暗い暗い闇の中、光すら届かない場所に一つの人影があった。
――ここどこ? また誰か夢の中?
突然の暗闇の中だというのに落ち着いているこの青年、名前を藤丸立香。
人理継続保障機関、カルデアのマスターである。
――真っ暗だ……誰の夢だろう?
彼はカルデアにてサーヴァントと呼ばれる超常的的な存在達と契約を交わしている。
そして契約を交わす際にサーヴァントと霊的ラインがつながる彼は、時折、契約したサーヴァントの過去の記憶を、夢として見ることがある。
本来、マスターと契約するサーヴァントは一体で、見る夢も契約サーヴァントの物だけなのだが、複数のサーヴァントと契約を結んでいる彼は、多くのサーヴァントの夢を見ることになった。
聖女や海賊、科学者や騎士、さらには暗い神性を宿す者の夢も見ることになった。
そんな経験があるせいか、このような状況になっても落ち着き、冷静に周りを探る程度には馴れきってしまっていた。
「ニ……イ……」
――ッ! 誰!?
暗闇を手探りで探っていた立香の耳にどこからか小さな声が耳に入る。
「ニク……ニ……」
――どこ、どこにいるの!
立香が声を上げるが相手は返事を返さない。
だが、代わりに聞こえてくる声は段々と大きくなっていく、さらには
――近づいてきてる?
聞こえる声は段々と近くで聞こえてくるようになっていった。
「ニ……イ……ニク……ニクイ!」
――がっ!?
声がはっきり聞こえた瞬間、声の主が立香の首をつかむ。
「ニクイニクイニクイ!」
声を荒げながら立夏を持ち上げる謎の人物。
首を絞められながら持ち上げられるせいで息苦しい中、何とか立香は首を絞めている人物を見ようとする。
暗闇の中で目が慣れていたのか、何とかその人物を見ることができた。
その人物は、深紅のような赤い瞳、腰まで伸びる銀色の髪、両頬には赤い回路のような線が走った若い女性だった。
「オマエタチノ……オマエタチノセイデワタシハ! 」
――いっ息が!?
呼吸することもまともに出来ずもうろうとしていく意識の中、立夏は彼女の瞳から落ちるものを見た。
――泣い……てる……?
それが、藤丸立香が見た最後の光景だった……
――今のは……?
立香が目を覚ますと、そこは見慣れたカルデアのマイルームだった。
先ほどのまでの息苦しさが嘘のように消えている。
ただの悪夢だったのか? そう思いつつも、首を絞められた時の痛みは夢幻だとはとても立香には思えなかった。
ならば、相談したほうがいいだろうと思った立香は服を着替え管制室へと向かった。
管制室へと向かう途中の廊下で、立香は小さな人影を見つけた。
それは、立香が契約しているサーヴァントの一人であるキャスターの一人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンであった。
イリヤスフィールの頭の上では彼女の宝具? のような存在であるステッキ、マジカルルビーがくるくると回っていた。
二人は何か話し込んでいるようで気になった立香は二人に話しかけた
「あ、マスターさん!」
「これはこれはグランドマスター! ちょうどいいところに!」
――ちょうどいい?
「ええと、さっき食堂から自分の部屋に戻ろうとする拾ったんですけど……」
立香がそう返すとイリヤスフィールが立香に小さな掌を向ける、そこには青い宝石のような石があった。
「封印はされているようなのですが術式が刻まれた魔力の結晶体でのようで、サーヴァントの皆さんの誰かが落としたのではないか? と私は思ってるんですけど心当たりはありませんか~?」
――んー
そうルビーに言われまず最初に思い当たったのが女神イシュタルであったが、彼女であればすぐに気づきそうだと思い別の人物を考える。
ギルガメッシュなども思いついたが、彼の場合は落としたところで気にもしないだろうと思いこれも違うと判断。
なら誰だろうとさらに考えるが、立香には思い当たらなかった。
――今からダヴィンチちゃんのところに行こうと思ってたから一緒に行って聞いてみようか。ホームズもいるだろうし
そう言って、イリヤスフィールたちと共に管制室へ向かうことにした。
「んーこれは……」
――ダヴィンチちゃん、これが何なのかわかった?
管制室にたどり着いた立香たち、さっそくホームズにこれが誰のものかを推理してもらうと思うがそこにいたのは万能の人、レオナルドダヴィンチだけであった。
いない者はしょうがないので、立香たちは先に、ダヴィンチに青い宝石の解析を依頼した。
それを快く受けたダヴィンチは五分と経たずに青い宝石を解析したのだが、彼女の表情は困り顔だった。
「もしかして……危ないものですか……?」
不安になったのかイリヤスフィールがそう聞くと、ダヴィンチは笑って答えた。
「いやーこれ自体は封印処理がされてるみたいだから、少なくとも何らかの外的要因でもなければこれは膨大な魔力を蓄えた石だよ?、ただ……」
――ただ?
「これに刻まれていた術式が問題でね、言ってしまえば、この石は聖杯と似た機能を持っている」
――これが……聖杯?
「え……? 聖杯だったんですかこの石!?」
驚く立香とイリヤスフィール。
「聖杯といっても私たちが集めた聖杯とは違って、ちゃんと願いはかなえられないみたいだけどねぇ~」
――そうなんですか?
「うん、ところどころ術式が崩れていてね、これじゃあ下手すれば大爆発! なんてことになりかねない、なのでこれは私が後で処分を……」
ダヴィンチが言葉を言い切ろうとした瞬間であった。
管制室に特異点を知らせる警報が鳴り響いたのは。
警報を聞いたダヴィンチは説明を切り上げ、カルデアの機械を操作し特異点が発生した場所を調べ始めた。
「ダヴィンチちゃん!」
「おお、マシュちょうどいいところに」
警報を聞いてきたのか、マシュ・キリエライトが管制室へとやってきた。
それと同時にダヴィンチが特異点の発生場所を突き止める。
「特異点が発生した場所がわかったよ、場所は日本だ!」
「日本……先輩の故郷……!」
立夏がカルデアス見上げると、日本のある地点に特異点を示す光の点が存在していた。