小鬼のくせになまいきだor2   作:スッパもいもい

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次話投下です。


第4話 オーガの砦にて 後編

ーーふぁああぁ~

 破壊神は建設を終わらせたダンジョンの深部で優雅に惰眠を貪っていた。

 破壊神に今出来る仕事は、派遣される後続の部隊の到着を待つだけだ。なんだか自分がデーもんにでもなった様な錯覚を覚えた。

 魔神将の所から持ってきた人類大辞典も既に読破してしまい、あまりにも暇だから

追加でニジリゴケ達も全部送っておいた。破壊神の目(ゴットアイ)で確認すると森ではガジガシやニジリゴケ達は新天地でもしっかりエンジョイしていた。実に逞しい。

 ムクリと起き上がり、たまたま側にいたガジガジムシ(食用)を捕まえ、バキッと真っ二つにへし折り中身の身を食べる。

 塩ポテトの味がする。うーん、流石に毎日は飽きてきた……

 増援早く来ないかな、と考えているとダンジョンに複数の来訪を感知。噂をすればシャドー。

「ほう、中々の出来ではないか」

 ズンっズンっ、と大きな足音を立て、通路の奥から姿を表したのは巨大な筋肉質の怪物だ。魔神将との面会時にいた人喰い鬼(オーガ)だった。あの濁音混じりの聞き取りづらい声の奴だ。

ーーあんたが増援?

「ふん。口の聞き方に気を付けろ。我は此度の作戦で指揮を執る将軍なるぞ」

ーーあっそう。まあ、精々頑張りや。……えっ? 増援ってまさかお前だけ?

 オーガが強力な魔物だと言うことは知っているが、戦争は数だ。相手より如何に多くの戦力を揃えられるかが勝利への鍵となる。

 破壊神はそれを知識として、そして実体験から痛いくらいに知っている。

 意気揚々にダンジョンに入り込んできた勇者一党。コケに呑まれ屍を晒す憐れな勇者。あるいは魔物を揃えられずに迎え撃ち、一刀両断されるトカゲおとこやゴーレム達、そして簀巻きの魔王!

「貴様に心配される謂れはない。兵は連れて来ておる」

 オーガがそう言うと、遅れて通路の奥からぞろぞろとその戦力がやって来た。

「GBOR」「GROOB」「GBB……」

ペタペタと間抜けな音を出しながら姿を現すは忌々しい小鬼の群れ! その数、実に100匹は下らない!

ーーほげぇーッ!

 思わず絶叫する破壊神。

 その叫びは自分が丹精込めて造ったダンジョンがゴブリンに汚されるのに対してか、ゴブリン風情を「俺の兵士」と宣うオーガに対してかなのか……たぶんその両方だ。

ーーざけんな! よりにもよって何故ゴブリンを連れてきた!? この馬鹿! ばか? バカなんだな!? てめぇっ!

 プリプリと怒り罵声を浴びせる破壊神。オーガは始め、鳩が豆を食らったようにポカンとしてたが、みるみる顔を赤くし戦鎚を床にドカンと振り下ろした。新築に何してんの!?

「このっ……! 無礼者め!! 我は魔神将から軍を預かる者なるぞ!」

ーーその軍が役に立たねえと言ってるんだこのスカタン! ……ちょっと待て。魔神将から軍を預かったとか言ったか?

 そうだ、と肯定するオーガを見て破壊神は絶句する。あの便所悪魔(魔神将)め! やりやがったなぁ!

 酸欠の魚のように口をパクパクする破壊神を他所にオーガは何故か自信たっぷりの不適な笑みを浮かべる。

「我の言はすなわち魔神将の言だ。今後は我の指示に従ってもらうぞ」

 そんなこんなでダンジョンはオーガの手に落ちた……丹誠込めて造った結果がこれだよ……

 破壊神は精神的ショックにより自室で暫く寝込んだ。その間にもゴブリン共は好き勝手にダンジョンを荒らす。ところ構わずう○こするなんて本当に信じられない。

 便所の場所くらい決めろとオーガに抗議すると、オーガも思うところはあったのか入り口に程近い部屋を汚物溜めとした。

 ダンジョン内じゃなく外にしろよ、という突っ込みは、もうね、起きる気すらしなかった。

 ある日。偵察と託つけて破壊神は気分転換にダンジョンの外に出て散歩をしていた。

 ガジガジの胴に縄を付けての散歩だ。その辺をブラブラしているとを一人の女の人が近づいてか来た。耳が長い。森人だ。女の森人だ。

「こんにちは」

ーーはい。こんにちは

 女森人は首を傾げ怪訝そうに破壊神を見た。長い絹の様な金髪がサラサラと流れる。対するは、鶴嘴を持ち、人間の子供程の大きさの蟻の様な蟲にリードを付けている人物。

 破壊神はしまったと己の失態を悔いた。糞を入れる袋を忘れた! 

 世界一の魔物トレーナーを目指す身でありながら、なんたる初歩的なミス!

 破壊神の葛藤を他所に女森人は口を開いた。

「えっと……魔物使い(テイマー)の方? でしょうか。ちょっとその蟲についてお聞きしたいことがあるのですが、実はーー」

 話を聞くと、どうやらこの女森人は最近故郷の森で異常繁殖している蟲型モンスターの発生源の調査をしている冒険者のようだ。 

 顎で挟めるものはとりあえず何でも齧るガジガジは木々をいたずらに傷つけ枯らすので問題視され、挙げ句に幼い森人が何人か齧られ怪我を負ってしまったらしい。しかも何千年も生きる年嵩の森人も、この蟻に似た生物は見た事も無いというので外来、森の外から来たのだろうと推測され、たまたま故郷に立ち寄っていた根無し草の女森人に調査の依頼が来たらしい。

 破壊神はガジガジを見た。ガジガジも破壊神を見る。どうしようか?

「この白い蟻のような蟲について、知っている事があれば教えて下さい」

 ほうほう、つまり森人達はガジガジムシに興味があると。

 破壊神はガジガジムシの生態について、この女森人に教えることにした。

「ほう、塩ポテイトの味がするのですか」

ーーそうだ。塩ポテイトだ

 海老を割るように、連れていたガジガジをバキャッと割ると半分を女森人に差し出した。

 破壊神がガジガジを食べる様子を見てから、女森人もガジガジのプリッとした身を口に運ぶ。

「おお、これは確かに美味しいです」

ーーでしょ?

 種族が異なっていても、同じものを食べれば解り合える。私はそう信じます!

 そして話題はダンジョンに移る。

「遺跡? そこから出てきているのですか?」

 そうだと肯定する破壊神。発生源を聞いた女森人は破壊神に情報提供の礼を言い、そこに行くと言い出すが破壊神は止めた。

「ゴブリンが居る?」

ーーたくさん居るから近付かない方が良い。森に帰りなよ

 帰りなよ、帰っちゃいなよ。だがそれは逆効果だった。

 女森人はゴブリンと聞き、戦意を滾らせる。自分の故郷の近くに大量のゴブリン。

 想像してごらん……自分の家の周囲に、日に日にゴブリン(うんこ)が増えていく様を……これは激怒待ったなし。

 女森人の決意は固く、破壊神が説得で止められるものではなかった。それに己が造った芸術的作品(ダンジョン)を見てもらいたい。

ーーそうか……健闘と無事を祈るよ

「ありがとう」

 そう言って二人は別れた。

 破壊神の耳にダイスがカラコロと転がる音と、あちゃー、と言う誰かの声が聴こえた気がした。

 

 ◇◇◇

 

 破壊神はダンジョンの外回り、広野を巡ってリフレッシュしてから幾日が経過した。ダンジョンに戻ってみると、例の汚物溜めに通じる部屋からゴブリンの耳障りな騒ぐ声と、絹を裂くような悲鳴が聞こえる。

 それを無視し、深部の広間はまでやって来るとオーガがやけに上機嫌だった。

 酒を片手に破壊神に「我が砦に森人の侵入者が……」「返り討ちに……」「ゴブリン共のの玩具よ……」うんぬん勝手に話しかけてくる。

 ああ、あの森人虜囚になってたのか……しかばねが無いから逃げ帰ったのかなと思ったが……

 破壊神は生きているならダンジョンの感想を聞きに行こうかと思った。

 ねぇねぇ、今どんな気持ち? 勇ましくダンジョンに挑み敗北して今どんな気持ち?

 ……やっぱいいや。何となく、殺されそうだから止めた。

 しかし、と破壊神は広間を見渡すとその周囲にはゴブリン共の姿が、遂に深部に浸透してきやがった。忌々しい!

 大事なものを自室に避難させようと、飾られてあるマカネコピックに目を向けた。

 その時、破壊神は見たのだ。伝統的な歴史ある異次元のピックにゴブリン共が触れているその様を!!

 破壊神は激怒した。破壊神には四方世界の理(小鬼への理解)が解らぬ。破壊神はただの破壊と創造を司る神である。けれども、理不尽に対しては神一倍に敏感であった。  

ーー野郎っ! ぶっ殺してやる!

「GOBR……?」

 シュバッ、と破壊神は疾風の如く駆け出すと、台座とその周囲に群がる複数のゴブリンを力任せに殴りつける! 憐れ、神の一撃を受けた小鬼共は瞬時にしてネギトロめいた肉片と早変わり!

「うぬっ!? 貴様! 何をするっ」

 破壊神の行動にオーガは声を荒らげるが、破壊神はオーガに対しても怒声を上げる。

ーー黙りゃ! この筋肉達磨め! 本当に手足を落として達磨にしてやろうか!? 

「黙って聞いておれば……! 魔神将に目を掛けてもらっているからと、図に乗るな!」

 遠巻きにゴブリン達が嘲笑うのも他所に破壊神とオーガは激しい言い争いを行う。

 元来から高い能力を持つ故か、オーガはプライドが高く短気で破壊神の煽りに直ぐにムキなった。

「この……! 穴掘りとスライム、羽虫を作り出す事しか出来ない雇われの分際でッ!」

 そして破壊神に対し致命的な暴言を言い放つ。これには破壊神もガチ切れ。

ーー言ってはならない事を! 謝ってっ! 早く多次元にいる全破壊神に謝ってッ!

「訳のわからん事を! 貴様などゴブリンと同じよ」

 ゴブリンと同じだと……? 芸術的ダンジョンを造る事で定評のある、破壊と創造を司る破壊神を小鬼風情と同列だと!? 

ーー赦せんッ!

 ウキャーッ、と奇声を発しオーガに殴りかかる破壊神!

「貴様! 反旗の翻すか!」

 それに真っ向から迎え撃つオーガ! 大地を揺るがす2人の嵐の様な争いに巻き込まれるゴブリン達! 

 それはまさにっ! 歯車的破壊の小宇宙!

 

ーー3日後……

「ぜぇーっ、ぜぇーっ…… 貴様、やりおるな……」

ーーハァハァ…… いい加減、倒れろ…… デカブツめ…… 

 一昼夜ではなく三昼夜に続き大乱闘は続いた。地中深くの大広間は、かつての美しい外見は見る影も無い。

 柱は倒れ床石は砕け、壁には無数の罅が走る。黒い汚れは巻き込まれたゴブリンの痕だ。

 互いにボクサー的にイケメンな面構えになり疲労困憊。直接戦闘に関しては素人の破壊神が肉弾戦でオーガに引けを取らないのを称賛するべきか。それとも制限はあるけれども神の一柱に互角のオーガを讃えるべきか。

 天上界の神々もこれには苦笑い。

 そして流石と言うべきかダンジョンは破壊神の建造しただけあり機能には全く支障はなかった。だが、2人の友情(?)には修復出来ない程の裂け目が入る。

 ここでオーガは将軍特権を行使した。

「き、貴様など、もういらん! 任を解く、何処へなりとも往くがいい。2度と我の眼前に姿を現すな!」

ーー上等だ。こんなダンジョンなんかお前にくれてやらあ! この人でなし! 

 人では無く鬼だ、というオーガの反論に破壊神は耳もくれない。むんずと唯一の貴重品(破壊神にとって)マカネコピックを掴むと大広間を出ていく。

 その途中、運よく生き残っていたゴブリンを見つけ、八つ当たり気味に止めを刺す。

「おい! やめろっ!」と叫ぶオーガ。うるせぇ、と叫び返す破壊神。

 腫れた顔を押さえながらダンジョンを出た。地平線から朝日が昇り始めている。柔らかい陽射しを浴び目を細め、顔から手を離すと腫れは既に引いていた。

 




 オーガが左遷されたか判らないけど、やっぱりさぁ、ゴブリン使うよりオーガが単体で村とか街で暴れた方が良くない? って思う今日この頃。

 
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