こんなふぇいとはいやだ   作:くまー

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頭の中身がどうしようもなくなった時に出来たお話。
注意書きにもある通り基本的にシリアスは無し。(多分)
更新は頑張る。

こんなの書いていないのでちゃんと連載作品終わらせろ?
仰る通りでございます……


ほんぺん
ぷろろーぐ


 せかいのどこかでだれかがいいました。

 

「やぁ、そこのしょうねん! このせいはいのちからで、きみのねがいをかなえてあげようじゃないか!」

 

 どこかのだれかがこたえました。

 

「あぁ? ハッ、だったら呆れるくらいバカバカしくて素敵な世界にしてみろよ」

 

 それがすべてのはじまりはじまり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ こんなふぇいとはいやだ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衛宮士郎は朝から気が狂いそうだった。

 

 

 

 まず自宅の道場で朝の筋トレをしていたら、セイバーがやってきた。

 ……それは別にいい。何の問題もなければ珍しい事でもない。剣士の名を冠する彼女は、朝は道場で精神統一をしている事が多いのだ。何なら家主である士郎よりも早くに道場に居る事だってある。

 ただ何をトチ狂ったのか。彼女は筋トレ後で汗だくの士郎を見て、開口一番にこう言い放った。

 

「シロウ――――貴方を愛している」

 

 ……この言葉を聞いて。身体を動かすことも、言葉を発する事も、思考する事すらも停止してしまった彼を誰が責められるだろうか。

 人生初の逆プロポーズである。それもまだ学生の身で。良く知る人物から。かつては文字通り命を預けて戦った人物から。

 

「あー……セイバー?」

「愛している」

 

 真っすぐに。視線が、言葉が、士郎を貫く。

 その視線には一切の冗談の色は無く、彼女が真剣であることは疑いようがない。何より士郎は、彼女が決して冗談や酔狂で言葉を弄する人物ではないと言う事を知っている。

 早まる鼓動。上昇する体温。たったの一言で顔を真っ赤にされたのは鏡を見なくても分かった。

 何か言葉を発さなければならない。だが、何を発すればいいのか分からない。堂々巡りの思考。完全なフリーズ。もしもそんな彼を見てヘタレと宣う輩がいるとすれば、それはきっとただの考えなしの馬鹿だけである。

 

「シロウ」

 

 フリーズしている間に近くまで来たセイバーが、士郎の右手をその柔らかな両手で包み込んだ。そして翡翠色の潤んだ眼で士郎を見上げる。そっと名前を呼ぶ。

 ただのそれだけ。それだけで士郎の脳みそは簡単に揺さぶられた。理性だとか感情だとか本能だとか、そんなものは簡単に消し飛んだ。士郎は人の姿を真似ただけの、肉と皮袋だけの塊と成り果てた。それはつまりは、色々と意識がオーバーフローした事による思考の放棄である。

 

「へ?」

 

 ふわり、と。フリーズしていた身体が宙に舞う。視界が流れる様にセイバーから天井へと映像を映し、一瞬遅れて破裂音がすぐ傍で響く。

 

「凛! 士郎に当たったらどうするのですか!?」

 

 そして怒号。士郎は知っている。彼女がこれほどまでに声を荒げるのは、本気で怒った証明であると。

 だが相手――遠坂凛も然るもので、身も竦むような怒号を涼やかに受け流す。

 

「性欲しか頭にないメス猿が何をほざくのかしら? いいから士郎を離しなさい、セイバー」

 

 違った。涼やかでも何でもなかった。それは溢れそうになる感情を無理矢理に抑えているだけの声だった。

 本気で怒っている、どころではない。二の打ち要らず、真っすぐ行ってぶっ飛ばす、殴っ血KILL。士郎の視線の先では、灼熱の太陽の如く真っ赤に染まった凛の右手が光って唸っている。

 

「今なら士郎に触れたその汚らわしい両腕を消し炭にするだけで許してあげる」

「嫌です。決して離しません。貴女こそ立場を弁えたらどうですか?」

「ハッ、偶然サーヴァントに選ばれただけの分際でよくそこまで言えるものね。弁えるのはどちらかしら?」

 

 何、一体どうなっているの?

 きっとそんなことは言ってはいけないのだろう。

 だって原因は何故かは分からないが士郎にあるのだから。

 でも思うだけなら自由だ。

 口にしなければ問題とはならない。

 

「皆で定めたルールを守らずに抜け駆けするなんて、人として風上にも置けないわね」

「魔術師には言われたくないです。知っているんですよ、放課後デート」

「……偶々帰りが一緒だっただけよ」

「学校を出て、ファンシーショップに行って、海浜公園に行ったり、喫茶店でお茶したり。それの何が偶々ですか。ライダーが見てましたよ」

 

 空気が凍ると言うのは、きっとこのような状況の事を言うのだ。そう士郎は思った。混乱していた頭が一周して冷静を取り戻していた。と言うか戻らざるを得ないほどに恐ろしかった。

 士郎は静かにセイバーの腕から離れ、場の中心から逃れる様に2人から退避する。普段ならば諍いを止めるべく動く士郎だが、流石に今の訳が分からない状況では下手な行動は出来なかった。

 ……離れる間際寂しそうにセイバーが声を漏らし、勝ち誇ったように凛がドヤ顔を決めていたが、状況を把握する為には致し方が無い事だ。

 

 ただ、まぁ。

 結論を言ってしまえば、それだけで把握して解決に導けるほど単純な状況ではなかったのだが。

 

 結局士郎は、言い争いをしている2人を置いてその場から静かに退避した。その判断は決して間違っていない。寧ろ誰が責めることが出来るだろうか。誰がその場を諫めることが出来ようか。と言うか止める為に声を挙げたが全く聞いてくれなかった。それよりも2人から退避する様に薦められたくらいだった。

 恐ろしいのはこの一連のやり取りが、まだ一日が始まって間もない早朝6:00から行われていた事である。

 この出来事に比べれば、出た先で三つ指をついてライダーが待っていた事や、わざわざ手を引かれて居間へ通された事や、妹分である間桐桜にライダーと同じように三つ指をついて出迎えられた事や、士郎の好物ばかりで朝食が用意されていた事や、弁当が用意済みである事や、その他登校するためのあらゆる準備が整っていた事なんて、何の問題でもない些細なことである。

 

 そして今朝のこの状況は。

 衛宮士郎が気が狂いそうになる案件の一つでしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「衛宮先輩、お早うございますっ!」

「あ、ああ。お早う」

 

 これで何度目だろうか、通学路を歩きながら士郎は思った。顔を赤らめた女生徒が、士郎に挨拶をして走っていく。そしてチラチラと後ろを見ながら、士郎と一定の距離を保って先を歩くのだ。

 最初は何かの罰ゲームの対象にでもなっているのかと思ったが、流石に状況が連続すればニブチンな士郎とて察しは付く。今や士郎の周りは一定の空間を開けて女生徒で囲まれている。その全員が赤ら顔でキャーキャー言いながら興奮している様子を見れば、士郎とて察せて当然だ。

 

「衛宮様、ありがとうございますっ!」

「……どういたしまして」

 

 もはや挨拶の意味も分からない。何故感謝されなければならないのか。何故自分は応えているのか。状況が不明すぎて士郎の頭は全く追い付いていない。と言うか何故様付けなのだ。

 いや、感謝なら良い方だ。興奮して鼻血を出したり倒れた子もいた。そう言った子は例外なく誰かしらに回収されて女生徒群の中に担ぎ込まれていったのだが、士郎の疑問は深まるばかりである。

 ……学校はまだだろうか。きっと学校に着けば何か分かる筈。

 一切の根拠は無い。が、その判断に縋る様に士郎は足を進めるしかない。後戻りをする選択肢はなく、誰かに助けを求める考えも無い。一番に頼りになる面々が揃いも揃っておかしくなっていた事を考えると、士郎の考えは至極当然と言えよう。

 

 だけれども。

 そんな士郎の希望は叶うなんてことは無い訳で。

 

 

「……」

 

 溜息を吐きたくなるのを堪えて士郎は眉間を優しく揉んだ。酷く頭が痛かった。

 学校に着いてからも状況は一切変わらない。

 右を見ても左を見ても。前を向いても後ろを向いても。

 そのどの方向からも熱っぽい視線を感じる。何をしていても熱っぽい視線を感じる。

 そしてその視線に反応して、ちょっとその方向へ視線を向ければ。女生徒たちが赤ら顔で慌てふためいている。

 

「……何だよ、コレ」

 

 呟いたところで答えなんて出るはずも無いのだが。

 兎にも角にも士郎は鉄の自制心で己を無理矢理に律すると、視線を無視して教室へと早足で向かった。いつまでも好奇の視線に晒されているのは精神衛生上全く良くは無いからだ。

 心は硝子。血潮は鉄。

 心は硝子。血潮は鉄。

 己にそう言い聞かせて士郎は現状を意識外に無理矢理追いやる。

 そうして自分の教室を開けて――――すぐに閉めた。自分の意識を確かめる様に頭を叩く。息をゆっくり吐き出す。胸を軽く叩いて落ち着かせる。

 それからもう一度扉を開けた。

 

「お早う、衛宮」

「……お早う、一成」

 

 柳洞一成がいる。それは別に不思議な事ではない。同じクラスなのだから当然だ。

 柳洞一成しか男がいない。それはおかしなことだ。このクラスの男女比は半々くらいだった筈だ。

 

「……一成だけ、か?」

「ああ。そうだ」

 

 女子。クラスを埋める女子。右も左も前も後ろも女子。こちらに熱っぽく視線を向ける女子。

 男は士郎と一成のみ。

 士郎は理解できずに、思わず一成の前の席に座った。そこは士郎の席ではない。ただ目に付いたから座っただけだ。

 どこからか聞こえるありがとうございます!と言う声。

 士郎の頭が再び痛みを訴え始める。

 

「……なぁ、一成。クラスって、こんなんだったか?」

「気持ちは分からなくも無いが、何も変わらないな。いつも通りだ」

「そうか……」

 

 どうやら日常は士郎が知らない間に一変していたらしい。それもずっと昔から。確かにあった筈の昨日までの日常はどこに消えたのだろうか。そもそもおかしいのは世界なのか、それとも士郎なのか。

 

「衛宮。具合が悪いなら休んだ方が良い。女狐と言い、連日の件と言い、お前は自分の身を顧みなさ過ぎだ」

「……いや、大丈夫だ。平気だ」

「その顔色で納得すると思うのなら大間違いだ。」

 

 鏡を見てみろ。そう言って一成は手鏡を渡してきた。素直に受け取り見てみれば、そこには疲労困憊の自分の顔が映っている。

 起床からここまで。約3時間。

 3時間で人はここまで疲れ果てられるのかと、変な方向に士郎は感心してしまう。

 

「悪い、一成。ありがとう」

「俺としては休むことを勧める。保健室は嫌だろうから、自宅に戻るのが最善であろう。今の衛宮の顔を見て無理強いする奴はいまい」

「いや、大丈夫だ。一成に会ったら元気出た」

「……その言葉で騙せると思うな。……或いは、帰るのが嫌なのか?」

 

 小声で。柳洞一成は衛宮士郎の身を案じる。何もかもがおかしくなった世界で、この友人は変わることなく士郎に接してくれる。その事実に不覚にも士郎は涙しそうになった。

 気づかれぬ様にそっと息を吐き出し、気持ちを落ち着ける。そしてこれ以上は案じさせないように口を開いた。

 

「大丈夫だ。本当に、大丈夫だ」

「衛宮……」

「心配してくれてありがとう。確かにちょっと参っていた。だけど、もう平気だ。ちょっと混乱していただけだ」

 

 疑う様に視線を向けてくる。だがもう揺れない。確かに参っていたし、気が狂いそうだったけど。もう自分を律することが出来る。大丈夫になったのは本当だ。

 一成は暫し士郎の顔を見た後、思いっきり盛大にこれでもかと思うほどに大仰な溜息を吐き出した。士郎の変わらぬ頑固さに折れたのは明白だ。

 

「……女狐だな」

「へ?」

「待ってろ、衛宮。必ずあの女狐を退治してお前を救ってやる」

 

 違った。折れていなかった。何故かは分からないが敵愾心を燃やしているのは傍目にも分かった。

 ゴメン、遠坂。心の中で謝る。士郎の混乱に関係無くは無い――どころかまさに彼女はピンズドな原因である為に、士郎は一成に強く言えなかった。嘘が苦手なのはこの男の美徳であり悪癖でもある。

 

「あー、一成、それより、慎二は? アイツはいないのか?」

 

 無理矢理に士郎は話題を変える。これ以上凛の事について話が膨れ上がるのを避けるためではあったが、まだ見ぬ友人の一人が気にかかるのは事実だ。

 朝に桜と話した話題に出ていたので、このおかしな世界でも存在しているのは間違いない。

 だが一成は盛大に今までで一番大きな溜息を吐き出すと、忌々し気に眉間に皺を寄せた。

 

「……一成?」

「あ奴なら……大方女生徒と遊んでいるのだろう。貞操観念の緩い奴だからな」

 

 酷い言い方である。確かに慎二には女性好きの気があるが、幾ら何でも一成が言うほどに酷くはない。……酷くはない筈だ。

 友人に対してそう言い切れないのは、今朝から殆ど何一つとして全く士郎の記憶通りに正常に動きやしない世界のせいである。おかしくなったセイバーと凛、気が利きすぎる桜とライダー、何故か女性徒ばかりの学校、堅物化が増した一成。……これらの前例を考慮すると、女性好きが高じたくらいなら現状何の問題もなさそうである。

 

「……一成。葛木先生は――――」

「お兄様なら引き篭もっておられる」

 

 そうか。士郎は一成の言葉を聞き流した。彼は深く考えることを止めた。受け取ったままに言葉を飲み込む。余計な思考を止める。士郎にしては迅速にして的確且つ最善の判断だった。

 それはこの状況についていけずに、ついに思考がオーバーフローした結果とも言える。が、精神を守るための致し方ない本能的な防衛だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業自体はつつがなく終了した。一成の不機嫌度が時間を追うごとに酷くなり、慎二が結局学校を無断で欠席し、士郎の精神的疲労度が加速度的に増していったが、つつがなく終了した。

 

 

 

「士郎ぉぉおおおおおおおおっ!!! 一緒に帰りましょう!!!」

「衛宮ぁぁああああああああっ!!! 私と勝負しろ!!!」

 

 帰りのホームルームが終わる。途端に喧騒に包まれるクラス。一層の激しさを増した視線。思わずため息を零してしまったのは不可抗力と言う奴である。

 だがそんな状況を切り裂くように、大声と共にクラスの扉が開け放たれる。ものすごく聞き覚えのある声。しかめっ面になる一成。何故か周囲からため息が零れる。そして扉の外には美少女が2人。

 

「さ、晩御飯を買いに私と商店街に行きましょう!」

「私と弓道で勝負しろ、私が勝ったらデートしよう!」

「は?」

「あ”?」

 

 何故かおかしくなってしまった遠坂凛。

 やっぱりおかしくなっていた美綴綾子。

 その2人が。士郎たちの教室の前でメンチを切り合っている。2人とも普段ならば決して見る事の無いような酷い表情だった。きっとこの2人を前にしたらランサーも裸足で逃げ出すに違いない。

 

「士郎は私と帰るの。ゴリラは帰って」

「いつもの優等生の皮が剥がれてるぞ、化け猫。アンタに衛宮は相応しくない」

「勝てもしない勝負に何を賭けているのかしら。士郎の時間を不当に拘束しないでくれる?」

「アタシは一戦して負けたらそれで終わりだ。衛宮を連れまわすアンタの方がよっぽど酷いだろ」

「随分な言葉ね、一緒に帰っているだけよ」

「三時間も連れまわしといてか? 随分とお花畑な頭だな」

「はぁ?」

「あ”あ”?」

 

 またか。一成が言い争う2人を見て溜息を吐いた。どうやらこの2人の言い争いは通常営業らしい。士郎は今まで一度も見たことが無いけど。見たくも無かったけど。

 一成が耳打ちする。

 いつも通り今の内に帰るぞ。

 放って置いて良いのか?

 いつもの事だろうが。

 迷っている士郎の分まで手際良く机の上を片付けると、一成は士郎の手を引いて2人がいる方面とは逆の扉から廊下へと出た。そしてそのまま言い争いをしている2人を放って足早にその場を去る。通ろうとすると自然と誰もが道を開けてくれるので、何も困りはしなかった。

 そうやって。階段を下りて行く。

 暫しの間を置いて士郎がいなくなったことに気が付いたのだろう。上階から一際大きな声が聞こえた。

 士郎、待ってぇぇええええええええ!!!

 衛宮、待てぇぇええええええええ!!!

 

「柳洞先輩! 衛宮先輩! ここは私たちが食い止めます!」

「ここはお任せください! ご心配なさらず!」

 

 すれ違う生徒たちが士郎たちの後ろを固める。覚悟を決めた精悍な顔つき。何人たりとも後を追わせぬ様に、隙間なく通路を塞ぐ。絶対に通すな、死守しろ! イエス、マム!

 やっぱりこの世界はおかしい。最早頭が痛いなんて通常営業である。

 

「士郎ぉぉおおおおおおお!!!」

「何ィ!? 壁を走っているだとぉっ!?」

「行かせるな! 通すな! 食い止めろ!」

「ははは、捕まらぬわぁぁあああああ!!! 私と士郎の邪魔をするなぁぁあああああ、へぶっ!」

「ナイスコントロール、蒔の字!!」

「へへっ、どんなもんよ!!!」

「私は衛宮と勝負したいだけだぁぁああああああ!!!」

「ダメです! 毎回毎回しつこいんですっ!!!」

 

 ああ、騒がしい。本当に何て日だ。

 士郎は思わず立ち止まり眉間を押さえる。一成が慌てた様子で心配をするが、今はそれに満足に言葉を返す余裕が無かった。

 何でこんなことになっているのか。何が起きているのか。何が始まったのか。

 説明のつかない状況の連続に、士郎はとうとう怒りすら覚えていた。

 

「衛宮、大丈夫か? 肩を貸してやるから、とりあえず早く出よう」

「……いや、大丈夫だ一成。……ちょっと遠坂と話があるから、先に帰ってくれ」

「はぁ!? な、何を馬鹿な事を言っている!」

 

 踵を返す。来た道を戻る。

 凛は複数の女子の手によって拘束されていた。縄でグルグル巻き。不機嫌そうに唸っていたが、向かって来る士郎を見て目を輝かせた。そんな遠坂凛は士郎の記憶には無い。

 戸惑う女子に声を掛けて道を作ってもらう。そして士郎は凛の前に片膝をついた。

 

「遠坂、ちょっと話がしたい。とりあえず帰ろう」

「は、はひ、喜んで!!!」

「美綴。悪い、今日は勝負を受けられない。また後日で良いか」

「あ、ああ、大丈夫だ、いいいつでも私はオッケーだ!!!」

「悪いな、ありがとう。それと誰か、美綴の拘束を解いてやってくれないか」

「はいっ!」

 

 どよめく群衆、目を白黒させている一成、嬉し気な綾子。

 それらを置いて士郎は凛を抱き上げると、その状態で下駄箱へと向かう。どこからか王子様と言葉が零れるが今は無視。羨望と嫉妬と呪いの視線が士郎たち――と言うか凛に集中するが、当の本人はだらしなく顔を緩ませており、全く気にした素振りは見られなかった。

 

 

 




頭を空っぽにして読んでいただけなら幸いです。
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