小鬼のくせになまいきだor2   作:スッパもいもい

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続きを投下します。


第3話 オーガの砦にて 前編

 上の森人(エルフ)の住まう巨大な森。そこから程ほどに離れた荒野にそれはあった。

 サイコロの様な四角の石製の入り口。そこから闇の底に続くのかと錯覚しそうなほどに暗い階段。奥からは滲み出る様な、まがまがしい魔力!

 ダンジョンだ。

 その最深部では世にも恐ろしい魔物が蠢いていた……

ーー♪~♪♪~

 破壊神は上機嫌に鼻歌を歌いながら鶴嘴を振るい地中を掘り進める。その後ろでは大量のニジリゴケがウヨウヨと動き回り、新設中のダンジョン内に隈無く養分を行き渡らせていた。

 ふぅっ、と破壊神は一息ついて、ここ数日間不眠不休で造り続けていたダンジョンを改めて見渡した。

 名付けて「神代風、地中に埋もれしタワー型ダンジョン」である。

 中々の渾身の出来と成りつつあった。対侵入者用の罠や殺し間は当然であり、さらに破壊神なりに新機軸を多数投入した。

 侵入者の平衡感覚を狂わす為に建物全体が微妙に歪んでいたり、柱には20本の溝が縦に走り、やや膨らみを帯びたドリス式円柱を採用! 巨大鉄槌(ストレンジハンマー)が無くとも柱を即席の武器に出来る敵味方に優しい素敵仕様! さらに壁には来訪者を飽きさせない為に神話風創作壁画を全面に描き込み、極めつけは吹き抜けになっている塔型ダンジョンの天井部分は石材であるにも関わらず、なんということでしょう! 月光が透き通るではありませんか! これにはどんなお客様も思わずニッコリ。

 そして最深部の大広間には台座があり、聖剣よろしく鎮座するは破壊神の二つ目の鶴嘴。

 腕を組みをし満足げな破壊神ではあるが、そもそも何故混沌の手勢と成り果てたのかというと、それは数日前に遡る。

 

 ◇◇◇

 

「貴様が破壊神とやらか……」

 破壊神は下っ端悪魔に連れてこられ、悪魔の軍勢の野営地にやって来た。そこの悪魔兵団を従える指揮官と面会する。

 自らを魔神将と名乗る、これまた悪魔が重々しく口を開いた。

 角と尾を有した大きな人型の悪魔だ。鼻と口は大きく、長い髭を伸ばしている。

 何故か全裸だ。ブラブラしてるし…… 

 なんだか便所がとても似合う様な気がする。

 破壊神は目を背けながら頷いた。

 魔神将とやらは破壊神をじろじろと観察し「予言は……」とか「魔神王様の神託の通り……」などと意味不明なことを呟く。

ーーそれで? 用件は何?

 強引に連れて来られた上に、茶の一杯も出ない塩対応に破壊神は不満が溜まり、ちょっと荒いしゃべり方だったのだが、案の定、その態度を見咎めた鬼のような怪物が声を荒げる。

「貴様! 魔神将様に向かい、何たる口の聞き方!」

 濁音混じりの野太い声だ。聞き取りづらい。

「良いのだ、人喰い鬼(オーガ)よ。それで用件だったな。単刀直入に言うが、其の方、我らに助力せよ」

ーー続きを聞こうか

 大仰に頷き、魔神将が語り始めるが破壊神は早くも後悔した。

 この魔神将の主君である魔神王の武勇伝から始まり、如何に素晴らしいかを小一時間に渡り話し続け、ようやく現状に移ったかと思えば、これまでの秩序の勢力への戦いの歴史を語りだし、結局、話が終わったのは太陽が2度沈んで月が夜空に登りきってからだった。

 破壊神は周りに助けを求めようとしたが、魔神将の部下達は混沌の勢力にあってはならないほどの純粋の瞳でうっとりと魔神将の語りを聴いていた。

 駄目だ……考えることを放棄している……

 破壊神の忍耐力は置いといて、話しの内容は詰まるところ世界征服に協力しろという事だった。

 案の定というか、何というか……

 つーか、この魔神将、話長過ぎ。混沌勢が秩序勢に勝てない原因の一端が見えた気がする。要するに無能なのだこいつらは。

 所詮は前時代的なTRPG勢。RTA勢である破壊神とは情報処理能力や、そもそもの格が違うのだよ。

「無論、我らに力を貸せば褒美をやろう。これだ……」

 魔神将が指をぱちんと鳴らすと、部下が恭しく箱に納められた何かを持ってきた。

 破壊神は興味無さげにそれをちらりと見るや、クワッと目を開いた。

 程よい太さと長さを備える木の棒の先端を二つ割りにし、その間に青色の鉱石をはめ込み縛り付けたシンプルなピッケル。珍しいと言えば珍しいが、余程の奇特な好事家以外では見向きもしなさそうなそれ。

 だが破壊神は。破壊神だからこそ、その真価を一目で看破した。

ーーそっ、それはもしや、マカネコピック!?

 マカネコピック。それは次元の異なる世界の猫型の獣人が使用しているというピッケルだった。

 破壊神は思わず走り寄り、ワナワナと震えた手でそのピッケルを宝石でも触るかの様な慎重な手つきで触ろうとするが魔神将がそれを阻んだ。

「返答は如何に」

ーー我が真名にかけて! 魔神王様のお役に立てるよう粉骨砕身尽力いたしますっ!

 魔神王万歳。秩序死すべし、慈悲は無い。サツバツ!

「宜しい。其の方に期待するぞ。それでは受け取るがよい」

 許可が出るや否や破壊神は引ったくる様にピッケルを受け取り、感嘆の溜め息をもらす。

 その様はまるで恋した乙女のようだっだ。きもい。

ーーまさか、四方世界(こんなところ)で御目にかかれるとは……柄は樹齢600年を越えるバルテックオーク、人体工学に基づき枝を厳選された上、丁寧に最上級のオイルで塗装されている……そして半透明の覚めるかのような蒼色のマカライト鉱石……はっ!? ピックとブレードの部分の鉱石は研磨加工されている様に見えその実、採石された未加工の状態のまま使っているだと……

 ぶつぶつ、と破壊神は頬を上気させ、舐めるようにピッケルに釘付けだ。

 破壊神はこのピッケルに出会ったことを天上界の神々に感謝した。

「早速ではあるが、其の方に成してもらいたい任を与える」

ーー何なりと

 破壊神は神妙な顔で魔神将の前に跪く。

 魔神将は大きな顔を近づけた。

「秩序勢の背後を突け」

 

 ◇◇◇

 

 破壊神は懐から羊皮紙を取り出す。魔神将から受け取った指令書だ。内容は、秩序の勢力である連合軍への総攻撃に先駆けての破壊工作兼陽動。

 秘密裏に只人の王都を大きく迂回潜入し陣地を構築、時が来るまで可能な限り軍事力を溜め込み、作戦開始時刻と同時に全軍出撃。連合軍の補給線を叩く。つまり食料を生産する街や村を手当たり次第に襲い、連合軍の補給物資と士気を奪うのだ。

 破壊神の役目はその陣地を構築する事だ。

 計画ではこの拠点は後に森人の領域を攻め落とす前線基地となる為、要塞陣地にするのが望ましいとの事。

 敵方にばれない様に秘密裏に、しかし大規模の拠点造りは確かに破壊神しか出来ぬであろう仕事だ。

 適材適所という訳だ。ついでに軍も自前で揃えましょうかと魔神将に進言したところ、戦力はこちらで用意すると言っていた。何でも経験豊富な指揮官も派遣するとか。

 魔物の管理は繊細で難しいし、その分ダンジョン造りに時間を割けるからそれはそれで都合がいいと破壊神は思った。

 しかしッ! 指示された事しか出来ない、気が利かない男(?)では破壊神は務まらない!

 混沌勢力の、ひいては魔神王に貢献できるように破壊神は知恵を巡らせた。

ーーそうだ! 計画の第2段階である森人の制圧が容易に進むように仕掛けを施そう!

 しかし、新参者の破壊神が多大な功績を挙げれば、出る杭は打たれる事になるだろう。それを避けつつ、しかし戦果を挙げるためには……

 しばし考えて閃いた。そして破壊神は自分の発想に戦慄した。きっと政略家の才能があるのだろう。

 思い立ったら吉日。破壊神は即座に行動を開始した。

 まず、ダンジョンを出ます。辺りは荒野ですがその土は養分レベル2が大半です。

 豊穣の女神、地母神様に感謝。

 後は鶴嘴を振るうだけ。ねっ? 簡単でしょ?

 ザックザックと土を掘り魔物を生み出す。産まれてくるは白い大きな蟻のようなモンスター。ガジガジムシだ。ついでに餌となるニジリゴケも生み出しガジガジムシの成長を促す。

 全てのガジガジムシがサナギりになり、ガジフライに成長するまでそう時間はかからなかったが、その間に自由勝手にガジフライ達は動き回ってしまう。

 そこで破壊神は笛を取り出した。紐の付いたそれを振り回すと風切り穴を空気が抜けてピューピューともホワァンホワァンとも摩訶不思議な音が出る。蟲笛と言うやつだ。

 それを聴いたガジフライ達は破壊神の元に集まってきた。

ーーそう、いい子ね

 破壊神はガジガシ達に微笑むと遠くの大きな森を見つめた。森人の森だ。

 そして徐々に振り回す蟲笛の速度を上げつつ、ガジガシ達のテンションがMAXになった頃合いに高々と蟲笛を放り投げた。

 一段と高い音を発する蟲笛と同時にガジフライ達が一斉に飛び立つ!

ーーさあ皆! 森へお帰り!

 森を目指し群れで飛ぶガジフライの光景は、さながら飛蝗の様で実に神秘的だった。

 




神代風、地中に埋もれしタワー型ダンジョン
  破壊神製。

ニジリゴケ
 養分の運搬役。植物系スライム? 体当たりしてきたり、花になると「なにかもよも
 よしたもの」を飛ばす。コケを制した者がダンジョンを制すのだ。

魔神将
 姿がよく分からないので、本作では悪魔ベルフェゴールがモデル。

RTA
リアルタイムアタック。

マカネコピック
 異次元の世界の産物。その価値は破壊神以外理解出来ない代物。

ガジガジムシ
 蟻っぽい虫。大黒蟲ほどの大きさ。羽化すると飛べる。塩ポテト味。



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