イヴちゃんさえ生きてくれたらいい   作:イヴちゃん凶愛者

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8話 夢幻と無限 の彼方

「私は本当は貴方が憎いの、救いなんて私自身にはいらない。お兄さんとアウラム君さえ生きてくれたら良かった。」

私は涙を流す。

「でもね、貴方と約束したから最後まで私は貴方の側にいる。

だから、今は辛抱してそして私によって殺されて。」

牢屋の中で一人で呟いた。もう後戻りは出来ない。

星遺物を私は起動する。

 


 

 

 

「だから、星遺物は貴方達に使えない。星神すらも真実を知る必要はない。」

 

「何を言ってるの?」

リースが私に向かって不思議な顔を見せる。

「黙っててリース。これは私の物語」

本当は逃げ道を知っているけど、今逃げたら全てが台無しになる。

 

「なぁ、イヴ。お前の持つ星鍵を譲ってくれないか。これがあれば全てが上手くいくのだ。」

 

「断ります。星鍵を持つ者は最後のけじめをつけなければならない。」

 

「最後のけじめとはなんだ。」

 

「星神になる最後の条件。この世界は星杯、星鎧、星盾、星槍、星冠、星杖、星櫃。

そしてこの鍵が重要となる。貴方達は過去に星辰の森(私が住んでた所)を支配していたけれど私達は星杯を隠した。星神になるって事は全てを無にする覚悟が出来ているって事だから。でも本当は星神にはなれない。」

 

「イヴ、何故君はそこまで知っている?」

 

「星杯の神子だったから。私が最初に生まれた、そこから物語が始まったのよ。」

 

「よくわからないが。」

 

「わからないのが当たり前だよ。」

 

私は鍵を取られてから再び牢獄に入れられる。

「さて、私は準備ができた。さぁ、夢幻の崩界を見せようか。」

リースの感情、感覚が私の中に入ってくる。

彼女の想い、全てを感じる事はできる。

 

「ごめんね、イヴちゃん。」

リースが謝ってくる。私は正直言って謝りはいらなかった。

彼女には彼女の償い方がある。

「謝らなくていいわ。でも、最初から私を騙してた事には恨むけど。」

そう言うとリースは笑う。

「それを言うならイヴちゃんだってみんなを騙してるじゃない。」

 

「そうだね。」

 


僕は彼女の姿を見た。何処か懐かしい顔だった。

けれど、何も思い出す事はない。

「ねぇ、遡亜(そあ)。」

 

「何?」

 

「私の為に死んでくれる?」

 

「僕が死んだところで何も変わらないよ。」

彼女は黙る。

僕は嫌な予感がしたのでログアウトをしようとしたが何者かの手によってふさがれる。

 

「さぁ、最後の物語を始めましょう。大丈夫、遡亜(そあ)君は一人じゃないから。

死ぬのはいつだって2人だから。」

二人というのはいったい誰のことだろうか。

「勿論、君が知っている二人だよ。」 

 

 

 

 

 

 

人というか動物は儚いものだ、死に向かって生きている。死に縛られぬ生物なんぞ、この世には存在しない。

イヴちゃんみたいな電脳世界の住人なら不老不死なのかもしれないと考えるがそれは違う。

彼女はその世界がいつまでも存在して無いと生きていけないのだ。

僕は死ぬのが怖い、むしろ苦しまずに死にたい。

「死ぬのが怖いなら私が殺してあげるよ。」

 

「誰かの手を煩わすぐらいなら僕はこの手で僕を殺すよ。だって、大事な記憶を忘れたんだよ。

僕が何故、イヴちゃんに惹かれたのか。」

 

「貴方は何も覚えて無いんだね。だからイヴちゃんは貴方が憎いんだ。」

 

「イヴちゃんが僕を憎いだって、どうしてよ。」

僕は声を荒げた。普段の僕だったら、こんなにも大声でいう事は無い。

今回が初めてだ。

「私は知らない、でもね私たちみんなが関係しているというのは知っている。」

 

 

 

 

「ねぇ、話を終わらせてくれる?私は遡亜と話があるの。」

振り向くと虚ろな目をしたイヴちゃんがそばにいた。

「イヴ・・。」

 

 

 

「私はもうイヴではないわ。私の名前はイヴリース、貴方に制裁をくだす者。」

 

「僕は貴方たちに何をしたのさ。何も覚えてない。」

 

「思い出してよ、そうじゃなかったら私は私の手で貴方を殺さなくてはならないから。」

 

イヴリースと名乗るイヴちゃんはデュエルディスクを構える。

「それともデュエルしながら思い出す?」

 

イヴちゃんが持つデッキはどこか澱んでいた。

まるで悪夢のようだ。

 

「イヴ、星鍵は返す。だから戻ってくれ。」

 

 

「黙れ、黙ってろ。それとも貴方も私とデュエルで決着つける?」

 

「ああ、我は仲間を取り返すためお前とデュエルをする。」

 

今この場には4人集まっていた。だけど研究服を着た女性は首を振った。

「私は本来なら消える立場だから、また最後の場所でね。」

彼女はまるで全てをさとしたかのように消えていった。

 

「二人一緒にかかってきなよ。今の私はもう後戻りはできないからさ。」

 

「どうして、デュエルで決着をつけようとするのさ。君の目的は何、イヴちゃん。君は何故僕にこの時を教えてくれなかったの?」

イヴリースちゃんは首を傾げる。

 

「どうして君に全てを話す必要があるの。貴方は貴方だけの物語を気づく必要がある。私のこの覚悟は貴方とはまた違った覚悟なの。いい遡亜、貴方は全てを受け入れる必要があるの。」

彼女はデュエルディスクを構えたので僕も仕方なしに構えた。

「「「デュエル。」」」

あの時君が流した涙は僕の身体を通して蝕んでいった。

もしこの時に戻れるのなら僕は彼女を抱きしめて自らの命を投げ出していただろう。

 

 

 

 

 

 




次回予告

夢幻の崩界


ついに訪れる別れの刻、イヴちゃんの覚悟
そしてその真意とは。

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