「ここは辺境の街です」
破壊神が気の向くままに歩を進めていると市壁を有す街に着いた。門を潜り抜ける際、門番と思われる人に街の名前を聞いたらそのような答えが返ってきた。
それ街の名前じゃなくね? と破壊神は思ったが、追及するのは野暮と言うものだろう。そういう仕様なのだ。
あっさり検問を通った破壊神はメーンストリートを通り、広場に出た。辺境と名が付くものの街には活気があり多種多様な人の在り方に内心興奮が押さえられない。
ーー人間って勇者や王、姫以外にも沢山いるんだなぁ
市場の露店を見て回るのも愉しいが先ずは腹拵えが先決と考えた破壊神は、その人離れした嗅覚をもって良さげな店に当たりをつけた。
何の因果か、その店は冒険者ギルドにある酒場であった。
ギルドの自在扉を開け、さも当たり前の様に建物内へ。適当な席につくとケモい女給が早速注文を取りに来た。
「いらっしゃいませーっ! 旦那! 今日のお勧めは水の街で取れた鮮度抜群のカワカマス! 仕込みも
ーーほうほう、ではそれを頂こう、あと何か酒と……
破壊神は壁に掛けてあるメニュー表の右端を指差した。
「はぁーい! 炙り牛ですね」
ーー違うぞ
へ? と首を傾げる女給を他所に破壊神はメニュー表を指している指を動かした、右端から左端へと。
ここは冒険者ギルド内の酒場だ。体が資本の冒険者相手の客商売だから、必然と出す料理の量も一品一品多くなる。
大剣背負う筋骨隆々の男もフリッテッラの大盛りを食べれば満足する程には。そんな労働者向けの品をすべて注文するとは……
しかも破壊神はさも当然とばかりに、全部大盛りね、と言い放った。
女給は破壊神の顔を思わず覗き込む。
(うわぁ……マジだぁ)
破壊神の狂気の瞳と眼が合った。
◇◇◇
数時間後。
ギルドの酒場の一角では、人だかりが出来てちょっとしたお祭り騒ぎとなっていた。
ーーげぇぷっ
と破壊神は注文した最後の料理である子豚の丸焼きを完食したところだった。ピンっと小骨を弾き、数分前まで丸々としていた子豚の頭の骨にINさせる。
わっ、と周りでは暇していた冒険者達が声を上げる。会話を聞くに完食出来るか賭けをしていたらしい。
「いやー! まさか本当に食べきるとはねぇ」
厨房の方から出てきた女給が呆れ声を出す。
ーー出されたものは全部頂く。これ鉄則。
「限度ってもんがあるっしょ!?」
破壊神は食べた食べたと腹をさする。八分目位かな。
「ところでお客さぁん……お勘定の方は……」
女給は小声で心配そうに問う。
破壊神は、どかりと袋をテーブルに置いた。中身は砂金の大粒だった。それも沢山。
ひゃー、と変な声を出す女給と黄金に興奮する冒険者。
過去のダンジョン製作中に出てきた宝箱の中身の一部だが十分な額だろう。さてと、それじゃあ……
ーーまたメニュー表の端から端まで、お願いするよ
◇◇◇
飽きるまで食べ続けた破壊神は冒険者ギルドを後にした。充電完了。さて次はあの女給が話していた水の街にでも行ってみよう。何でも水路と何とか神の神殿が見事な造りなそうな。気に入れば今後ダンジョンの建設に役立ててもいいな、と期待に胸を膨らます。
辺境の街を出て暫く歩く。和な風景だ。人の往来で踏み固められた素朴な道が続いている。
何故か寄ってきた小鳥達と戯れながらテクテク歩いていると、鳥達が急に飛び去ってしまう。
原因は明白。武装したチンピラが3人、破壊神を包囲したせいだ。
破壊神はぐるりと首を巡らす。さっきの冒険者ギルドで見かけたような顔(というより装備が)がちらほらとある。
ーーねえ、退いてくんない? あんたら邪魔
「つれねぇ事言うなよ。俺達ちょーぴり、懐が寂しくてよ」
恵んでくれねぇか。
頭目らしい男が剣を抜きながらにじり寄る。
ーーはぁ? 寂しいのは手前の頭だろ。いくら破壊と創造を司っても育毛はちょっと……
「うるせえ! 野郎共っ。殺っちまえ!!」
抜剣した男はそう叫ぶや仲間に号令を発した。
ハゲの悪漢達が、襲いかかってきたぞ!
破壊神は暇をもて余す神々の構えで迎え撃とうとする。
ーーその時、不思議な事が起こった!!
空から火の玉が、
着弾。周囲を巻き込みながら火柱が立ち上る。
幸いに双方に直撃はしなかったのものの突然の事にビックリ仰天。特にチンピラ達の狼狽は酷かった。
「上!
「くそったれ! どうしてこんな所に!?」
空を飛ぶ悪魔……だと? バッ、と破壊神も上を向くと、そこにはコウモリの翼持つ人形の怪異が飛んでいた。
ーー何だ、デーもんじゃないじゃないか……
「GARGLE!」
その招かざる客は雄叫びを上げながら乱入し、チンピラ達に対峙するように降り立つと同時にもう一発、ファイヤーボールを放った。
口から飛び出した炎はチンピラの一人に直撃し、盛大に燃え上がる。
うぎゃぁあああ! と絶叫し、踊るように暴れる只人。その断末魔の叫びは直ぐに聞こえなくなった。
「ひぃっ」
敵わないと思ったのか一人が逃げ出す。その姿を認めた悪魔が本能か、はたまた残忍な本性故か、逃げ出した男を追いかけて襲った。
「ぎゃあああぁッ!」
後ろから体当たりされ、押し倒された男は生きたまま悪魔に喰われる運命を辿った。
仲間が次々とやられ、頭目の男は呆然とする。
こんな筈では……金持ちの旅人を一人殺すだけの簡単な
不意に背後で空気の動く気配がした。振り返ると、直ぐ近くに鶴嘴を大上段に振り上げ、三日月のような笑みをあげた破壊神がそこにいた。
◇◇◇
ビッ、と脳天から鶴嘴を生やしている元頭目の男を振り払う。
うへぇ、何かピンク色のカスが付いてる。えんがちょ!
地面に鶴嘴を擦り付け汚れを拭き取っていると、食事を終えた悪魔が破壊神の前にやって来た。
フゴフゴ、と鼻息を粗くし何か訴えかけてくる。
ふむふむ。魔神王の復活とともに秩序の勢力に攻勢をかけるべく、魔神将なるものが戦力を集めていると。えっ? そこに破壊神も参戦しろって?
え~っ、と破壊神はあからさまに拒否の表情を作る。
オフの日に仕事を持ってこられたら誰だってこんな顔になるだろ。それにこっちは旅行中だぞ。
目の前の悪魔はそんな破壊神を見て眉尻を下げた(そう見えた)。
喉を鳴らし身ぶり手振り必死に破壊神を説得にかかる。破壊神を連れてこないと彼が仕置きとして殺されてしまうとかなんとか。世知辛いね。
大きく溜め息した破壊神は渋々、諾と頷いた。
悪魔はパッと顔(?)を輝かせ、善は急げとばかりに飛び立った。破壊神を足でむんずと掴んで。
ーーちょっ、こうやって運んで行くの!?
気分はまるで猛禽類に狩られた野鼠の気分。
思いがけない空の旅は案外悪くはなかった。
~没ネタ~
村娘奪還の為に小鬼の巣穴を目指す白磁級冒険者達は、道中奇妙な旅人と出会い不思議な力が宿る松明を授かる。
そして小鬼の棲みかを見つけ出し乗り込むが、その洞窟の中では小賢しくも小鬼の群れが待ち伏せをしていた!
若者は長剣を振り回し奮戦するが包囲され袋叩きにあって致命傷を負ってしまう!!
鉢巻の若者「オレの最後の波○だぜ! 受け取ってくれぇーッ!!」
その決死の覚悟に呼応するかの如く魔法の宿る松明はより一層燃え上がる!
トーチは、○紋増幅器だった!?
燃え盛る魔法の炎は、残された3人娘に力を与える。これにより娘達はパワーアップ! 怒濤の反撃に出る!
神官娘は二本のバヨネットを振り回し、武道家娘が震脚をすれば大地は震え、魔法使い娘は人類最強の攻撃呪文を唱える!
神官娘 「前へッ! 前へ前へ! Amenー!!」
武道家娘 「七孔噴血……撒き死ねぃッ!!」
魔法使い娘「黒より黒く闇より暗き漆黒にーーエクスプロージョン!!」
ゴブリンシャーマン「(命が)ないです」
ゴブリンスレイヤー「(ゴブリンが居)ないです」
地母神ちゃま 「(私の信者がこんな娘なわけ)ないです」