イタリアン・シルバー   作:湯麺

3 / 14
  
  
はじめに
 「カルネはどうやってノトーリアスB・I・Gの能力の発動条件が死ぬ事ということを知ったのか」という疑問を踏まえた上で、今作ではあえて「エコーズact3のように喋れるスタンドである」「原作での能力は奥の手。本来の能力は別にある」という風に解釈して使用します。
 あと、スタンドの矢は一本ごとに性能が違うという解釈もしてます。




ノトーリアスB・I・Gとブラック・サバス その1

 

 

 

 

 手がかりらしき手がかりは何一つ発見には至らず、刻々と過ぎ去っていく時間に首を捻る。時間に追い詰められているという事はないが、親衛隊という者達が襲ってくることは十二分に判った。

 焼け跡に何かあるわけもなく、成果は皆無。茜色の夕日が村と心に影を落としている。

 

「懐かしい……やはりサルディニアは……」

 

 レネート・ダフトパンクは久しき故郷を軽く眺める。彼にとってサルディニア島という場所は所詮、家族の眠る場所でしかない。

 

 

 *

 

 

 彼は1967年にサルディニアに生まれ、サルディニアで育った。何一つ不自由無い生活であったが、1983年に円満だったはずの突然両親が離婚してからは母親と妹と3人で暮らしていた。

 1984年に母親が破傷風で死亡。その後は幼い妹と2人、周囲の人の手を借りながら暮らしていた。父は離婚したのち、サルディニアを離れ変わらず仕事に勤めている。離婚後は責任感が薄れたのか大酒飲みになり、なんと1988年に子供を飲酒運転で死なせてしまった。スデに出所はしている。

 レネートは自身を行動力だけの出来損ないだと自負している。その行動力により生まれたモノも、やがて自分の失態により失ってしまう。後悔は誰よりも深く、誰よりも向こう意気が強い。

 6年前火災により妹を失った際、レネートは絶望に打ちひしがれずに行動に走った。2つの顔を持ち合わせ、事は順調に進んでいた。少々特殊な娘ではあったが、守り抜くと誓った仲間も出来た。しかし、レネートは彼女を裏切った。

 

 

 *

 

 

「……もしパッショーネの何者かがこの村を焼き払ったのなら……この村に「何か」があったということ」

 

「奴らが現れる数カ月前にこの村は燃やされた……つってもよォーー、他にもその時期に起きた事件は山ほどあるんだぜ?」

 

「…「直感」ですよ。僕のね」

 

「…………オメーなぁ…」

 

 無責任な一言にポルナレフは呆れ顔を浮かべる。対してレネートは堂々と笑っている。

 たがレネートの直感や推理は馬鹿には出来ない。レネートが現れる前は終わりの見えない調査だったが、今は彼の推理力と行動力あってか確実に組織に近づいているという実感がある。相手は一大組織、全てに靄の掛かっているような隠密集団。それに怖じけない仲間は頼もしいというものだ。

 

 しばらく調査をし、村のほぼ中心部に到着した辺りでレネートは足を止めた。目の前には広場が広がり、廃れた井戸や比較的大きなオレンジ屋根の家がいくつか見える。中心部のため、数人の大人やサッカーをする子供達がいる。

 

「ここが昔、僕らの家があった場所です」

 

 目線の先には、焼け焦げた跡の消えた空き地があった。地面剥き出しで、削り取られたような大きな土地がポツンと居座っている。

 火災以降、その土地の所有権ははレネートが持ち、数少ない家族の証明として護っている。二度と戻らない過去の記録としても。

 

「へ-、ここがねぇ……でもよ……」

 

「……面影すらありませんがね。おそらく家具も何もかも燃え尽きたのでしょう……手がかりもへったくれもありゃしませんよ」

 

「んじゃあ鎮魂歌でも歌って──」

 

 衝撃に応じ、体が傾く。

 

「!」

 

 ポルナレフの猛々しい頭髪に、サッカーボールが潜り込んでいた。花が咲くように、整えられた銀髪がボールを包み込みポルナレフは途端に不機嫌な顔をする。

 

「すいませ~ん。ボールくださ~い」

 

 村に響く無邪気な子供達の声に反応し、2人は振り向く。先には名門サッカークラブのユニフォームを着た数人の子供達が手を振っている。

 イタリアは恐ろしいほどにサッカーが人気とポルナレフは耳にしていたが、こんな閑古鳥の鳴くような村でもやっているということはさぞ人気なのだろう。

 ボールを取り上げて、レネートは慣れた足つきでボールを返す。

 

「もっと離れたところでやれ!……ったく、髪だけは勘弁してくれよなァー」

 

「まあまあ、子供が元気なのは良いことですよ」

 

 空き地に視線を戻す。

 

「……オイレネート、なんだァ-ー?ありゃあ?」

 

 空き地のど真ん中に、いつの間にか1つの小さな物体が置かれていた。光沢を放ち、不気味な模様を備えた長方形の細長い何か。側面上部には「POL」という三文字が彫られている。

 

「……銀色の…金属?先程はなかったような」

 

「不自然だな………お供え物か?」

 

 お供え物にしては簡素すぎるし、レネートも反応しているということは村の風習などでもないらしい。つまりは2人が目を離した一瞬の隙を見計らい、何のためか何者かが置いたということ。

 一歩ずつ、恐る恐る近づき視点を集中させると、すぐに正体は判明した。

 

「「ライター」……?ハッ……これはッ!まさか……この「ライター」はッ!」

 

「………「写真」に写っていたライターッ!だが……何故このサルディニアにッ!?」

 

 一番最初にポルナレフとレネートが出会ったときにも見た、記者と死体の写真に写り込んでいたライターだ。

たがこのライター自体は、恐るるに足らない。何の変哲も無い普遍的なものだ。それがここにあるということが、異様なのだ。偶然同じ服を着ていただとか、同じ趣味を持っているだとか、そんな生温いものではない。

 

「写真にあったライター……あえてそれを置く理由はおそらく単純な「警告」。ボスに近づく事は……死に近づく事……分かりやすく示してくれていますね。礼儀正しい相手だ」

 

 いつものすました表情で、レネートは的確な分析を始める。決して呑気している訳ではない。ポルナレフも警戒し、2人は周囲を見渡し再び現れた刺客を捜す。子供達の姿は見えない、他の村人さえいない。

 

「怪談話にしちゃあ心臓にワリーぜ……敵なら敵らしく姿を見せてみなッ!どうした!パッショーネの端くれ野郎がァッ!」

 

 ボォッ!──それは突如として点火された。

 

「!」

 

 反射的に2人はライターを睨む。

 吃驚ほどではないにせよ、今さっきその場にポルナレフとレネート以外の人間はいなかった。ライターの炎は既に消えている。火が付いたと気づけば、もうそこに火は無い。敵が点火したのだ。

 

「お、おい……今、そのライター……「燃えた」……のか?レネート……」

 

「……ええ、視界の隅で…「点火」されました。見間違いだとか杞憂だとかじゃあない……一瞬だけですが………それが逆に恐怖ですね……」

 

「ドゥーノが復讐に…?いや、あの出血量じゃあ無理だ……なら、「次なる刺客」ってやつか!」

 

「……ハードワークですね」

 

 一向に姿を現さない敵を不審がり、1秒が何分にも感じるほどに神経を研ぎ澄ませる。このまま立ち去る臆病者であってほしいと思うまで。

 

「……………」

 

 戦闘開始の合図は無い。

 

「ポルナレフさんッ!後ろにッ!!!」

 

「!」

 

 声に呼応し、咄嗟にチャリオッツを出し攻撃を繰り出す。背後にはレイピアを左手で掴む人影が視認できる。

 

「受け止めた……!?しかし本体がいねーなァ……「遠隔自動操縦型」か!」

 

『ポルポのデブからッ!借りたライターだからよォオーー!さっさとッ!終わらせてッ!返さねぇとッ!面倒なんだよなァアーーー!!!?』

 

 妙に途切れ途切れな話し方で、そのスタンドは昂然と喋り出した。怒っているのか威嚇しているのか、全くつかめないタイプだ。本体からの警告にしては無理解すぎる。

 右目から後頭部にかけて半月形で横縞の入った仮面を付け、丸く蛇腹のような眼をしている。それ以外は飾り気の無い緑色を基調とした人型スタンド。

 

『殺すよ!殺すよォォーーー!!』

 

「レネート!自動操縦型だッ!本体を探し出せッ!」

 

「……は、はいッ!」

 

 レネートは走り出す。

 現時点で相手スタンドの能力は不明だが、長年培ってきたポルナレフの感覚が押し切れると言っている。

 

「突き抜けろ!シルバー・チャリオッツ!!」

 

『攻撃なんてッ!意味ねェーんだよ!このドグソ野郎がァアーーッ!』

 

「なッ……!」

 

 チャリオッツから突き出される高速攻撃に動じることなく、敵は見事に全ての剣撃を捌ききった。その瞬間的な攻防で判ることは、相手はチャリオッツと同等がそれ以上のスピードを持つ自動操縦型ということ。

 

「…この程度でこの俺が挫けると思っ──」

 

『おまえ……!「再点火」したな!』

 

 背後から、シルバー・チャリオッツの首がものすごい力で鷲掴みにされ背が反る。「そいつ」は地面から上半身のみが突出し、口を裂けそうな程に大きく開けている。

 切り絵のように美しい漆黒のマントに細い体と、イタリアのコンメディア・デッラルデに登場するような黒い被り物。銀色の肌に煌びやかな黄金の装飾が華を添えている。そう、スタンドだ。

 

「何ィーーッ!!!こいつ……!「別のスタンド」ッ!?………敵は「2人」だったのかッ!!」

 

『チャンスをやろう!「向かうべき2つの道」を!』

 

「ガハッ……つッ、強い!すげーパワーだッ!この俺のチャリオッツじゃあ抵抗出来ないッ!!!」

 

 2人目の敵スタンドによる圧倒的パワーで首が強引に捻られ、チャリオッツの目の前には底の見えない真っ暗闇の口内が現れる。果たして頭から呑み込まれるのか、ビームでも放たれるのか、思考が錯綜しようとしている。

 

「……こうなったら…仕方ねぇ!甲冑を全て外せ!チャリオッツ!」

 

 内部から爆破されたように全身の甲冑が四方八方に吹き飛び、更に痩身となったシルバー・チャリオッツが現れた。甲冑を外した衝撃と同時にチャリオッツは圧倒的パワーから脱出していた。すぐさまポルナレフは黒いスタンドと距離をとる。

 シルバー・チャリオッツが有するもう一つの能力「アーマーテイクオフ」。甲冑を外すことで防御力は著しく低下するが、その対価として圧倒的スピードを手にする事が出来る。

 

「黒い野郎は「何か」あるなッ!先に藻みてーな色したてめーをやることに決めたぜッ!」

 

『オメーが!ゴキブリみてーに!「動く」ってことが!どぉーゆーことかアッ!!命を賭けて!知りてーかよォォーーーッ!!』

 

「テメーの速度は学習済だッ!」

 

 甲冑を外したチャリオッツは以前のものとは比べものにならないほどのスピードを得る。いくら自動操縦の奴のスピードが高かろうと、もう恐れる事はない。

 

「オオオオオオオオ!!!」

 

 体の軌道さえ捉えられない超高速の連撃が、ゲリラ豪雨のような勢いで敵を切り裂く。レイピアには無惨にも肉片が塗りたくられる、はずだった。

 

『ギィャッハッハァアアアアアア!!!!』

 

「何ィーッ!!?」

 

 捨て身覚悟のアーマーテイクオフの攻撃は、赤子と戯れるように軽々と弾かれた。相手は一度もカウンターを仕掛けてこない、それは余裕故か。狂い叫ぶスタンドに本能が恐れ戦き、拮抗していながらもポルナレフは徐々に後退していく。

 

「うっ!」

 

『ひとつは!「選ばれるべき者」への道!』

 

「なッ……!このタイミングでか!まずいッ!このままでは絞殺されるッ!」

 

 またも地面から出現した黒のスタンドの手が、チャリオッツの首に深く食い込む。今まで何故傍観していたのか、それは圧倒的パワーと引き替えに能力による何らかの制限があるからだろう。

 

『さもなくば「死」への道!』

 

「!」

 

 口の中から切っ先を見せた光沢のあるそれは、ポルナレフがよく認知しているものだった。どこに仕込んでいたのか、チャリオッツに切っ先が迫る。 

 

「まさか……そういうことか……この「矢」は!……だが……こいつ、パワーが強すぎる!………耐えきれないッ!」 

 

 時既に遅し。例の矢が突き刺さるよりも前に、打つ手の無くなったポルナレフの意識は遠のいた。助けを呼ぶ暇もレネートに伝える時間さえなかった。こんなところで、仲間の命で象られた自分の命は燃え尽きてしまうのか。

 

『よし一匹!残りは「裏切り者」だなァーー!ただいかんせん!「速く動く」物体がねーからよォー!移動が面倒だなァー!これだから田舎は懲り懲りだ!』

 

 声を出している自動操縦のスタンドも黒いスタンドも姿が見えない。村人はおらず、静かな空間を微かな日の光がオレンジ色に染める。

 奇妙な矢を内包するスタンドと、洗練されたチャリオッツのスピードにも対応可能なスタンド。どちらも恐るべき力を備え、巧妙な手口であっと言う間にポルナレフを倒してしまった。

 

 

「「遠隔自動操縦型」じゃあない、ただの自律……もしくは半自律の遠隔型スタンド。おそらく「「何か」に比例してスタンドエネルギーが変化する能力」……かな。今はサイズが「小さく」なっているだけ……謙虚なスタンドだな……」

 

 空き地の向こう側に、遙か彼方を見つめるような瞳で立っている男がいた。まるで何かを待っていたかのように、レネート・ダフトパンクは佇んでいた。理由はサルでも分かる、レネートは無力ではないのだ。

 

「黒い方は確かネアポリスにいた幹部の……名前は確か『ブラック・サバス』……「影の中の選定者」…………もう夕方か…」

 

『ヘッ!来たか裏切り者!オメーがスタンドを!持っていることは知っている!「ピラウ」から!耳が腐るほど聞かされたからなァ!』

 

「…………まだ残っていたのか」

 

 敵の話に眉をひそめ、倒れるポルナレフをまじまじと見て安心した様子のレネートは「自身の間合い」に敵を入れるために歩き出す。

 ポルナレフが見ていないならば、「使える」。かつて自分が発現させた「スタンド」で奴を殴れる。自信はあるが調子に乗ってはいけない。お互いがお互いを理解したこの状況で、勝者の旗はどちらへ振られるのか。

 

「ポルナレフさんは意識が無い、それは良しとして………僕一人か……すげーヤバいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
長くてすいません
喋れる設定はいる(鉄の意志)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。