お隣さんが工藤新一だった。
まあ、大丈夫だよね。ただ単にお隣さんってだけで事件に巻き込まれるとはそんなんあるわけないし。
息つく間もなく中学校だ。どうやら玉藻ちゃんは家に残って家のことをするらしい。
「なにかあったらすぐにお呼びください。アンリマユの野郎だけは心もとないありませんので」
「ひっでーなぁ。人間相手だったらオレは無敵みたなもんだってのに」
なんて会話があったりする。
それに中学校に主要キャラはいないし、事件に巻き込まれるとかそうい心配はない。一番問題は勉強についていけるかどうかなのだから。
私は元々真面目に勉強をするタイプじゃないし。
「よし、行こうか、BBちゃん」
『は~い、じゃあ勉強に着いていけなくて半泣きになるセンパイをここから楽しみますね!』
「マジでありそうなんだけど……どうすんのさ」
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「なんとかぎりぎり……」
『でもあの程度なんて、センパイほんとに社会人だったんですかぁ~? BBちゃんびっくり~』
「うっさい、これでもできてる方だって思ってるから」
BBちゃんにからかわれながらこの世界における家に帰る道を辿っている。BBちゃんのサポートがあるから迷子になることはない。一応仲良く話せる相手はできたし中1だからかいうほど勉強には困らなかったし、上々と言っていいだろう。
帰っての復習をやればまあ、問題なく着いて行けると思う。
そう思ってると、爆発音と共に一つの影が目の前を通りすぎていった。
「え? なに?」
「あいたた……ん?」
腰をさするそのご老人は後の江戸川コナンに便利な道具を作る科学者の阿笠博士だった。まさかここでご対面になるとは思わなかった。
「あの……大丈夫ですか? すごい勢いでしたけど……」
「気にすることはない。それで君は?」
「隣の隣に越してきました者になります。今後ともよろしくお願いいたします」
「あぁ、あのやけにでかい武家屋敷の子か。丁寧にどうも」
一応自己紹介はしておこうと思って頭を下げながら挨拶をする。阿笠博士も同じように頭を下げてくれた。
「なにやってんだよ博士? また爆発したのか?」
「おぉ、新一!」
お話してるとどうやら工藤新一が学校から帰ってきた。学校からと思ったのは普通に制服を着てるからである。推理もあったもんじゃないな。
「うちのお隣さんとどうしたんだよ」
「あぁ、たまたま会ってな。ちょっと立ち話をしとったんじゃ」
「どうも」
会話する二人に会釈をする。挨拶になっているかはさておき、ポーズを見せることは大事だと思う。
実のところ事件に巻き込まれたくないからあんまり話したくはないけど。
「そうじゃ、立ち話もなんだし、中に入るかね?」
「えぇ?」
「いいんじゃねーか? 家も近いし」
大丈夫かなぁ……まあ、この状況で事件もなにもないか。
「なら、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます……」
悲しきかな、オタクは欲求に抗えなかった。
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「工藤さん、探偵なんですか? 高校生なのに?」
「そう! なにか困ったことがあったら言いな。俺がずばっと解決してやるからさ!」
「ははは……そうさせていただきます……」
ソファに座って工藤新一とお話をする。なんというか、アニメやマンガで見てる時も思ったけど、結構目立ちたがりなんだということを改めて知った。
「そういえば、蘭くんはどうしたのかね? いつも一緒に帰っとるじゃろ?」
「あぁ、今日は楽しみにしてた新刊が出るから俺だけ早めに帰ったんだ」
確かに蘭姉ちゃんがいない。なんかいつも一緒ってイメージがあったんだけど、こういう日もあるのか。少しだけ意外だった。
「それじゃあ、私はこれで」
「おぉ、またな!」
将来小さくなることとか言うべきなんだろうか……。
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『ダメです』
「なんで?」
『センパイはただの旅行者みたなもの。結果に対する干渉は認められていません。したとしても、ただ叩き出されて修正されてハイ終わりです』
「そっかー……」
『最初に言ったでしょう? 特等席で眺めるって。それはつまりそういうことなんです。なので勇敢でお優しいセンパイにおかれましてはただ目に見える結末を楽しんでください』
「ダメなのかー……」
自室。BBちゃんに言われてごろりと寝転がる。なにかしらできたら良かったんだけど、本来は違う世界の私の干渉していい部分ではなかったらしい。
「マスター。お夕飯できまたしたよー!! たんとお召し上がりくださーい!」
「あぁ、うん。今行くよ!」
とりあえずお腹がすいたから玉藻ちゃんが作ったご飯を食べよう。