こんなふぇいとはいやだ   作:くまー

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頭の中身がどうしようもなくなると執筆は進みますが、だからと言って早く出来上がるわけでは無い。
でも2週間以内に更新できたからくっそ早い方だね!

※7/31追記
皆様誤字報告を頂きありがとうございます。
たくさんの方々ライダーの発言に誤字があると指摘頂きましたが、アレはワザとなのでスルーして頂けると幸いです。分かり辛くて申し訳ございません……


いち

 世界がおかしくなってしまった。

 まずはこの事実を受け入れないと先に進めない。

 隙あらば求婚してくるセイバー、士郎が絡むと聡明さの欠片も無くなる凛、気持ち悪いくらいに気が利きすぎる桜、堅物さを増した一成にぶっ飛んだ綾子。

 と言うかそもそも日常がぶっ壊れている。男性が極端に少ないとはどういう訳なのか。情報媒体の殆どが男性の保護を謳ったり、男性が少ない事による少子化を嘆いたり、女性が男性に性的な加害を働いたり、と言ったものを取り扱っているのは何故なのか。そこに士郎の知る日常は一切無い。

 混乱と頭痛と疲労に塗れた1日の終わりから約6時間後。

 土蔵で目を覚まして、小1時間程現状を整理して。士郎はそう現状を結論付けた。この世界を受け入れる事を認めた。

 

 じゃあ、次は、何をする?

 

 受け入れる事は理解した。だがそれは解決にはならない。士郎が望むのは、確かにあった筈の日常だ。この世界で生きていく事ではない。

 だがそれが難しいのも事実だ。頼りになる面々は揃いも揃っておかしくなっている。こんな状況に対して一人で解決策を導き出せるほど、士郎は自身が聡明で無い事を理解している。

 では、どうするか。

 

「……気は進まない、なんて言っていられないよな」

 

 脳裏に浮かんだのは皮肉ばかりの白髪のアイツ。陰険で口の悪いいけ好かない気障野郎。

 迷いは一瞬。癪ではあるが、そんなに選べるほど手があるわけでは無い。それにこんな状況なら、何だかんだ言っても目指すゴールは同じの筈。

 士郎は己の頬を叩くと、気合を入れる様に短く息を吐き出した。指針は決まった。なら、いつまでもグズグズとしてるわけにはいかない。思い立ったが吉日と言う奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ こんなふぇいとはいやだ ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気合を入れ直して頑張ろう。

 そう思っていた時間が士郎にもありました。

 

 

 

「おにいちゃああぁぁああああああんっ!!!」

 

 誰が呼んだか白い妖精。

 今日も元気いっぱい、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 土蔵を出て1秒。気合を入れ直した士郎目がけて、真正面から真っすぐに白い弾丸と化した彼女が迫る。

 

「させません」

 

 颯爽登場、騎乗兵の英霊。

 今日も冷静沈着、ライダー。

 鎖を器用に使ってイリヤをキャッチ&リリース。その神業めいた、しかし手慣れた動きに、最早一周回って驚きはない。

 

「お嬢様!」

「イリヤ、危ない」

 

 塀を飛び越える二つの影。

 珍しくも私服姿のセラとリズ。

 投げ飛ばされたイリヤをセラが華麗に受け止め、リズが2人を庇う様にライダーの前に立ち塞がる。

 

「お嬢様、大丈夫ですか!?」

「私は平気よ。ありがとう、セラ、リズ」

「イリヤ、無事。なら、問題ない」

 

 一見すれば、身を挺して主を守ろうとする美しい主従関係がそこにはあった。まるで姉妹のように信頼し合った仲。このやり取りに至った経緯させ無視すれば、拍手喝采物の感動的なシーンである。

 

「茶番は良いので出てってください」

 

 ライダーの容赦のない一言が現実に全てを引き戻す。悪夢みたいな現実へ引き戻す。

 冷たさ以外の何も感じられない言葉。こんな口調を向けられれば傷つく自信がある。そう士郎は思った。彼の心は硝子だから致し方ない。と言うか彼女の口調ならば防弾硝子だって砕け散るだろうよ。

 

「あら、ライダー。私とシロウの仲を邪魔するつもり? 相変わらず空気が読めないのね」

「それは貴女でしょう、イリヤスフィール。士郎を守るのは当然の好意です。貴女程度の想いで破れるとは思わない事ですね」

 

 いつになく饒舌なライダー。何となくコウイのイントネーションが違う気がするが気にしたら負けだろう。士郎のスルースキルは現在進行形でレベルアップ中だ。

 

「シロウは私の物よ。私と永遠を生きるべきなの。邪魔するなら容赦はしないわ」

「御託は良いから帰ってください。そもそも士郎は誰のものでも無い。彼には彼の人生があり、それを邪魔する権利は誰にもない」

 

 泣きそうだ。士郎はそう思った。このぶっ壊れた世界でも救いはあるらしい。

 

「よく言うわよ。シロウに夜這いかけようとしてサクラに折檻されているくせに」

 

 泣きそうだ。士郎はそう思った。このぶっ壊れた世界には救いが無いらしい。

 だがライダーはやれやれとでも言いたげに首を振り溜息を吐いた。

 

「イリヤスフィール。貴女は何も分かっていない」

「はぁ?」

「いいですか、イリヤスフィール。サクラのそれは愛情です。ですから、何の問題もありません」

 

 胸を張って。高らかに、誇らしげに。

 そうライダーは宣言した。

 士郎の頭が再び痛みを訴え始める。

 

「……それって、歪んでない?」

「貴女にそんな事は言われたくありません。士郎の寝顔を満悦した後にサクラに愛情を注がれる。こんな幸せな事はありませんよ」

「お嬢様、耳をお塞ぎください。こんな戯言を聞いていたら耳が腐ります」

「イリヤ、下がって」

 

 従者の2人もライダーの言葉には怖気を覚えるらしい。明らかに引いている。と言うか突然のカミングアウトに士郎だってドン引きだ。この世界はどこまで士郎を追い詰めれば気が済むというのか。

 

「……はぁ、嘆かわしい。自分だけの世界に閉じこもっていては成長はありませんよ?」

「いや、それって成長と違う気がする……」

「何を言いますか、イリヤスフィール。全く……士郎もそう思いますよね?」

「いや、ちょっと……」

 

 思わず言い淀む。そこに意思は無い。今までに培ってきた常識から脊髄反射気味に反応しただけの言葉。それでも決定的な言葉を発しない辺りに、彼の優しさが窺える。

 だがライダーは。その言葉を聞いて崩れ落ちた。地に手を付き、息も絶え絶えと言った様子でゆっくりと士郎へと振り返る。

 

「……し、士郎、それは――――」

「い、いや、俺はってだけで、ライダーを否定するつもりは無いぞ! 人それぞれだしさ!」

 

 ぐはぁ! いきなり血反吐を吐くライダー。どうやら士郎の言葉は何のフォローにもなっていなかったらしい。

 でも仕方が無い。そこで無条件で同意するのは絶対に拙いと、そう鍛え上げられた第六感が士郎にそう囁いているのだから。

 

「ナイス、です」

 

 そしてそんな隙だらけの敵を見逃す筈も無く。

 いつのまにかに距離を詰めたリズが、そのままライダーを圧し潰す様に跳びかかった。

 ライダーの知覚は一瞬遅い。

 逃れるよりも早く、リズの腕が首に回る。

 

「捕まえた」

 

 ぐるりと。首を極めたままリズはライダーの背後に回った。そしてそのまま動けぬ様にガッチリとホールド。

 チョークスリーパー。首に回した腕で相手の喉を締め上げる技。それは一歩間違えれば窒息死させかねない危険性をもっている。加えてリズはサーヴァントであるライダーと張り合えるパワーがある。

 マウントは取った。

 ならば、もうそこに逆転する手立ては無い。

 後は意識が落ちるのを待つだけ。

 純粋な力比べならば、これでお終いだ。

 そう。力比べ、だけなら。

 

「あ」

 

 それは誰の言葉だったか。

 彼女の真名を知る士郎か。

 眼鏡が外れた事に気が付いたイリヤか。

 その眼を最初に見てしまったセラか。

 或いは、尤も近くにいたリズか。

 ……まぁ、つまり。何があったと言うと。

 

 

 

「ああ、士郎、視ないで――――ッ!!!」

 

 

 

 魔眼、発動。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 酷い目にあった。そう士郎は思った。随分な一日の始まりである。

 魔眼持ちのライダーは普段は魔眼殺しの眼鏡を使用して己の能力を封印している。そうでもしないと己の意志に反して魔眼が発動してしまい、無差別に被害を振りまくからだ。

 彼女の魔眼の能力は石化。能力成立の条件は視る事。ライダーの存在を認識してしまうと目を瞑っていても石化してしまう。詳細に認識すればするほど、その効果は強力になる。

 

「申し訳ございません、士郎。暫くすれば解除されますから!」

 

 そう言って逃げる様にライダーは去っていた。同じく石化したアインツベルン御一行を抱えることを忘れずに。士郎が動けるようになったのはそれから1分後だが、それでも暫くは身体が妙に固く動かし辛かった。短時間、そしてすぐに離れたにもかかわらず残る後遺症。最近は忘れかけていたが、魔眼の恐ろしさを士郎は改めて身に刻んだ。

 

 

 

「うぅ……」

 

 冷たい水で顔を洗う。何度も何度も、念入りに。朝の洗顔は1日をスタートさせるルーティンである。眠気が飛んで1日の始まりを実感する神聖な儀式のような物。

 だと言うのに何故こんなにも疲れているのだろうか。疲労に塗れているのだろうか。始まりから陰鬱な気分なのか。

 鏡に映る疲労困憊の自身にいつもの数段は重い溜息が吐き出る。幸せが逃げる? 知った事か。

 

「……ええい、とりあえず朝食だ朝食」

 

 ストレスが溜まると家事に逃げるのがこの男だ。頭の中では余っている筈の食材がリストアップされ、調理可能なレシピが構築並べられている。最早食材を使い切るつもりの勢いである。きっと朝食は豪勢だ。

 和洋折衷、あと覚えたての中華も。今日は休日。久々に豪遊しても罰は当たるまい。寧ろふんだんに食材を使ってやろう、使い切ってやろう。

 半ば現実逃避気味に士郎は居間の障子を開けた。今の彼の安息の地は台所なのだ。

 

「ああっ! サクラっ! あっ! ああっ!」

「ライダー、貴女の罪は何か言ってみなさい」

「はいっ! ああっ! 私はっ! あっ! 私はっ! 私はっ!!」

「早く言いなさい」

「はいっ! 私はっ! 士郎にッ! 魔眼でっ!」

「士郎?」

「士郎様にっ! 士郎様にっ!」

「続けて」

 

 何だこの地獄は。そう士郎は思った。目の前ではライダーが天井から吊るされていた。そして桜が鞭を振るっていた。ライダーの口からは嬌声が溢れていた。桜は感情を見せることなく、ライダーの一声毎に鞭を振るっていた。

 あれ、ここって居間じゃなかったっけ?

 

「私はっ! 寝顔っ! あっ!」

「続けて」

「あ、飽き足らずっ! んあっ! ああっ!」

「続けて」

「魔眼でっ! このっ! 眼でッ! あんっ!」

 

 よくよく見渡すと居間では無かった。どうやら桜の部屋らしい。確かに居間の襖を開けたのになぁ、何でかなぁ。おかしいなぁ。

 士郎は廊下に視線を向けた。配置されている家具。自分が通ってきた廊下。やっぱりこの部屋が居間の筈で間違いはない。筈だ。

 

「あっ! あっ!」

「ライダー」

「はいぃ、私はっ! 石化をっ! んあっ!」

「続けて」

 

 士郎は静かに襖を締めると、二度目の溜息を吐いた。さっき吐いたばかりだというのに、随分と万感の思いが込められた溜息が吐き出た。頭痛が止まらなかった。

 気のせいだよなぁ。きっとそうだよなぁ。

 もう一度襖を開ける。

 

「あっ! あっ! ああっ!」

「続けて」

 

 もう一度襖を締める。現実は変わらない。何でこうも非情なのか。

 眉間を抑えて頭を振る。思わずしゃがみこんでしまった士郎は何も悪くない。彼は只の被害者だ。紛う事無き被害者だ。

 

「……ん?」

 

 そんな士郎の視界の端に、1枚の紙が目に入る。何やら紋様が描かれた紙。魔力を感じる事から、ただの紙ではない事は間違いない。それは襖の下の方に目立たぬ様に貼り付けてあった。

 疑問に思って剥がしてみると、僅かに魔力が弾けて消えたのを感じる。つまりは効力の消失。何かしらの魔具だったのだろうか。

 

「あ、あら、士郎! お早う!」

 

 そんな士郎の頭上から声がかかる。

 見上げると、顔を赤くした遠坂凛。寝間着姿とは言え珍しくも朝早くから起きている。

 

「お早う、遠坂」

「お早う! どうしたのかしら!」

 

 何故か居間で桜とライダーがSMプレイしている――とは口が裂けても士郎は言えない。というか言いたくない。絶対に口にしたくない。

 暫し悩んだ末、士郎は手に持った紙を見せた。

 

「これ――――」

「あ、え……士郎、何でこれを?」

 

 ……どうやらこれが何であるかを凛は知っているらしい。普段の聡明さなんてどこへやら。心配になるくらいに彼女は顔色を変えてワタワタし始める。

 

「遠坂、これが分かるのか」

「ええ! こ、これはね! 空間を歪曲する魔具なの!」

「空間を歪曲する魔具?」

「そ! 限定的だけど、例えば私の部屋の入り口と士郎の――じゃなくて、お風呂を繋げたりとか、玄関を開けたら士郎の部屋に行ける様にできるの!」

 

 つまりは簡易どこでもド〇である。便利な事この上ない。

 

「じゃあ学校にも行けるのか」

「えーと、それは無理ね。効果範囲はあくまでも士郎の家だけで、指定できるのは一つだけだし、一度剥がれると効果は無くなる。まだ改良は必要よ」

 

 これで謎が解けた。試しに襖を開けると、予想通りそこには見慣れた居間が現れる。今の凛の説明から察するに、何故か居間を開けると桜の部屋に繋がる様になっていたのだろう。何故か。

 

「ああ、良かった。頭がおかしくなったと思った……」

 

 胸を撫でおろす。士郎の安息の地は奪われていない。その事実が堪らなく嬉しかった。

 ……何故そんな限定的で使い勝手の悪そうな魔具を開発したかについては、その一切の疑問を飲み込んだ。思考する道を閉ざした。

 見たくない物をわざわざ見る必要は無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三大欲求の一つが満たされたら、別の欲求が鎌首をもたげるのは世の常だ。

 豪勢な朝食の終わり。訪れるひと時の憩い。束の間の休息。

 肉食獣染みた女性陣が揃いも揃って次の欲求へと思考をシフトし、互いに牽制し合う中で、士郎は自然にさりげなく、しかし淀みの無い洗礼された動きで居間を出た。この部屋にいる危険性を察知したからだった。そしてそのまま玄関から家を出ようとする。

 

「お兄ちゃん! デートしよう!」

 

 作戦は失敗。辿り着く前に腰にイリヤが飛びついてくる。そして何故か尻に顔を埋め左右に振り始める。

 

「イリヤスフィール、貴様ぁ!」

「手を貸すわ、セイバー」

「やるわよ、ライダー」

「ええ、勿論です」

 

 途端に背後で膨れ上がる濃密な威圧感。幾ら人外魔境の冬木市とは言え、此処まで濃密な瘴気を発せられるのはこの衛宮邸くらいだろう。サーヴァント×2、魔術師×2ならばそれもむべなるかな。

 士郎の双眸からは涙がちょちょぎれそうである。世界はどうやら士郎が嫌いらしく、彼の安息の地が一つ一つ削られていく。

 

「へへーん、声も掛けられないヘタレは爪でも噛んで眺めてなさい」

「それが遺言か、イリヤスフィール」

「お兄ちゃんのお尻、温かい」

「――――殺すッ!!!」

 

 ぐりぐりぐり。イリヤが幸せそうに士郎の尻を堪能する。男の尻なんぞに堪能する箇所があるのかは甚だ疑問でしかないが、こうも幸せそうならばきっとそうなのだろう。逆の立場なら確かに魅力的ではあるのだから。

 ……あ、これってつまりはセクハラか。セクハラをされているのか。

 

「イリヤ?」

「なぁに?」

「ちょっとくすぐったいかな」

「え、あ、ごめんね! シロウが嫌がる事をするつもりじゃないの!」

 

 パッ、と離れるイリヤ。流石に今しがたしていた行為が、褒められるものではないという自覚はあったらしい。オドオドとしている様相は、先ほどまでの威風堂々とセクハラしてきた少女と同じとは思えない。……彼女たちの中での基準が今一掴めないが、士郎に嫌われることは一番ダメな事らしく、珍しくも弱気な表情が見て取れた。

 

「あー、まぁ人前でやらなければ良いけどな」

「え、ウソ、いいの!?」

「せ、先輩! 発言が大胆過ぎます!」

 

 眼を輝かせるイリヤ。焦る桜。そしてその傍らで鼻を抑えて屈みこむその他3名。どれが正常な反応かは分からないが、とりあえず自分が失言をかましたという事だけは士郎は理解した。

 

「あー、つまりだな……俺だから良いけど、他の人にはやるなよ」

「あ、当たり前よ! シロウ以外に興味なんか無いんだから!」

「先輩、過激すぎます!」

 

 とうとう桜も前かがみになる。イリヤは興奮したのか鼻血が出てきた。他の3人は顔を上げられていない。先ほどに引き続いて失言してしまったのは明らかだ。二度の失敗を自覚はするものの、どこからが失言になるのか士郎にはまだ理解できていない。

 持っていたポケットティッシュでイリヤの鼻血を拭いながら士郎は思った。

 思っていたよりも世界はおかしな事になっているのかもしれない。

 

「うへへ、シロ”ッ」

 

 否、訂正。

 この世界は最初からおかしな事になっている。

 横から飛んできたライダーにひき逃げされて宙を舞うイリヤ。

 勢い余って壁に激突するライダー。

 それを見届けて倒れる桜。

 ……もう一度言おう。

 この世界は、やっぱりおかしい。

 

 

 




おまけ(と言う名のNG)

※分岐点は魔眼発動後

「申し訳ございません、士郎。暫くすれば解除されますから!」
 
 そう言ってライダーは慌てて外れた眼鏡をかけた。一応これで効力は収まる。とは言え発動してしまった事には変わりなく、士郎たちの動きはかなり制限されてしまう。
 ライダーは器用に鎖を扱いイリヤ達をひとまとめに抱えると、そのまま立ち去ろう――として急ブレーキをかけた。

「……え?」

 多分。士郎は永劫忘れないだろう。
 何かに葛藤するように士郎と空とを交互に見るライダーを。
 何度も何度も繰り返し見た後自身の頭を抱えたライダーを。
 そして何故か真顔で士郎に向かって踵を返したライダーを。
 ――――一瞬で黒い影に捕らわれて飲み込まれたライダーを。

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