遠い過去。
とある存在と戦った者たちがいた。
とある存在、その名は歴史の道標、始まりの人の一人――女媧。
戦った者たち、その身に仙骨をと呼ばれる特殊な骨を持つ者たち――仙人と道士。
千を越える年月をかけ、戦いは仙人たちの勝利に終わった。
そして、仙人たちは神となり人とのかかわりを完全に立ち人の時代が訪れた。
これこそ人と仙人が袂を分かった出来事である。
そして、その大戦後いなくなった者がいる。
名を、伏羲。
周と呼ばれた国で軍師にして、仙界対戦の最大の功労者である太公望と金鰲列島に所属し、太公望たち崑崙山の仙人たちと戦った者である王天君の本来の姿。
歴史の道標である女媧と同じく空からやってきた始まりの人の一人である。
伏羲がいったいどこへと消えていったのか、それは崑崙の仙人たちも、天然道士の少年も、乗り物であった聖獣も知らない。
真実は流れる風に消えて行ってしまった。
「うーむ」
カルデアの管制室、そこに一人の女性が地球儀のような小さくなりながら立っている。
その姿は世界的に有名な絵画、モナリザに酷似……いやその者とも言ってもいいかもしれないほど似た姿をしていた。
彼女の名は、レオナルドダヴィンチ。
モナリザを描いたその人であり、芸術から始まり様々なものに精通している万能の人であり、現在はサーヴァントとしてカルデアに呼ばれた英霊の一人だ。
そんな彼女が巨大な地球儀のような物体、地球環境モデル・カルデアスを見ていた。
「極小だが特異点反応がある……だが、これは一体」
考え込むダヴィンチのもとに、やってくるものがいた。
カルデアのマスターである少年藤丸立香と、デミサーヴァントの少女マシュ・キリエライトだ。
「来てくれたね二人とも、さて早速だがこれを見てくれ」
カルデアスが動き出し、指定した場所を映し出す。
映し出された場所は、現代において中国と呼ばれる場所だった。
「中国に特異点ですか?」
「ああ、時代は紀元前1046年。 殷王朝が滅亡し、周という国が生まれた時代だよ」
――周って昔の中国の?
「そうですね。 牧野の戦いという戦いが終わり武王という人物が周という王朝を起こした時代ですね」
「大きな戦いの後だから、サーヴァントを連れていればそれほど危険もないだろう。 だが、少しおかしなことになっていてね」
――おかしなこと?
「ああ。 特異点が拡大と縮小を繰り返しているんだ」
――大きさが安定していない?
「ああ、今までいろんな特異点を観測してきたが、このような特異点は初めてだ。 レイシフトは問題なく行えるだろうが、特異点の中はどうなっているかはわからない」
「それは……危険なのではないですか?」
マシュが心配の声を上げる。
「おそらくは大丈夫だろう、マシュやほかのサーヴァントがついていくのだからよほどのことが無き限り問題はないはずだ。 それに、極小とはいえ特異点だ。 放っておけば人理に影響が出るかもしれないから修復しておいて損はない。十分に気を付けて行ってきてほしい」
――了解です!
「護衛には哪吒や玉藻についていってもらうことにする。 それじゃよっろしくー」
そうして、立香たちは古代中国へレイシフト行った。
「……」
立香たちカルデアが向かっている特異点のとある場所で、少年が岩に胡坐をかいて川に糸を垂らしている。
竿は少年の体のようにうつらうつらと上下に揺れて魚を誘っている。
だが、泳ぐ魚が釣れることは無い。
なぜなら魚をつり上げるための餌はつけられてはいないし、針の形は真っ直ぐで釣れるはずもない。
ならなぜこの少年は釣竿を手に胡座をかいているのか、それはこの形が彼の瞑想の形だからだ。
「……はっ、寝てしまっていたか」
……そのはずだ。
少年は1度竿を引き上げると、もう一度軽く川に投げ入れた。
「さて、大物が釣れるといいのだがのう……」
そう言って、また少年は瞼を閉じて瞑想を始めた。
優しい風が吹く、それは彼の手によるものか、それともほかの
巡りし星は動き出す、向かう先は歴史の道標を超えたその先に、人類最後のマスターと少年は出会う。
その出会いの行先がどうなるのかは、あの傾国の美女ですらきっと分からないだろう。
――これは道が途切れた世界、決別の先、なまけたがりの軍師が導く物語だ。