■『勇者の隣の式神さん』の小話となります
2022年02月22日という2が6つ並ぶスーパー猫の日となる小話です
まあ、ただいちゃいちゃしているだけ(?)なんですが
■勢いだけで書いたので乱雑ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです
2022.02.22
なに言ってんだコイツというのが第一の感想だ。その前に力説された、「悠希、今日は二が六つ並ぶスーパー猫の日だ。つまり、悠希というかわいいかわいい猫を六回哭かせる必要がある」という言葉に対してである。
いや、二が六つ並ぶのはすごいことなのだが、そのあとの言葉が解らなすぎるのだ。はあ? と呆れたようになるのも当然だろう。
そりゃあまあ、背後から片腕でもがっちり抱きしめられている現状では逃げられやしないが、六回もする必要はないではないか。どこにそんな要素があると言うんだ。意味が解らないにもほどがある。オレを殺す気かね。あとオレはかわいくないんだから黙れや。
いやそれよりもな。
「なんでそうそっち方面にいくわけ?」
「悠希が足りないからに決まっているだろう」
「一昨日もしただろうが! いい加減にオレの体力を基準にしろよ!」
「ユウの体力を基準にするのはいいけどな、そうすると最低三日の休息が必要だろう。俺が待てない」
「そうか。休息が必要なことをちゃんと解ってて押し倒そうとしてるのか」
まあなと機嫌よろしく顎を撫でてくる手を払い落として睨みつけてやると、犬井は目を細める。この愉快そうな笑みがなんと腹立たしいことか!
オレの寝巻きのボタンを指先で弄びながら「ユーウ」「悠希」と囁いてくるが、それも愉しげなのだからイライラが増す。腕を外そうとするも、巧くいかないのだからさらに腹が立つ。力を込めるな抜けと噛みつくが、犬井ははいはいとあしらった。
くっそムカつくうううう!
攻防の末に片腕がっちりが両腕がっちりになると、ネコミミに息を吹きかけられる。優しく、だが、確実に狙って。
「ひぅっ!? てめっ、なにしやがるっ」
「ユウが俺から逃げようとするからだろ」
「当たり前だろうが! 犬井がわけの解らないことを言うからだろぉ! 六回もする気満々の奴の近くにいるなんて、自殺行為でしかないんだからなっ」
「わけの解らないことを言った覚えは一度もないが」
嘘をつくな! と声を上げたいが、いまはそれどころではない。引き剥がさなければマズイのだから。
「いま絶賛言ってるからな! こらっ、しないったらしない」
「ユーウ」
「オレはしないからなぁーーーーっ!」
今度は肘鉄を食らわせているが、前のめりになってくる男には効いていないようだ。頼みの狐ちゃんたちはいま現在も眠っているので助けは来ない。詰んでいる。これは詰んでいる。
「抵抗するならするで構わないけどな、どうなるのかは俺にも解らないぞ?」
「にゃー!!?」
なんて奴だ。そんなことを言われれば、言われてしまえば、おとなしくなるしかないだろうが。
「ぐぅぅっ……、この脅迫者がぁっ」
「はいはい。あとで買い置きのチョコレートをやろうな」
「え、マジで? お高いうまいやつ?」
「ああ」
「なんだよ早く言えよなぁ。頑張らないけど早く言えよ」
仕方がないなあと顔を向けると、ものすごく苦い顔した犬井がいた。それでもイケメンなのだから羨ましい。
「どうしたよ?」
「なあ悠希、俺はチョコレートよりは上だよな?」
「なんでチョコレートと比べる必要があるんだよ? 犬井は犬井だろ?」
「…………そうだな」
チョコレートに負けるはずがないなと呟いた犬井は一度オレの頭頂部に唇を落としてから、「チョコレートのことは忘れさせてやるからな」と笑みを浮かべた。
その極上の笑みが悪魔の微笑みだなんて、オレしか知り得ないことだろう。
頑張りたくはないけれども、頑張らなければ死ぬかもしれん。
ひょぇっと情けない声と魂が口から出たのは、犬井が犬井だからだろう。
なんでチョコレートと比べるんだよおおおお! 食い物だよ、解る? 消耗品だろうがああああ!
そんな心の底からの叫びはしかし声に出せないまま、柔らかな枕に沈ませていく重さに溶けていく。
向かい合わせの鼻先にあるのは、蕩けるような笑みである。この顔に躯が固まってしまう――なんだか巧く動かなくって、最終的には抵抗出来なくなる――んだから、やっぱりオレはどうあっても犬井には勝てないようだ。
(おわり)
【 あとがき 】
今年もにゃあと鳴かせてやったぜ!
あとバレンタインデーがあったので、チョコレートという単語もぶちこんでおきました
◆ 執筆時期 ◆
執筆開始 : 2022.02.21(月) - 執筆終了 : 2022.02.21(月)
改稿 : 2022.02.22(火)