イヴちゃんさえ生きてくれたらいい   作:イヴちゃん凶愛者

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21話  理解できないほど息をするのがしんどい

しばらく歩くと一人の青年が外僕の前に立ちふさがった。廊下の微かな光によって彼の顔が見え隠れする。

「こんな時間に何かようかね、人柱遡亜君。君の制服には覚えがある。」

彼の名札を見ると財前晃と書かれていて同級生の葵さんの兄だと予想がついた。けれど今は初対面なので知らないフリをしておく。そして僕の名前を知っている事に気が付く。

「僕は貴方を知りませんが頼みがあります。ibちゃんが残したlogを調べさせて欲しい。」

 

「ibという事は人か?そして君は他人が聞いている事は無視しない方がいい。」

そんな事はわかっているけれど一刻も早くイヴちゃんを探さないと手遅れな気がしたからだ。

「僕の定義では人です、貴方達の定義では人間と呼べるかはわからないけど。僕の名前はライター、貴方の敵ですが停戦協定を結びたい。」

自分の事を敵と言う事は間違っているがデータの提供を求める立場としては言うしかない。そしてイヴちゃんは本当は人工知能なんだけど彼らは人工知能は人の物だと考えているから理解してもらえないだろう。

「敵か、君の言う敵の定義は何だと思う?」

 

彼の返し方に苛立ちするが今は自分を抑える。

 

「ノーコメントです。ibちゃんのlogを調べさせてください。」

 

「わかった。その代わりこれから我々がする事に関しては全て邪魔しないでもらいたい。」

 

「それってどう言う意味?」

彼の顔はとても真面目で会社に献身的なのはわかる。けれど、言葉に深い含みを感じてしまう。

まるで彼はこれから起こることが理解できているかのように。

 

「今は何も言わないでおく。」

彼は誰かに指示をした後手で僕を案内する。

 

「場所を変えようか、今の君は…。」

デュエルディスクを見て驚く、それはそうだよね。デュエルディスクを壊す人なんてそうそういるはずもないし。

僕は晃さんと歩きながら場所の間取りを頭に叩き込む。次また此処に来る事はないと思うけれど必要な時が来るかもしれない。

 

晃さんに案内されたのはVRAINSへと起動する装置が1つだけポツンと置かれている部屋だった。

 

「こんな所に僕を案内して何のつもりですか?」

 

「そこの装置はアドミニストレーター専用の装置です。今は席を外されていますがね。」

 

彼の言う事は真実なんだろうけど、僕はもう人間を信じれる程強くはない。

 

「ならばアドミニストレーターと会わせてほしい、それまでは僕は此処を動かない。」

 

「アドミニストレーターは忙しい。」

彼の顔は至って普通で嘘は言っていない。

けれど、どこか引っかかる。

何を言うべきか悩み沈黙が支配した。

けれど、沈黙も全く思いもよらずに破られる。

 

「席を外して、財前。」

どこからか声が聞こえた。

「御意。」

 

「貴方は先程ibを人間だと言ったな、何のためだ。」

 

「貴方達SOLはVRAINSにおけるサーバーリソースを全て独占しようとしている。ibちゃんは貴方達と関係ない世界からやってきた、だから貴方達とは関係ないかもしれない。人工知能と正直に言ったら貴方達はibちゃんを洗い浚い吐かせるに決まっている。」

 

「それは心外だな、自分の物を自由のは当たり前じゃないかね。」

 

「ibちゃんは僕だけの大切な人だ、貴方達に渡したりはしない。」

アドミニストレーターはこちらのほうを向いた。

彼は爆笑をこらえるよう顔になった。

「君はibの真実を知らないのか、知らないほうが幸せなのかもしれないがね。」

 

「貴方にibちゃんの何がわかるというんだ。」

冷静になれないほど僕は強くなれないよ、君みたいに自分を隠して生きていけるなら幸せなのだろうけど。

僕はそれはできない。

 

「君は夢を持っているかね。」

僕に夢なんかない、イヴちゃんに一緒に生きられるならそれだけで幸せだった。

僕が…イヴちゃんが死ぬ前にすべてを思い出す事が出来ていたなら死ぬ事もなかったのかな。

「持っているよ。」

震え声で吐き出すように言う。

僕が探している人も夢を持っていた、けれど実現は絶対にできないと嘆いていた。夢を実現できる人なんて限られているし、限られているからこそそれに向かって立ち向かう事ができる。

 

「遡亜、イグニスは聞いた事があるか?」

 

「イグニス、ですか?」

その言葉を聞いたとき嗚咽しそうになった。でも何も覚えてなんかいない。

 

「何も知らないですね。」

自分の口を抑えながら言う。無意識に吐き気がした。

 


 

「君は私達と関わらない方がいい、君が私達を嫌うのは理解できる。嫌いになってくれたら私も何もしなくて済むのだ。」

 

「僕は君の提案に感謝している。だから嫌いになりたくないよ。」

 

「嫌いにならなければ人類は滅びるんだぞ、いや世界が滅亡する。」

あの時彼は浮かない顔をしていた。

彼の言った後僕は何と返したのだろうか。

 

 

 

 

 

「僕は本当に人間という者なのでしょうか。」

人間という定義を僕は知らない。

イヴちゃんだって自分で考えて行動する。

肉体という存在が人間という者の必要条件なら僕はこんな身体なんていらない。

 

「どういう意味だ?」

 

「そのままの意味ですよ、僕という存在は誰かに作られてて誰かの為に生きている。それって人間と言えますか?自分の意志で行動したいと思いませんか?」

人を自分の利益のために動かす人に言ったところで理解はされないけどね。

 

 


 

思い返そうとするが記憶は形にはならない。

イヴちゃんの手がかりを掴めずにいてとても悔しい気分だ。

もう僕は人間として生きるのはしんどい。

 

 

僕を殺してイヴちゃん、それで君の気持ちが晴れるなら。

 




クローラー新規出ましたね。
星遺物ストーリーとVRAINSの世界を並行して書いてるのでしんどいです。
誤字報告ありがとうございます。
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