ!! 三次試験通過、第一号!! 所要時間2時間32分!!』

 

 ひどい目にあった。それがポックルの感想である。ラジカの踵落としはまるで床をクッキーのように軽々しく砕いていき、弾き飛んでくる瓦礫から必死に耐えながらポックルは超超高度から自由落下を味わうことなった。流石に途中で何度か止まったものの、そのせいで十数回スカイダイビングを繰り返すように蹴りを伴う落下を繰り返す羽目に。止まった際に死刑囚たちと戦う展開になったものの、相手が哀れに思えるほどに鎧袖一触、一騎当千と簡単に文字通り蹴散らしていったのだ。

 

 結果、床を砕き、適度に戦いつつも一番乗りで三次試験をクリアしたのだ。脳筋としかいいようのない攻略である。

 

 ポックルのラジカに対する印象は美少女の皮をかぶった悪魔、もしくはゴリラである。彼女の腕力や突然変わった容姿など、聞きたいことは山ほどあったがこれ以上関わりたくなかったポックルは試験終了後そそくさと離れていった。

 

 

 




落下中一応円をしながら人間がいないかだけは確認しながら床は砕いてます。【彩色の鎧(ドリームドレス)・赤】についてはまた別の回で。
スクワラはそれなりに古参という設定でお願いします。
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