ブレ×ブレでテンプレ転生ファンタジーもの   作:某五歳児

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 「トバルカインは死体を検分して武器種を調べてくれ、アベルは彼の護衛を。カイン、俺たちは周囲の警戒だ!」

 「「了解!」」

 「おっけー!」

 

 階段の下にはマオだけが残り、カインは上のフロアを警戒する。

 もし狙撃で殺されているのなら、100層まで貫通した穴がある以上狙撃地点の特定には最低でも一発撃たせる必要がある。

 魔王という特級の相手を暗殺せしめた猛者の一撃を受けて耐えうるのは、防御に特化した勇者たる『鉄壁』のアベルのみ。マオはそう考えた。

 

 しばらくすると、何とも言えない表情の三人が降りてくる。

 

 「どうした?」

 

 暗殺者を殺したにしては戦闘の気配が無かった。逃げられたのだろうか。

 そんな予想を立てたマオに、じとっとした視線が三人分向けられる。

 

 「魔王の首は鋭利な刃物で落とされていた···これが魔王の首級だ。心当たりは?」

 「ん···ん? どっかで見た···あ、前線指揮官の魔人か!?」

 「これが魔王だっつってんだろ!?」

 

 トバルカインが悲鳴に近い怒声を上げる。視線に混じる不信と畏怖。それは魔王を一撃で仕留めておきながら「前線指揮官かと思った」などと宣うマオと、それを可能とした武器、その使い手たる異形の少年に向けられている。

 

 「な、なぁマオ···」

 「なんだよ」

 

 次に話しかけてきたのはカインだ。彼は好奇心に瞳を輝かせて一言、

 

 「一戦どうだ!?」

 

 と言った。

 絶句する三人。

 

 「や、勿論寸止めで」

 

 そういう問題じゃねぇ。勇者二人はそう思った。

 

 多分寸止めでも死ぬぞ。マオはそう忠告した。

 

 「大丈夫大丈夫!」

 「何を根拠に···」

 

 この時点で、カインの脳内にはマオとどう戦い、どう下すかというビジョンが組み立てられていた。

 

 (今のマオなら楽勝で勝てる···けど、こいつが鎌を持ったら···ははっ、マジかよ。打ち合えるビジョンすら見えねぇ。何者なんだ、マオ)

 (勇者、勇者ねぇ···魔王がアレで、その魔王に三人がかりで挑むような奴でしょ? ···いやいやいや、命知らずにも程がある。丁重にお断りしよう)

 

 「まぁ、いいんじゃないか」

 「トバルカイン!?」

 

 おそらくアベルは反対だったのだろう。賛同の声を上げたトバルカインに詰め寄っている。マオもそうしたい気分だ。転生早々別世界の勇者殺しとか···ちょっと面白そうだけど。

 

 「何も二人とも魔剣を使うって訳じゃない。···この辺りで良いだろう」

 

 魔王軍が使っていた、魔法の付与された剣。特に危険な効果のない、《鋭利化(キーン)》と《硬化(ソリッド)》の魔術が掛けられた物を見繕い、床をぶっ叩いて刃を殺すトバルカイン。

 

 「二人ともがこれを使えばいい」

 「えぇ···」

 「なるほどな?」

 

 《硬化(ソリッド)》の掛かった剣を簡単に刃引きしたトバルカインに引き攣った視線を向けるアベル。カインは感心したように剣を取ると、片方をマオに渡した。

 

 「良いか?」

 「···まぁ、それなら良いか」

 

 マオは考える。

 適当に負けてさっさと町に案内してもらおう。お腹すいた。

 

 カインは考える。

 魔王軍の精鋭を一撃で屠る絶技、その片鱗だけでも見せて貰う。ならば全力で当たらねば失礼。

 

 故に、マオは無視する。

 脳裏に響く『そんなナマクラを使うな』『せめて技術だけでも憑依させろ』という声を。

 

 故に、カインは無視する。

 刃引きされた剣を用意した、トバルカインの気遣いを。

 

 「双方、用意」

 

 「···」

 「···」

 

 マオは取り敢えず剣を正眼に構え、カインは確かめるように何度か振るう。

 

 

 

 「始め!!」

 

 

 

 初手はカインの刺突。10メートルを一足に詰め、体重の乗った剣先がマオの剣を狙って繰り出される。

 大気を裂くと形容して差し支えない剣閃である。マオはそれを僅かに剣を傾けて受け流し、一言。

 

 「え?」

 

 と呟いた。

 唐突な疑問の発露を怪訝に感じ、カインが距離を置こうと足を下げ──マオが踏んでいた片足が残る。

 バランスが崩れ、咄嗟に踏みとどまるが遅い。剣はぶれ、体幹もずれ、踏ん張るだけの足幅も確保出来ていない。そんな状態で何が出来ようか。

 

 「···」

 

 「そこ」だのなんだのと指摘するような、二流の、或いは師匠のような振る舞いはしない。

 ただ性格に、その首筋を狙って、先ほどのカインと同じ突きを繰り出す。

 回避不能の速度で、回避不能の少年に、致命の一撃が迫る。

 

 取った。マオは思った。

 

 それは、カインも同じだった。

 

 「···《英雄の軌跡(ヒロイックサーガ)》」

 「なぁっ!?」

 

 驚きの声が三つ漏れる。

 必中の一撃を回避されたマオと、詠唱を聞き逃さなかった勇者たちだ。

 

 強引に足を引き戻し、体幹を無理やりに使って剣を回避し、残る動作で舞い上がる足が顎を狙う。

 流石にそれは回避したが、マオは不機嫌そうに目を細めてカインを見つめていた。

 

 「馬鹿カイン、やりすぎだ!」

 「死んじまうぞ!!」

 

 外野の声を完全に無視し、カインは刃引きされた剣を振った。空気が擦れる音と共に、剣圧がマオを襲う。髪を揺らすだけのそれを受け、マオは一層不機嫌さを増した。

 

 「おい、それは···」

 「あぁ。俺の『勇者の権能』だよ。《英雄の軌跡(ヒロイックサーガ)》···過去の英雄の技術をこの身に宿す死霊術の極致」

 「勇者が死霊術士とは、面白い冗談だ」

 

 面白いとは言いつつ、マオの表情には一部の笑みもない。

 

 「その英雄と知り合いだったりするか?」

 「まさか。それなら直接師事するさ」

 「模倣出来るんだろ? そんな必要あるか?」

 「···色々と制限があってな」

 

 そこで興味を失ったのか、マオは刃引きされた剣を正眼に構えた。

 カインも応じ、片手で剣を構える。

 

 「──あいつの構えだな、グラム」

 

 その呟きは、カインに届いたのか。

 カインは先手を譲ると言いたげに剣先を揺らす。応じて、マオは唇を曲げる。

 

 「見ておけ、勇者。これが『本物』だ──」

 

 明確に告げ、10メートルを一足で詰める。

 大上段から力任せの一撃。弾くことなど出来そうもない、全体重を乗せた剛撃を受け流すべくカインは剣を両手で構え──

 

 

 ──交錯した剣が爆ぜ散った。

 

 

 「···」

 「···」

 

 二人ともが何度と見た、剣が魔力に耐えきれなかった結果。顔を見合わせて「やっぱりな」「まぁそうだよな」という視線を交わす。

 

 「···それまで。この勝負、引き分けだ」

 

 唖然としたトバルカインに代わってアベルが告げ、魔王城での戦いは幕を閉じた。

 

 「いや、戦闘になるとつい···勇者も本気だったしセーフって事で」

 

 誰にともなく言い訳をするマオを見た勇者は、幸いにして居なかった。

 

 

 

 

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