転生したらカカロットだった件について   作:てきとーてきとー

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 短編ですが気分次第で続きを書くかもしれません。
 そしてガバガバ設定なのでミスも多いと思います。

 後書きでモチベが無くてカットした部分を暴露。
 中二病並の設定ばかりで痛々しいので、嫌いな方や興味ない人は見ないでくれめんす(´・ω・`)




俺は孫悟空になったようだ

「オギャアァァァァアアァァア!!!」

 

 惑星ベジータ。

 この星で一人の赤子が産声を上げた。

 

 下級戦士、中級戦士、上級戦士という格差社会を形成する戦闘民族、サイヤ人の赤子だ。

 生まれた赤子は母親の手に抱かれることなく保育カプセルの中に入れられた。

 

 そんな彼等、サイヤ人からの赤子の扱いはぞんざいだった

 下級戦士の子であるからか、その誕生に喜ぶ者は両親程度。その戦闘力の低さから関心を寄せることもないのだ。

 ほぼ同時刻に生まれた隣の赤子が放つ圧倒的な存在感によって更に影は薄くなり、その存在自体を忘れ去られることになった。

 

 数日後。

 

 透明なガラス越しに備え付けられた保育室の前を走り去ろうとする一人の影があった。

 その足音に反応してか保育カプセルの中に居た赤子は大きな声で泣き始めた。急いでいるようだったが、偶々赤子の声が聞こえた為に足を止めてしまう。

 

 ガラス越しに現れた人物の出で立ちは赤子が成長したら、このように育つと言わんばかりの容姿で父親というに相応しい。彼は何かを思い出したかのようにガラス越しに保育室を見つめ、その泣いていた赤子を凝視していた。

 

「カカロット……?」

 

 彼の中では何か思う所があるのか、保育カプセルの下にある赤子の名前を記した文字を上の空で呟いた。だが、それは一瞬のことで、彼はすぐさま耳元に取り付けている機械を起動させる。

 

「戦闘力たったの"3"か」

 

 取り付けている機械の画面には3という数値が刻まれていた。

 生まれ立ての赤子だから当然だが、サイヤ人としては限り無く低い。下級戦士の赤子の中でも過去最低値になるであろう類稀な数値だった。

 

「……クズめ!!」

 

 彼は単純に赤子の不甲斐無さを一言で表した言葉を浴びせ、この場から去った。

 出来の悪い子の父親として、笑われていたりもする背景があったからの言葉だったのかもしれない。

 

 赤子は程なくして育児を担当していたであろう人物によって運び込まれることになった。

 

 戦闘力の低い赤子であるが故に辺境の惑星に送り込まれることが決定した為だ。

 とある一族に支配されたサイヤ人は星の地上げ屋を生業にしており、赤子にも仕事をさせることが強いられているのだ。

 

 ポッドに入れる前に眠らせ、科学者達の手によって命令がインプットされる。

 命令内容は『住民の殺戮と文明の破壊』だ。長く複雑な命令であれば赤子の体、脳に負担がかかる為だ。

 

 入力が済むと一人用の宇宙船(ポッド)に乗せ込まれ、辺境の星に飛ばされるのであった。

 

 その後、惑星ベジータは隕石の衝突によって消えていった。

 

『カカロットよ……!』

『この俺の意思を継げ!』

『サイヤ人の……』

『惑星ベジータの仇をお前が討つんだ!』

 

 運良く星の爆発から逃れた赤子は、そんな声を聞いた気がしたのだった。

 

―――

 

 目が覚めたら知らない天井だということはあっただろうか。

 何が原因か分からないが俺は保育カプセルの中だが病院とも言いがたい場所に居た。

 

 拉致でもされたのかと唐突なことで恐怖のあまりに喚くが上手く声が出ない。

 手足を見れば幼児、いや赤子になっていることは一目瞭然で、それが余計に恐ろしかった。

 

 泣いていると異形の怪物が取り囲んで『あのバ―――クの倅――――戦闘――――た3か』と笑ったのだ。

 言っていることは日本語なのだが聴覚も発達していないのか聞き取れず、余計に恐怖を煽ってきた。正直、失禁するものであったのは間違いではない。

 

 あの時は一時的な狂気というものだろう。

 一度泣いて冷静になった後に深く考え込んで、一つの結論を出した。

 

 巷で言う転生というもの。

 俺は前世の記憶を持ったまま、この世界で新しく生まれ落ちたのだった。

 

 転生したとしても異星人とは思わないだろう。

 せめて地球上の生き物であって欲しかったが俺の身体は猿の様な尻尾が生えているだけで、到って普通の人間だ。

 異星人の家畜として生まれたのかという考えも思いつくが、それなら保育カプセルなんてものには入れるものではない。

 

 そうして状況を把握することに時間を割き、暫くの時間が経った。

 その時に俺が預けられている保育室の前を一人の男が走ってくるのを見つけた。

 

 特徴的な髪型に加え、独特の戦闘服を身に纏った男性。その姿を見て、俺の頭は一気に冴えた。

 あの容姿を見た瞬間に何となく『バーダック』という人物に似ているなと思ったのだ。

 

 ドラゴンボールという作品は最初期の全42巻を持っていて、アニメも一応は全て見ていたし、幾つかのゲームも知っている位には好きだ。

 しかし、ありえてほしいものではない。物語の世界に入り込んだ可能性を否定したい。

 

 それに、この場面は何故か鮮明に思い出せる。

 重傷から回復したバーダックがメディカルポットから出てから、とある星に向かう直前の場面だ。

 

 つまり俺は『カカロット』なのだ。

 それを理解した瞬間に俺は無性(むしょう)に怖くなった。

 

 俺に、こんな俺に『孫悟空(主人公)』は重過ぎる。

 戦いのタの字も知らない。努力も碌に出来ない。痛みに耐えられない。恐怖に抗えない。

 そんな心の弱い一般人の俺が、物語の顔とも呼べる主人公という大役は無理だ。気楽なキャラが良かった。

 

 迫り来る強敵と何度も戦い、地球や人々を救う。

 俺が孫悟空になったということは、達成出来ないことが決まったようなものだ。

 

 破滅への未来への恐怖を覚えた。

 こんなのは嫌だと、もっと平和な世界が良かったと年甲斐も無く大声を上げて叫ぶ。

 すると泣き声に気付いたバーダックが足を止めて俺を見た。

 

「カカロット……?」

 

 正確には名前を見た。

 そして耳に取り付けている機械――スカウターで俺を写し取る。

 

「戦闘力たったの"3"か……クズめ!!」

 

 そう悪態を吐いて走り去っていった。

 

 確かに俺はクズだ。

 前世では碌に努力もせずに――いや、今何かに違和感を覚えた。

 

(……戦闘力が3?)

 

 この時点での孫悟空の、カカロットの戦闘力は2だ。

 何故だか分からないが俺という一般人が転生し(混じっ)たことで差異が生じたらしい。

 

 こんな俺が転生し(混じっ)てしまえば戦闘力が1だと言われてもおかしくはないのに、3もあることは謎だ。だが所詮は3で、中身が俺では2だろうが3だろうが誤差の範囲でしかない。実際に戦いになれば0と同等かもしれないし、ありえないと思うが-1も考えられる位だ。

 

《落ちこぼれだって必死に努力すりゃエリートを超えることがあるかもよ?》

 

 不意に主人公(孫悟空)の言葉が深く俺に突き刺さる。

 

 俺のような奴に超えるなんて無理だ。

 孫悟空(主人公)になった俺なら出来る。

 そんな相反する二つの感情が入り乱れた。

 

 情緒不安定な俺は、そうして迫り来る未来を考えていると保育室に保育担当者が入ってきた。

 宇宙人特有の戦闘力で簡単に別室に運び込まれ、様々な装置の前に寝かされた。

 

「では、これより各種の情報を脳にインプットするぞ」

 

 それを聞いた俺は、これから行われることを察してしまった。

 サイヤ人はフリーザの命令に従って星の地上げ屋として仕事をしている。そこで戦闘力の低いサイヤ人の赤子は辺境の星に飛ばし、数年がかりで原住民を殲滅させるのだ。

 

 俺を間違いなく星の地上げ屋としての命令を脳に埋め込むのだろう。

 即ち洗脳に他ならぬもので、転生によって前世の記憶を持っている自分が自分でなくなるのだ。

 拒まなければ俺が死ぬも同然で――いや。

 

 自分が自分でなくなるのは都合が良いのかもしれない。

 

 俺では主人公に、孫悟空として戦うなんて無理だ。

 なら、いっそのこと俺という前世の記憶を塗りつぶしてしまえば良い。

 

 ……そう決めた。

 俺は抵抗することは一切せず、そのまま受け入れることにした。

 

 

 

 だが結果論で言えば……どちらでも変わらなかったのだろう。

 そこまで負担が掛からぬよう赤子用に作られた装置で成熟した大人の精神を洗脳するなんてことは――。

 

―――

 

 儂が山菜を取りに出かけていると空から巨大な球が落ちてきた。

 何事かと、その近くに行けば大きなクレーターが出来ており、其処には見慣れない機械の球が存在していた。

 

 そこで尻尾が生えた赤子を見つけた。

 あの機械の球は子供を飛ばすのに用いられた物だと察するのに時間は掛からなかった。

 

 手掛かりとなる物もないことから、捨て子であろう。

 息子も孫も居ない儂は育てることを決め、赤子に『孫悟空』と名付けて連れ帰った。

 

 機械の球は悟空の両親の手がかりになると考え、コレも持ち帰ることにした。

 

 赤子はとても変わった子だった。

 子育てというのは大変だと聞いていたが、そんなことはなく手間暇をかけさせない。

 数日後には立ち上がれるようになり、一月で言葉も理解するようになった。

 

 元気は無く、その濁った瞳は精神疾患でも抱えているかのような雰囲気。

 気の乱れが突発的に発生して気性が荒くなるが、その都度に頭を痛がり、苦悩することも頻繁に起こっていた。

 

 聞き分けも良く、物覚えは非常に早い。

 半年もしない間に、この人外魔境のパオズ山を駆け回るまでに成長した。

 

 暫くすると悟空は稽古をつけてほしいと頼み込んできた。

 理由はどうであれ、パオズ山で生きていくには必要なこと。

 何れは教えるつもりであったが予定を早め、稽古を付けることにした。

 

 そして二年の月日が流れた後に、あの事件が起こった。

 

 あの日は満月だった。

 頭痛で眼が覚めた悟空が偶々、窓から見える満月を見た時だ。

 

 見た直後に外に飛び出していく悟空を追いかけた儂は、とんでもない光景を眼にした。

 唸り声をあげながら身体は大きくなり、体毛は増え、10mは優に超える巨大な猿に変貌したのだ。

 

 大猿に変貌した悟空は頭を抱えて暴れ始めた。

 何かを拒むように地団駄を踏み、その衝撃で木々は吹き飛び、獣は逃げ惑った。

 

 押さえ込む為に儂は悟空を気絶させることにした。

 戦いは苛烈を極めたが寸前の差で儂が勝ち、何とか取り押さえることが出来た。

 その後、悟空は夜明けと共に小さくなり、やがて元の姿に戻ったのだ。

 

 次の日、悟空は深く悩んだ顔をして口を開いた。

 自分は、この星の生物と文明を滅ぼす為に送り込まれた宇宙人であることを。

 頭の中でずっと『命令』が響いており、頭を悩ませていたと。

 苦悩の表情で語る悟空にそっと耳を傾け、静かに聴いていた。

 

 最後に悟空は『命令のまま殺し始める前に殺してほしい』と言ったのだ。

 言い終えると憑き物が取れたかのように――本当に憑いていたのであろう――その顔は晴れやかなものになっていた。

 

 気付けば儂は悟空に手を出していた。

 悟空の左頬は酷く晴れ上がり、手加減の無い本気の一撃だったと確信出来る。

 

 悟空を拾ってから儂は叱ることもなく、大切に育ててきた。しかし、儂はこの時だけは激怒した。恐らく長年生きてきて五本指に、いや人生で最大の怒りだったかもしれない。

 

 儂に弟子を――孫を殺せというのかと叱咤し、渇を入れた。

 

 悟空は今まで破壊衝動に悩み、命令に抗い続けた。それだけで賞賛ものだ。

 傷つけることを躊躇う、優しい心の持ち主だということを儂が一番理解している。

 

 この子は強い精神力の持ち主であると同時に、異様なまでに弱い心の持ち主だ。

 苦悩や苦痛には耐えられる忍耐力を持つが、孤独や恐怖には耐えられない臆病な一面を持つ。

 

 例えるなら金剛石。

 途轍もなく硬いが衝撃に脆く一瞬で壊れてしまう美しい宝石だ。

 しかも、磨かれてすらもいない原石のままと言っても過言ではない。

 

 今の悟空は、その石が持つ"意味"とは程遠い。

 

 故に寿命も残り少ない儂は悟空という原石を磨くことにした。

 先ずは命令を跳ね除ける為の、心身共に鍛えることから始まった。

 

 悟空の言う、宇宙からの侵略者に備えてのことでもある。

 例え命令通りに地球を破壊せずとも遠い未来には様子を見に、宇宙人がやってくるのだと語ったのだ。それを想定とした修行を行うことにしたのだ。

 

 それからは今までの修行の取り組みは嘘だったかのように、目まぐるしい成長を成し遂げた。

 当初から鍛えれば儂を超えてしまうであろうというの才能を持っていたのは見抜いていた。歳を取ったのもあるが、直ぐに儂が得意としていた体術から棒術に張り合うまでに成長するまでに到る。

 

 満月を見ることによって変身する大猿の制御も出来るようになった。

 何度も取り押さえることになったが十回にして漸くものとしたのだ。

 

 大猿の制御も出来るようになり、儂の手に余るほどとなった悟空を連れ、武天老師様の(もと)に赴いて弟子入りを志願した。

 

 弟子入りを認められ、修行をしている中で驚いたのは武天老師様の『かめはめ波』を一度見ただけで覚えたことだ。あれには目を見張るものであった。

 そして儂でも耐え切れなかった『萬國驚天掌』を耐え抜き、あまつさえは武天老師に『萬國驚天掌返し』という反撃まで成し遂げた時は腰が抜けるかと思った。

 

 だが悟空は慢心することなく修行を研鑽を積み重ねた。

 何れ来る宇宙人の強さを知っているからであろう鬼気迫るものを見せていた。

 

 旅に出る前から100kg以上の重りを身に付け、駆け回る姿は今も覚えている。

 

 武天老師様からの言ではカリン塔で修行を積むだけに飽き足らず、他流派である武術すらも自らの物としたらしい。

 特に武天老師様の亀仙流に相対する鶴仙流にまで赴き、『気功砲』に加えて『舞空術』すらも会得するにまで到ったのだとか。

 

 そうして様々な旅を経て帰ってきた悟空だが儂は既にお迎えが近かった。

 悟空は十歳を迎え、心身共に修行をつける前とは比べ物にならない程に逞しくなった。

 

 だが濁った瞳は変わらなかった。

 幾許かはマシになったが金剛石と呼べる程には到らない。

 

 悟空が持つ悩みを解決するには、何かしらの一手が必要だ。

 だから儂は最後に悟空と組み手を行い、何合か打ち合った。だが既に寿命が尽きかけていた儂の身体は限界を迎えてしまっていた。

 

 

 孫悟空。

 

 

 儂の自慢の孫。

 生きているうちに磨き上げられた悟空を見届けられなかったのは口惜しい。

 

 行く末はあの世で見届けると……する――か――。

 

 

―――

 

 

《カカロットよ……!》

《この俺の意思を継げ!》

《サイヤ人の……》

《惑星ベジータの仇をお前が討つんだ!》

 

 俺に託さないでくれ。

 俺には無理だ。出来るわけが無い。

 

 孫悟空じゃないんだ。

 俺は……俺はニ――そういえば俺の名前は何だっけ?

 前世の記憶を持つが名前を鮮明に思い出せない。

 

《殺せ、壊せ》

《この星の生物を殲滅せよ》

 

 本当の名前を思い出そうとすると『殺せ、壊せ』という言葉が頭の中で響き渡った。この衝動のままに動いてはいけないと頭では分かっているが、体が本能的に戦いを求めている。

 

 俺という前世の記憶が消えなかった。

 目が覚めた時にから、ずっと響く言葉。打ち捨てられた一人用のポッドを見て、俺は理解した。

 

 神様――この世界の神ではない――は俺が大好きか、大嫌いか。

 そのどちらかの一極端だと。

 

 睡眠学習で埋め込まれた知識で開閉スイッチを動かし、一人用のポッドを這い出た。

 体がフラフラしており、するとガサガサという音を見れば籠を背負った老人が向かってきていた。

 

《殺せ》

 

 頭を振るって考えを散らす。

 すると頭痛で頭が痛くなり、その痛みで頭を抱え込む。

 苦悩していると老人は俺を持ち上げた。

 

 恐らくは孫悟飯。

 作中ではヤムチャが『武術においてその右に出るものはいない』と発言した人物で孫悟空の育て親だ。

 

 近くで見れば、それっぽい感じがするだけで分からない。

 頭の痛みと未発達な視界に加え、二次元と三次元の違いがあるから断定できなかった。

 

《殺せ》

 

 本能に打ち負けて孫悟飯を足で蹴った。

 しかし怒ることはなく優しげな視線を向け、捨て子だと判断した俺に『孫悟空』という名前を与えた。

 

 違う。

 俺は孫悟空じゃないんだ……。

 

 

 

 常に響く『命令』に頭を悩ませながらも俺は孫悟飯の下で暮らし始めた。

 サイヤ人という体の成長は早く、既に一月(ひとつき)もしない間に立ち上がれるようになり、言葉は前世の知識があるので直ぐに喋れるようになった。

 頭痛で眠れる日が少なく、日数なんてものを数える余裕なんてないが数ヶ月で人外魔境のパオズ山を駆け回れる程には成長したと思っている。

 

《破壊せよ》

《戦え》

 

 時折り頭の中で響く声によって頭痛が生じ、壊したくなる衝動さえ無ければ良いのだが、そうは問屋が卸さない。

 油断していると戦いたくて体がウズウズしてしまう。お爺ちゃん――孫悟飯に対しての攻撃衝動がやってくる。

 

 簡単に言えば人間の三大欲求だ。

 食欲、睡眠欲、性欲の三つが基本だろう。

 だがサイヤ人に関しては食欲、睡眠欲、戦闘欲になる。

 

 特に、この戦闘欲が厄介だが修行をすることで抑えようと考えた。

 稽古という形式で擬似的に戦闘欲を抑え込むことが出来ると思ったのだ。

 

 だが、何れ来る未来が俺を縛り付ける。

 大魔王が、宇宙の帝王が、人造人間が、純粋悪の魔人が、邪悪龍が、破壊神が。

 

 主人公という枷が俺に絡み付いているような錯覚を生み出す。

 殺したい――孫悟空の足枷となる自分自身を。

 自殺をしたくなる衝動が湧き上がってくる。

 

 死ねばどうなる?

 この世界はあの世が存在し、魂は天国か地獄かに向かう。

 

 ……俺は地獄行きだろう。

 世界は救われないし、俺も救われない。

 

 自殺してはいけないことを俺は理解している。

 孫悟空として戦う道を選ぶしかないのだ。

 

 俺に出来るか分からない。

 でも俺が孫悟空になったのにも意味がある……筈だ。

 そう思いこまなければ既にこの世にはいない。

 

 

 

 頭に響く声で目が覚めた。

 この声で不眠症になることは当然のことで、幼少期の体の成長を妨げるのは明確だ。

 

《破壊しろ》

 

 頭痛で中々寝付けなかった為、俺は小便をする為に外に出る。

 水も電気も通っていない、この家は不便なものでトイレも無い。小は外で済ませ、大は肥溜めで肥料に変える。生活水準が現代人だったので、この違いに苦労したが今では慣れたものだ。

 

 ふと夜空を見上げた。

 排気ガス塗れの都会では見ることが出来ない星々が良く見える。

 

《人間を殺せ》

 

 この内のどれ位が宇宙人が住む惑星なのだろうか。

 宇宙の帝王フリーザが率いる軍によって滅ぼされた惑星が幾つあるだろうか。

 そう考えていると、ふと視界に映った。

 

 満月が。

 

「あが……がぁぁ……うぐぐぐぐぐ!!!」

 

 今日は満月――!

 日付なんて考える余裕すら無かったのが仇となった。

 

《殺せ、本能のままに殺してしまえ》

《この俺の意思を継げ!》

《お前の使命はこの星に住む原生生物を滅ぼすことだ》

《惑星ベジータの仇をお前が討つんだ!》

 

 俺の意識が遠退いていく。

 大猿の化物に体が変貌していく。

 

 恩人を殺す存在になりたくない。

 誰かが傷付くのは見たくない。

 

 その気持ちが強かったからか、理性を完全に失うことは無かった。

 しかし戦闘欲が増大し、暴力を振るわなければ狂ってしまいそうだ。

 

 頭を抱えたまま俺は山を蹴り飛ばすと、山が削れ落ちる。

 山を壊した時の爽快感は性欲を発散させた時の何倍も清々しい。

 

 最早、麻薬だ。

 壊すのが楽しくて楽しくて仕方が無い。

 恐怖に怯え、逃げ惑う動物を見て、俺は不敵な笑みを浮かべてしまう。

 

 もういっその事、この快楽に身を――

 

 違う。楽しいわけが無い。

 これは洗脳されたからであり、俺は望んでいない。

 

 そこまで考えた所で首から痛みが生じた。

 視線を向けると、そこには孫悟飯が構えていた。

 

《敵だ》

 

 敵だ。

 いや違う。

 違う違う違う。

 

《戦え》

 

 戦わなければ殺される。

 違う、殺されるべきだ。今、此処で。

 

 頭が割れそうだ。

 理性が飛びきれていないのは俺が孫悟空じゃないからだ。

 つまり俺が俺という証拠に――なる――。

 

 

 

 目が覚めた時、俺は布団で寝かされていた。

 体の節々から痛みが発していることから生きているらしい。

 

「目が覚めたようじゃな、悟空よ」

 

 其処には孫悟飯がいた。

 大猿の化物に変身し、戻ったことも理解しているであろう。

 

 もう駄目だ。

 死んでしまおう。

 

 俺は――くじけてしまった。

 俺に孫悟空として生きるのは無理だったのだと悟ってしまった。

 

 孫悟飯に、宇宙人であること告げた。

 この惑星を滅ぼす為に送り込まれたのだと。

 今も『命令』が頭の中で響いていて蝕んでいると。

 

 溜まりに溜まっていたブツを吐き出すと心が空虚になった。

 ずっと背負っていた重荷(使命感)を投げ捨てたような感覚だ。

 

 手遅れになる前に自殺する勇気が起きなかった俺は手遅れになる前に殺すように懇願した。

 

 このドラゴンボールの世界には天国と地獄が存在する。

 間違いなく地獄に行くだろうが、それでも良いだろう。

 

 意識が飛んだ。

 

 今まで感じたこともない、顎が砕けたような痛みが走る。

 家の壁なんて簡単に突き破り、そのまま木々を叩き折って十本目で漸く止まったようだ。

 

 其処には劇中でも見せなかった怒りというものを見せた孫悟飯が居た。

 優しさや厳しさは有れど怒りを見せたことは無かった、あの孫悟飯が憤怒の顔を顕にしていた。

 

「儂に弟子を――孫を殺せというのか!」

 

 こんな俺でも弟子として扱ってくれるのか。

 星を滅ぼす為に送り込まれた宇宙人だと知っても孫だと言うのか。

 

 気付けば涙が流れていた。

 痛みで泣いているのか、それとも優しさに触れて泣いているのか分からない。

 

 

 

「お主が誰であっても儂の孫――孫悟空じゃ」

 

 この時、俺は孫悟空という"主人公"を辞めた。

 孫悟空という名前の"人間()"として生きることを決めたのだった。

 

 

―――

 

 

 孫悟飯の死去。

 本来の歴史とは若干異なるが『孫悟空が殺した』という事実は変わらない。

 

 孫悟空となった彼は酷く悲しんだ。

 理解者の一人を失ったことによる心の支えが無くなったからだ。

 

 どんな願いでも叶えるドラゴンボールがあるから生き返る。

 以前の、それこそ前世の彼であれば、そんな安易な気持ちになっていたであろう。

 

 彼は蘇らせるようなことは考えなかった。

 

 本来よりも長く、寿命寸前まで生きた孫悟飯は決して生き返ることを望まない。

 一日だけこの世に連れて来れる力を持つ亀仙人の姉に頼んでも、会おうということはしてくれない。仮に会ったとしても甘えた精神に渇を入れることには間違いない。

 

 だからなのだろう。

 あの"伝説"と呼べる存在と同じような髪の色合いに変化したのは……。

 

 変化した姿は怒りで目覚める金色の戦士ではなかった。

 彼の心境は怒りではなく悲しみ。悲しみで目覚めた黄緑色の戦士。彼が知る戦闘力1万の異端児と同じであった。

 

 覚醒した彼は孫悟飯への気持ちを表すように立派な墓を作り、丁重に弔った。

 孤独の中で、パオズ山で暮らしていくことになる。

 

 彼は運命の時まで待ち続けた。

 

 まだ見ぬ敵を打ち倒す為に修行を積み続ける。

 伝説の戦士になったからといって慢心することはない。

 自身が最強というわけではないのを彼は知っている。

 

 宇宙の帝王、人造人間、善悪の魔人、他宇宙の戦士。

 何よりも全宇宙を一瞬にして(遊び感覚で)消し去る力を持つ王の存在を知っている。

 全てを打ち倒すつもりではないが必要ならば打ち倒すという心構えを持っていた。

 

 精神的に背負うものが増えているが物理的にも増えていた。

 背中には孫悟飯の形見である如意棒だけではなく、亀仙人から皆伝として受け賜った芭蕉扇も背負っている。

 

 そして運命の日。

 

 彼は自らの家に近づいてくる人間の気を感じ取った。

 亀仙流の修行の一環として素手で整地し、運命の日の為に備えて整備した道路をなぞって向かってくる気配だ。

 

 緊張した面持ちで家で待ち構えていると、ここ一年は聞いていない車のエンジン音が聞こえてきた。

 

「ごめんくださーい!」

 

 ZでもGTでも、超でもない。

 正史ではありえない物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 正史を進みつつも、異なった道を歩む外伝(IF)

 名付けるなら『ドラゴンボール外伝-転生したらカカロットだった件について-』だろうか。

 




 ザ・後書き。



 主人公パートを想定の八割カットという暴挙。

 亀仙人に弟子入りする際のギャルを連れて来るやりとりするシーンとか。
 鶴仙流の道場に忍び込んで『舞空術』とかの技術盗むシーンとか。
 芭蕉扇でフライパン山の炎を消して山を丸々残して被害最小限にするシーンとか。
 カリン塔で超聖水を一瞬で奪い、更に超神水を飲んで悟空が本来得た能力に加え、彼が独自で異能を得るシーンとか。
 仙豆の栽培を頑張るシーンとか。
 『魔封波』に『魔封波返し』するかの如く『萬國驚天掌』に『萬國驚天掌返し』をするシーンとか。
 天下一武道会に最年少参加を行い、優勝を掻っ攫うシーンとか。

 色々と考えていたけど、その詳細をどう書くかが頭に浮かばなくて省いてしまった。後悔しているけど私の文章力では、どうも表現出来なくて断念です。

 金剛石ことダイヤモンド。
 コンセプトの一つで石言葉が重要となっています。調べたら直ぐに分かりますが……。

 ブルマ初遭遇での戦闘力は1200程度で異常に強い。
 この段階で最低限でもラディッツは倒せる程度は欲しかったんです。

 最後の方に伝説の超サイヤ人に覚醒しますが容姿に関して少々違いがあり、孫悟空を筋肉モリモリのマッチョメンにしたような姿ではなく黄緑色で白目、そして泣き顔に近い状態です。
 此処から感覚に慣れれば本来の金色の戦士になれるかもしれません。

 パンピーな彼には生き抜かせる為に幾つもの特典を与えていますが、代償も与えています。俗に言う転生特典ですね。

 戦闘力の異様な高さもソレが原因だったり。
 好き嫌いが分かれるので気分次第で二話目に設定集を書くか、活動報告で書くか考えます。

 後書きで設定全部書くのは駄目だと思うからね(´・ω・`)

















 モチベーションが上がった場合の続きの構想は少し練ってます。
 ヒント:タイトルに客、異人、外来の意味を持つ言葉が入るドラゴンボールのゲーム。
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