可能性と呼ばれる物はそれこそ無限と呼べるものだ。
あなたが右を選ぶ可能性があれば、その逆左を選ぶ可能性も存在する。
ことこれについては考えること自体が馬鹿馬鹿しくなるだろう事柄だ。
さて、そんな可能性という物は”あなた”という存在をどこかへと連れて行こうとしているらしい。
”あなた”の住む家にはゲーム機はあるだろうか? テレビゲームでも携帯ゲーム機でもスマートホンでも何でもいいが、”あなた”は何かしら電子的なものを触ったのだ。
”あなた”はその瞬間、自身の感覚がどこかへと飛んでいくという奇妙な感覚を体験したのだった。
何かに”あなた”の視界がつながる。
何かに”あなた”の腕の感覚がつながる。
何かに”あなた”の足の感覚がつながる。
何かのすべてに”あなた”の持つ外界認識機能が付与される。
つながった視界が、近場にある鏡を使って今の姿を映し出す。
何かは人型だった。 されど生き物ではない。
何かは人形だった。 されど生身ではない。
何かは無機物だった。 されど有機物ではない。
”あなた”が混乱するのは当然であり、”あなた”の精神衛生状態も悪くなる一方だろう。
つながった腕と視界を使い、現在自身がいる場所を探索する。
まず見つかったものは何らかの大きな機械、その次に見つかったものは何やら現代人が見慣れてはいないだろう言語で書かれた羊皮紙、ほかにはよくわからない機械などがそこら狭しと置かれていた。
多少整理などはされてはいるが、”あなた”にはどう見てもごみ置き場か倉庫にしか見えない。
四肢に力を入れると、ぐらりと視界が少し揺れながらもなんとか立ち上がることができた。
少しばかり視界が高くなるが、あまり大きくは広がることなく、どうやら今の”あなた”の背はあまり高くない様だった。
”あなた”はこの場所から出ていくために扉を探し始めた。
ここにはこんなにも者が置かれており、さらにはあまり埃も見えないところから考えて。今もなお使われているとそう思ったからだった。
そして、度重なる苦労(ガラクタ)を越えて何とか扉を発見することに成功するのだが、”あなた”が開ける前に扉が開いた。
開いた先にいたのはメガネをかけた紫が身の少女だった。
手には束になった羊皮紙やコピー紙が束になっている。
少女は驚いているようで、声が出ない様だった。
その代わりというのか、少女の後ろからやってきていた同じく羊皮紙やコピー紙を持った男性が声を上げた。
「どうしたんだいマシュってなんだ君はー!?」
”あなた”のファーストコンタクトはこのような結果で終わった。
「それで私のところに連れてきたのか」
”あなた”は男性と少女に連れられて、工房のような場所へとやってきた。
工房には”あなた”が見たことのある絵からそのまま飛び出てきたのかと見間違えるほどの女性が立っていた。
「ああ、君ならこれが何なのかわかるだろ? レオナルド」
男性は”あなた”を指さしてそう言った。
「ふーむ……たしかマリスビリーが考えていたプランにあったような……思い出した。 デミサーバント計画の前に考案されていたオートマタだったはずだよ」
「マリスビリーが?」
「ああ、だが生まれたものは一般人程度の霊基を受け入れられる程度のものでね。 とてもじゃないが私たちサーヴァントを受け入れるには役不足だったから、試験的に一体制作されただけで凍結された計画だったはずだよ」
「つまり……廃棄品ということでしょうか」
「そうだね。 マリスビリーの奴が処分するのを忘れていたのか、ほかの職員が忘れていたのかは知らないが、たまたま残ってたんだろう」
「そうか。 で、なぜその試作品が動いてるんだ」
「うーんそうだな、君ちょっとこっちに来れるかい?」
レオナルドと呼ばれた女性が”あなた”に手招きをする。
”あなた”は怪しみながらも、ゆっくりとレオナルドのもとへと向かう。
レオナルドは”あなた”がの前にまで来ると、”あなた”の頭の上に手を置いた。
そしてレオナルドは、”あなた”には理解できない言葉を歌うようにつぶやいた。
”あなた”が自分の中を覗かれているような感覚を覚えながら一分ほど待つと、レオナルドはあたまから手を離した。
「軽く解析してみたが、どうやらどこからかこのオートマタにつながっているようだ」
「……
男性は、”あなた”を見ながらそう言った。
どうやら男性は”あなた”をスパイか何かだと思っているようだ。
”あなた”は何とか弁明しようとするが、その前にレオナルドの返答が遮った。
「いや、どうやら違うみたいだ。
「どういうことですか?」
「さっきなにかと繋がっていると言ったね? カルデアの防壁は簡単に破られるほどやわじゃないのは二人も知っているだろう。 だが、これは防壁なんて関係ないと言わんばかりにすり抜けてどこかと繋がっている」
レオナルドは軽く興奮しているようだった。
「つまり、異世界とでも繋がっているとでも言いたいのかい?」
「ああ、今はそう言うしかないだろうね!」
そう言うレオナルドの顔は満面の笑みだった。
そんなレオナルドにあきれながらも男性が言う。
「楽しそうだな、レオナルド」
「そりゃあ楽しいさ、異世界の存在なんてめったに見れないんだよ!」
「だが、楽しんでいるとこ悪いが話を戻そう。 これは安全なのか?」
「さあ、それは本人に聞いてみるしかないだろう、 ね?」
レオナルドは”あなた”に顔を向けた。
「君は一体どんな存在なんだい?」
「これを持っていただけますか?」
”あなた”は少女、マシュ・キリエライトから資料の束を受け取り、彼女に次いで歩いている。
あの後、彼らの話し合いの結果、マシュのサポートという形で作られたというオートマタという形で監視されることになった。
もちろんそのまま動き回れるというわけではない、その証拠に”あなた”の首の部分には首輪が巻かれている。
これにはもしマシュや誰かに危害を加えようとした瞬間に、”あなた”の魂を消滅させる呪いがかかっている。
それを聞かされたのが首輪をつけられ後だったので、その時”あなた”は驚いていたが、すぐにしょうがないと考え直した。
即処分されるよりはましだと考えたのである。
その後、カルデアという組織の説明を受け現在に至る。
世界……人理と呼ばれる物をを守る仕事だというが、スケールが大きすぎてピンと来ていないのが今の”あなた”の現状だった。
カルデアの者たちも、似たような存在を時計塔と呼ばれる場所で見ているらしく、あまり気にも留めていなかった。
そうこう”あなた”が考えているうちに目的の場所に着いたようだった。
工房の中には、レオナルドともう一人ロマニがいた。
「ダヴィンチちゃん、頼まれていた資料持ってきました」
「ありがとうマシュ。 そこに置いておいてくれ」
「はい」
マシュの置いた資料の横に”あなた”は次いで持っていた資料を置いた。
「それでは私はこれから訓練がありますので」
「ああ、がんばってきてくれ」
「失礼します」
”あなた”はマシュに続いて工房を出ていった。
マシュたちが工房から出ていったことを確認した後、二人は話し出した。
「うまくいっているみたいだね」
「みたいだな、一時はどうなるかと思ったが何のこともなかった」
「そうだね、異世界の存在が少女と出会いよき友となり日常を歩ん行く、そうなってくれればいいんだけどね」
「ああ、それは何とも」
――ロマンのある話だね。
――回線切断
――これ以上の可能性を観測することは不可能
――第一から第七までの次元座標のロスト
――観測を停止します
可能性の未来は、見知らぬ”あなた”によって委ねられた。
世界をつなぐ
時系列はぐだがくる一年前ぐらい