女神と星座の導きによりて   作:草ナギ

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海皇ポセイドン編
星43 誕生日


 「それではジュリアン様の十六歳の誕生日を祝して乾杯ーーっ」

 

 「「「かんぱーい」」」

 

 はい、こんばんは。私達は現在、ギリシアの海商王、ソロ邸でのパーティーに来ています。

 

 「わぁ、一杯人が居ますね。辰巳さん」

 

 「それはそうだろう。世界一の海商王の一人息子、ジュリアン・ソロ様の誕生パーティーだからな。世界中から名士が集まっている。ああ、こら、エスメラルダ、珍しいからと周りを見回すな。田舎者と勘違いされて恥をかくのはお嬢様なんだぞ」

 

 エスメラルダが物珍しそうに周りをキョロキョロと見回し、辰巳さんの言葉で恥ずかしがって直に見回すのを止めました。

 沙織と一緒に辰巳さんとエスメラルダの様子を見て可愛らしくて、つい見守ってしまいました。微笑ましいです。

 どうやら周りもあまりこちらを気にして……、おや、意外と見られてます?

 

 「その反応、真名。お前は未だにその顔立ちの自覚がないのか……。一応美女の分類に入るんだから自覚を持て。お嬢様は勿論、エスメラルダだって美少女なんだぞ。……目立つ事この上ない」

 

 小声ですが最後、聞こえてますよ?沙織とエスメラルダが美少女なのは当たり前です。何言ってるんですかね。私が美女……うーん、すんごい違和感ががが。

 

 「でも、ジュリアン様も大変ですね」

 

 「ん?どうしてです?」

 

 「えっと、先日御父上が亡くなられて、遺産も全て譲られて今や事実上のソロ家の総帥なんですよね?沙織様と同じくお若い身で大変ではないかと思って……」

 

 「ふふっ、エスメラルダは優しいですね」

 

 「エスメラルダ?私なら大丈夫。こうして辰巳やお母様、貴女の様な心優しい素敵な秘書が居ます。それに……皆が付いてますから。きっとジュリアン様にもそういった方達が付いていてくれているハズですよ」

 

 「あ……はい!」

 

 沙織が言った”皆”とは、恐らく聖域の、聖闘士の皆さんの事でしょう。

 勿論、沙織の事ですから、青銅の皆さんも含んでいるのでしょうけど、さてはて、それだけでしょうか?ニヤニヤ。

 

 「 ! ……お母様?」

 

 おおっと、沙織が私に気付いてむむっと少し眉毛を吊り上げてますね。

 ふっふっふー、ダメですよー、沙織。可愛いだけです。

 ……おや、どなたか近付いてきましたね。

 

 「ふっ、パーティーを楽しんでくれている様で何よりです。ミスサオリ」

 

 おお、この少年は……

 

 「ジュリアン・ソロです。今夜は私の誕生日によく来てくれました」

 

 「こちらこそ、お招きにあずかりまして光栄ですわ」

 

 中々気障っぽいジュリアン少年十六歳キター。

 ちょっとテンション上がってましたが、沙織がジュリアン少年に頭を下げたので私達もそれに倣ってお辞儀しました。

 

 「私の父から城戸光政翁と親交があったと聞いています」

 

 「ええ、お爺様からもギリシアの大富豪、ソロ家のお話は伺っておりました」

 

 「貴女に一度お会いしたいと思って今夜こうしてお招きした次第ですが、今夜の私は随分と幸運らしい。こんなにも美しい女性を三人もお会いできるなんて……。特にミスサオリ、貴女は想像以上にお美しい……」

 

 ジュリアン少年よ、何当たり前な事を言っているのですか。

 沙織が!美しいのは!当たり前です!!(大事な事なので二度以下略)

 私の!娘で!私達の!女神やぞ!!

 芯が強くて、健気で気高く、慈悲深くて、大いなる愛しみの精神!何処に出しても恥ずかしくない、私の自慢のお嬢様やぞ!!

 おのれ……大事な事なのに語彙力が乏しい自分が憎い!だが、事実である……ってあれ?辰巳さん何下がってるんです?ニコニコ笑顔で可愛らしいエスメラルダを見習いなさい。ジュリアン少年が近くに居ても緊張しない鋼の精神、流石、もう立派な秘書ですね!」

 

 「いいえ、私はまだまだですよ。けれど、真名様は本当に沙織様が大好きであらせられるのですね!」

 

 「ん?」

 

 おや?

 

 「……くくくっ!」

 

 おやおや?ジュリアン少年が笑いを堪えてます。沙織は……何やら恥ずかしそうですね?どうしたんでしょう?

 

 「真名、お前、思っている言葉が途中から口に出して言っていたぞ……」

 

 辰巳さんが片手で顔を覆ってため息をついて私に言いました。

 何……だと……?

 

 「み、ミスサオリの付き人は随分愉快な人みたいですね?」

 

 「あ!その、これはジュリアン様!沙織様、大変失礼いたしました」

 

 「い、良いのですよ。ミスサオリは従者にとても慕われている事は良く分かりましたから……ふふっ」

 

 ジュリアン少年よ。笑いが止まっていないですよ。

 ふと気になったので小声で辰巳さんに話しかけます。

 

 「……ちょっと辰巳さん。なんで止めてくれなかったんですか?というか、どこから声に出てました?」

 

 「……”芯が強くて~”の辺りだ」

 

 随分と初めの辺りじゃないですか!!

 

 「……辰巳さん、帰ったら城戸邸の裏まで来てください」

 

 「ちょっ!?」

 

 「……大丈夫です。ただの八つ当たりですから」

 

 「……なお悪いわ!」

 

 「あ、あの、お二人共」

 

 「「ん?」」

 

 エスメラルダが戸惑いがちに私と辰巳さんに話しかけてきました。

 

 「ジュリアン様が沙織様をエスコートして、テラスに行ってしまいましたよ?」

 

 「何!?」

 

 「あら。ジュリアン様、積極的ですね」

 

 でも、なーんか引っかかるんですよね。

 ジュリアン様、結構重要な人物だった様な……。

 もうこの世界に来て何年も経ってますし、うろ覚えな所もありますからねぇ……。

 そういえば多分ですけど、そろそろ物語が動く頃ではありませんでしたっけ?

 次の神様は……えーっと……ポ……おおっと?

 名前の最初の文字を思い出す所で沙織がテラスから帰ってきました。

 おや?ジュリアン少年は良いのですか?

 ……いいのですか、そうですか。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 そして、深夜。

 沙織が寝泊まりしているソロ邸の部屋で、沙織はある一人の兵によって攫われようとしています。

 沙織を抱え、兵がテラスまで行き、外に出ようとすると……

 

 「連れて行かせる訳がないでしょう?」

 

 「な、何ヤツ!?」

 

 私が引き留めます。当然です。

 

 「それはこちらのセリフです」

 

 ふむ、あの魚のような鎧は……。

 

 「フン、女一人で何が出来る!」

 

 「こういう事が出来ますよ?【パラライズローズ】!」

 

 沙織に当てない様にパラライズローズを主に鎧の隙間辺りを狙って放ちます。

 

 「ぐ、ぐわああああ!?」

 

 魚の鎧を着た兵は痺れから沙織を手放し、テラスから落ちてしまいました。

 あらら、下は海ですが痺れているので泳げるでしょうか?

 テラスから身を乗り出し、下を見ましたが沈んだまま出てきません。

 ふむ、もしかして

 

 「逃げました……?」

 

 まぁ、そんな事は良いのです。重要な事ではありません。

 

 「沙織?沙織。大丈夫ですか?」

 

 沙織の安否が大事です。

 私が沙織に意識があるか、怪我などがないか確認していると

 

 「真名、アテナは無事か?」

 

 「アイオリア。ええ、気を失っていますが、それだけです」

 

 実はこのソロ邸に来る時に遠くから沙織、アテナの護衛として聖域からアイオリアが一緒に来ていたりします。

 私も一緒なんですから大丈夫って言ったんですけどね!

 まぁ、もしもの時の為ですから仕方ありません。

 

 「しかし、先程のヤツは何者で目的はなんだったのか……」

 

 「分かりません。けれど、実力的に下っ端ぽかったですよ」

 

 先ほどの兵の恰好……もし、沙織を女神の化身と分かっていて攫ったあの行動は……。もしかして……

 

 「……海皇ポセイドン」

 

 ぽつりと呟きますが波の音でかき消えました。

 うん……

 

 

 忘れてたあああああ!!

 ジュリアン・ソロっていえば!海皇ポセイドンが復活する度に依り代として選ばれるソロ家の人間で!しかも、彼って今日十六歳になったんですよね!?

 ポセイドンが復活する年齢じゃないですか、やだー!

 確か、今頃だとスニオン岬の崖の辺りで輝いているポセイドンの三つ又の鉾が刺さってて、人魚のテティスが迎えに来ている頃ですよ!やだー!!

 

 ですが、まだ私は思い出し切れてはいなかったのです。

 そう……海皇ポセイドンの海底神殿には、”彼”が居る事を、いまだに忘れていたのです。やだー……。

 




遅いと言いましたが、意外と早く書けました。
次回も早く書ければ良いんですけど……心配です……。
さて、ポセイドン編の始まりです!
この先どんなことが待ち受けているのでしょう?
そして”彼”とは誰なのか!
生暖かく見守ってください。
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