Fate系 クロス+短編ネタ集   作:ルルー

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筆にて世界を照らすもの

 世界が球状であるならば、そこは真下に当たる場所だろう。

 吹雪が吹き荒れ、狂気山脈と名付けられたけられたその場所は、人間と呼ばれる種族が未来(人理)を守るために生み出した。

 人間の英知である科学と、世界に刻まれし願い(信仰)の結晶である魔術、その両方を使い、星を見る一族(アニムスフィア)が設立した、人類の希望の組織。

 人理継続保障機関フィニス・カルデアと名付けられたその場所には、サーヴァントと呼ばれる者たちが呼び出されれている。

 サーヴァントとは、ある者は怪物を打倒し、ある者は国を成し、ある者は悪逆に手を染め、ある者は、またある者は、などと言い出せばきりがないが、その者たちは様々な偉業を成しえた者(英霊)である。

 時は彼の者魔術王と呼ばれたものが行った大偉業、人理焼却を乗り越え四つの特異点を修復した後のこと、カルデアの廊下に一体の獣が現れていた。

 

 その獣とは、純白の毛皮をした一匹の白い犬であった。

 サーヴァントや魔術師が跋扈するカルデアでは珍しいほど普通という言葉が似合う犬であった。

 みれば呑気にあくびなどをしていて、まるで緊張感がない、放っておけばそのままそこで寝てしまいそうな勢いだ。

 

「う~?」

 

 そんな白い犬に、どこからかいい匂いがやってくる。

 その匂いを嗅いでみれば、和風の鰹節の匂いや魚を焼いたにおいがしていて、誰かが料理をしているようだった。

 

「ワウ!」

 

 その匂いにつられ、いまにも眠ってしまいそうだった白い犬は歩き出した。

 しばらく歩いていくと、様々な単語で食堂と書かれたネームプレートが這ってある場所についた。

 白い犬が中をのぞくと、そこには白髪の褐色の肌をしたエプロンの男が料理をしていた。

 白い犬が男の足元に近づくと男は白い犬に気づいた。

 

「犬?」

 

「ワウ!」

 

 白い犬はハァハァと舌を出しながら男の焼いている魚を見つめていた。

 

「なぜカルデアに犬が……少し前に召喚されたアヴェンジャーでもないようだし……君はどこから来たんだ? カルデアで召喚された新たなサーヴァントか?」

 

 男はしゃがんで目線を合わせそう聞くが、白い犬の興味は男の話ではなく、男の焼いている魚に向いていた。

 

「はぁ……どうやら話は聞いてもらえないようだな……この様子では腹を満たすまでは話にならんな」

 

 男はため息つきながら、白い犬をそのままにして魚を焼き上げた。

 そして、魚を白い皿に乗せ、白い犬の前に差し出した。

 

「ほら、食べるといい」

 

「ワウ!」

 

 差し出された魚に白い犬は一目散にとびかかる、魚はあっという間に白い犬の腹へと消えていく。

 

「はは、どうやらかなり腹を空かせていたようだな」

 

 男は笑いながらその光景を見守っていた。

 魚を食べ終わると、白い犬は皿を男の前へと返した。

 

「ワン!」

 

「お礼のつもりか? それならどういたしまして」

 

 男が皿を受け取りキッチンのシンクで洗い、片づけた。

 男が皿を洗う際中、男の体から何やら玉のようなものが出現し、白い犬に吸い込まれていった。

 

「エミヤさーん!」

 

 それを白い犬が見守っていると、食堂の入り口から何やら女性の声が聞こえてきた。

 その女性は、胸元を露出させた着物を身にまとい、頭には狐の耳、背からは大きなしっぽが見えた美女であった。

 

「おや、キャスター、何ようかな?」

 

 エミヤと呼ばれた男は皿を片付けながら、キャスターと呼んだ美女から話尾を聞いた。

 

「おや? このお犬様は?」

 

 近づいてきたキャスターは、エミヤの足元にいた白い犬に気づいた。

 

「どうやら焼いた魚の匂いにつられてきたようでね、どうも腹を空かしていたようだったから先ほど焼いていた魚を与えたところだ」

 

「おお、流石食堂のオカンと呼ばれるお方、対応が完璧ですねぇ~」

 

「誰がオカンか」

 

「まあまあ、マスターがお呼びです、私も呼ばれておりますので共に行きましょうか」

 

「了解した」

 

 エミヤはエプロンを片付け、キャスターと共に食堂を出ていこうとする。

 

「おや、先ほどのお犬様は?」

 

「何?」

 

 キャスターの指摘にエミヤは周りを見渡す、けれど先ほどまで魚を食べていた白い犬はどこにもいなかった。

 

「……まぁいいだろう 悪意を持っているようには見えなかった。 ダヴィンチ女史に報告しておけば大丈夫だろう」

 

「そうですか……ではいきましょうか」

 

 エミヤとキャスターは食堂を出ていった。

 

(ですが、あのお犬様、何やら私と近しいものを感じたような……? 気のせいでしょうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう! なかなかの一筆じゃあねぇか! このイッスン様に負けず劣らずのいい腕だ!」

 

「ほー、そんなちんちくりん身なりで筆を扱うのかい?」

 

「筆を執るのに身なりがかんけぇいあっかってんだ! べらんめぇ!」

 

「ははっちげぇねぇや!」

 

 カルデアのとある一室、まるで盗人にでも入られたかのように様々なものが散乱している部屋で、一人の女性と小さな虫のような存在が話をしていた。

 その女性の手には筆が握られており、先ほどまで筆で描いていたようだった。

 

「しっかし、あんたも大変だねぇ…‥突然ここにやってきちまうなんてなぁ」

 

「まったくだぜ一緒にいたアマ公ともはぐれちまうしよう」

 

「アマ公? いったいなにもんだいそいつぁ?」

 

 女性がイッスンにそう聞くとイッスンはこう答えた。

 

「アマ公ってのは、見た目は力が抜けちまうくらい緩い犬っころだなんだが、いざとなれば流麗な筆しらべを持って世を守るやつのことだ!」

 

「へぇ~筆しらべってやつが何だか知らないが面白そうじゃないか、あってみたいものだねぇ」

 

「アマ公もここに飛ばされてるはずなんだがなぁ……どこに行ったんだか……」

 

「ここにいるってんなら、ますたぁ殿に聞いてみればわかるかもしれねぇな……よしいっちょいってみるか」

 

「おおそいつは助かるよろしく頼む」

 

「おうさ! この葛飾北斎未任せておきな!」

 

 そう言ってイッスンと葛飾北斎はカルデアの管制室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、件の白い犬――アマ公はというと? 。

 

「膝の上で寝てしまわれて、全く動くことができません……」

 

 道中で出会った少女、マシュキリエライトの膝の上で眠っていた。

 

 おお、我らが慈母アマテラス大神よ眠っておられるのですか! 。

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