イヴちゃんさえ生きてくれたらいい 作:イヴちゃん凶愛者
オリキャラとして風のイグニスのオリジンを出しております。
肌寒さを感じて、とっさに心臓に手を当てた。けれど、そこにあるはずの鼓動は聞こえない。
風邪を引くことは絶対にないと、なぜか確信している。その理由は、今の僕にはどうでもいいことだった。
思考が急速に、どこまでも合理的になっていく。
イグニスさんたちは、もうサイバース世界にはいない。各自がそれぞれの思想を持ち、人間に付くか、あるいは人間に牙を剥くか、判断の時が迫っている。
ライトニングさんが言った「僕が失敗した」という事実。それは一体、何を指しているんだろうか。
あの場所にいたことが間違いだったのか。それとも、天威デッキを失ってしまったことだろうか。
空へ向けて手を伸ばす。誰かに相談したかった。
戸籍がない理由も、両親がいない理由もわからない。僕は、この世界にいるべき存在ではないのかもしれない。たとえライトニングさんやイヴちゃんがそばにいたとしても、最後にはすべてが空虚に終わる気がしてならない。
不意に、頭に接続するあの機械を思い出した。微かな記憶にあるMRIとも違う形。そもそも、僕はいつMRIなんて使ったのだろうか。記憶にないはずの断片が溢れ出してくる。けれど、もう遅いのだ。
(困った時は、いつだって休息してから向かいなさい。心を落ち着かせないと冷静にはなれないから)
その言葉を頼りに、喫茶店へ入る。前に来た時は、イヴちゃんと一緒だった。
メニュー表に目新しい品を見つけ、それを注文する。厨房ではマスターが忙しそうに動いていた。この前はデュエルをしてくれたから、少し話せればと思ったけれど、その余裕はなさそうだ。
「ごゆっくりどうぞ」
運ばれてきた料理は、なぜかぼやけて見えた。焦点が合わない。どこを見れば、この料理を正しく「食べる」ことができるんだろう。
目まで悪くなったのか。冷静な判断が、指先からこぼれ落ちていく。
フォークで刺せば、辛うじて物は掴めた。そのまま口へ運ぶ。
味わおうとしても、香りすらしない。
どうして。どうして、どうして。僕が悪いのかな。
イグニスさんたちが追われているのは、本当は、僕が彼らと関わってしまったからなんだろうか。
流れた涙の味だけが、たった1つだけの実感としてそこにあった。
食べ終えた後、空虚な満腹感だけが僕を支配しているのが、無性に悔しかった。
……SOLテクノロジー社は、データリソースを独占しようとしている。
イグニスたちがもたらすデータマテリアルだけではない。新型AIによるインフラ整備。
彼らは、人間がSOLテクノロジー社なしでは生きていけない世界を作ろうとしているのだ。
僕はSOLテクノロジー社を止めるべきなんだろうかと考えるがそれもまた人の成長だ。
どうしようか考えてると急にЧ0Ч Not Foundのページが開いた。
404は従来、存在しないページに見えるだがこのサイトは先ほど見たMRIを外から映し出していた。
安らかな眠りで寝ている少年、モニターにはSYSTEM ACTIVE、稼働中その文字だけが表示されている。
見覚えがある、けれどあの顔は満足そうだった。
羨ましい、そう感じてしまった。
あたかも現実から目を逸らして眠っている彼が?
羨ましいだけでは人は何も手に入らない、この世界は無限の可能性を秘めている。
風鳴伸屋、それが眠っていた彼なんだろうか。
その名前をどこで聞いたかは思い出せない、けどその名前の人を探さなければこの世界はよくない方向に進む気がしたのでネットの掲示板を開けた。ネットリテラシーなんか関係ない。
僕は僕のやり方で物語を進めるんだ。記憶が混在しているのは仕方がない。
至急 風鳴伸屋 の個人情報を求む
ネットの掲示板が瞬く間にレスポンスがされていく。書き込みの中には僕を脅してくる人などがいる。
僕はただ、『風鳴伸屋』の詳細が知りたいと聞いた。
それに応えて、誰かが勝手に行方不明当時の住所や、家族構成のログを流してきた。
行方不明になったのはロスト事件当日だ。
――ただ、それだけの事だ。
情報を差し出したのが彼らである以上、その結果として世界がどうなろうと、僕が責められる道理はない。
悪意があるのは、守るべき情報をあっさり手放したこの社会(システム)の方だ。
「……非効率だね。僕が悪いんじゃなくて、この脆いネットワークが悪いんだ」
独り言は、雨の中に冷たく溶けていった。急いでその場所へと向かった。
現在時刻は14時で世間では学校に行く時間だがそれよりも伸屋君に接触して協力を仰がないと世界はよくない方向に進む。
確信しているのは二周目だから?違う、この世界は一周目だ。
あの時見ていたのは過去の
僕が忘れていたものを夢で補完していただけだった。空は次第に曇り空へ戻っていく。
雨が去ったのではない嵐の静けさだろうか。電車へ乗り急ぐ。
そうしばらく電車に乗っていた。景色は相変わらず目新しいものはない。
当たり前の人々が過ごす日常だけが過ぎ去っていく。
「
所々に音声が途切れる、普通この後降りる方はご注意くださいを言うはずなのにそれはない。
無人駅のようで改札を出ると街の人達が疎らに歩いているが見分けがつかない。
中にはそっくりすぎて違和感を感じてしまう。
何かがおかしい、おかしいのは自分ではない。この街全体が一定の法則で動いている。
聞こえてくる人の声は普通だ、だが声のトーンが一律だった。
此処に伸屋君が本当にいるのだろうか、ネットの情報を鵜呑みにしすぎたかもしれない。
不気味な場所に僕を誘導するメリットなんてないし、そもそも僕自身は匿名で書きこんだのだから
わかるはずもない。
そうしてマップを開いて検索をすると一本道のようだ。そして歩き出す。
信号は僕が渡る時に丁度青になって誘導されているようだ。
誘導されていたところで決めた道を変えはしない、これが僕にとっての決めた道のりだから。
そして貴方には誰かに決められたように見えるかもしれないけど、僕ははっきりと自分の意思で前に進もうと思ったから。
続きの構想はあるので近日中に公開します