人格者   作:ヒトヨ

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鍵のかかった記憶、これからの道、これまでの道。
信じるべきは。


道/記憶

部屋を後にした僕と隊長は真っ直ぐに廊下を歩く。

20メートルほど進んだ地点で左右に分岐しており、それを左へ曲がる。そこにはナースステーションがあり奥にエレベーターがある、どうやらそれに乗り込むらしい。

隊長がボタンを押すとエレベーターが動き出した音がした。

「ここは国連基地第3重要棟って所でな普通の病院とほとんど変わらん、ただ最上階が第3棟役員室や手術室、監理室があるってな感じ。」

「はぁ、僕らが今いる3階はどう言った用途の...?」

「んっとな、3階は西側が集中医療室、東側が重要監視対象捕縛治療室で分かれててな。お前さんが居たのは第15番重要監視対象捕縛治療室っつーとこ。」

などと笑顔で語る隊長。こちらは聞いていて気が遠くなる...なぜ僕が重要監視対象なんだ。

疑問が湧いても答えなんて与えられない。先程の病室でも質問は受け付けないと言われたので、疑問は自分で解決しなければならない。

「重要監視対象...はぁ。」

自然とため息が出た、無理もないか。寝ていただけだが質問されたり推理ごっこをしたりと妙に疲れた。

隊長も疲れた疲れたと口では言っているものの見た目はそうでもなさそうに見える。やはり軍人は表に出さない面ってものがあるものなのか。

ポーンと変な音が鳴る。どうやらエレベーターがこの階に来たらしい。

「一夜乗るぞー。」

「は、はい。」

エレベーターが鈍い音を立て扉が閉まる。中では流暢な英語のアナウンスがゆったりと流れている。

「隊長、2階はどういった所ですか?」

「んー?2階は通常医療室が立ち並んでるぜ?」

「そうですか。」

「んで、1階も同じように通常病室があって、入り口前に受付カウンターだ。」

「なるほど、造り自体は本当に一般的な病院とあまり変わらないんですね。」

「まぁな、なんでも、ナイチンゲールっていう偉人がこの基準にしたとからしい。...うろ覚えで正しくねーかも知れねえから、信じるなよ?」

「は、はあ、わかりました。」

なるほど。ここは4階まであり3階までが出入り可能なスペースで4階が役員以外立ち入り禁止というわけだ。

南側に入口があり。真っ直ぐ行くと受付、その左右に廊下が伸び北側にエレベータースペースがあるということか。

僕が居たのは15番目の一番奥、廊下の突き当りと言うことか。

ポーンとまたしても変な音が響く。1階に着いたようだ。

「さて、行くぞぉ。」

「はい。」

エレベーターを出るとすぐに受付があり、隊長は少しばかり手続きをするようだ。

「よお、リサ!東15番、お目覚めだぜ。」

受付の奥に向かって隊長が呼びかけると。呼びかけた方面から若い女性が早足で歩いてきた。

ゆったりとウェーブのかかった茶髪は綺麗なつやを持ち、流れるように肩まで伸びている。細身で身長は僕とあまり変わらないようだ。

表情は柔らかく微笑んでいて、印象は穏やかな人、といった所か。看護婦と言う職業のイメージにぴったりな人だ。

「あら、レヴィ大佐、お疲れ様です。東15番室ですね?確認いたしますので少々お待ち下さい。」

柔らかな声でそう言うと僕らに背を向けまた奥へ。

「かわいいだろ?」

「は...へ?」

びくりと横にいる隊長に視線を向ける。隊長はにんまりといたずらを仕掛けた子供のように笑んでおり、目を細くしていた。

「いや、かわいいだろって聞いただけだぜ?」

「は、はあ...。」

「大佐〜?また女の子の話ですか〜?」

僕はまたびくりと身を震わせながら声のする方に勢いよく視線を向ける。そこには女性が立っており目が合ってしまった。

「おーリサ、おかえりィ」

「はい、お待たせしました。重要監視対象治療室、厳重捕縛対象ナンバー15。登録名[Ichiya]でお間違えありませんか?」

「おう!間違いねえぜ。」

「わかりました。ただ、厳重捕縛対象となりますので、上層の許可が必要となりますが...」

女性は中途半端なところでなぜか言葉を切り、目を逸らし長考する。2分ほど考えると女性は改めたようにこちらに笑顔で向き直る。

「まあ、『ゴミ箱』の隊長さんですし、別にいいですよね!」

「おう!かまわんぞお!!」

「わかりました、では。勝手にしちゃってください!」

「おう!そうする!」

「はい!では!」

「おう!じゃな!!」

「え、ちょ、ちょっと、どう言うことですかっ?」

テンポ良すぎて危うく止めそこなう所だった。

「ん?どした一夜」

「いや、説明もなく外に連れ出されるのもどうかと思いますが、僕って外に出たら、いえ、出したら行けないんじゃないんですか?」

「え、なんで?」

「なんでって、僕のセリフですよ、」

「まぁ気にすんな、気にしてたら禿げるぜぇ?」

「は、はげ、、」

「おら、口動かす暇あるなら足動かせー、上官殿が来る前になぁ!」

ガハハハハと大声で笑いながら意気揚々と歩いてみせる。そんな背中を見ながらやれやれと肩を竦めて見せるリサさんを後目に僕も隊長の背中を追って歩き始める。

自動開閉扉をくぐると眩しく暖かい光が降り注ぐ。僕には記憶が無い、いや、記憶が深層に隠れて鍵にかけられている様で、その『今までの僕』が歩んで来た道もあの太陽はずっと空から見ていたのだろう。そこにあって当たり前、だけど当たり前だったものが何かをきっかけに無くなってしまったみたいで、そこにある太陽を眺めていると、少しだけ胸がざわついた。

「もう、戻れないのかな。」

ふと心の声が口から漏れ出たのに気付かず空を見上げていた時、隊長がわざわざ戻ってきて僕の隣に並んで見せた。

「お前さんは難しく考えなくていいんだぜ?」

「え?」

「お前さんが戻るか戻らないかは確かに自分の意思で決める事だが、記憶が戻って俺たち大人がお前さんの居た当たり前の所を見つけ出して、帰れるように仕立ててやるってこった、だから何も心配すんなよ。」

「でも、僕は、記憶が戻っても、もう普通に過ごすことは出来ないんじゃないかって、思うんです。」

「それは杞憂ってもんだぜ?だって未来の事なんか誰もわからねぇし、記憶が戻った上で帰るか否かは自分が決めんだ、だから後悔しない方を選べばいいんだよ。」

「そう、ですね。」

「そうだよ、んじゃ飯だ飯!もう13時半だぜ?腹減ったわー!」

「はい、そうですね、ご飯、食べましょう。」

「おう!腹が減っては戦ができぬ?だっけ、そんな感じの言葉の通りだ!」

隊長は僕の方を振り向き見てニカッと笑って見せてくれた。それに釣られて僕も心のざわめきが無くなっていくのを感じた。

人を信じる事は決して悪い事じゃない、少なくともこの人に向けていた警戒心は解いても良いのだろうと、思う事にした。

「よっしゃ一夜!ダッシュで行くぜ!俺に続けぇええええ!!!」

「え?は!?ちょっと待ってくださいよー!」

背を追い走る、手を抜いてくれてるのかゆったりと走る隊長にすぐに追いつき並んで走る。

「走るのも良いもんだろ?」

既に息を切らしている僕の横で笑いながら隊長はニカリと笑う。流石軍人と言うべきか、全く息を切らさずペースも崩れていない。そんな隊長に返答しようとするが、呼吸が荒く声を出そうにも難しい。

「疲れたなー、歩くかー。」

わざとらしく大きな声で言うと僕の方を優しく2度叩くと少しずつペースを落として行った。それに合わせて僕もペースを落とし2人で1度立ち止まる。

膝をおり手を付き肩で息をする僕に対して、隊長は隣で胸を張って堂々と立っている。

「若いのに体力ないのな。」

「わ…悪かった…です…ね…。」

「いやいや、サレナの特訓はやりがいがあると思うぜ?」

隊長は僕がこんな状態であるにも関わらずニコニコと笑顔を崩さない。ここまで来ると貼りついてるようにしか思えない。

「隊長、笑顔が崩れないんですね。」

そう言うと隊長はガハハと大声で笑い空を見上げた。

「俺はな、立派な大人じゃねぇし、真面目な奴に真面目に激励してやる事は出来ねぇけど、誰でも元気にできる様な明るさを持ってる自信があるからな!」

「なる、ほど。」

空を見上げている隊長の顔を見る。その顔に貼り付けた様な笑みはなく何かを愛おしげに優しく微笑んでいる様で、その顔はまるで父親のような温もりを含んでいた。

「んお?隊長何してんの?」

声の方向を2人で見ると、そこには女性が立っていた。

銀色の綺麗な髪色が陽の光に当てられキラキラ光っている、質がいいのか風にふわりと揺れればまた淡く光を反射している。雰囲気はサレナ教官に酷似しているが髪は長くはなくサイドのみを伸ばしており後ろはバッサリと切っていてとても短い。

特徴的なのはその白い肌と深く赤い瞳だ。銀色の髪と白い肌で全体的に淡い存在感のようにも思えるが深紅の瞳がより一層際立っており、目を合わせた瞬間鋭い視線が射抜くようなイメージだ。全体的に見れば、まるでその鋭い目に集中させることを意図された様な感じがする。しかし左目の下に泣きボクロがあり鋭利なイメージをどことなく悲しげなイメージに変えてしまっている。

「んー?少年。私の顔になにかついているかな?」

「え?い、いえ、すみません。」

「気をつけたまえ、女の人に興味があるのは男である以上しゃーないけども、ジロジロ見てたら勘違いされちゃうぞぉ?」

「す、すみません。」

言葉遣いは、サレナ教官とは真逆でむしろ隊長の言葉遣いに似ている。外見のイメージを尽く覆され少し顔が引き攣ってしまう。

「よぉ副隊長、なんでここにいんの?食堂待ちって言ったような気がするんだが?」

「あ?あんたが遅せぇからわざわざ迎えに行ってやらんでもないなーって思って見に行ったら割とすぐ近くに居た。」

「あそう、そら悪ぅござんした。」

「はーーーー??ムカつくなぁ?1発殴っていい??」

「やぁだぁ、こわぁい、おいちゃんをいじめちゃいやぁん。」

「うっし、決定!1発殴るぅうう!!」

「きゃーー!!」

真面目そうなイメージの女性だったんだけど、この言動だけでわかってしまう、この人、隊長と同じ類の人だ。

「あの、人を待たせているなら早く食堂へ向かいましょうよ。」

「そうだぞ副隊長!こんな所で油打ってる暇ないんだぞ!!」

「どの口が言ってんだもういっぺん殴るぞ????」

「きゃー野蛮ー!」

この人達は多分どうしようもない人達だ。

心でそう思いながら、1人でモンキーのじゃれあいを見る。ここは動物園かな。

数分ふざけあっていた隊長と副隊長であろう女性が何故か肩で息をしながらボチボチ歩いていく。隊長によるともうすぐ付くそうだ。




・・・1年すね。前回投稿から。
失踪?、言い訳すると今後の展開の時系列確認と整理と、忙しい仕事とゲームが、ですね?
・・・すみませんした。
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